2026年7月、Cardano の統治を支える「憲法委員会(Constitutional Committee)」の改選が行われ、SIPO も DRep として投票しました。この委員会は、提案が憲法に沿っているかを判定する“番人”であり、その顔ぶれは、いまの Cardano が「協調による事業の加速」と「規律ある統治」のどちらへ傾くかに、静かに、しかし確実に影響します。SIPO がどの 4 名に、どんな考えで票を投じたのか。委員会の仕組みから、背景にある出来事まで、SPO の視点で丁寧に解説します。
憲法委員会とは、何をする場所か
Cardano の統治は、DRep(委任された投票者)・SPO(ステークプールの運営者)・憲法委員会という三つの役割で成り立っています。このうち憲法委員会が担うのは、提出された統治アクションが Cardano の憲法に適合しているかを審査し、合憲か違憲かを判定することです。政策そのものの良し悪しを決める場ではなく、あくまで「憲法に照らして問題がないか」を見る、司法に近い役割だと考えると分かりやすいと思います。
委員会は 7 議席で構成され、ひとつの案件を可決するにはおよそ 3 分の 2(7 人中 5 人)の合意が必要です。今回の選挙は、この 7 議席のうち 4 議席の改選(任期 2 年)です。残る 3 議席は任期の途中なので継続し、委員会全体としては連続性が保たれます。
今回の選挙の仕組み
投票できるのは DRep で、委任された ADA の量に応じて重みが決まります(stake-weighted)。方式は「承認投票」で、最大 4 名まで選ぶことができ、選んだ各候補には自分の投票力がそのまま反映されます。順位はつけません。4 名を必ず埋める必要はなく、心から支持する候補だけを選ぶこともできます。
候補は個人・コンソーシアム・組織を合わせて 10 名。投票は Intersect の Ekklesia(Hydra を使った投票基盤)で行われ、結果はオンチェーンで検証できる形で記録されます。締切は日本時間の 2026 年 7 月 24 日 午前 6 時 45 分です。
いま Cardano で起きていること
この選挙は、静かな時期に行われているわけではありません。いま Cardano では、主要な組織 ― IOG、Cardano Foundation、Midnight Foundation、そして運営役の Intersect ― が連携し、ステーブルコインや他チェーンとの接続といった事業インフラを実際に前へ進めています。この協調の枠組みは「Pentad」と呼ばれてきました。
一方で、国庫(トレジャリー)からの裁量的な支出や、創業組織の権限をめぐっては緊張も生まれています。2026 年には予算をめぐる議論や、イベントの見直しもありました。そして 2026 年 7 月上旬には、創業組織のひとつである EMURGO が、自社のウォレット製品で起きた不正流出(約 1,600 万 ADA)への対応に専念するため、Pentad からの離脱を表明しました。協調の枠組みは、実質的に IOG・Cardano Foundation・Midnight Foundation・Intersect という構成へと移っています。
憲法委員会は、こうした支出の是非そのものを決める場ではありません。ただ、“厳格に過ぎる委員会が承認済みの案件を止める”ことも、“抑制的な委員会が事業を前に進める”こともあり得ます。だからこそ、誰が委員を務めるかが効いてくるのです。
SIPO の考え方 ― 「協調」と「規律」のバランス
いまの Cardano に必要なのは、分散化だけではなく、大きな組織が協調して事業を加速させることと、それを憲法的にきちんとチェックする規律の両立だ、というのが SIPO の見立てです。
そこで SIPO は、事業を前に進める協調的な委員を 3 名、そして独立した規律の担い手を 1 名、という組み合わせで 4 票を投じました。加速だけに振り切るのでも、抑制だけに寄せるのでもなく、その均衡そのものを一票で表現した形です。
SIPO が投じた 4 名
- Marek Mahut(deliberative.cc) ― Blockfrost をはじめ、長年にわたり Cardano の基盤インフラを築いてきた技術者。決定の正統性を「結果だけでなく、そこに至るプロセス」に置く姿勢を評価しました。
- Leandros BSP ― 独立系のビルダー兼 SPO。分散化と健全な統治を重視する立場で、今回のスレートにおける「規律」の担い手です。
- Cardano Curia ― 2025 年末の緊急選挙で委員会の定足数を回復させた現職。すべての投票について、その理由をオンチェーンで公開しており、運営の継続性と手続きの透明性を評価しました。
- Philip DiSarro ― スマートコントラクト開発の第一人者で、現職の委員。委員会は権限を「拡張」するのではなく、憲法を「解釈」する範囲にとどめるべきだという、抑制的な立場を掲げています。
なお、委員会がどこまで踏み込むべきか ― 国庫支出の歯止めとして積極的に働くべきか、それとも抑制的であるべきか ― については、コミュニティの中でも意見が分かれています。これは Cardano の統治が成熟していく過程で、正面から向き合うべき本質的な論点だと考えています。
この投票は、誰でも検証できる
SIPO の投票は Hydra の投票基盤に記録され、締切後の最終集計に自分の票が正しく含まれているかを、署名済みの記録によって独立に検証できます。透明な統治参加のひとつの形として、SIPO は自らの投票内容を公開します。
憲法委員会は、派手な機関ではありません。けれども、Cardano が制度として成熟していくうえで、静かに、しかし確実に効いてくる土台です。結果は締切後に確定します。SIPO はこれからも、統治の現場で起きていることを、SPO の視点で分かりやすくお伝えしていきます。
参考(一次ソース)
- Cardano 憲法委員会 選挙2026(投票ページ):intersect.ekklesia.vote
- 立候補者一覧(Intersect):intersectmbo.org
