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締め切りの前に、3件とも可決ライン67%に届いていません——エポック646の国庫投票

2026-07-31SIPO

カルダノの国庫から資金を引き出す提案のうち、エポック647を期限とするものが3件あります。8月1日9時41分(JST)時点、エポック646のオンチェーン集計では、3件とも DRep の賛成が可決に必要な67%に届いていません。票の半分近くはまだ投じられておらず、可決の計算では、未投票のまま期限を迎えた票は不成立の側に数えられます。

国庫の配分がどう決まるかは、カルダノのガバナンスが手続きとして機能しているかどうかが最も具体的に見える場所です。提案の中身に賛否があること自体は健全ですが、「誰の票がどれだけ効いているのか」を読み違えると、可決の見込みまで読み違えます。締め切りの位置と、票の数え方を整理しておきます。

■ 期限が近い3件と、いまの集計

オンチェーンの提案一覧で expiration がエポック647と記録されている国庫引き出しは、次の3件です。パーセンテージは可決計算の分母(棄権を除く)に対する票の重み、票数は投じた DRep の頭数です。「反対」には、投票で反対した票に加えて「常時不信任」へ委任された分を含みます(提案ページの No 表示と同じ数え方です)。まだ投じられていない分は「未投票」として分けています。

  • Bifrost: Unlocking Bitcoin DeFi on Cardano — Road to Mainnet (Phase 1 of 2)
    要求額 12,332,031 ADA / 賛成 26.74%(79票)・反対 31.11%(28票)・未投票 42.15%・棄権 30票
  • Scalus 2026: Maintenance, Dijkstra Readiness, Interoperability & Application Runtime
    要求額 2,464,844 ADA / 賛成 37.05%(58票)・反対 17.75%(38票)・未投票 45.20%・棄権 30票
  • Global Order Book connect Cardano DeFi to increase transaction
    要求額 3,333,000 ADA / 賛成 18.66%(33票)・反対 34.05%(65票)・未投票 47.29%・棄権 20票

同じくエポック647を期限とする情報提案「Net Change Limit: Cardano Treasury (Epochs 613-713)」は、賛成 48.87%・反対 23.16%・未投票 27.97% です。こちらは資金の引き出しそのものではなく、一定期間に国庫から出る純額の上限をどう置くかという枠組みの提案です。

数値はオンチェーン集計(AdaStat と Koios の突合値)から取得した、8月1日9時41分(JST)・エポック646時点の値です。投票は期限まで受け付けられるため、この先も動きます。個々の提案の最新状況は、それぞれの提案ページで確認できます。

■ 票の「数」と「力」が逆を向くとき

Bifrost をご覧ください。賛成79票に対して、投票で反対したのは28票です。頭数では賛成が3倍近くいます。それでも重みで見ると、賛成 26.74% に対して反対は 31.11% と逆転します。

DRep の議決権は、その DRep に預けられた ADA の量で決まります。頭数ではありません。少数の大口 DRep が反対に回ると、賛成した DRep がどれだけ多くても、重みの比率はそのままには動きません。

Scalus は形が違います。賛成 37.05%(58票)に対して、投票で反対した票の重みは 17.75%(38票)で、賛成のほうが上です。それでも可決ラインに遠いのは、未投票が 45.20% 残っているためです。可決の計算では、期限までに投じられなかった票は不成立の側に数えられます。沈黙は賛成には数えられません。

この構図は PRIME でも見えます。同じ時点で賛成 36.45%(91票)・反対 14.65%(36票)・未投票 48.90% です。頭数でも重みでも賛成が反対を上回っていますが、未投票が半分近くを占めるため、67% にはまだ遠い位置にあります。PRIME の期限はエポック649で、今回の3件より後になります。

国庫引き出しに必要な DRep の賛成比率は、プロトコルパラメータで 67% と定められています。今回の3件は、いずれもその水準からかなり離れた位置にあります。

■ 決めているのは DRep と憲法委員会です

国庫引き出しの可否は、DRep と憲法委員会の承認で決まります。SPO の投票は要件に入っていません。プロトコルパラメータを見ても、国庫引き出しに対応する SPO 側の閾値は設定されていません。実際、今回の3件はいずれも SPO の投票が0票です。

憲法委員会の側は、Bifrost と Scalus に賛成3票が入っていて反対は0票、Global Order Book には賛成2票・反対1票が入っています。委員会は提案が憲法に反していないかを見る立場で、資金の妥当性そのものを判断する場ではありません。今回の3件が止まるとすれば、それは委員会ではなく DRep の重みによって止まる、という形になります。

投票の要件は、提案の種類ごとに違います。ハードフォークや無信任動議には SPO 側の閾値がありますが、国庫引き出しにはありません。この種の提案では、SPO ではなく DRep としての判断が問われます。

■ Bifrost が問いかけている設計

3件のうち Bifrost は、7月に起きたブリッジの事案と論点が重なります。

提案元の FluidTokens は7月30日の投稿で、Bifrost について「単一障害点に依存せずにビットコインの流動性をカルダノへ持ち込む」ものであり、「ビットコインの保管はカルダノの SPO が交代で担う。単一の運用者がブリッジを支配することはない」と説明しています。同じ投稿で「Bifrost への投票まで残り3日」とも告知していました。

Bifrost brings Bitcoin liquidity to Cardano without relying on a single point of failure. Bitcoin custody is secured by a rotating group of Cardano SPOs. No single operator controls the bridge.
— FluidTokens(2026年7月30日)

7月20日に起きたのは、カルダノのコア部分ではなく第三者ブリッジの境界が破られた事案でした。単一の運用者にビットコインの保管を預けない設計への資金拠出が、その記憶が新しいうちに票にかけられ、現時点では否決の側に傾いている——という並びになっています。

ただし、この設計の説明は提案者自身によるものです。実装が説明どおりかどうかは、資金が付いた後に検証される部分が残ります。反対が多いこと自体は、その慎重さの表れとも読めます。賛否のどちらが正しいかを、この時点の集計だけで決めることはできません。

■ 次に見るもの

まず、残された期間で大口 DRep の投票が動くかどうかです。頭数がすでに賛成へ傾いている提案でも、重みが動かなければ結果は変わりません。逆に、大口が一つ賛成へ動けば比率は大きく跳ねます。

もう一つは、否決になった場合に理由が残るかどうかです。投票先を結果が出る前に公開する動きは、7月にカルダノ財団が示したばかりです。可決・否決そのものより、なぜその判断になったのかが公開の場に残るかどうかが、次の提案の質を左右します。国庫の議論は、通ったか落ちたかだけでは積み上がりません。

■ 訂正と更新(8月1日)

初出(7月31日)の本文では、可決計算で不成立側に数えられる「未投票」の票を「反対」に含めて表記していました(例: Scalus 反対 72.34%)。投票で反対した票と、まだ投じられていない票は別のものであり、提案ページの表示とも一致しないため、集計を8月1日9時41分(JST)時点で取り直し、「賛成・反対・未投票」に分けて全数値を訂正しました。タイトルも「3件とも反対が上回っています」から「3件とも可決ライン67%に届いていません」に改めています。3件が可決水準に届いていないという記事の骨子は変わりません。

あわせて更新: 初出後に Scalus へ大口の賛成が2票入り(Everstake、Cardano Foundation)、賛成は 27.66% から 37.05% へ動きました。「大口が一つ賛成へ動けば比率は大きく跳ねます」と書いた動きが、公開から半日のうちに実際に起きたことになります。


一次ソース

この件の経緯