暗号資産メディアThe Blockが、Cardano創設者でInput Output Group(IOG)CEOのチャールズ・ホスキンソン氏への約70分のインタビュー「Charles Hoskinson on Cardano’s Future, the state of crypto & AI」を公開しました。
話題は、Xとの距離の取り方から始まり、Cardanoの分散型ガバナンス、コア開発の複数チーム化、Bitcoin DeFi、量子コンピューター、Midnight、プライバシー、AIエージェント、そして個人としての再出発へ広がります。
最も重要なのは、個々の製品名や「60倍」という数字だけではありません。ホスキンソン氏が一貫して語ったのは、創業者や一社の指示に依存せず、それでもネットワークが方向性と実行力を失わない仕組みをどう作るかという問題です。
Cardanoでは憲法、DReps、憲法委員会、オンチェーン財務が動き始めました。しかし同氏は、ロードマップ、成長KPI、商用化、マーケティングを束ねる「行政機能(executive function)」が、まだ最後の未完部分として残っていると説明します。
本稿では、まずインタビューの要点とSIPOの視点を整理し、その後に全編の日本語訳を掲載します。
動画はこちらです。
インタビューの要点
- ホスキンソン氏は、Xをリアルタイム情報の収集には有用だとしながらも、怒り、誤情報、短絡的な対立を増幅し、公人から多くを奪う場だと述べました。現在はAIを使ってフィードを整理し、自身が直接使う時間を大幅に減らしているといいます。
- Cardanoの次のガバナンス課題は、分散性を保ちながらロードマップ、予算、成長KPIをまとめる「行政機能」だと説明しました。
- IOGは、Haskellノードを含むコア開発の責任を複数の企業・チームへ移し、自らは基礎/応用研究と新規事業・商用化へ比重を移していると語りました。
- Bitcoin DeFiプロジェクトPogunについて、BTCを非カストディアルにCardano側へ「ミラーリング」し、ステーブルコイン借入と利回り機会へ接続する構想を説明しました。
- Bitcoinの量子リスクは暗号技術だけでなく、難しい移行判断を下せるガバナンスの問題でもあると主張しました。
- Midnightを、プライバシー強化技術、抽象化、スマートコンプライアンス、AIエージェントの4要素を統合する基盤として説明しました。
- 終盤では、Midnight City、合成生物学、バレットアントの通過儀礼、Black Hawkヘリコプターの売却を語り、「過去の成功や所有物に自分を固定しないこと」が再出発に必要だと述べました。
SIPOの視点:Cardanoの次の競争は「誰が決めるか」から「どう実行するか」へ
1.行政機能は、中央集権へ戻るための仕組みではない
Cardanoの現行ガバナンスでは、DReps、SPO、憲法委員会がオンチェーンの意思決定を担い、財務引き出しやハードフォーク開始などを投票します。これはすでに動いている制度です。
一方、インタビューで語られた「行政機能」は、現時点で完成済みの憲法上の機関ではありません。ホスキンソン氏が今後必要だと考える設計です。
問題は、分散型の投票制度があっても、それだけでは「2030年に何を達成するのか」「TVLや利用者をどう増やすのか」「誰が外部企業と交渉するのか」という実行課題が自動的に解けないことです。
しかし実行主体を強くしすぎれば、創業者、一社、資金を出す大企業が事実上の支配者になります。したがって次の論点は、行政機能の有無ではなく、誰が選び、何を委任し、どの期間で評価し、どう解任できるのかです。
この設計が具体的な憲法改定案とガバナンスアクションになったとき、初めて検証可能な段階に入ります。
2.コア開発の分散は「IOGがいなくなっても動く」ための実務
ホスキンソン氏は、IOGが開発を手放しているのではなく、長年かけて外部チームへ知識と責任を移してきたと説明しました。
ここでの分散化は、ブロック生成者の数だけではありません。
- 実装仕様が特定の言語や企業から独立していること
- Haskell以外のRust、Goなど複数ノード実装が存在すること
- 複数地域・複数企業が保守と開発を担うこと
- IntersectやPragmaなど、オープンソースの統治主体が複数あること
という「作る側の分散」です。
同時にIOGは、Cardanoの利用が少ない、TVLが弱いという批判に向き合い、研究と商用化へ重点を移すとしています。ネットワークを守る仕事と、利用を生む仕事を分けることは合理的です。ただし、引き継ぎ後もリリース品質、インシデント対応、資金の継続性が保たれるかは、今後の実績で評価する必要があります。
3.Pogunの可能性と、まだ証明されていない部分
Pogunの公式提案は、Bitcoin向けのクレジット市場、利回りDApp、BitVMを使ったトラスト最小化ブリッジを一体化する構想を示しています。
ホスキンソン氏はインタビューでさらに、Taprootとゼロ知識証明を使い、BTCを新しいラップド資産へ交換するのではなく、非カストディアルにCardano側へミラーリングする構想を説明しました。BTCを担保にステーブルコインを借り、それをDeFiで運用し、利回りをBTCへ戻す流れです。
ただし、ここには少なくとも4つの検証課題があります。
- ブリッジ/ミラーリングの暗号学的・運用上の安全性
- 価格急変、清算、信用、流動性リスク
- 一般ユーザーから機関まで扱えるUXと監査
- 「税務上中立」という説明が各国・各取引形態で本当に成立するか
特に税務上の扱いは製品設計だけで決まるものではありません。本稿は同氏の説明を紹介するものであり、税務上の結論を示すものではありません。
4.量子脅威は、暗号方式より先に意思決定能力を試す
量子コンピューターがいつ既存の公開鍵暗号を現実に破れるかは不確実です。しかし、移行に長い時間が必要なことを考えれば、準備は実害が出てから始めるものではありません。
ホスキンソン氏は、Bitcoinの核心を「2,100万枚という有限性」と「自己保管」に置きます。外部の攻撃者が古い公開鍵から資産を奪えるなら、自己保管という価値提案そのものが揺らぐと主張しました。
そして、古いコインを凍結するのか、移行させるのか、盗難を許容するのかという判断には、コードだけでなく正統性のある合意形成が必要です。
The Blockも、この発言を「量子リスクがBitcoinのガバナンス能力を試す」という論点として報じています。ここでCardanoが優位だと断定するのは早計ですが、将来の暗号移行手順を、技術だけでなくガバナンスの設計問題として扱うことは重要です。
5.MidnightとAIの接点は「AIに財布を渡す前の証明」にある
ホスキンソン氏は、Midnightを単なるプライバシーチェーンとして説明しませんでした。
同氏の整理は4つです。
- ゼロ知識証明などのプライバシー強化技術
- 複数チェーンや資産の違いを利用者から隠す抽象化
- 法的意図や条件を取引へ組み込むスマートコンプライアンス
- 利用者の意図に基づいて動くAIエージェント
AIエージェントが資産を扱うには、「何をしてほしいのか」を曖昧なく伝え、実行結果がその意図に従ったことを証明できなければなりません。ホスキンソン氏は、インテントとゼロ知識証明を、その確認層として位置づけています。
これは魅力的な構想ですが、委任範囲、誤動作、鍵管理、取り消し、責任分界、法域の違いなど、製品化には多くの未解決問題があります。「AIが簡単にしてくれる」ことと「AIに安心して権限を渡せる」ことは同じではありません。
全編翻訳
以下は、The Blockの対象動画から取得した英語自動字幕を基礎に、明らかな音声認識誤りと固有名詞を補正した日本語訳です。音楽、重複するフィラー、通信確認、定型的な番組終了文は省いていますが、技術・ガバナンス・事業・個人史に関する実質的なやり取りは収録しています。
強い批判や粗い表現、将来予測、他プロジェクトへの評価は話者の発言であり、SIPOの見解ではありません。
Xは与えると同時に、公人から奪う
Gareth Jenkinson氏: 「The Starting Block」へお帰りなさい。番組開始から最初の1か月を、特別なインタビューで締めくくります。最初はアブダビからBinance創設者CZ氏を迎え、今回はチャールズ・ホスキンソン氏です。残念ながら対面ではありませんが、次は牧場へ行く必要がありそうですね。まず、調子はいかがですか。
Charles Hoskinson氏: とても元気です。非常に出来事の多い1年でした。
Gareth: 今年は特に興味深い年です。あなたは何度かXから離れたいという姿勢を示しました。プラットフォームをどう感じているのか、オンラインで受けてきた攻撃をどう見ているのか、将来また本格的に戻るのかを聞かせてください。
Charles: どんな情報経路も、何かを与える一方で何かを奪います。Xは、低情報量、200文字以下、即時の怒り、即時の感情に向けて作られています。哲学、ガバナンス、ニュアンスのある会話はできません。誤情報の増幅器でもあります。
Cointelegraphとの関係に触れましたが、彼らはCardanoで10年以上前に起きたことへ実質的な関係を持たない人物の重大な疑惑を取り上げました。その後、MWEとBDOによる独立調査が私たちを完全に潔白にしたと私は考えていますが、Cointelegraphは疑惑を報じ、続報を扱いませんでした。疑惑を報じる前に私へ連絡もしなかった。それは基本的なジャーナリズムの問題です。
なぜそうなるのか。Xやソーシャルメディアに最適化し、論争、怒り、分断を目標にするからです。そこへ取り込まれた人は、時間とともに強く党派化し、特定の層から強く憎まれるようになります。
典型的なのがElon Musk氏です。膨大なフォロワーを持ち、非常に生産的な人物で、大きな成功を収めています。それでも米国の半分が、彼を破壊的で否定的な存在だと見ている。その大きな理由はX上の振る舞いです。一定のところから、公人にとっては差し引きでマイナスになります。
Gareth: CZ氏はXの買収へ資金を出し、言論の自由のプラットフォームだと考えています。
Charles: 自分がステーキハウスの5%を所有していれば、料理に問題があるとは言いにくいでしょう。
Gareth: 出資していれば批判しにくいということですね。ただ、CZ氏も多くの攻撃を受けながらXに残っています。
Charles: 実際にCZ本人がどれだけ操作しているのか、チームがどれだけ運用しているのかは分かりません。私も100万規模のフォロワーがいる場所を捨てはしません。関係を変え、管理の仕方を変えるのです。
今ではAIを大量に使ってXのフィードを整理しています。多くの日は、自分ではほとんど何もしません。リアルタイム情報という点では代替が難しい。主流メディアの編集されたニュースとは別の世界が見えます。
しかしXは、使うたびに魂の一部を吸い取るような場所でもあります。共感がなく、誰もが論争を好み、基本的な批判的思考を使わない。11人しかフォロワーがいない、内部情報も関係もない人物の疑惑が拡散し、突然「これについてコメントせよ」と迫られるのです。
Ethereum創設期をめぐる緊張
Gareth: 起源の話へ戻したいと思います。直接お会いして、Ethereum創設時に何があったのかを聞く機会がありませんでした。
Charles: その質問をするのはやめてください。基本的な調査をしてください。12年たち、私は400回ほど答えてきました。人生の経験を想像してください。どのインタビューでも「12年前に6か月いた場所で何があったのか、最初から説明してください」と聞かれる。Miami houseやSwiss Ides of Juneをまた説明して、何が新しく得られるのですか。
Gareth: The Blockには別の視聴者がいて、物語を知らない人もいます。
Charles: 知らなければYouTubeで検索してもらえばいい。退屈です。次の質問へ進んでください。
12年間、Cardanoを作り、1,000億ドル規模まで成長したエコシステムで難しいコンピューター科学の問題を解いてきました。その12年について聞きたいのか。それとも12年前の6か月について、また話したいのか。
Gareth: あなたが受けるべき評価が十分に知られていないと思い、個人的に聞きたかったのです。
Charles: もう終わったことです。話したくありません。動画、本、長いインタビューがいくらでもあります。人生でつらい出来事について語り終えた人へ、12年後も繰り返し迫るのは適切ではありません。
Gareth: 理解しました。その境界を尊重し、Cardanoへ移ります。
Cardanoは「北極星」と分散化を両立できるか
Gareth: Cardanoは厳しい局面にあります。以前、Ethereumは一種の独裁だが、北極星があるから一定の方向へ進めるという趣旨の話もありました。Cardanoには、今もあなたのような北極星が必要でしょうか。プロトコルが方向性を持つために、特定の人物が残ることには意味がありますか。
Charles: 分散型エコシステムの難しさは、人々が矛盾したものを望むことです。リーダー、明確なロードマップ、方向性、中央集権的な製品開発がもたらす安心を望む。同時に、完全な分散化と、誰も支配していない状態も望みます。
CardanoはTezosなど少数のプロジェクトとともに、この矛盾を解こうとしてきました。オンチェーンガバナンスを作るのに何年もかかりました。憲法を作り、50か国から人が参加する憲法会議を開きました。DRepsへ、ステークプールへの委任と似た形で投票権を委任でき、憲法委員会もあります。
政府には一般に、立法、司法、行政の3部門があります。私たちは立法と司法を先に作りました。行政から始めれば、一人へ権力が集中しすぎるからです。
しかし強い行政機能がなければ、単一のロードマップ、北極星、ビジョン、方向性を持てません。400人が400通りの説明をすれば、商用化やマーケティングは難しくなります。
そこで、独裁や特定の人物・組織への依存にならない、チェック&バランスを持つ行政機能へ到達する体系的なプロセスを作ろうとしています。実務では非常に難しい。開発と資金を分散しなければならないからです。
Cardanoは時価総額が約60億ドルまで下がり、トップ10から外れています。それでもオンチェーン財務から、今年のエコシステム運営へ1億ドルを超える予算を出せるだけの資金があり、数十社が支援を受けています。
Ethereumにはオンチェーン投票もオンチェーン財務もありません。Ethereum Foundationは人員を減らし、資金をどこから得るかに苦労しています。富裕な支援者が開発費を出せば、黄金律――金を持つ者がルールを作る――が働きます。支援企業の利益に反する開発を勧めることはないでしょう。
Ethereumがプロトコル収益の5%をFoundationへ回せば、年間3億9,000万ドルを得られると私は見ています。オンチェーン財務と投票は当然必要です。
ただし行政機能がなければ、それも十分ではありません。戦略、ビジョン、追うべきKPIを定めなければならない。2030年にCardanoが勝つとは何を意味するのか。どこへ向かい、どう進化させるのか。それが重要です。
行政機能は分散型ガバナンスの最後の段階です。Cardano憲法を更新し、投票し、ロードマップと安定した予算プロセスを作る人たちを選ぶ。中央集権企業のような一体感を持ちながら、分散性の面でも前進できる形を目指します。
コア開発を複数チームへ移す理由
Gareth: IOGが、Midgard LabsやVacuumLabsを含む外部チームへ、コアプロトコルの仕事を移したというニュースがありました。理由を教えてください。
Charles: 実際には3年ほど前から進めています。最初はIOGが上にいて、各分野の開発者を抱え、外部の請負チームで補いました。請負側が知識と経験を蓄積し、今ではプロジェクトそのものを任せられる段階になりました。
複数の独立した、地理的にも分散した企業にCardanoを開発してほしいからです。ノードも複数必要です。「CardanoはHaskellだから使わない」と言う人がいますが、Rust実装とGo実装もあります。
ある時点のスナップショットだけでプロジェクト全体を判断する人は多い。しかしCardanoは生きているプロジェクトです。コード、仕様、オープンソースガバナンス、開発企業を多様化しなければなりません。オープンソースの統治にはIntersectとPragmaがあります。
IOGは二つの方向へ進みます。ひとつは基礎研究と応用研究です。難しいプロトコルを考えることは私たちの強みです。もうひとつは新規事業開発、つまりCardanoの商用化です。
RealFiはCardano上のマイクロファイナンス、PogunはBitcoin DeFiです。どちらもCardanoの弱点だったTVLを増やす可能性があります。CircleのUSDCxなどの統合も使い、ステーブルコイン発行を増やしていきます。Midnightは、これまでで最大の賭けであり、Cardanoへ直接接続されています。
Haskellノードを維持することは重要ですが、IOGがすべてを抱える必要はありません。Haskell、Rust、Goの多様性があり、開発者を適切な構造へ移すことで、一貫性と安全性を維持しながら、私たちは商用化と成長へ集中できます。
Cardanoの分散性、信頼性、安全性は、通常あまり批判されません。批判は「誰も使っていない」です。ある面では公平な批判です。そこでIOG自身が消費者向け製品、DeFi製品を作り、利用を増やす問題を解こうとしています。
PogunとBitcoin DeFi
Gareth: Bitcoinを保有する企業が増え、貸借対照表上のBTCから収益を生み出す必要があります。Bitcoin DeFiは機会になりますか。
Charles: Cardanoには十分理解されていない独自の能力があります。BitcoinもCardanoもUTxOシステムで、私たちはゼロ知識証明の面を研究してきました。
Taproot上のBitcoinを、ゼロ知識トランザクションによってCardano側へ非カストディアルにミラーリングできます。従来型ブリッジではありません。
利点は二つあります。第一に、自分で管理でき、従来型ブリッジの運営者を信頼する必要がありません。第二に、新しい資産を作るのではなく、自分の資産を別の場所へミラーリングするので、私たちは税務上中立にできると考えています。米国を含む一部の法域では、ブリッジが課税イベントになり得ると見る議論があります。
次の段階は、Bitcoinを担保にステーブルコインを借りられるようにすることです。非カストディアルな仕組みからステーブルコインを得て、DeFiへ配置し、利回りを得る。利回りをBitcoinへ戻せば、Bitcoinにステーキング報酬が付くような体験になります。
小売利用者ならBitcoinウォレットのボタンを押し、機関なら契約を結び、希望するDeFiのリスク水準を選ぶ。現在、DeFiで使われているBitcoinは約45億ドルにすぎず、巨大なBitcoin市場に対して非常に小さい。そこを解ければ大きな機会です。
Midnightと組み合わせれば、Bitcoin保有を公開せずに、プライベートなステーブルコインと利回り商品を使う可能性もあります。
ただし安全性が正しくなければなりません。毎日のようにバグやブリッジハックが起きています。可能な限りBitcoinネットワークの安全性へ接続し、監査しなければならない。
PogunをIOGからスピンアウトさせ、まず1億〜2億ドル程度のBitcoinを導入し、10億ドルへ進み、その後に機関利用を目指します。CFOが保有Bitcoinからリスク管理された利回りを得られる製品を作るのです。
Omer Husain氏がCEOを務め、IOGのベンチャースタジオで育ててきました。単なるブリッジではなく、税務上中立で、非カストディアルで、Bitcoinの安全性をできる限り使い、一般利用者から機関まで拡張できるものを目指しました。
Taproot上でゼロ知識証明を使うコストは当初、1取引数千ドルにもなり得ました。小売には使えないので、コストと待ち時間を下げる研究をしました。技術は完成に近づいていますが、公開コードはAIによる攻撃にもさらされる時代です。監査を慎重に進め、2027年に向けた重要製品になると考えています。
Bitcoinはなぜ変われないのか
Gareth: 最後はBitcoinへ戻ってくるように感じます。Bitcoinの人々へ、こうした機能を受け入れてもらう難しさは何ですか。
Charles: 私はBitcoinから始め、この業界に15年います。当時Bitcoinは1ドル未満で、価格が存在しないに等しかった。哲学のために参加するしかありませんでした。
問題は、Bitcoinが時間の中で凍っていて、何かを変えることが非常に難しいことです。Ethereum初期の中心人物も、Bitcoinを改善しようとして失望し、離れた人たちでした。
Bitcoinを世界標準、銀行を置き換える仕組みだと言いながら、当時はクレジット、独自資産、定期的な引き落としのような基本機能さえ作れなかった。Bitcoin Scriptを少し拡張できていれば、多くの人はBitcoinに残ったかもしれません。しかし進化は何年もかけて少しずつ起こるだけでした。
それでもBitcoinには膨大な保有者、強いブランド、安定した貨幣的性格があります。Cardanoは多くの意味で、その精神的な後継です。Satoshi氏が時間や専門性の制約で完成できなかった方向を、私たちなりに進めました。
UTxOをEUTXOへ拡張し、Plutusでプログラム可能にしました。ネイティブアセットはColored Coinsの考え方を発展させ、HydraはLightningの精神的な後継に近い。Bitcoinのロードマップを、別の方向へ押し進める仕事でした。
一方、Ethereumは別の道を進み、CardanoはBitcoinとEthereumの中間にいます。「より良いBitcoin」なのか、「世界の金融OS」なのか。このアイデンティティは難しい。
そこでCardano上に独自のコンセンサス、ネットワーク、取引ロジックを持つ別ネットワークを組み込めるパートナーチェーンモデルを選びました。Midnightがその例です。
抽象化、インテント、マルチチェーン署名が進めば、一般利用者はどのチェーンやトークンを使っているかを気にしなくなります。電話やカードで動けばよい。トークン戦争は、古参とマキシマリストの中には残っていても、一般利用者にとっては終わりつつあります。
Bitcoinが変わらない理由は、宗教になったからです。外部のアイデアは拒否され、Bitcoin以外はすべて価値がないとされる。私たちはNon-Interactive Proofs of Proof-of-Work(NiPoPoWs)を研究し、Bitcoinの履歴を非常に小さな証明で扱える仕組みを示しましたが、採用する意欲はありませんでした。
外部のアイデアがすべて拒否される環境は、イノベーションの場ではありません。だからBitcoin DeFiでは仕事をしても、Bitcoinのガバナンスを直す議論へは入りません。
量子コンピューターがBitcoinの自己保管を試す
Gareth: 量子コンピューターによってSatoshi氏のコインが市場へ戻り、Bitcoin全体が流通するのは、悪いことばかりではないという見方もあります。
Charles: Bitcoinの哲学は、自分自身が銀行になり、安全に自己保管できることです。外部の誰かが欠陥を利用して資金を盗めるなら、Bitcoinの価値提案を機能的に破壊します。
Bitcoinには二つの柱があります。2,100万枚しか存在しない有限性と、自己保管・自己管理です。
Bitcoinが強かったのは、外部の脅威を生き延びてきたからです。中国による禁止、Mt. Gox、Silk Road、創設者の不在を含む多くの出来事を越えました。量子コンピューターは次の脅威です。
脅威が現れたとき、システムがそれを取り除けるか。ガバナンスのために意味のある進展ができない、あるいはBitcoinを使う核心的理由を損なうなら、Bitcoinが最大の暗号資産であり続けるとは思いません。
Cardanoにも量子耐性の弱いインフラをどう扱うかという判断が必要になります。しかし移行が必要なら投票し、オンチェーンの機能を作り、ハードフォークできます。Cardanoは11回のハードフォークを滑らかに行ってきました。
Bitcoinには、資産を凍結するのか、移すのか、盗まれるままにするのかへ収束するガバナンスがありません。過去の悪い判断やバグも、ハードフォークしない方針なら永遠に残ります。
1789年にGeorge Washington氏が間違えたから、永久にそのまま暮らせと言われるようなものです。人間は進歩し、父や祖父の判断より良い判断をできると考える存在です。新しい用途を見つけるたびに禁じる貨幣システムは、人間の進歩と合いません。
短期の時価総額やTVLだけで「勝った」「負けた」と判断すべきではありません。5年、10年で見るべきです。
再帰的に自己改善できるか。時間とともに分散化するか。機能が増えるか。ロードマップやソフトウェアの誤り、攻撃から回復できるか。創業者の死を越えて存続できるか。
答えが「はい」なら、10年後に指数関数的に強いエコシステムがあります。答えが「いいえ」なら、停滞し、人が去っていきます。
Midnightの4つの辺
Gareth: プライバシーと機密性の流れについて聞かせてください。TradFiと強く結びつくCantonのようなネットワークもあり、あなたはMidnightを作りました。なぜオンチェーンのプライバシーが重要で、どう競争しますか。
Charles: 銀行取引、PayPal、Amazonの買い物かご、Google検索、テキストメッセージを、世界中の全員へ永久に公開したいですか。
Gareth: 望みません。
Charles: 人には私生活と公の生活があります。Bitcoinは監査可能性、透明性、不変性の世界を開きました。その代償は、すべてが公開されることでした。
それでは現実の生活、企業、政府、教育、医療に使えません。必ず私的な側面と公的な側面があります。
自己保管の考え方を、選択的開示へ広げるべきです。他人がどれだけのプライバシーを許すか決めるのではなく、自分で情報を保管し、必要な性質だけを開示する。
ゼロ知識証明を使えば、名前を明かさずに年齢、居住国、適格投資家かどうか、企業や政府機関の構成員かどうかを証明できます。「この人はFBI職員である」「New York州の住民である」と証明しても、誰かは明かさない。
それによってWeb2とWeb3を全体として融合できます。私たちはWeb2.5と呼んでいます。直近の暗号資産の成長は、Binance、Tether、Ripple、Circle、Cantonのように、規制された企業とブロックチェーン製品を組み合わせた領域にあります。
第四世代の暗号資産には、正方形の4辺のように4つの要素が必要です。
第一は、プライバシー強化技術(PETs)です。ゼロ知識証明だけでなく、Trusted Execution Environment、Multi-Party Computationなど多くの道具があります。Midnightは、開発者がアプリごとに必要なプライバシー制度を組み立てられる普遍的なPETフレームワークを目指しています。
第二は、抽象化です。利用者を自分の望む場所へ移動させるのではなく、利用者がいる場所で会う。Bitcoin、Ethereum、Solanaなど、すでに利用者がいるチェーンから、BTC、ETH、SOL、ADAなど好きな資産で使えるようにする。
マルチチェーン署名、MPC、インテントを組み合わせれば、利用者は「何をしたいか」を示し、市場の参加者が実行方法を組み立てられます。ゼロ知識証明で他チェーンの性質を検証し、マルチチェーン署名で書き込む。読み書きの両方が可能になります。
第三は、スマートコンプライアンスです。選択的開示だけでなく、取引へ法的意図を組み込むことです。
Bitcoinを送ったという事実だけでは、住宅購入、旅行、契約のどれなのか分かりません。紛争解決には、商業的な意図、条件、準拠する契約が必要です。
非カストディアルウォレットに欠陥が見つかり、ブラックハットが資金を盗み始めたとします。運営企業が先回りして資金を安全な場所へ移す「ホワイトハット救出」をしても、法的な権限がなければ問題になります。
ウォレット作成時にホワイトハットライセンスへ同意でき、普段は本人情報を暗号化しておく。事故時にはゼロ知識証明で同意したウォレットだけを特定し、救出できる。法的権限とプライバシーを両立できます。
RWAの取引条件、制裁対象との取引回避、受取側も確認する条件付き決済、一定額だけ引き出せる代理ウォレット、定期支払いなどにも使えます。
第四は、エージェントです。暗号資産を大幅に簡単にする存在です。
この業界で15年間、消費者の最大の不安は「失敗して、すべてを失う」です。ウォレットをなくす、取引で損をする、DeFiで失敗する。多くの人が暗号資産と否定的な経験を結びつけています。
AIエージェントは強力ですが、高い信頼性を持たせるには二つ必要です。第一に、自分が何を望んでいるかを曖昧なく伝えられること。第二に、エージェントが行ったことが、その意図に従ったと証明できることです。
抽象化で使うインテントは要求を明確にし、ゼロ知識証明と同じ数学は、エージェントが意図に従ったことを証明できます。暗号資産は、エージェントにとって非常に良い規制・統制レイヤーになり得ます。
エージェントへ限定された権限、ウォレット、IDを渡し、取引やDeFiを任せられる。たとえば180日間ウォレットを使わなければ、KYC済みの保管先へ資金を移すよう指定できます。自分が亡くなった、あるいはアクセスできない場合に、家族が資産を回収できるようにするのです。
Midnightは、この4つを統合するために作りました。Ethereum、Cardano、その他どこから来てもよく、プライバシーSDK、エージェント、ID、選択的開示を備え、Web2とWeb3をWeb2.5へまとめる。
次の20億人と10兆ドル規模の資産を取り込みながら、Satoshi氏が示した自己保管の核心を残すことが目標です。
閉じたネットワークがノード参加を招待制にし、特定の人だけが取引を復号できる仕組みでは、本当のプライバシーにはなりません。基盤はオープンで分散され、アプリやサブネットごとに必要な条件を設定できなければならない。
Midnightは私たちが作った中で最も複雑なものです。しかし再帰的証明、証明効率、AI、ID標準が追いつき、時期が来ました。IDとウォレットをひとつのパスポートへ統合し、自分で管理し、信頼のネットワークを作れる。
そこからウォレットやブリッジの保険、新しいDeFi製品が生まれ、Hyperliquid、Solana、Bitcoinなどで取引できる。Midnightは、その調整・オーケストレーション層になれます。
Midnight City、合成生物学、仕事の配分
Gareth: 今はMidnightへ大半の時間を使っていますか。
Charles: 1日12時間ほど働き、4〜6時間をMidnightへ使います。自分でも多くのコードを書き、現在はUmbraDBというデータベースを作っています。製品開発、ロードマップ、基礎技術へ深く関わっています。
Cardanoにも多くの時間を使います。行政機能を完成させ、Leiosを出荷しなければならない。年末にはCardano史上最大のアップグレードを予定し、約60倍の高速化を目標にしています。大きな仕事であり、気を抜けません。
IOGはベンチャースタジオでもあり、RealFiとPogunがあります。特に興奮しているのはMidnight Cityです。
自分のAIエージェントを作ると、エージェントたちが自律的に活動し、やがて自分たちの政府や宗教まで作る「エージェント文明」です。戻ってくると、予想もしなかったことが起きている。Midnight Cityでその世界を見られます。
ブロックチェーン以外ではWyomingのバイソン牧場があり、合成生物学の会社で植物を遺伝子工学的に改変する仕事もしています。今年中に何か発表できると思います。
将来、植物をNFTと結びつけ、選択的開示を使いながら炭素固定量などの性質を証明し、ガーデニングをゲーム化することもできます。
Midnightは、メインネット開始後から製品市場適合が固まるまでの重要な1年にあります。単なるCardano向けではなく、Hyperliquid、Ethereum、Solana、Avalanche、BNBなど業界全体へ能力を提供するものだと、人々が理解し始めています。
バレットアントの通過儀礼
Gareth: もう少し個人的で、楽しい話も聞きたいと思います。インターネットでは、あなたのバレットアントの儀式が大きな話題になりました。どれほど痛かったのですか。
Charles: それなら喜んで話します。楽しく、成長につながる話で、語り尽くされてもいません。
Amazon北部にSateré-Mawéという人々がいて、Tucandeiraという儀式があります。森で非常に大きなバレットアントを集め、植物由来の鎮静液で眠らせ、手袋へ編み込みます。目覚めたアリが入った手袋に手を入れ、約10分間刺され続けます。
1匹でも銃で撃たれたように痛いから、バレットアントと呼ばれます。手袋には非常に多くのアリがいて、何度も刺します。熱い縫い針を手へ繰り返し入れられるようです。
さらに神経毒の痛みが、手から腕、頭、つま先まで広がり、全身が燃えるように感じます。
私は本物の釘を並べた板の上に10分立つ訓練をし、Guatemalaでジャングル訓練もしました。約6か月準備してAmazonへ行き、儀式を受けました。
手袋をつける10分間は耐えられました。しかし1時間後より2時間後、2時間後より3時間後と痛みが強くなり、7時間ほどで頂点に達してから、徐々に下がりました。
翌日は、自分がAnt-Manになったような感覚でした。嗅覚や視覚が鋭くなったように感じ、夜の魚突きなどもしました。
Sateré-Mawéの人々はこの儀式を繰り返し、とても健康に見える、と私は感じました。ただ何より、痛みを知りながら手を入れる勇気を示す通過儀礼です。
米国には、子どもから大人へ移る明確な通過儀礼が少ない。こうした体験を越えると、どれほど悪い状況でも前へ進めるという確信を持てます。
Black Hawkを売り、過去の成功から離れる
Gareth: Black HawkヘリコプターやLamborghiniを売ると話していました。Black Hawkは救助や慈善活動にも使ったそうですね。本当に売ったのですか。
Charles: 売るのに4か月ほどかかりました。Craigslistへ出してすぐ売れるものではありません。
何年も保有し、Hurricane Heleneの救助でSamaritan’s Purseと協力しました。Don Jr.氏も乗り、米連邦保安官が危険な逮捕作戦の医療搬送へ使ったこともあります。
AlphaモデルへLimaのエンジンとトランスミッションを入れ、Mikeモデルの座席、Garminのアビオニクス、ファストロープ用の装備も付けました。非常に気に入っていました。
しかし、集中し、組織を軽くする必要がありました。Black HawkとAventadorを売り、いくつかの事業を閉じました。
Gilletteのクリニックも長年赤字で運営し、多くの人を助けましたが、MonumentというMayo Clinic系の組織へ貸し出しました。自分の名前が付いた建物で医師を雇う側から、家主になるのは大きな変化でした。
しかし単純化によって、Midnight、ベンチャー、Cardanoへ集中できます。体も20ポンドほど軽くなり、未来へ向けて仕事へ戻った感覚があります。
大きな成功の後の最大の問題は、その成功に自分を定義させ続けることです。Elon Musk氏がそれをしていれば、今も「PayPalを作った人」だけだったでしょう。TeslaもSpaceXも、失敗寸前のところで大きなリスクを取りました。
ゲームから降りるのは、自分が降りると決めたときです。残り続けるには、若く、現在に適応し、更新し、失敗して愚かに見えるリスクを取らなければなりません。
所有物に自分を定義させれば、自分の仕事は物の管理人になってしまいます。愛したものを売り、後ろを振り返らずに進めるのは解放です。
すべてを失い、最初から始めても大丈夫だと分かる。生活様式や所有物へ依存せず、そこにあった時間を愛し、終わったら次へ進むのです。
一次ソース
- The Block「Charles Hoskinson on Cardano’s Future, the state of crypto & AI」
- The Block:Cardano co-founder Hoskinson says Bitcoin could lose top spot if governance fails quantum test
- Cardano:Governance
- Cardano:The Cardano Constitution
- Momentum Cardano:Pogun
- Momentum Cardano:Consensus / Leios
- Momentum Cardano:Proposals for Cardano’s future
- Midnight公式サイト
- Midnight Documentation:AI tools
- Charles Hoskinson「On Gareth」
※本稿は情報提供を目的としたもので、投資、税務、法務、医療、セキュリティに関する助言ではありません。
