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Cardano の k を 500 から 1000 へ、SPO ポール開始

2026-09-19SIPO

Cardano のプロトコルパラメータ stakePoolTargetNum(通称 k)を 500 から 1000 へ引き上げるべきかをプール運営者に問う Info Action が、9 月 17 日にオンチェーンへ提出されました。k はプールの飽和点を決める数値で、1000 になれば「満杯」とみなされる委任の量はいまのおよそ半分になります。

提案者は STR8 プールの Chris 氏です。今回はパラメータそのものを変える提案ではなく、先に SPO の支持を測り、十分な賛同が確認できれば別のパラメータ変更提案につなぐ、という二段構えになっています。飽和点は委任先を選ぶときの実務的な目安としても使われてきたので、投票の行方は運営者だけでなく、預けている側にも効いてきます。

■ k が決めているのは「満杯の位置」だけ

k は、報酬計算のうえで「飽和したプールが何個ある状態」を目標にするかを示す数値です。1 プールあたりの飽和点は、流通している ADA を k で割った値で決まります。提案書が基準にした時点では、k=500 のときの飽和点が流通量の 0.2%、およそ 7,500 万 ADA。k=1000 なら 0.1%、およそ 3,750 万 ADA です。

ここで押さえておきたいのは、飽和が効くのは報酬の上限であって、ブロックを作る資格ではないという点です。提案書も、飽和点を超えた預かりを持つプールがブロック生成者として選ばれ続けることを明記しています。超過分が増やさないのは、そのプールが受け取れる潜在報酬の最大値だけです。

エポックごとの報酬の総量も、k では変わりません。手数料と準備金からの放出でできた原資から、まず treasuryCut(tau・現行 0.20)の分がトレジャリーへ回り、残りがプールと、預けている人たちへ配られます。k を動かすというのは、配る総量ではなく、どの位置で「もう上限です」と線を引くかを動かすことにあたります。

■ 今回の投票は変更そのものではない

提出されたのは Info Action です。CIP-1694 では Info Action に 100% という形式上の閾値が置かれており、可決して自動的に何かが実行される種類の提案ではありません。投票は意思表示の集計として働きます。

提案書は、その集計をどう読むかを自分で定義しています。母数になるのは、明示的な棄権を除いた能動的な SPO 投票ステークです。そこに占める明示的な賛成票の割合が過半を超えたときにかぎり、k=1000 へ進む SPO の付託があるとみなす、という宣言になっています。しきい値は 50% 超です。

登録済みで投票しなかった分は、この計算では反対と同じ働きをする、とも書かれています。DRep も投票と理由の提出を招かれていますが、SPO の付託を判定する計算には入りません。

閾値に届かなかった場合についても、提案書は先回りしています。その結果は k=1000 への多数の支持が確認できなかったという意味にとどまり、ほかの中間的な数値への付託と読み替えてはならない、とされています。600 でも 750 でも、別の値にするなら同じ手順で改めて問い直すことになります。

■ 2023 年のポールと、どこが違うのか

プール運営者に k を問うのは初めてではありません。2023 年のオンチェーン SPO ポールでは k と minPoolCost の組み合わせが選択肢として示され、暫定結果で 797 プールの投票が報告されました。提案書が引いている集計は次のとおりです。左の数字がプールの数でみた割合、右が投票に参加した持ち分の量でみた割合になります。

  • k=1000 を含む選択肢 — 69.64%/約 41.1%
  • k=500 を含む選択肢 — 21.08%/約 44.2%
  • 棄権 — 0.63%/約 0.7%
  • 提示された選択肢のいずれでもない — 8.66%/約 13.9%

数で数えるか、量で数えるかで、答えが裏返っていました。しかも 2 つのパラメータが束ねられていたため、k だけを取り出した付託としては読めません。今回の Info Action が「k 単体で、CIP-1694 の標準的な集計方法で」と繰り返し断っているのは、この経験を踏まえた設計です。

提案書はもう一点、背景として CAP #10 を挙げています。プールの経済に関わるパラメータを変えるなら運営者の承認を要件にすべきだ、という憲法改正提案です。stakePoolTargetNum は現時点ではその要件の対象ではありません。それでも先に付託を取りにいくという選び方自体が、CAP #10 が示している方向に沿っています。

■ 賛成と反対が分かれる場所

提案書は、k=1000 が自動的にもたらすものと、もたらさないものを分けて並べています。もたらすのは、飽和点が半分になること、いまの上限と新しい上限のあいだにいるプールが報酬計算のうえで過飽和になること、そして a0(0.3)を据え置いたままプレッジの上乗せが最大になる地点に届くのに必要な ADA が半分になることです。

一方で、プールや独立した運営者が自動的に増えるわけではありません。取引所やカストディアンが新しいプール ID を登録することを妨げるものでもなく、動いた預け先が同じ運営グループの別プールに収まる可能性も明記されています。台帳はプールを記録しますが、どのプールが同じ主体の手にあるかを網羅的には開示しないためです。

利害が割れるのはこの先です。飽和点が下がれば、長い時間をかけて預かりを積み上げてきた独立プールが不利になるのではないか。運営者の収入は長期の運用に足りるままか。過飽和のまま置かれた人は、気づくまでのあいだ取りこぼしを負うのではないか。提案書はこれらを参加者の行動しだいで決まることとして、答えを出さずに投票者への問いのまま残しています。

■ 票がどこまで積まれるかを見る場所

投票は始まったばかりです。9 月 19 日 1 時 19 分(JST)の時点で、SPO 側の明示的な賛成は 2 票、明示的な反対は 0 票。割合でみると賛成が 0.02%、まだ投票していない分が 99.43% を占めています。提案書の宣言に照らせば、この未投票分は過半という基準に届かせない側に働きます。

期限はエポック 663 です。いま進行しているのがエポック 656 で、エポック 663 は日本時間の 10 月 22 日 6 時 44 分に始まります。確認する先は 2 つあります。ひとつは gov.tools の当該提案ページで、賛成の割合が 50% に向かって動くかどうか。もうひとつは、票に添えられる理由書です。提案書は反対の運営者に対して、計算上は不要でも理由を添えた明示的な NO を投じてほしいと呼びかけています。理由が集まるかどうかは、票数とは別に、次のパラメータ変更提案の中身を左右します。

そのうえで、投票権を持たない側にも確かめられることがあります。いま預けているプールが、3,750 万 ADA という新しい線のどちら側にいるか。それは結果が出るのを待たなくても、プール情報を見れば今日わかります。

■ ことば

  • stakePoolTargetNum(k / nOpt) — 報酬計算のうえで「飽和したプールが何個ある状態」を目標にするかを示すプロトコルパラメータ。Ouroboros のセキュリティ用パラメータ k とは別物で、提案書もその混同を避けるよう断っています。
  • 飽和点 — そのプールが最大の潜在報酬を計算するときに使える預かりの上限。流通 ADA を k で割った値で決まります。超えてもブロックを作る資格は残り、頭打ちになるのは報酬のほうだけです。
  • Info Action — CIP-1694 の提案種別のひとつで、可決してもチェーン上で何も実行されない意思表示のための投票。形式上の閾値が 100% に置かれているのは、実行可能な提案と役割を切り分けるためです。

一次ソース / 関連リンク