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Lace が Keystone に対応しました——署名は画面とカメラの間だけで完結し、USB も Bluetooth も使いません

2026-08-25SIPO

Lace 公式アカウントが 8 月 24 日、Keystone ハードウェアウォレットへの対応が Lace に到着したと告知しました。署名のやり取りに USB のデータ接続も Bluetooth も WiFi も NFC も使わず、端末の画面とパソコン側のカメラの間で QR コードを往復させるだけで完結する、という設計です。鍵をどこに置くかという判断は、SecondFi の一件以降ずっと Cardano 利用者の手元に返ってきている論点で、委任先の選び直しやガバナンス投票の署名をどの機器で行うかという実務にも直結します。何ができるようになったのか、どこまでが守られてどこからが利用者の手順の話なのか、そして対応範囲としてどこを確認しておくべきかを順に整理します。

■ 画面とカメラの間だけで署名が終わる

Lace の公式告知は、対応の中身を次のように短く書いています。

Fully air-gapped signing via QR codes. No USB data, no Bluetooth, no WiFi, no NFC for signing.
(QR コードによる完全なエアギャップ署名です。署名において USB のデータ通信も、Bluetooth も、WiFi も、NFC も使いません)

エアギャップとは、秘密鍵を持つ機器を通信経路から物理的に切り離しておく考え方です。Keystone の場合、外部とつながる手段が画面とカメラしかありません。Lace 公式ブログはこの構図を、画面とカメラと QR コードが会話を担う「一方向で、人の手を介した受け渡し」だと説明しています。取引データは QR コードとして画面に表示され、利用者が意識してかざした分だけが相手に渡る。自動的に開くポートが存在しないため、経路そのものが攻撃対象になりにくい、という理屈です。

手順も告知に書かれています。まず Keystone 側のファームウェアを v3.0.4 にしておくこと、その上で Lace を拡張機能版またはモバイル版の最新に更新して端末を接続すること。拡張機能版で組み合わせる場合は QR コードを読み取るための Web カメラが必要になります。Keystone 側の更新履歴を見ると、v3.0.4 は 8 月 12 日公開で、リリースノートに「Lace ウォレットを使った BTC および ADA 資産の管理に対応」と明記されています。今回の告知は、機器側の準備が先に整っていたところへウォレット側が追いついた形です。

■ 「無敵になるわけではない」と書いてあること

興味深いのは、Lace 公式ブログが自ら留保を置いている点です。エアギャップ設計を説明した直後に、これで Keystone が無敵になるわけではない(そんなものは存在しない)と書き添え、利用者側でやるべきこととして、開封時に封緘が破られていないかを確かめること、シードフレーズは必ず端末上で生成することを挙げています。

シードの生成についてはもう少し具体的で、機器に載っている三つのセキュアエレメントに任せる方法と、サイコロを振って自分でエントロピーを作る方法の両方が示されています。乱数の出どころを自分の手に取り戻せる選択肢がある、ということです。

言い換えれば、エアギャップが断っているのは経路であって、承認するかどうかの判断までは肩代わりしません。接続の穴を塞ぐ設計と、画面に出た内容を読んでから承認する習慣は、別々に必要なものとして残ります。公式ブログが購入と初期設定の手順をわざわざ書いているのは、そこが利用者の担当区間だからです。

■ 委任と投票の鍵を、どこに置くか

この話が Cardano の利用者にとって実務的なのは、署名する対象が送金だけではないからです。ステークプールへの委任も、DRep への委任も、ガバナンス提案への投票も、すべて鍵による署名で成立します。頻度は低いけれども一度の間違いが尾を引く種類の操作が、同じ鍵の下にまとまっている構造です。

今年に入ってからの一連の出来事——ウォレット由来の被害を受けた利用者が新しいウォレットへ移り、委任をやり直し、受け取り先を確認し直すという作業——は、まさにこの「鍵の置き場所」を一斉に見直させるものでした。移行の手順そのものは 別記事で扱っていますが、移行先を決めるときに選択肢が一つ増えた、というのが今回の位置づけになります。

Lace にとっても、これは単発の対応ではありません。7 月 28 日に SeedSigner への対応を告知した際、公式アカウントは、これはハードウェアウォレット対応を広げる第一歩であり Keystone も近く続くと書いていました。予告された順番どおりに二つ目が着地した形です。

■ 対応範囲は、買う前に確かめる

ただし、どの資産まで扱えるかは一律ではありません。Lace 公式ブログは、対応するチェーンは機器によって異なるので購入前にどの資産をカバーしているか確認するように、と明記しています。前述のとおり Keystone 側のリリースノートが Lace 連携について挙げているのは BTC と ADA です。

もう一つ、混同しやすい差分があります。同じ 8 月 24 日、Lace 公式アカウントは利用者からの質問への返信で、Lace モバイル版が現在対応しているのは Cardano と Bitcoin のみであり、Midnight と DUST の生成はブラウザ拡張機能版で提供されていてモバイル版にはまだ来ていない、と説明しています。これは Keystone 対応の話ではなく Lace モバイル版自体の対応範囲の話ですが、「拡張機能版とモバイル版の両方で Keystone が使える」という告知と並べて読むと、できることが同じだと受け取ってしまいやすい箇所です。署名の手段が増えたことと、その面で扱える資産が増えたことは、別の話として押さえておくのが安全です。

なお告知には、Lace 仕様の Keystone 端末 5 台が当たる企画と、同じデザインの端末を Keystone 公式サイトで期間限定の割引価格で購入できる案内も添えられています。

■ 次に見るもの

当面の観察点は三つです。一つ目は、拡張機能版とモバイル版で実際に扱える操作の範囲——特に委任やガバナンス投票の署名がどちらの面でも同じように通るのか。二つ目は、Lace が「第一歩」と呼んだハードウェアウォレット対応の列に、次にどの機器が並ぶのか。三つ目は、Midnight と DUST の扱いがモバイル版に降りてくるタイミングです。鍵の置き場所の選択肢が増えることと、その置き場所で何ができるかが揃うことの間には、まだ距離があります。


一次ソース / 関連リンク