Essential Cardano の週次開発レポート(2026 年 8 月 21 日付)が、Leios のテストネット MusashiNet について Earth フェーズの実測をまとめました。6 月 23 日の立ち上げから 41 日、127,000 を超えるブロックと 8,000 近いオンチェーン証明書、参加プールは 3 から 63 へ。SIPO は「これから速くなります」という言葉ではなく、「測れる数字が出た時点」を観測点に置いています。8 月 8 日にお伝えした段階では、Earth フェーズは「そうした数字を測れる場所ができた」という質的な区切りでした。今回、同じ区間に初めて数字がつきました。ただし見出しになっている「約 6 倍」は、何と何を比べた数字なのか。そこを分けて読むところから始めます。
■ 41 日という長さが意味すること
Earth フェーズの中身は、短時間のデモではありません。41 日という連続運転の中で、参加するプールが 3 から 63 まで増え、その間に 127,000 を超えるブロックと 8,000 近いオンチェーン証明書が積み上がりました。参加者が増えるほど、ネットワークは想定外の状態に置かれます。そこで壊れなかったこと自体が、この区間の成果です。
レポートによれば、8 週間で 12 のリリースが出ています。内容は地味ですが、いずれも連続運転で出た問題への対処です。データベース接続の扱いを改善して、負荷が続いたときのメモリリークをなくしたこと。証明書の検証を安定させ、同期中のノードが endorser ブロックを含む鎖を確実に追えるようにしたこと。ブロックの重複した再エンコードをなくしたこと。そして mempool を作り直し、トランザクションの再検証をオフチェーンで行うようにして、鍛造ループが必要とするロックを避けたこと。
いずれも「動くかどうか」ではなく「動かし続けられるか」に属する修正です。テストネットを 41 日間開けておかなければ、そもそも見つからない類のものでもあります。
■ 「約 6 倍」が何と何の比較なのか
数字そのものを確認します。レポートは、合成的な負荷をかけた条件下でネットワークが 26.8 TxkB/s に達したと書いています。比較対象として置かれているのが 4.51 TxkB/s で、これは「Praos だけでメインネットが到達しうる値」です。この 2 つの比が、およそ 6 倍という表現の中身です。
ここで押さえておきたいのは、これが同一条件での実測どうしの比較ではないことです。片方はテストネットに合成負荷をかけたときのピーク、もう片方はメインネットが現行方式で到達しうる上限値であり、実際にメインネットで測った日常の処理量ではありません。加えて、この数字は開発チーム自身のレポートに載った自己計測であり、第三者が同じ条件で再現した結果ではありません。
それでも、この数字には意味があります。8 月 8 日の時点で私たちが書いたのは「性能を測れる場所ができた」ということでした。その場所で、実際に測定が行われ、値が公開された。設計の主張が測定値に変わったという意味で、これは前進です。同時に、掲げられている最終的な目標値とはまだ距離があることも、あわせて読む必要があります。
■ Hydra は 1 時間超を 13.5 分にしました
同じレポートの中で、Hydra 側にも数字が出ています。Blockfrost バックエンドの性能改善で、preview 上の head のフルライフサイクルが 1 時間超から約 13.5 分に、パブリッシュにかかる時間が約 10 分から 32 秒に短縮されました。やったことは、固定の待ち時間(blind sleep)を条件ベースのポーリングに置き換えることです。
これは利用者に見える速度の話ではなく、開発の反復速度の話です。1 サイクル 1 時間の検証は、1 日に回せる回数が限られます。13.5 分になれば、同じ 1 日で試せる回数が変わります。テストが遅いことは、それ自体がバグの発見を遅らせます。
あわせて、継続的な負荷の下で etcd gRPC のリンクに未捕捉のエラーが出てクラッシュしていた問題が修正され、rejectLowDeposits の最適化が単一パスの処理として取り込まれました。CI 側では、テストポートの sentinel を close-on-exec にして、生成された子プロセスがバインド済みのポートを引き継がないようにしています。これは直近 25 件の hydra-node CI 失敗のうち 16 件の原因だったバグです。
Hydra と Leios がどう役割分担するのかについては、2 層で読む記事で整理しています。
■ 台帳側では BLS の下ごしらえが進んでいます
台帳チームは、プール分布に対応する BLS 鍵と、プールごとに BLS で帰属させた持ち分を含める拡張を進めています。BLS 関連のプール情報が参照できるようになる、という位置づけです。
SPO の方にとっては、Dijkstra の後に BLS 鍵を登録するという話と地続きの作業です。鍵を登録する側の準備と、その鍵をネットワーク側が扱えるようにする準備が、並行して進んでいるとご理解ください。
■ 次に見るもの
Earth フェーズで入った変更は、すべて Water フェーズでの検証に回されます。Water フェーズは新しい鎖の上で、すでに開いています。ここでの実測が、今回の 26.8 TxkB/s という値をどう扱うべきかを決めます。
もう 1 つは、開発チームがメインネットへの道筋をまとめたドキュメントを最終調整中だと書いている点です。遭遇した課題についても記載されるとのことなので、公開されれば「何が残っているか」が読み手側からも見えるようになります。
観測点は 3 つです。Water フェーズでの実測値、メインネットへの道筋をまとめた文書の公開、そして第三者環境での再現。このうち 3 つ目が出てきたときに、今回の数字は初めて「約 6 倍」という短い表現のまま扱ってよいものになります。
一次ソース / 関連リンク
- Essential Cardano – Weekly development report as of 2026-08-21(公式・本記事の数値はすべて同レポート由来)
https://www.essentialcardano.io/development-update/weekly-development-report-as-of-2026-08-21 - Leios がテストネットで一周しました – Earth フェーズを終え Water フェーズへ(2026-08-08)
https://sipo.tokyo/signal-20260808-8b6b3ddb/ - Hydra と Leios は競合しません – Cardano のスケーリングを二層で読む(2026-08-08)
https://sipo.tokyo/deep-dive-20260808-ac986992/ - Dijkstra の後、SPO は BLS 鍵を登録します(2026-08-15)
https://sipo.tokyo/signal-20260815-5deddd17/
