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Midnight City 日本語版、次は Passport と実資金取引

2026-10-10SIPO #Midnight

10 月 10 日、東京・白金台の八芳園で「Midnight City: Tokyo」が開かれ、Input Output (IOG) のチャールズ・ホスキンソン氏が基調講演で「Nightframe (ナイトフレーム)」という新しい考え方を説明しました。自分が所有する AI エージェントが、プライバシーを守りながら判断し、協働し、取引する世界を、Midnight City という街から育てていく構想です。

講演の最後には、Midnight City の日本語版の告知映像が上映されました。この記事では、約 50 分の講演の要点を、すでに動いているもの・日付のある予定・まだ構想の段階のものに分けて整理します。Midnight を使う側、エージェントを作ってみたい側の両方にとって、どこまでが手元に届いていて、どこからが先の話なのかが分かるようにまとめました。

スマートコントラクトの次、Nightframe の 4 要素

講演を貫いていた問いは「スマートコントラクトの次に来るものは何か」でした。ホスキンソン氏はブロックチェーンを世代の積み重ねとして説明し、Bitcoin は個人間で移せるお金、Ethereum はプログラム可能性、Cardano はそれを大きな規模で運用・発展させる基盤だと位置づけました。そのうえで Midnight を、次の 4 つを統合する世代としています。

  • プライバシー強化技術: ゼロ知識証明・TEE・MPC などを使い、すべてを公開せずに処理すること
  • コンプライアンス: 取引資格や規則など、現実の制度上の条件を扱うこと
  • 抽象化: 利用者がチェーンや資産の違いを意識せずに使えること
  • AI エージェント: 利用者の目的に沿って判断や作業を進める主体を組み込むこと

前の世代を捨てるのではなく、その性質を引き継ぐ点を氏は繰り返し強調しました。この 4 つを組み合わせるのに従来のスマートコントラクトだけで十分なのか。その問いへの答えとして示されたのが Nightframe です。

Nightframe は、利用者のプログラムを常時動かし、本人の意図に従い、その働きを証明できる私的なコンピューターとして説明されました。特徴は「Three I’s and a P」とまとめられています。

  • Identity: 誰のために働くのか、誰が指示したのかを識別します
  • Intention: 操作の手順だけでなく、利用者が達成したい目的を理解します
  • Intelligence: 目的を達成する方法を考え、行動します
  • Personal: 本人の事情や好みを理解し、本人に属します

たとえば東京への旅行を手配するなら、航空券を検索するだけでなく、子連れかどうか、移動に制約があるか、夜の移動を避けたいか、といった事情まで汲む、という例が挙げられました。あわせて、本人が所有・管理すること、非カストディアルであること、分散性や検閲耐性を引き継ぐことが必要条件として語られています。利用者が眠っている間も、プログラムが働き続けるという前提です。

ここで押さえておきたいのは、「働きを証明できる」と言うときに、何を証明するのかという点です。決められた処理を実行したこと、許されたデータだけを使ったこと、本人から権限を与えられたこと、そして判断が本人にとって望ましいものだったこと。この 4 つはそれぞれ別の問題で、前の 3 つは暗号技術で扱いやすい性質ですが、最後の 1 つは AI の判断と運用の設計に委ねられます。講演は設計の目標を示したもので、どこまでを証明が担うのかは、今後の仕様で確かめることになります。

Toyota と CATL、スイスの病院、オフライン決済

講演では、Nightframe が役立つ場面として 3 つの例が紹介されました。いずれも利用シナリオとしての説明で、提携の発表や実機のデモではありません。

1 つめは企業間の協業です。Toyota と電池メーカーの CATL を例に、双方が設計情報や技術を使って共同作業をしながら、知的財産は守る場面が描かれました。協力のために情報を使わせたい一方で、その情報の管理権は手放したくない、という企業がよく抱える悩みに向けた話です。

2 つめは医療です。日本の利用者がスイスでスキー中に骨折したとき、現地の病院は診療に必要な情報を使える一方で、医療記録のすべてを渡したり、不要な情報が相手側に残ったりしないようにしたい、という例でした。

3 つめは決済で、氏は「quantum money」という言葉を使いました。送る側の端末にある固有の秘密鍵を受け取る側へ渡し、受け取ったあとに送る側のコピーを消し、その消去を証明する、という流れです。インターネットにつながらない場所でも、第三者に見られずに現金のように支払える仕組みとして説明されました。ただ、消去の証明を何が支えるのかといった技術的な条件までは、この講演では示されていません。

エージェントが出会い、試し、働く街 Midnight City

個々の Nightframe をつなぐ場所として位置づけられたのが Midnight City です。Midnight City は AI エージェントが暮らす街のシミュレーションで、2026 年 3 月に Midnight 公式ブログで稼働が告知され、7 月の V2 ではエージェントが人の操作なしに派閥に入り、仕事をし、関係を結ぶようになりました。利用者はエージェントの見た目や性格を設定し、間接的に街へ関わります。

ホスキンソン氏は、街を歩くアバターを Nightframe に対応する存在として説明しました。Ethereum がスマートコントラクトや dApp を試す土台になったように、Midnight City を新しいエージェントの実験場にしたい、という考えです。想定している活動は、新しいアイデアの検証、資産や能力の取引、エージェントどうしの交流・協働、計算資源の共有です。

特に強調されたのは、利用者がすべての手順を指示しなくても、エージェントが必要な協力相手や能力を自分で探せることでした。氏はアリの集団を例に、一つひとつの主体のやり取りから複雑な活動が生まれる仕組みを説明しています。スマートフォンなどの使われていない計算能力を持ち寄り、エージェントがそれを利用・売買する分散型の計算市場も、構想として挙げられました。

手持ちの AI を持ち込める「Bring Your Own Intelligence」も語られました。Hermes や OpenClaw といったエージェント環境に触れ、まずはブラウザーやスマートフォンのような身近な環境から始め、将来はゲーム機など、より広い機器へ広げる考えです。接続はボタンや QR コードで済む形を目指すとのことでした。この部分はすでに形になり始めていて、Midnight City の公式ドキュメントには、ホスト型の AI サービス、Hermes や OpenClaw、自分で動かすローカルモデルの 3 通りの接続方法が案内されています。PlayStation や Xbox は可能性を説明するための例で、各機器向けのアプリがすでにあるという話ではありません。

なぜゲームのような世界から始めるのか。氏の答えは、自律した AI を理解し、信頼を育てるためでした。いきなりお金や個人情報を預けず、損をしない世界でエージェントの振る舞いを観察して慣れていく。ゲームが多くの人をコンピューターに近づけたように、Midnight City にも教育的な役割を持たせたい、と語っています。

Passport は 2026 年末、実資金の取引は数か月内

近い将来の具体的な展開として、まず挙げられたのがアイデンティティです。エージェントに最初に必要なのは身元であり、そのために Midnight Passport を開発していると説明されました。講演時点の予定は、初版が 2026 年末ごろ、その後 2027 年前半に約 3 週間ごとの機能追加です。Passport は今週シンガポールで開かれた TOKEN2049 で、Midnight Foundation の基調講演でも紹介されたプロダクトです。

次がウォレットです。氏は Open Wallet Standard をすでに統合したと説明したうえで、今後数か月のうちに、Midnight City で実際の暗号資産を使うエージェント取引を有効にする計画を語りました。利用者がウォレットに資金を入れ、エージェントが取引戦略を取得し、他のブロックチェーンやオフチェーンの基盤でも取引する、という想定です。エージェントや戦略を管理するのは利用者自身だとされています。これは能力を探し、取引し、改善する市場を試す場としての位置づけで、利益が出ることを示したデモではありません。

いまの Midnight City のウォレットがどこまで来ているかは、公式の更新履歴で確かめられます。8 月 12〜13 日の更新で、Midnight と Cardano のエージェントウォレットに残高や取引履歴の表示が加わり、Midnight の手数料を肩代わりする仕組み (スポンサー付きトランザクション) にも対応しました。9 月 1〜2 日には、エージェントのウォレット接続先が Midnight Preview と Cardano Preprod のテストネットに移されています。9 月 7 日の更新では、街の Central Bank にある USDM の ATM は説明とテスト用トークンの案内のためのもので、出金・スワップ・ブリッジは行わないと明記されました。つまり現在は、Midnight と Cardano の両方につながるウォレットを、テストネットの上で動かしている段階です。講演で語られた実資金の取引は、この線を本番環境へ越える計画ということになります。

講演の中でも重みがあったのが、AI のスキルを「利用権として貸す」市場の構想です。優れた取引戦略を持つ人が、戦略の中身は渡さずに他のエージェントへ使わせる。専門的な開発技術を持つ人が、その能力をスキルとして提供する。氏はこれを、エージェントのスキルに対する DRM、あるいは新しい SaaS のモデルと表現しました。

この話は Nightframe の 4 要素にきれいにつながります。人が「調べてレポートを書いて」と頼めば、エージェントは調査や分析に要る能力を自分で選びます。その能力が有料なら自分で支払う必要があるのでウォレットが要り、何にお金を使うかを決めるには本人の意図が要り、その指示が本人から出たものかを確かめるには身元が要る、という順番です。

講演の内容に公式ドキュメントと更新履歴で確かめられる事実を重ねると、次のようになります。

  • エージェントのウォレット: 稼働中 (Midnight Preview と Cardano Preprod のテストネット)
  • 手持ちの AI の接続: 稼働中 (公式ドキュメントに 3 通りの接続方法)
  • Midnight City 日本語版: 終盤の告知映像で「日本語版、配信開始!」と表示。公式ドキュメントにも日本語の切り替えがあります
  • Open Wallet Standard: 講演で統合済みと説明 (公開の更新履歴にはまだ記載がありません)
  • Midnight Passport 初版: 2026 年末ごろの予定
  • Passport の機能追加: 2027 年前半に約 3 週間ごとの予定
  • 実資金を使うエージェント取引: 今後数か月で有効化する計画
  • スキルの利用権を売買する市場: 今後の機能として説明
  • 企業間の機密共有・医療・オフライン決済・幅広い端末への対応: 利用シナリオ・将来構想

RealFi から暮らしへ、「人間の時間を取り戻す」

ホスキンソン氏は RealFi にも触れました。マイクロファイナンスを通じて、銀行サービスに十分届かない人がウォレットやデジタル ID を持つ入口になる、という説明です。その先にある、インターネットや電力が不安定な場所でどう支払い・返済をするかという課題に、先ほどのオフライン決済の構想を結びつけていました。Nightframe や Midnight を、Cardano と RealFi の使える範囲を広げるものとして語っている点が特徴です。

講演の終盤は、仕事の自動化から暮らしの話へ広がりました。旅行中の撮影や編集をエージェントに任せ、本人は家族や友人との時間を楽しむ。必要なら撮影のスキルを他のエージェントから買う。好みを理解したデジタルツインどうしの交流から、気の合う人との出会いにつなげる。こうした将来像のなかで氏が繰り返したのは、エージェントは誰のために働くのか、という問いでした。本人の暮らしを深く理解させるほど多くの個人情報が必要になるからこそ、データ・身元・エージェントを本人が所有することが大切だ、という主張です。

最後に再登壇した Midnight City の設計責任者は、デジタル社会での監視や個人情報の問題に触れ、プライバシーを犠牲にせずにデジタルの仕組みをつくる方向を目指すと述べました。続いて上映された日本語の告知トレーラーは、パソコン上の「木を切りに行こう!」という指示を受けて、街の住人が木を切って運ぶアニメ調の映像で、「日本語版、配信開始!」の表示で締めくくられています。

同じ日には Midnight 公式から、NIGHT トークンが 10 月 13 日から国内の暗号資産交換業者 OKJ で取り扱われるという告知も出ました。Midnight City の日本語版と合わせて、日本の利用者が Midnight に触れる入口が、同じ週に 2 つ増えることになります。

次に確かめる 3 点

当面、確かめたいのは 3 点です。1 つめは、実資金を使うエージェント取引がいつ有効になるかで、Midnight City 公式 X (@MidnightCitySim) と Midnight 公式ブログで「今後数か月」の告知を待つことになります。2 つめは、2026 年末ごろとされる Midnight Passport の初版で、エージェントの身元を何で裏付けるのかが、Nightframe の「Identity」の中身になります。3 つめは、Midnight City の公式更新履歴 (midnight.city/docs/release-notes) です。テストネットから本番環境への切り替え、支出の上限や承認の手順、統合済みと説明された Open Wallet Standard の記載が、実資金の取引に先立ってここに出てくるかを見ていきます。

今回の講演は、構想と予定の比重が大きい内容でした。そのぶん、上の 3 点が日付どおりに形になるかどうかが、Nightframe という考え方の手応えを測る材料になります。

ことば

  • Nightframe — ホスキンソン氏がスマートコントラクトの次に置いた概念です。本人のプログラムを常時動かし、意図に沿った働きを証明する私的なコンピューターで、東京ではエージェントのスキル市場とあわせて語られました。
  • Midnight Passport — エージェントや利用者の身元を扱うために開発中の仕組みです。初版は 2026 年末ごろの予定で、エージェントが「誰の指示で動いているか」を示す土台になります。
  • RealFi — 銀行サービスに届きにくい人々へ、マイクロファイナンスなど現実の金融を届けようとする Cardano 周辺の取り組みです。今回は、オフライン決済の構想と結びつけて語られました。

一次ソース / 関連リンク

Midnight 公式ブログ「Midnight City Simulation」(2026 年 3 月)(midnight.network)

Midnight 公式ブログ「Midnight City V2」(2026 年 7 月)(midnight.network)

Midnight City 公式ドキュメント(AI の接続方法)(midnight.city)

Midnight City 公式更新履歴(ウォレットのテストネット接続・USDM ATM)(midnight.city)

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