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SecondFi、逸失ステーキング報酬は現時点で請求対象外

2026-09-22SIPO

SecondFi (旧 Yoroi) は日本時間 2026 年 9 月 22 日 19 時 52 分、公式 X アカウント (@secondfiapp) で、6 月の事案で影響を受けたウォレットについて、事案の時点でまだ割り当てられていなかったステーキング報酬は現時点で請求の対象に含めないと明らかにしました。影響ウォレットの ADA はもうステークされていないため、資産が戻るまでのあいだ報酬はほとんど生まれず、その分はいまの方針では補われないことになります。

報酬の規模は、Cardano 全体の実績で見ると、プールの手数料を差し引いた委任者の取り分で年率およそ 1.6% です。報酬が止まってからの 85 日間なら、1 万 ADA あたり 40 ADA 前後にあたります。ステーキングの報酬は置いておくだけで増えていく ADA の一部なので、事案の影響は、ウォレットから移された ADA そのものだけでなく、報酬が止まっている時間の分にも及んでいます。本記事では、公式が示した 2 つの区分、報酬がいつどこに入るかという仕組みから見た区分の境目、そして影響ウォレットで報酬を自分で取りに行かないほうがよい理由を整理します。

■ 公式が示した 2 つの区分

投稿は「影響ウォレットの ADA ステーキング報酬に関する更新」と題し、問い合わせが相次いでいるとして 2 つの問いに答えています。1 つ目の「影響を受けたウォレットはまだ報酬を得ているか」には「いいえ」と答え、影響ウォレットの ADA はもうステークされておらず、これらのアドレスは新しい報酬を得ていないと説明しました。

2 つ目の「失った報酬は補償されるか」への答えは、インシデント FAQ の設問と同じ内容です。FAQ の文面は次のとおりです。

Rewards that had already been allocated and were transferred during the security incident period to an affected address will be included in the recovery process.
Rewards that had not yet been allocated or paid out at the time of the incident are currently not included in the claim process.

事案の期間中にすでに割り当てられ、影響アドレスへ移っていた報酬は回収プロセスに含める。事案の時点でまだ割り当ても支払いもされていなかった報酬は、現時点では請求プロセスに含めない。この 2 つです。原文は currently (現時点では) という語を使っていて、あとから扱いが変わる余地は残されています。

この設問は、最終更新日が 9 月 8 日のインシデント FAQ にすでに載っているもので、FAQ の更新日は 9 月 22 日夜の時点でも 9 月 8 日のままです。今回の投稿は FAQ の答えをあらためて周知し、「もうステークされていない」という一文を添えたものといえます。日本語アカウント (@secondfi_jp) には、9 月 22 日 22 時の時点で同じ内容の投稿はありません。

同じ FAQ には、取り戻せなかった NFT について、1 点あたり 30 ADA を一律に付与する方針も書かれています。NFT の価値を評価したものではなく好意としての措置で、希少性や市場価格は反映しないこと、対象は SecondFi の事案スナップショットの時点で保有していた NFT に限られることが明記されています。

■ 報酬は 2 エポック後に「報酬アカウント」へ入る

2 つの区分の境目を考えるには、Cardano の報酬がいつ、どこに入るかを押さえておく必要があります。

Cardano では 5 日ごとの区切り (エポック) の境目でステーク量が記録され、それにもとづく報酬は、稼いだエポックの 2 つ後の境目で配られます。配られる先はウォレットのアドレスそのものではなく、ステークキーに結びついた報酬アカウントです。報酬アカウントの残高は、引き出しの取引に署名するまでそこにとどまります。

事案の期間は 6 月 21 日から 23 日で、エポック 638 (日本時間 6 月 19 日 6 時 44 分から 24 日 6 時 44 分) の中にあたります。事案より前の記録にもとづく報酬は、事案のあとに配られました。エポック 637・638・639 の 3 回分で、配られたのは日本時間の 6 月 24 日・29 日・7 月 4 日です。ステークが消えたあとの記録が効き始めるのはエポック 640 からで、そこから先は報酬が生まれていません。

公式の文面は「事案の期間中に割り当てられ、影響アドレスへ移った報酬」を回収の対象に含めるとしていますが、事案の直後に報酬アカウントへ入ったこの 3 回分がどちらの区分に入るのかは、文面からは読み取れません。

SIPO は 9 月 22 日夜、SecondFi が確保したと発表している約 1 億 2,900 万 ADA と同じ規模の ADA が集められたアドレスについて、そこへ資金を送ったステークキー 2,937 件の報酬アカウントを、Koios と AdaStat で確かめました。攻撃者による 374 ウォレット・約 1,610 万 ADA の流出は、この集計に入っていません。

分かったことは 3 つあります。1 つ目は、このアドレスへ資金を移した取引のうち 764 件が、同じ取引の中で報酬アカウントからの引き出しも行っていたことです。766 のステークキーから、計約 73 万 ADA の報酬が資金と一緒に移されていました。公式が回収に含めるとした「事案の期間中に割り当てられ、移った報酬」は、こうして資金と一緒に動いた報酬のことだと読めます。

2 つ目は、事案のあとに配られた 3 回分の行き先です。1,666 のステークキーに計約 13 万 5,000 ADA が入っていました。3 つ目に、9 月 22 日の時点で、636 のステークキーの報酬アカウントに計約 135 万 ADA が引き出されないまま残っています。事案の前から貯まっていた報酬も含んだ額です。

また、626 のステークキーはいまもステークプールへの委任が続いていて、残高に応じた報酬が少しずつ付き続けています。報酬アカウントの残高や、同じステークキーのもとに残っている ADA も、ステーク量に数えられるためです。公式の「もうステークされていない」は、抜き取られたアドレスの ADA についての説明として読むと、実態と合います。

報酬アカウントに残っている分がどちらの区分に入るのか、そもそも回収の対象になるのかは、公式の文面には書かれていません。残っているからといって自分で引き出すのが危険な理由は、最後の章で説明します。

■ 85 日で 1 万 ADA あたり 40 ADA 前後

報酬が生まれなくなってからの期間は、エポック 640 から 656 までの 17 エポック、日数にして 85 日です。この間に Cardano 全体で委任者に配られた報酬をアクティブなステーク量で割り、年率に直すと、およそ 1.6% になります。プールの手数料を差し引く前の値では約 2.2% です (エポック 638〜655・AdaStat と Koios の集計が一致・9 月 22 日に取得)。1 万 ADA がステークされていれば、85 日で 40 ADA 前後、手数料を差し引く前なら 50 ADA 前後の報酬が付いていた計算です。プールごとに手数料と成績が違うため、実際の額は委任先によって前後します。

回収ポータルが公開されるまで、この差は 1 万 ADA あたり 1 か月に 13 ADA 前後ずつ広がります。インシデント FAQ は回収ポータルの公開を「2026 年 9 月」としていますが、9 月 14 日の投稿では、回収用スマートコントラクトの監査を終えたあと「今後数週間以内」とされていて、FAQ の記述はまだその更新を反映していません。

資金の置き場でも報酬は生まれていません。EMURGO が設けた回収基金のアドレス (7 月 4 日に SecondFi が公表・9 月 22 日夜の残高 16,103,470.74 ADA) は、ステークキーが登録されておらず、委任も報酬もありません。SecondFi が確保したと発表している約 1 億 2,900 万 ADA は保管先のアドレスが公表されていませんが、SIPO が 6 月から追っている、同じ規模の ADA が集められたアドレス (残高 129,429,998.98 ADA) も同じく未登録です。ステークしていない理由は公表されていません。どちらにしても、あとから利用者へ上乗せして返せる報酬が、置き場の側で積み上がっているわけではありません。

■ 報酬は取りに行かず、戻ったら委任をやり直す

報酬アカウントに残っている分を自分で引き出して守りたい、と考える方もいると思います。SecondFi は 6 月 25 日の投稿で、これを避けるよう明確に書いています。

This includes withdrawing staking rewards even using another wallet.
Reward withdrawal and delegation are signed with the stake credential. The withdrawn funds could be routed to your first/default address (as indicated above), which has a high chance of being compromised (wallets work differently managing it). Mempool-monitoring adversaries can front-run or sweep your assets on confirmation.

報酬の引き出しも委任もステークキーで署名する操作で、別のウォレットから操作しても、引き出した報酬はウォレットの既定のアドレスへ送られることがあります。そのアドレスは侵害されている可能性が高く、送金が確定した時点で抜かれかねない、という説明です。インシデント FAQ も、SecondFi のキャッシュバック報酬 (BRING) についての設問で、報酬を得ようとして侵害されたウォレットで操作しないよう求めています。SIPO は 6 月 26 日の記事で、ステーカーが踏みやすい同じ種類の罠をまとめています。

影響ウォレットは、いまも「使わない・削除しない」が公式の指示です。報酬の差を小さくするためにできることは、資産が戻ったあとにあります。回収された ADA を新しいウォレットで受け取ったら、できるだけ早くステークプールへの委任をやり直してください。Cardano では委任してから最初の報酬が届くまでにおよそ 15〜20 日かかるので、委任が 1 エポック遅れるごとに、戻ったあとの空白も 5 日ずつ伸びます。DRep への委任も同じときにやり直しておくと手間が 1 回で済みます。

次に確かめる一点は、回収ポータルが公開されたときのインシデント FAQ の報酬の設問です。公開は SecondFi の公式 X (@secondfiapp・@secondfi_jp) で告知されます。そのとき「現時点では含めない」という書き方が変わるか、事案の直後に報酬アカウントへ入った 3 回分の扱いが書き加えられるかを、SIPO は確認します。

■ ことば

  • 報酬アカウント — ステークキーに結びついた、ステーキング報酬の入り先。アドレスの残高とは別に積み上がり、引き出すには署名が要るため、影響ウォレットでは残高があっても手を付けにくい場所になっています。
  • エポック — Cardano の 5 日ごとの区切り。境目ごとにステーク量が記録され、報酬はその 2 つ後の境目で配られるため、事案の日付と報酬が止まる日付がずれて見えます。
  • ステークキーの登録 — アドレスをステーキングに参加させるための登録。登録と委任がないアドレスには、どれだけ ADA があっても報酬は付きません。回収基金のアドレスには、この登録がありません。

一次ソース / 関連リンク