ウォレット基盤の Dynamic (Fireblocks の子会社) が、自社の非カストディ型ウォレット基盤に Midnight を組み込んだと、Midnight 公式 X が日本時間 10 月 22 日 0 時すぎに発表しました。メールアドレスやソーシャルログインで作るウォレットから、そのまま Midnight のアプリを使えるようになり、利用者は拡張機能を別に入れなくても、シールド (秘匿) された取引まで進めます。
Midnight のアプリにとって、最初の関門は「ウォレットを入れてもらうこと」でした。今回の対応は、その関門をアプリの側で肩代わりできる道具が一つ増えたという話です。Midnight Japan も同日 11 時すぎに、開発者が Web3 特有のオンボーディングの摩擦を飛び越えられると紹介しています。本記事では、告知と Dynamic の開発者向けドキュメントに書かれていることを分けて整理します。
メールで作るウォレットから Midnight のアプリへ
Midnight 公式の告知によると、Dynamic は自社の非カストディ型ウォレット基盤の全体に Midnight を組み込みました。柱は二つあります。
- メールやソーシャルログインで作る組み込み型ウォレット (アプリの中に埋め込まれ、利用者は別のソフトを入れない)
- 「Login with Midnight」と、外部の Midnight ウォレットへの対応
告知は、利用者が「メールアドレスから、追加のソフトをインストールせずにシールドされた取引まで」進めると書いています。Midnight 財団が支援するプロジェクトに限らず、Dynamic をすでに EVM・Solana・Bitcoin・Stellar・Sui・TON・Aleo で使っているチームは、今の組み込みのまま Midnight を足せるとしています。
Dynamic が対応するプライバシー保護型のブロックチェーンは Midnight が初めてだ、とも告知は明記しています。初期段階のプロジェクトは、月間アクティブユーザー 1 万人までは Dynamic を無料で使えます。
Dynamic のドキュメントに書かれている仕組み
Dynamic の開発者向けドキュメント「Using Midnight embedded wallets」は、組み込み型の Midnight ウォレットを「ユーザーのソーシャルまたはメールのログインから作られる MPC ウォレット」と説明しています。MPC は、秘密鍵を一か所に置かず、複数の当事者に分けて署名する方式です。
アプリの開発者が組み込むには、Dynamic の管理画面で Midnight を有効にし、組み込みウォレットのセキュリティ設定で「Private Key Exports」をオンにする必要があります。ドキュメントは、これを有効にしないとウォレットの操作が 403 エラーで失敗すると注意書きしています。
ウォレットの中身は、公開側のアドレス、シールドされた側の残高、そして手数料に使う DUST の状態の三つに分かれています。ドキュメントによれば、DUST は Midnight の取引手数料を支払う資源で、registerDust() を一度呼ぶと、そのウォレットの NIGHT が DUST の生成に割り当てられます。DUST はすぐに生まれるのではなく、保有する NIGHT に応じて時間をかけて貯まるため、登録直後に残高がゼロでも想定どおりだと書かれています。公開側とシールド側の間で直接資産を移す送金には対応していない、という制約も明記されています。
外部ウォレットについては、別のページ「Using Midnight external wallets」が 1am を例に挙げ、Midnight 公式の dApp コネクタ API を通じてやり取りすると説明しています。鍵の管理や証明の生成、署名は 1am 側が受け持ちます。
Fireblocks による買収と、先行する Turnkey
Fireblocks は 2025 年 10 月 23 日、自社ブログで Dynamic の買収を発表しました。ブログは Dynamic を「5,000 万を超えるオンチェーンのアカウントを支える」開発者向けウォレット基盤と紹介し、顧客として Kraken・zerohash・Magic Eden などの名前を挙げています。
Midnight の組み込み型ウォレットでは、2026 年 6 月 16 日に Turnkey と Midnight 財団の提携も発表されていました。Turnkey は署名を隔離された実行環境 (セキュアエンクレーブ) の中で行う方式です。方式の違う二つの基盤が並んだことで、Midnight のアプリを作るチームは、すでに他のチェーンで使っている基盤に合わせて選べるようになります。
準備の跡は公開記録にも残っています。npm の公開記録では、Dynamic の Midnight 用パッケージ @dynamic-labs/midnight の初版は 2026 年 4 月 3 日で、発表と同じ 10 月 21 日 (UTC) にも更新版が出ています。今回の告知は、半年あまり続いた開発の区切りとして読めます。
次に確かめる一点
道具がそろったあとに問われるのは、実際に使うアプリが出てくるかどうかです。これから数週間、Midnight 公式 X と Midnight Japan の告知に、Dynamic のメールログインを採用した Midnight のアプリの名前が最初に出るかを見ます。あわせて、Dynamic のドキュメント「Using Midnight embedded wallets」に、DUST の扱いや公開側とシールド側の間の送金について更新が入るかどうかが、使い勝手の変化を測る目安になります。
ことば
- 非カストディ型ウォレット — 秘密鍵の管理権を事業者ではなく利用者の側に残すウォレット。組み込み型でも、事業者が単独で資産を動かせない設計であることが前提になります。
- MPC — 秘密鍵を複数の断片に分け、それぞれの持ち主が協力して署名する方式。鍵が一か所に揃わないため、メールログインと非カストディを両立させる組み込み型ウォレットでよく使われます。
- DUST — Midnight で取引手数料に使う資源。NIGHT の保有に応じて時間をかけて生まれるため、ウォレットが DUST の生成をどう扱うかが、利用者の最初の体験を左右します。
一次ソース / 関連リンク
- Midnight 公式 X の告知 (2026-10-22 00:07 JST)
https://x.com/MidnightNtwrk/status/2112923645001507114 - Midnight Japan 公式 X の紹介 (2026-10-22 11:21 JST)
https://x.com/midnight_jpn/status/2113093478674735605
Midnight ブログ「Turnkey partners with Midnight Foundation」(2026-06-16)(midnight.network)
npm パッケージ @dynamic-labs/midnight(npmjs.com)

