この記事では、いま何がどこまで進んでいるのか、そして7月18日という締め切りに向けて何を見ておけばよいのかを、SPO(ステークプールオペレーター)の視点で整理します。
「van Rossem」とは——DRepの名を冠したV11
van Rossemは、CardanoをProtocol Version 11へ引き上げるハードフォークです。名前は、コミュニティで活動するDRep(委任代表者)Max van Rossem氏にちなんで、投票によって付けられました。開発の号令ではなく、コミュニティの手続きから名前まで決まっている——この一点に、Cardanoが移ってきたガバナンスの姿が表れています。
Cardano初、3つのゲートで承認される
Voltaire体制では、ハードフォークのような重要なガバナンスアクションは、次の3つの主体がそれぞれの閾値を満たし、かつ同じエポック境界で揃ったときに承認されます。
- DRep(委任代表者):ADAステークで委任された投票。必要ライン60%
- Constitutional Committee(憲法委員会):7人で構成され、憲法との整合を審査。可決には5人の賛成
- SPO(ステークプールオペレーター):プールが投じる票。必要ライン51%
どれか一つが欠けても前に進みません。開発元の裁量が、3主体の合議に置き換わっている——これが「完全オンチェーン承認」の意味です。
現在地:ノードは準備済み、票はこれから
Intersectの週次アップデート#118(2026年7月3日・エポック640時点)の公表値は、次の通りです。
| ゲート | 現状 | 必要ライン | 状態 |
|---|---|---|---|
| DRep | 66.6% | 60% | ✅ クリア |
| SPO | 43.76% | 51% | ⏳ 未達 |
| Constitutional Committee | 賛成1・保留6 | 賛成5 | ⏳ 進行中 |
| ノード準備(参考) | v11で89% | 85% | ✅ クリア |
ここに一つ、興味深いねじれがあります。ノードの準備(v11でのブロック生成89%)は、安全な移行に必要な85%をすでに超えているのに、SPOの投票(43.76%)は51%の閾値にまだ届いていないのです。つまり、多くのプールがソフトウェアとしてはV11を動かしている一方で、ガバナンスの「票」としてはまだ投じきれていない、という状態です。動かすことと、意思表示することは、別の行為だということがよく見えます。
⚠️ これらの数値は投票期間中に日々変動します。最新の状況はIntersectの発表やGovToolでご確認ください。本記事は7月3日時点のスナップショットです。
7月18日という締め切り
このハードフォーク発議には有効期限があり、2026年7月18日(エポック644)が最終ラインです。承認は各エポック境界(7月8日、13日、18日など)で評価され、3つのゲートが同時に揃った瞬間に成立します。DRepのゲートはすでに満たされているため、焦点はSPOの票が51%に届くか、そして憲法委員会が残る賛成を積み上げるかの2点に絞られています。
SPO視点:ここで問われるのは「参加」
SPOとしてCardanoを見てきた立場から言えば、この局面で問われているのは技術ではなく参加です。ノードはすでに動いています。あとは、各プールが自分の票をどう投じるか。委任者の意思を預かるSPOにとって、投票を出すこと自体が責務の一部です。
そして忘れてはならないのは、これがCardano初の「完全にオンチェーンで決まるハードフォーク」だということです。うまく承認されれば、それは単なるV11への移行ではなく、開発元の号令なしにネットワークが自らを更新できることの実証になります。締め切りまでの数値の動きは、その実証がリアルタイムで進む様子そのものです。
一次ソース
- Intersect weekly update #118(2026年7月3日)
- Intersect:Cardano upgrade — van Rossem hard fork
- @IntersectMBO:van Rossem hard fork update(epoch 641)
