有償オープンソースモデル：オープンソースの持続可能性を支える新たなアプローチ
オープンソースとその課題
オープンソースソフトウェアは、かつては懐疑的に見られていたものの、現在ではソフトウェア開発のゴールドスタンダードとされている。その魅力には以下のような点が挙げられる。
- 無料で利用・改変可能：ライセンス費用が不要であり、誰もがソースコードを閲覧し、自由に改変できる。
- コミュニティでの評価：開発者がスキルを示し、履歴書に記載できる価値のある貢献が可能。
- 広範な普及：ほぼすべての重要なシステムでオープンソースのコンポーネントが活用されている。
- 高品質な開発：多くの開発者が関与することで、品質が向上しやすく、バグの発見も迅速に行われる。
しかし、オープンソースには長年解決されてこなかった問題も存在する。
- 管理されていない開発：悪意ある人物がプロジェクトに潜入し、重大な損害を与えるリスク。
- 保証のないサポート：重要なソフトウェアが少人数の開発者に依存し、十分な支援を受けられない場合がある。
- 存続の不確実性：開発者がプロジェクトを放棄する可能性がある。
- 品質のばらつき：コードの標準化やレビュー体制が不十分なケースが多い。
Intersectが提案する「有償オープンソースモデル」
Cardanoのエコシステムを支えるIntersectのChristian Taylor氏は、こうした課題を解決するためのアプローチとして「有償オープンソースモデル」を提案している。このモデルは、オープンソース開発を持続可能で安全なものにするための仕組みを提供する。
Tideliftの調査によると、有償のメンテナーは無償のメンテナーよりも、セキュリティやメンテナンス作業において大きな貢献をしていることが判明している。Intersectの有償オープンソースモデルでは、以下の要素を取り入れている。
- Code for Us イニシアチブ
- バグ修正や機能開発のための直接資金提供を可能にし、実際のユーザーニーズに対応。
- 機能開発向けのバグバウンティ制度に相当。
- メンテナーリテーナープログラム
- 主要な貢献者に長期的な財政支援を提供し、オープンソースライブラリの継続的な開発とセキュリティを確保。
- Cardanoの財務（トレジャリー）からの資金提供によって運営。
- OSO（オープンソースオフィス）およびOSC（オープンソース委員会）の提供サービス
- セキュリティ監査、コミュニティ管理、ガバナンスコンサルティングを通じて、プロジェクトのライフサイクルをサポート。
- メンバーの意見を反映しながら運営。
- インキュベーションプログラムと貢献者の成長支援
- 新しいプロジェクトや開発者をメンタリング、マイルストーン管理、コミュニティ支援によって育成。
- 品質管理や納期管理を徹底し、リスクを低減。
- ライフサイクルと予算の整合性
- Cardanoの分散型ガバナンスに資金申請やプロジェクト評価を統合し、透明性と説明責任を確保。
- 商業利用の促進、財務の安定化、長期的な持続可能性の確保。
Web3エコシステムへの適用と今後の展望
この有償オープンソースモデルは、誰もが自分の環境に合わせてカスタマイズし、適用できるように設計されている。特にWeb3エコシステムとの親和性が高く、持続可能なオープンソース開発を実現するための柔軟なソリューションとして推奨されている。
有償オープンソースモデルの詳細 については、Intersectの公式サイト を訪れ、詳細なPDF資料をダウンロードしてください。
以下はIntersect記事「The paid open source model」を公開したものです。
有償オープンソースモデル：全翻訳
2024年3月12日
オープンソースはコラボレーションによって成長し、Intersectの有償モデルはそれを持続可能にする。
オープンソースはかつて懐疑的に見られていたが、今やソフトウェア開発のゴールドスタンダードとなっている。その理由は以下の通りだ。
• 無料で利用できる。 これは単にライセンス費用がかからないという意味ではない。ユーザーは自由にコードを改変でき、誰もがソースコードを精査できる。
• コミュニティでの評価が得られる。 オープンソースへの貢献は、開発者が自らのスキルや貢献精神を示す手段となり、履歴書にもプラスになる。
• 広範な普及。 世界中のあらゆる重要なシステムは、少なくとも一部にオープンソースのコンポーネントを使用して構築されている。
• 高い品質。 世界中の何千人もの開発者が関与しているソフトウェアは、少数のチームが開発したものよりも高品質であることが多い。リーナスの法則：Linus’s law（「十分な数の目があれば、すべてのバグは浅い」）がその典型例である。
しかし、ソフトウェアの世界に「タダ飯」は存在しない。オープンソースには、従来解決が難しいとされてきた重大な問題がある。
• 管理されていない開発。 最近発覚したXZ Utils incidentの事件が示すように、悪意ある人物がプロジェクトに潜り込み、大きな被害をもたらすことがある。
• 保証されたサポートがない。 ある重要なソフトウェアが、少数の開発者の献身的な努力に依存している場合がある。例えば、Log4j incidentの問題や、Heartbleed vulnerability脆弱性のケースでは、開発者はたった1人（one full-time developer）で、年間わずか2,000ドルの寄付しか受けていなかった。
• 存続の不確実性。 これはサポートの保証とも関連しているが、プロジェクトの創設者が突然開発を放棄する可能性もある。
• 品質のばらつき。 多くのオープンソースプロジェクトは、コーディング標準を徹底できず、レビューが不十分なまま進められることがある。
これらの問題がすぐにすべてのオープンソースプロジェクトで解決されるわけではない。しかし、IntersectのChristian Taylor氏は、Cardanoを支えるコード、およびCardano上で動作するコード に対して解決策を提示している。それが 「有償オープンソースモデル：paid open source model,」 だ。このモデルは他のプロジェクトにも応用可能であり、より持続可能で安全なオープンソースのエコシステムを構築する希望となり得る。
有償オープンソースの導入方法
最近のTideliftの調査（Tidelift survey）によると、有償のメンテナーは無償のメンテナーに比べて セキュリティやメンテナンスに関する重要な作業をはるかに多く行っている ことが分かっている。Intersectでは、有償オープンソースを以下のように運営している。
Intersectのオープンソース委員会（OSC） は、Intersect MBOのメンバーによって選出されたボランティアのグループである。OSCは、オープンソースオフィス（OSO）の活動を監督し指示することで、開発の方向性を決定する重要な役割を担っている。この構造により、有償オープンソースモデルに強固なガバナンスが確立される。
このモデルの主要な要素は以下の通りである。
Code for Usイニシアチブ
• 機能開発やバグ修正への直接的な資金提供を可能にし、オープンソースプロジェクトを実際のユーザーニーズと一致させる。
• 機能開発のための「バグバウンティ」に相当する。
メンテナーリテーナープログラム
• 重要なオープンソースライブラリの継続的な開発とセキュリティを確保するため、主要な貢献者に長期的な財政支援を提供する。
• このプログラムは有償オープンソースモデルの中心であり、Cardanoのトレジャリー（財務）からの資金提供 により運営される。
OSOとOSCの提供サービス
• セキュリティ監査、コミュニティ管理、ガバナンスのコンサルティングなどを提供し、プロジェクトのライフサイクルを通じて支援する。
• これらのサービスは、メンバーの意見を収集しながら適用される。
インキュベーションプログラムと貢献者のステップアップ制度
• メンタリングや構造化されたマイルストーン、コミュニティとの関わりを通じて、新しいプロジェクトや貢献者を育成する。
• これにより、成果物の品質と納期を確保し、リスクを軽減し、開発者の品質基準を明確にする。
ライフサイクルと予算の整合性
• Cardanoの分散型ガバナンスプロセスに資金申請やプロジェクト評価を組み込み、透明性と説明責任を確保する。
• 商業利用の促進、トレジャリーの資金補充、長期的な持続可能性を実現する。
このビジネスモデルは、オープンソースの伝統に則り、誰でも自分のニーズに合わせてカスタマイズし、導入できる。特に Web3エコシステム全体での利用に適しており、持続可能なオープンソース開発のための柔軟で有効なソリューション となる。
さらに詳しく知るには
• Intersectの各委員会について は、Intersect knowledge base を参照してください。
• 有償オープンソースモデルの詳細 については、Intersectの公式サイト を訪れ、詳細なPDF資料をダウンロードしてください。
