Cardano のレイヤー 2「Hydra」の開発チームは、ひとつのスナップショットにまとめられる取引の上限を 1,000 件から 4,000 件に引き上げました。混み合ったヘッドが同じ処理を何度も繰り返さずに済むようにする変更で、Input Output が 10 月 16 日に公開した週次の開発報告に、正式リリース前の開発成果として載っています。
報告によると、ローカルに 3 つのノードを立てた試験で、最小構成の送金 24,000 件を一度に流し込んだところ、すべて処理し終えるまでの時間が 37.04 秒から 13.50 秒に縮みました。Leios がレイヤー 1 そのものの処理量を広げる計画であるのに対し、Hydra は取引を台帳の外でまとめて片づけるもう一本の拡張の道です。この記事では、上限を変えると何が速くなるのか、数字をどの条件で読むべきか、同じ週に直った不具合を順に整理します。
スナップショットの上限が速度に効く理由
Hydra の「ヘッド」は、少数の参加者がレイヤー 1 の資金を預け入れ、その中で取引をやり取りして確定させる小さな台帳です。ヘッドの中の状態は「スナップショット」という単位で参加者全員の署名を集めて確定し、最後にファンアウトという取引で資金をレイヤー 1 に戻します。
スナップショットを作る番が回ってきた参加者 (リーダー) は、まだ確定していない取引をまとめて提案します。Hydra チームの週報 (第 41 週) は、この 1 回ごとの処理が未処理の取引の山全体に対して行われるため、上限が小さいと、負荷の高いヘッドほど同じ作業を繰り返す回数が増えると説明しています。上限を 4 倍にすると、山を崩すのに必要な回数が減ります。
変わったのはリーダーが一度に提案できる量だけです。週報によれば、ほかの参加者はもともと大きな提案を受け付けられる作りで、ヘッドが抱えられる UTxO (未使用の取引出力) の大きさの上限は変わっていません。この変更は 9 月 4 日に提案され、10 月 6 日に本体のコードに取り込まれました。
毎秒 648 件から 1,778 件へ、数字を読む条件
週報には、試験の結果がもう少し詳しく載っています。24,000 件を処理し終えるまでの実効的な処理量は毎秒 648 件から 1,778 件に上がり、取引が確定するまでの時間の中央値は 29.1 秒から 12.3 秒に下がりました。
ただし、これは条件を絞った測定です。週報は、最小の取引を一気に流して捌き切るまでを測ったもので、ノード間のメッセージを運ぶ etcd も同じマシンの中で折り返す構成だったと明記しています。開発報告も「この結果はその試験環境に当てはまるもので、ネットワーク全体の処理量ではない」と書いています。負荷の軽いヘッドでは、そもそも上限に届かないため、この変更の効果は出ません。
上限をさらに大きくした試験でも速くはなりましたが、伸び方はしだいに鈍り、そのぶん 1 回の提案のデータは大きくなっていきました。週報は、4,000 件なら etcd が受け付けるリクエストの大きさの上限まで十分な余裕が残るとしています。速さと安全な余白の兼ね合いで選ばれた数字です。
ファンアウトが入金と取り違えられる不具合も修正
同じ週には、ヘッドを閉じる場面の不具合も直されました (10 月 9 日に取り込み)。最初の出力が入金 (デポジット) と同じ形をしていて、有効期限の上限が付いているファンアウトの取引を、ノードが入金として読み取ってしまうことがありました。この場合、ファンアウトは実際にはレイヤー 1 に載っているのに、ノードは「閉じた状態」のまま残ります。修正後は、ヘッドの取引かどうかを先に確かめ、ヘッドの出力を使う取引は入金の判定から外すようになりました。
あわせて、ヘッドから資金を引き出す途中のスナップショットの扱いも締められました。確定済みのスナップショットがまだ精算中の引き出しを抱えているとき、同じ版の新しい提案がそれを落としたり入金に差し替えたりすると、正直な参加者がヘッドを閉じられなくなるおそれがありました。こうした提案は今後、拒否されます。どちらも、資金をレイヤー 1 に戻す出口を確実にするための修正です。
次に見るもの
今回の変更は、まだ正式な版として配られていません。Hydra の最新リリースは 9 月初めの 2.4.1 で、その後の第 41 週にもリリースはありませんでした。週報によると、cardano-node 11.1.3 と cardano-api 11.7 への追従を進める変更が週末の時点でレビュー中です。
確かめる先は二つあります。一つは GitHub の cardano-scaling/hydra のリリース一覧で、スナップショット上限の引き上げを含む次の版がいつ出るかが分かります。もう一つは Hydra チームの週報で、次の第 42 週の号に、ノードの追従がどこまで進んだかが載ります。
ことば
- Hydra ヘッド — 少数の参加者がレイヤー 1 の資金を預けて開く、台帳の外の小さな台帳です。中の取引は参加者の署名だけで確定するため速く、終えるときはファンアウトで資金をレイヤー 1 に戻します。
- スナップショット — ヘッドの中の状態を、参加者全員の署名で確定させる単位です。今回は、その 1 回にまとめられる取引の数の上限が 1,000 件から 4,000 件になりました。
- ファンアウト — ヘッドを閉じたあと、中の最終的な残高をレイヤー 1 に払い戻す取引です。今回の修正は、この取引が入金と取り違えられないようにするものでした。
一次ソース / 関連リンク
Essential Cardano: Weekly development report as of 2026-10-16
essentialcardano.io
Hydra 週報 Week 41 (2026 年 10 月 5〜11 日)(Hydra)
- Input Output 公式 X の告知
https://x.com/IOGroup/status/2111025735963938944
GitHub
