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Trezor Suite 26.10、ADA の投票委任は既定で棄権に

2026-10-16SIPO #DRep

ハードウェアウォレット Trezor の管理アプリ Trezor Suite は、10 月 15 日に公開された 26.10 から、新しく ADA のステーキングを始める人の投票委任を既定で「棄権(Abstain)」にしました。同日、Trezor Suite の開発者 Tomáš Klíma 氏が X で明らかにしたもので、これまで既定で選ばれていた Everstake のほか、任意の DRep も選べます。

ウォレットの初期設定は、多くの利用者がそのまま受け入れる値です。どの DRep に投票権が集まるかを、ウォレットの設計が左右しうる。今回の変更は、その既定値を「誰にも委ねない」側へ寄せたものです。すでに委任している人の設定は変わりません。変更の中身と、棄権という選択が台帳の上で何を意味するのかを整理します。

26.10 で変わった画面: 3 つの選択肢を同じ並びに

変更は、Trezor Suite の GitHub に 9 月 25 日にマージされたプルリクエスト #32596 で入りました。説明によると、ADA をステークする画面に「投票の希望(voting preference)」を選ぶカードが新しく置かれ、選択肢は次の 3 つです。

  • 棄権(Abstain)— 新しい既定値
  • Everstake
  • 自分で選んだ DRep(DRep ID を入力)

これまで投票委任の選択は、ステーキングを始めるときの同意画面の中にありました。新しい設計ではその画面から外し、ステークの入力画面に直接置いています。棄権を選んだ場合は、署名する取引に棄権の投票委任の証明書(certificate)が入ります。

ステーキングのダッシュボードからは「投票の希望を変更」でいつでも選び直せます。今の選択が上に表示され、下には残りの選択肢だけが並び、どれもあらかじめ選ばれていない状態から選ぶ形です。編集部で確認したところ、この変更のマージコミットは GitHub で 10 月 15 日に公開された v26.10.1 のタグに含まれています。ただし v26.10.1 のリリースノートには、この変更の記載はありません。

既定の Everstake を見直した経緯

見直しのきっかけは、GitHub の課題(issue)#32076「DRep default to abstain」に残っています。課題は、ステークの流れの中で Everstake への投票委任が既定になっている点を取り上げ、Everstake は既定にせず選びやすくしておくこと、既定は誰にも投票を委ねない棄権にすることを求めました。誰に投票権を委ねているのかを利用者にはっきり示すこと、Cardano のガバナンスや DRep の評判を学べる資料へ案内することも書かれています。

この課題が参照しているのは、8 月 5 日の X ユーザー @phil_uplc 氏の投稿です。同氏は Cardano 財団に対し、提携先のウォレットがガバナンスの健全性を損なう仕組みを持ち込まないよう促してほしいと書きました。Klíma 氏の 10 月 15 日の投稿は、この投稿への返信として「フィードバックをありがとう」と始まり、26.10 からの変更を伝えています。

ステーキング事業者が、ウォレットの既定の DRep にもなる。この形のままだと、利用者が意識しないうちに投票権が一か所に集まっていきます。指摘を受けて、既定値の側を中立に戻したのが今回の変更です。

「棄権」に委任すると台帳の上で何が起きるか

Cardano のガバナンスを定めた CIP-1694 では、ADA の保有者は DRep に投票権を委ねるほか、あらかじめ用意された 2 つの選択肢、「棄権(Abstain)」と「不信任(No Confidence)」にも委任できます。棄権に委任したステークは、ガバナンスに参加しないことを明示したものとして扱われ、議案の可否を計算する「アクティブな投票ステーク」には数えられません。

一方で、棄権への委任はステーキング報酬の受け取りには影響しません。CIP-1694 は、立ち上げ期間のあと、報酬の引き出しには DRep か、あらかじめ用意された選択肢のどれかへの投票委任が必要になると定めています。棄権もその一つなので、Trezor Suite で新しくステークを始めた人は、何も選ばなくても報酬を引き出せる状態になります。

裏返すと、既定のまま進めた ADA は、DRep の投票の分母にも分子にも入りません。投票権を誰かに預けたつもりがないまま預けてしまう状態は避けられる一方で、ガバナンスに加わる ADA は利用者が自分で選んだ分だけになります。どの DRep に委ねるかを考える材料は、SIPO のDRep への委任の解説にまとめています。

確認できる次の一点

今回の変更が対象とするのは、26.10 以降に新しくステークを始める人です。Trezor でステーキング中の人は、Trezor Suite のステーキングのダッシュボードで、現在の投票の希望が何になっているかを一度確かめておくと確実です。

確認できる次の一点は、Trezor Suite の GitHub の Releases ページです。v26.10.1 の公開ノートには今回の変更が書かれていないため、次の版の公開ノートで投票委任の既定値の変更が告知されるかどうかが、利用者への周知の度合いを測る目安になります。

ことば

  • 棄権(Abstain)への委任 — CIP-1694 があらかじめ用意した投票委任先の一つ。ガバナンスに参加しないことを明示し、議案の集計には数えられませんが、報酬の引き出しに必要な投票委任の条件は満たします。
  • DRep(委任代表者)— ADA の保有者から投票権を預かり、国庫の引き出しやパラメータ変更などの議案に投票する代表者。ウォレットの既定値は、どの DRep に投票権が集まるかに直接影響します。
  • Trezor Suite — ハードウェアウォレット Trezor をパソコンやブラウザから操作するための公式アプリ。ADA のステーキングと投票委任もこのアプリの画面から行います。

一次ソース / 関連リンク

タグ: #DRep
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