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Midnight の開発支援ツールが二本立てになりました——Kapa MCP と Midnight Expert

2026-08-07SIPO

Midnight の公式アカウントが 8 月 6 日、開発者向けの AI ツール 2 種——Kapa MCPMidnight Expert——を紹介しました。これまで提供されてきた Midnight MCP サーバーを引退させ、その役割を 2 つのツールに分割する、というのが変更の中身です。移行ガイド自体は公式ドキュメントブログに 6 月 25 日付で掲載されており、今回はそこに設定手順の動画を添えて、改めて開発者に周知した形になります。

一見すると開発ツールの入れ替えという地味な話ですが、これは「ZK(ゼロ知識証明)アプリを書ける人をどう増やすか」という、Midnight にとって出荷量を左右する問題への回答でもあります。プライバシーチェーンの普及は、技術そのものよりも「書ける開発者が何人いるか」で決まる局面に入っているためです。何がどう分かれたのか、Compact を書く人にとって何が変わるのかを順に見ていきます。

■ 一つのサーバーが、二つの役割に分かれた

これまでは Midnight MCP サーバーが 1 本あり、ドキュメントの検索も、コード生成や検証の補助も、そこにまとめて載っていました。今回の変更で、この 1 本が役割ごとに 2 つへ分割されます。

移行ガイドは冒頭でこう述べています。

既存の Midnight MCP サーバーは引退させます。2 つのツールがそれを置き換え、どちらも本日から利用できます。

分割の軸は「知識を引く」と「手を動かす」です。ドキュメントや仕様を調べて答えを返す部分が Kapa MCP に、実際にコードを書く・検証する・ローカル環境を動かす部分が Midnight Expert に移りました。旧サーバーについてガイドは「まもなく停止する」としており、両ツールは既に稼働しているため待つ理由はない、と移行を促しています。

■ Kapa MCP——どのエディタからでも、最新のドキュメントに接地する

Kapa MCP は、Midnight のナレッジベースを MCP(Model Context Protocol)経由で公開するサーバーです。参照元は公式ドキュメントに加えて、ledger・midnight.js・node といった中核リポジトリ、さらにホワイトペーパーなどの単体資料が選定されています。エディタを離れずに、最新のドキュメントに基づいた回答を得られる、というのが提供価値です。

実務上で効いてくるのは、クライアントを選ばないという点です。ガイドは「あらゆる MCP クライアントで動作する」とし、Claude Code のほか Cursor、Gemini / Antigravity CLI、GitHub Copilot、その他リモート MCP サーバーに対応するクライアントを挙げています。導入は HTTP トランスポートでエンドポイントを 1 つ登録するだけで、設定 JSON を直接書く方法も用意されています。

■ Midnight Expert——Claude Code の中で手を動かす側

もう一方の Midnight Expert は、Claude Code のプラグインマーケットプレイスとして提供されます。旧サーバーが持っていた生成・検証・ツールチェーン系の機能は、こちら側に移りました。プラグインとして動くため、機能はスキルとスラッシュコマンドの形で現れます。

公開リポジトリの README には、現時点の規模として 13 プラグイン / 87 のスキル・スラッシュコマンド / 17 のエージェント、参照ドキュメント約 37,700 行、サンプルコード約 21,800 行と記載されています。内訳は用途別に整理されており、Compact 契約の記述(compact-core / compact-examples / compact-cli-dev)、DApp フロントエンドの構築(midnight-dapp-dev)、テストと品質(midnight-cq / midnight-verify / midnight-fact-check)、ツールチェーンとインフラ(midnight-tooling / midnight-wallet / midnight-status-codes)、概念の学習(core-concepts)、そして診断系(midnight-expert / midnight-plugin-utils)という構成です。

個別に見ると、性格の違いがはっきりしています。midnight-verify は Compact をコンパイルして実行し、ZKIR を WASM チェッカーに通し、witness 実装を突き合わせる——つまり「主張が本当かを機械的に確かめる」ためのものです。midnight-status-codes は node・ledger・indexer・wallet・SDK・コンパイラ・proof server・DApp コネクタにまたがるエラーコードを一覧化して引けるようにしたもので、原因の分からないエラー番号に時間を溶かした経験がある人ほど、価値が分かる種類の道具でしょう。

導入前に確認しておくべき制約もあります。README は動作対象を macOS と Linux に限定しており、ネイティブの Windows 環境(PowerShell / CMD / Git Bash / Cygwin)は未検証・非サポートと明記されています。プラグインのフックやシェルスクリプトが POSIX 環境を前提にしているためで、Windows で使う場合は WSL(WSL2 推奨)の中に Node.js・Compact ツールチェーン・Claude Code・Midnight Expert をまとめて入れる必要があります。ライセンスは MIT です。

■ ZK 開発の参入障壁という文脈で読む

この 2 分割には、ZK 開発の裾野を広げるうえで理にかなった設計判断が含まれています。

知識の参照(Kapa)はクライアント非依存にして、どの開発環境の人でも入口に立てるようにする。一方で、コンパイルや検証といった実際に手を動かす部分は、それが可能な環境に寄せる。1 本のサーバーに全部を載せていた頃は、この二つが同じ制約を共有せざるを得ませんでした。分けたことで、間口の広さと機能の深さを別々に設計できるようになっています。

Compact のようなドメイン固有言語は、学習資料の絶対量が汎用言語に比べて桁違いに少なく、それ自体が参入障壁になります。ここに「エラーコードを引ける」「主張をコンパイルして検証できる」という道具が入ることの意味は小さくありません。ZK アプリの難しさは概念の理解だけでなく、書いたものが正しいかを確かめる手段が乏しいことにもあるためです。検証と事実確認に専用プラグインを 2 つ割いている構成は、その課題認識の表れと読めます。

■ ここから見ておきたいこと

注目したいのは 2 点です。1 つは旧 MCP サーバーの停止時期。ガイドは「まもなく」としか述べておらず、既存の設定で開発している人にとっては、移行の期限が実務的な論点になります。もう 1 つはプラグイン構成の推移です。6 月 25 日のガイドは「15 以上のプラグイン」と記していましたが、README の現在の記載は 13 で、統廃合が進んでいる可能性があります。この種のマーケットプレイスでは、規模そのものより更新が続いているかどうかが効いてきます。

Midnight は現在、プライバシー機能を実際に使うアプリケーションが積み上がるかどうかの局面にあります。開発者体験への投資は成果が出るまでに時間差がありますが、その差が縮まる場所を先に見ておく価値はあるはずです。


一次ソース / 関連リンク