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Mithril 2642.0 のメインネット展開、SPO の署名者に新設定

2026-10-21SIPO

Cardano の高速同期の仕組み Mithril の開発チームは 2026 年 10 月 20 日、開発ブログで、ディストリビューション 2642.0 をメインネット (release-mainnet) を含む 3 つのネットワークのアグリゲーターに展開したと発表しました。Mithril の署名者を動かしている SPO には、署名者を 1.2.5 に更新し、新しい設定項目 PROTOCOL_CONFIGURATION_READER_ADAPTER_CONFIG を入れる作業が求められています。

Mithril 開発ブログ : Distribution 2642 is now available (2026-10-20)(mithril.network)

この版の中心は、署名者とアグリゲーターが使うプロトコルの設定を、アグリゲーターから受け取るのではなく Cardano のチェーンから読む方式への切り替えです。SIPO は 10 月 16 日、同じ 2642.0 が試験用ネットワークだけのプレリリースとして出た段階で中身を取り上げました (前回の記事)。今回はそれがメインネットに来たことで、SPO にとって作業の締め切りが具体的になります。

SPO の作業と、猶予の期限

ブログが Mithril の署名者を動かす SPO に求めている作業は 2 つです。

  • 署名者のバイナリを 1.2.5 に更新する
  • 新しい設定項目 PROTOCOL_CONFIGURATION_READER_ADAPTER_CONFIG を、署名者ノードのドキュメントに沿って設定する

この手順は release-mainnet・release-preprod・pre-release-preview の 3 つのネットワークで共通です。署名者の更新には、ブログに 1 行のインストールコマンドが載っています。

設定項目のほうには猶予があります。ブログによると、新しい項目を入れていない署名者も、次のディストリビューションまでは動き続けます。ただし次の版では、これまでの読み方 (旧来のフォールバック) が削除されます。次の版が出た時点で設定が入っていなければ、その署名者はプロトコルの設定を読む手段を失います。

設定を書き込むのはリリースチーム、読むのは各ノード

「プロトコルの設定」とは、Mithril のネットワークに参加するすべてのノードが共有する値のまとまりです。マルチ署名を作るためのプロトコルパラメーター (k・m・phi_f) と、Cardano のトランザクションやブロックに署名する間隔などを決める設定が含まれます。

新しい方式では、Mithril のリリースチームがこの設定を「マーカー」として Cardano のチェーンに書き込みます。マーカーは専用のアドレスに送るトランザクションに入れられ、リリースチームが持つ鍵で署名されます。各ノードはそのアドレスと検証鍵を設定した読み取り機能 (cardano-chain アダプター) でマーカーを読み、アグリゲーターを信頼しなくても本物かどうかを確かめられます。

各ノードは起動時と、エポックが変わるたびに設定を組み直します。このため、新しい設定に切り替わるときも、すべてのノードがほぼ同時に移ります。Mithril が新しい「時代 (エラ)」を有効にするときに使っているマーカーと同じ考え方で、設計は ADR 13 にまとめられています。

ブログはこの変更の意味を、署名者や追従するアグリゲーターが、主となるアグリゲーターの配る設定に頼らなくなることだと説明しています。複数のアグリゲーターが同時に動く、分散型の Mithril ネットワークへ向けた一歩という位置づけです。

アグリゲーターの運用者とクライアントへの変更

アグリゲーターを動かしている運用者は、設定ファイルから削除された protocol_parameters・cardano_transactions_signing_config・cardano_blocks_transactions_signing_config の 3 項目を、新しい protocol_configuration_reader_adapter_config に置き換える必要があります。チェーンから読んだ設定を読みやすい JSON に書き出す protocol-configuration export-markers というコマンドも加わりました。

互換性に関わる変更もあります。アグリゲーターとクライアントは Gzip 圧縮のスナップショットアーカイブに対応しなくなり、クライアントのライブラリと CLI からは、廃止予定だった ClientBuilder::aggregator と、スナップショット変換ツールの –cardano-network オプションが削除されました。

クライアント側には、検証済みの証明書チェーンをキャッシュして 2 回目以降の検証を速くする機能が、試験段階 (unstable) として入りました。証明書は genesis までさかのぼって全部の検証が通ったときだけキャッシュに入り、既定では 1 週間で期限が切れます。キャッシュに着いたところで検証を打ち切る EarlyStopVerification のモードでは、キャッシュそのものが信頼の土台の一部になるため、改ざんから守る必要があるとブログは注意しています。

このほか 2642.0 は、Cardano ノード 11.1.3 に対応し、次の 11.2 にも先行して対応しています。DMQ ノードは安定版の 0.7.2.0 に対応しました。

次のディストリビューションが期限になる

SPO が見ておく確認先は、Mithril の開発ブログと IntersectMBO の GitHub のリリース一覧です。次のディストリビューションの告知が出た時点で旧来の読み方は使えなくなるため、それより前に、署名者の設定に新しい項目が入っているかを確かめておく必要があります。

ことば

  • Mithril 署名者 (signer) — SPO が Cardano ノードの横で動かすソフト。ステーク量に応じて Cardano の状態に署名し、その署名がまとまることで、軽いクライアントでもチェーンの状態を確かめられるようになります。
  • アグリゲーター — 署名者の署名を集めて証明書を作るノード。これまでは主となるアグリゲーターが設定も配っていましたが、2642.0 から設定の出どころがチェーンに移りました。
  • ディストリビューション — Mithril の署名者・アグリゲーター・クライアントをまとめた配布版。2642.0 のような番号で呼ばれ、ネットワークごとに順に展開されます。

一次ソース / 関連リンク

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