フルノード型ウォレットの Daedalus が 10 月 24 日、バージョン 11.6.0 を公開しました。11.5.0 より前の版で Mithril による部分同期を行ったときに残った、ブロックチェーンデータの欠落を見つけ出し、検証済みの完全な Mithril スナップショットから作り直せるようにしたメインネット向けの保守リリースです。
10 日前の 11.5.0 が「これから欠落を生まない」ための修正だったのに対し、今回は「すでに欠けてしまったデータ」を手元で直すための道具にあたります。サポートを担う Se7en Labs は公式 X で「すべての Daedalus 利用者に更新を勧める」と告げており、GitHub のリリースノートも同じ推奨で結ばれています。何が直り、作り直しの前にどんな確認が入るのかを、リリースノートに沿って整理します。
11.5.0 より前の部分同期で残った欠落を、見つけて作り直す
Daedalus は手元でノードを動かし、ブロックチェーン全体を自分のパソコンに持つウォレットです。最初の同期には長い時間がかかるため、署名付きのスナップショットから一気に追いつく Mithril の仕組みを使えるようになっています。
10 月 14 日の 11.5.0 では、部分同期のあとに最新のチャンク(ブロックをまとめて保存する単位)が不完全なまま残り、ノードがブロックを拒否したり「Replaying ledger」で止まったりする不具合が直されました。ただ、この修正はそれ以降の同期に効くもので、以前の版で欠落を抱えたデータそのものは残ります。11.6.0 はこの残りを扱います。
リリースノートによると、11.6.0 はまず欠落の兆候を検出し、利用者に作り直しを提案します。作り直しは利用者が確認してから始まり、ブロックチェーンデータは置き換えられますが、ウォレットの情報はパソコンの中にそのまま残ります。鍵やウォレットを入れ直す作業ではなく、ノードが読むチェーンのデータだけを入れ替える、という切り分けです。
診断画面には「ブロックチェーンデータ」の行が新しく加わり、検出した破損の状態と、そのスロット番号・時刻が表示されます。破損が見つかっていなくても「ブロックチェーンデータを再構築」ボタンから作り直しの確認画面を開けます。11.5.0 で加わった診断レポートのコピー機能にも、これらの情報が含まれるようになりました。
作り直しの前に入る確認と、止まったときの選択肢
データを消してから作り直す作業は、途中で失敗すると同期が振り出しに戻る心配があります。11.6.0 はこの点に安全策を重ねています。
- データを消す前に、スナップショットが取得できるか、保存先のフォルダーが使えるかを確かめる。必要な情報が取れる場合は空き容量も確かめる
- 作り直しが失敗・中断しても、復旧に必要な情報を残す。利用者に知らせないままジェネシス(チェーンの最初)からの同期を始めることはしない
- ダウンロードはブロックチェーンデータと同じドライブに置く。保存フォルダーを複数のネットワークで共有している場合も、別のネットワークで進行中のダウンロードを守る
起動まわりにも手が入りました。cardano-node が起動中に 5 分間何も書き出さない場合、「Cardano ノードを再起動」か「このまま待つ」を選べます。Mithril のダウンロードがネットワークの回復を待っているときは、その状態が画面に出ます。止まっているのか待っているのかが見分けにくい、というフルノード型ウォレットの悩みに、表示の側から応える変更です。
Ledger・Trezor の送金確認や起動失敗も修正
不具合の修正は 3 つです。1 つ目は、送金時の確認ダイアログを元に戻し、Ledger や Trezor で承認したあとにトランザクションが正しく送られない問題を直したものです。ハードウェアウォレットの準備を取り消しても別のトランザクションに影響しないようにし、承認した取引が送信を終えるまで元のウォレットに結びついたままになるようにしています。ハードウェアウォレットで Daedalus を使っている人には、もっとも身近な修正です。
2 つ目は、Daedalus のウィンドウが出る前に起動が失敗することがあった問題で、プロセスを監視する仕組み(watchdog)から渡される設定のパスを正しく引き継ぐよう直しました。3 つ目は配布物を作る工程の修正で、Windows と macOS 向けのパッケージ作成が途中で止まっていた問題です。
依存関係では、画面を動かす Electron が 41.3.0 から 42.11.14 に、裏で動く cardano-wallet が v2026-10-07 に上がりました。cardano-node は 11.1.3 のまま据え置かれています。ハードウェアウォレット関連などの依存関係も、回帰テストを通したセキュリティ修正込みで更新されました。Linux では、持ち運び用の .bin インストーラーが非推奨になり、今回の版までは提供が続きます。推奨は 11.5.0 で用意された Debian・RPM・Arch 向けのネイティブパッケージと、NixOS のサービスです。
次に確かめること
11.5.0 より前に Mithril の部分同期を使ったことがある人は、11.6.0 に更新したあと診断画面の「ブロックチェーンデータ」の行を一度見ておくと安心です。欠落が見つかれば、作り直しの提案が出ます。同期が「Replaying ledger」などで止まった経験があり、行に何も出ない場合でも、再構築ボタンから作り直しを選べます。
Linux で .bin を使っている人は、今回が案内の区切りです。確認できる次の一点は、GitHub の Daedalus リリースページに載る次の版のリリースノートで、.bin の提供が終わるのか、cardano-node が 11.1.3 から上がるのかの 2 点が書かれるはずです。後者は、10 月 23 日に公開テストネットが始まった次のハードフォーク Dijkstra に、フルノード型ウォレットがどう備えるかの目安にもなります。
ことば
- Mithril スナップショット — 多数の SPO の署名で正しさが保証された、ある時点のブロックチェーンの写し。Daedalus はこれを使って初回同期を短くし、11.6.0 では欠けたデータの作り直しの元にも使います。
- フルノード型ウォレット — ブロックチェーンの全データを手元に持ち、自分のノードで取引を確かめるウォレット。他人のサーバーに頼らない代わりに、同期やデータ破損への対処を利用者の側で担う場面があります。
- Electron — Web の技術でデスクトップアプリを作るための土台。Daedalus の画面はこの上で動いており、版を上げると既知の脆弱性への対応が取り込まれます。
一次ソース / 関連リンク
- Se7en Labs 公式 X の告知(Daedalus 11.6.0)
https://x.com/se7en_labs/status/2113821019861610990


