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DMQ ノードが beta で本番ネットワークに載りました——Mithril シグナー運用者に増えたひとつの作業

2026-08-06SIPO

Mithril の DMQ ノードが、release-mainnetrelease-preprod の両方で beta として有効になりました。告知は 2026 年 8 月 4 日 23 時 36 分(日本時間)、IOG のコミュニティサーバーの Mithril 向けアナウンス channel で出ています。これまで検証用ネットワークだけで試されてきた「署名を分散して配る層」が、本番のネットワークに載ったことになります。

Cardano の分散化は投票や提案の形で語られることが多いのですが、実際に中央集権的な一点が減るかどうかは、各運用者の機械に何が増えるかで決まります。SIPO がこれまで追ってきた変更でも、実体は告知文ではなく運用手順のほうに現れてきました。今回はまさにその手順が更新された回です。ステークプールと Mithril シグナーを動かしている方に向けて、何が有効になり、実際に何をすることになるのかを整理します。

■ DMQ とは何で、何が有効になったのか

DMQ は Decentralized Message Queue の略で、Mithril のシグナー同士が署名を分散的にやり取りするための仕組みです。公式ドキュメントは、この protocol が「安定化し、あるネットワークの大多数の SPO に配備されれば、複数のアグリゲーターが同時に稼働できるようになり、Mithril protocol 全体の可用性が向上する」と説明しています。protocol の全体像は CIP-0137(Decentralized Message Queue、Network カテゴリ、ステータスは Proposed)に記述されています。

現在の Mithril は、シグナーが作った署名をリーダーとなるアグリゲーターに集める形で動いています。ここが単一の集約点として残っていました。DMQ はその集約点を将来複数にするための土台にあたります。

ネットワーク設定の一覧ページ(最終更新は 2026 年 8 月 6 日表記)では、両ネットワークとも DMQ のステータスが Beta 🟢、対応する DMQ ノードのバージョンは 0.7.0.0 と記載されています。

■ 運用者に増える作業は 4 つです

公式の手順に沿うと、やることは次のとおりです。

  • Mithril シグナーを 1.1.6 に更新する(配布 2630.0 に含まれるバージョンです)
  • DMQ ノード 0.7.0.0 を構築する。配置の考え方は Cardano ノードや Mithril シグナーと同じで、推奨される構成ではブロックプロデューサー機とリレー機の両方に置きます。リレー機だけに置く簡易構成は、ドキュメント上テスト用途に限定されています
  • ネットワーク設定の一覧から DMQ のパラメータを取得するrelease-mainnet は DMQ magic Id が 2912307721、bootstrap peer が 35.233.75.24:6161release-preprod は DMQ magic Id が 2147483649、bootstrap peer が 34.79.19.73:616134.79.19.73:11002 です
  • シグナーの設定に DMQ_NODE_SOCKET_PATH を追加する。指定するのは、シグナーが動いているのと同じ機械の DMQ ノードのソケットです

ドキュメントが強く注意しているのは接続先の扱いです。リレー機の DMQ ノードは一覧表にある bootstrap peer に接続しますが、ブロックプロデューサー機の DMQ ノードは自分のリレーの内部 IP にだけ接続し、外部の bootstrap peer には決して直接つながないことになっています。ブロックプロデューサー側を外部に露出させない、という Cardano ノードの運用と同じ考え方です。

もう一点、実務的な注意があります。手順ページに載っている設定例の数値は検証用ネットワークのものです。本番ネットワークの値は、必ずネットワーク設定の一覧から取り直してください。

■ いま急いで切り替える必要があるか

ドキュメントは DMQ ノードの設定について「現時点では beta であり、SPO による本番利用に適する」と位置づけたうえで、こう書いています。安定化とランプアップの期間中、署名はこれまでどおりリーダーアグリゲーターに送られるため、DMQ ノードを使うこと自体に害はない、と。

つまり、いま DMQ ノードを立てる作業は、署名の経路をいきなり切り替えるものではありません。切り替えられる状態を先に作っておくもの、と読むのが正確です。急ぐ性質のものではありませんが、大多数の SPO に行き渡って初めて次の段階に進む仕組みである以上、早く動いた分だけ全体の進行に効く種類の作業でもあります。

■ 配布は 7 月 30 日、有効化は 8 月 4 日というずれ

今回は、配布の日付と運用者が動くべき日付が 5 日ずれています。経緯をたどると理由がはっきりします。

配布 2630.0 が公開されたのは 7 月 30 日です。その直前、「安定版の 0.7.X が出るまで本番ネットワークでは DMQ ノードを止める」という変更が取り込まれていました。変更の説明には、これによって次の配布の提供が可能になる、と書かれています。

その後、DMQ ノード 0.7.0.0 の安定版が 8 月 3 日に公開されました。翌 8 月 4 日、DMQ ノードを 0.7.0.0 に上げ、本番ネットワークで改めて有効化する変更がマージされています。この変更の手順書には、両ネットワークの設定値の更新、bootstrap peer の追加、インフラの再デプロイに加えて、「リリースノートの更新」と「Discord での告知」まで項目として並んでいました。運用者に届いた告知は、その最後の項目にあたります。

配布そのもののリリースノートを見ただけでは、この 5 日間の往復は見えません。日付の食い違いに気づいたら、変更の履歴まで下りると筋が通ります。

■ 同じ配布に入っているもうひとつの変更

2630.0 には破壊的変更も含まれています。シグナーとアグリゲーターから CardanoImmutableFilesFull という証明書タイプのサポートが削除され、CardanoDatabase(Cardano database v2)を使う形に移行しました。対応する Cardano ノードは 10.7.1 以降です。DMQ の作業と同時にシグナーを更新する場合は、こちらも合わせて確認しておくと安全です。

■ ここから何を見るか

見るべき指標は、ネットワーク設定の一覧に載る DMQ のステータスが Beta から次に動くかどうかです。複数のアグリゲーターが同時に動く姿が現実になるのは、DMQ が十分な数の SPO に行き渡ってからで、そこまでは各運用者が自分の機械に一つずつ手順を足していく期間が続きます。

分散化は、票が割れた瞬間よりも、こうした地味な設定作業が積み上がっていく過程で進みます。今回の告知は、その一歩がテスト環境から本番環境に移ったことを意味しています。


一次ソース / 関連リンク