Cardano EVMサイドチェーンはIOGが配信する完全分散型のスケーラビリティソリューション。その個性的な機能について詳しく紹介しています。
以下はIOGブログに掲載された記事「Introducing the Cardano EVM sidechain」を翻訳したものです。
Cardano EVMサイドチェーン
by Olga Hryniuk 2022年7月6日
Cardanoは成長しています。拡大しています。Vasilアップグレードは、CardnaoのさまざまなDAppおよびDeFi製品を効率的に開発および利用する機会をさらに広げます。
サイドチェーンとレイヤー2ソリューションは、Cardanoに構築するプロジェクトのスケーラビリティを拡大するためのカギとなります。本稿では、どのようなサイドチェーンが、相互関連するソリューションのエコシステムにどのように貢献するかについて説明します。また、Input Output Global, Inc.(IOG)が構築したEVMサイドチェーンの個性的な機能について詳しく紹介します。
相互運用性
以前のブログで、ブリッジ、サイドチェーン、AGIX ERC20コンバーターが、Cardanoの相互運用性をいかに強化するかについて説明しました。ここで言う相互運用性は、他の製品やシステムを理解して相互作用するための製品またはシステムの性能として定義されます。ブロックチェーンネットワークが相互運用可能である場合、あるネットワークで生成されたユーザーのデータや資産は、別のネットワーク間でも移動させることができます。
分散型エコシステムにおいて、相互運用性を考慮することは極めて重要です。ユーザーがデータの所有権を取り戻すツールを得れば、複数の相互接続されたネットワークにわたって他者と共有できるようにするためのインフラが必要となります。グローバル経済はユーザーのトークンが1つのブロックチェーンに閉じ込められないことを要求します。ブリッジプロトコルと組み合わせたサイドチェーンは、分散型デジタル経済における、より自由なデータの移動を可能にするソリューションです。
図1:多様なサイドチェーンの例
サイドチェーンファミリー
ブロックチェーンは単独では成功できません。単独のブロックチェーンでデジタルインフラ全体を改善することはできませんし、データや取り引き、バーチャルに他者と繋がる方法を革命的に変えることもできません。長期にわたり、多様性の高い開発者ネットワークがCardanoに参加できるような専用のサイドチェーンの、そして特定のユースケース用のアプリケーション開発をサポートするために必要なツールのニーズが存在しています。
IOGはCardanoのスケーラビリティ、相互運用性、プログラム可能性を高めるサイドチェーンの「ファミリー」を作成する予定です。エコシステムからも数多くの開発者がCardanoにより多くの機能を追加しようと、独自のサイドチェーンの構築に取り組んでいます。
Cardanoがマルチチェーンアーキテクチャをサポートするべく進化していくにつれ、開発者は次の方法でプラットフォームを活用できるようになります。
- Plutusを使用し、高保証でリソース効率に優れた環境でスマートコントラクトと分散型アプリケーションを作成する
- EVMサイドチェーンを使用し、CardanoでEVM対応のスマートコントラクトを開発、デプロイする(イーサリアムに一般的な高額のガス代が不要)
- EVMサイドチェーンのガバナンス機能を使用して、オンチェーンガバナンスと投票機能を最適化する分散型ガバナンスアプリケーションを作成する
Cardano EVMサイドチェーン
EVMサイドチェーンはIOGが構築、リリースする初のサイドチェーンです。目的は、CardanoをSolidity開発者に開放することです。EVMサイドチェーンにより、Solidity開発者コミュニティはプルーフオブワークブロックチェーンよりもはるかにエネルギー消費量の少ない、低料金かつ環境にやさしいプラットフォームでDAppを構築できるようになります。
仕組み
EVM(イーサリアム仮想マシン)はコンピューターによるスマートコントラクトの実行をサポートするためにイーサリアムが開発したソフトウェアです。すべてのフル・イーサリアムノードはEVMのインスタンスを実行して、チェーンに新しいブロックが追加されるごとにマシンステータスがどのように変化するかを定義します。EVMを使用して構築されたサイドチェーンは、スマートコントラクトのプロセスおよび実行のために、イーサリアム・ブロックチェーンと同等の機能を提供します。EVMサイドチェーンは、EVM本来のスクリプト機能を維持しながら、異なるコンセンサスプロトコルや台帳モデルなどの新機能の実装も可能です。
Cardano EVMサイドチェーンの主要機能
EVMサイドチェーンの主要機能は以下の通りです。
イーサリアムとの互換性
- ハードフォーク対応:EVMサイドチェーンはイーサリアム・ハードフォークとの互換性を維持します。これは、EVMサイドチェーンがイーサリアム、およびそのネットワークに構築された他のツールやアプリケーションとの相互運用性を保つために不可欠です。
- 開発者ツールの互換性:イーサリアムの開発者ツールは、資産のストレージ、台帳ステータスの読み取り、分析の監視など、幅広く使用されています。EVMサイドチェーンユーザーは、これらのツールにCardanoエコシステムからアクセスできるようになります。これで、Cardanoで構築を考えているSolidity開発者にとってのハードルが低くなります。
- Web3.jsウォレットとの互換性:Web3テクノロジーによって、ユーザーは自分のデータを完全にコントロールできます。すなわち、ユーザーの個人データを所有する第三機関の介入はありません。Web3ウォレットはDAppとの相互作用におけるユーザーの匿名性とデータ保護の確保に定評があります。
Ouroborosコンセンサスプロトコル
EVMサイドチェーンはイーサリアムのプルーフ・オブ・ワーク型コンセンサス・アルゴリズムをOBFT(Ouroboros Byzantine Fault Tolerance)コンセンサス・プロトコルに置き換えます。OBFTはビザンチンフォールトに対して耐性を持つOuroboros実装です。OBFTはフル・ネットワーク・スピードで良好なトランザクション処理と即時のトランザクション承認ならびに決算証明を提供します。
コンセンサスは通常固定数のバリデーター(ノード)に依存し、OBFTはノードが動的である可能性を想定しません。EVMサイドチェーンはこの初期OBFTプロトコルを拡大し、動的バリデーターセットを可能にしています。すなわち、ブロック生成ノードは、次のブロック生成ノードを選択するために使用される固定グループから動的に切り替えられるようになります。Cardano台帳は、ブロック生成ノードの選択を助ける信頼できる唯一の情報源として機能することによって、動的バリデーターセット機能を可能にします。
パーミッションレス・アプローチ
分散化はデジタル・トラスト経済の基礎を構成する要素です。ブロックチェーン・テクノロジーの透明性は不正を抑止します。真に分散化されたネットワークを構築するためには、ネットワークがパーミッションレスであることが不可欠です。パーミッションレスのブロックチェーンは、全員が中央集権的もしくは連合型の権威に頼ることなく、ネットワークの活動に参加する特権を付与します。EVMサイドチェーンはパーミッションレスなネットワークです。
セキュリティ
EVMサイドチェーンには、セキュリティを維持するために、以下のような複数の機能が搭載されています。
- ステータス観察:サイドチェーン・バリデーターノードを稼働させると、ノードはメインチェーンからADAのステーク委任分布を読み取ることができるようになります。
- バリデーター選択:バリデーターおよびバリデーター候補はステークプール・オペレーターからステーク委任分布に基づいて選出されます。
- ブロック生成:ブロック生成集団に選出されたバリデーターは、作業に対する報酬を受け取ります。
- 再選定プロセス:設定されたインターバルの後、ステークプール・オペレーターは、前のブロック生成集団に替わる新たなバリデーター集団を選出します。
ロードマップ
Cardano EVMサイドチェーンは反復的に開発されています。他の製品立ち上げと同様に、反復的アプローチとパフォーマンス査定はすべてが確実に意図したとおり機能するようにするために必要です。
最初のテストネット配信はEVMサイドチェーンの査定とテストの基礎を築き、続いてパッシブ・サイドチェーン、アクティブ・サイドチェーンが開始され、最終段階としてメインチェーンにデプロイされます。
図2:EVMサイドチェーンデプロイの各段階
Cardano EVMサイドチェーンについては、今後数か月間にさらに詳細情報をお伝えします。
その間、EVMサイドチェーンアルファテストネットへの初期アクセスをご希望の場合は、こちらのフォームからお申し込みください。EVMサイドチェーンの実演動画では、テストネットにデプロイされたスマートコントラクトを確認することができます。
本稿執筆にあたりご協力いただいたKathryn StacyとDominika Bukowskaの両氏に感謝します。