Intersect は 9 月 29 日、Cardano のノードソフト cardano-node の 11.1.3 を正式版として公開しました。11.1.2 で意図せず変わっていた「台帳が IPv4 アドレスを読み取るときのバイトの順序」を、11.1 系より前と同じネットワークの順序に戻す修正版です。
あわせて Intersect は、ステークプールの運用者(SPO)とノードの運用者に対し、最低でも 11.1.2 を動かすこと、11.1.2 より古い版を使っている場合は 11.1.3 へ直接上げることを案内しています。ノードの版をいつ上げるかは運用者一人ひとりの判断にゆだねられているため、こうした小さな修正版が各地のノードに行き渡るかどうかが、分散したネットワークの足腰を左右します。この記事では、修正の中身と、使っている版ごとにどこへ上げればよいのかを整理します。
初期報: Cardano Node 11.1.3がリリース、IPv4アドレスのデコード問題を修正
11.1.2 で変わっていた、IPv4 の読み取り順
リリースノートが挙げる変更は、この 1 点です。
“releases before 11.1.x decoded IPv4s using network order, which 11.1.2 inadvertently changed; this has been reverted to using network order for decoding IPv4s.”
IPv4 アドレスは、たとえば 192.0.2.1 のように 4 つの数字で書きますが、データとしては 4 バイトの並びです。これをどちらの端から読むかには決まりがあり、ネットワークの世界では上位のバイトから順に並べる「ネットワークの順序」が標準です。読む側の順序が違えば、同じ 4 バイトが別のアドレスとして解釈されることになります。
Cardano の台帳に IPv4 アドレスが現れる代表的な場所は、ステークプールが登録証明書に書き込むリレーの宛先です。リリースノートは、11.1.2 の読み取り順の違いが実際にどのような影響を生んだのかまでは説明していません。一方で、更新にあたって台帳の再生(リプレイ)は不要とされており、修正版に入れ替えるだけで済む作りになっています。
11.1.2 から 11.1.3 までのコミットは 6 件で、台帳のデータを読み書きする部品 cardano-ledger-binary の版上げと、Plutus の版上げが含まれます。cardano-node の変更履歴には「ブロックヘッダーに記すプロトコルバージョンのマイナー番号を更新」が 1 行あり、cardano-cli・cardano-api・cardano-tracer などほかの構成部品は「変更なし」です。開発者向けツールでは、plutus-ledger-api の plc optimise が --certify と --certifier- の 2 つのオプションを受け付けなくなる互換性の変更が記されています。
既知の課題は 11.1.2 と同じで、11.0.1 と比べて同期中と最新ブロックの追従中にメモリの使用がわずかに増えます。性能測定とシステムテストは 11.1.1 の結果がそのまま当てはまるとされ、Intersect の技術運営委員会やテスト・性能・リリースの担当者など 6 つの役割がすべて承認しています。
使っている版ごとの上げ先
Intersect の告知は、Preprod テストネット(本番と同じ仕組みで動く検証用のネットワーク)で見つかった問題を受けて、最低でも 11.1.2 を動かすよう求めています。Preprod で見つかった問題の中身は、この告知では説明されていません。そのうえで、上げ先は次のように整理できます。
- 11.1.2 で動かしている場合 — IPv4 の読み取り順を直した 11.1.3 へ。
- 11.1.2 より古い版(11.0.1 など)で動かしている場合 — 11.1.2 を経由せず、11.1.3 へ直接。
どちらの場合も、台帳の再生は要りません。
ブロック生成とリレーの役割で公式に対応しているのは、これまでどおり Linux です。Windows と macOS はデスクトップのクライアントとしての利用に限られます。
ステーキングで ADA を委任している方の側で必要な操作はありません。ノードの版を上げるのは各プールの運用者の作業で、委任先の変更やウォレットでの手続きは不要です。
ノードを内蔵するデスクトップウォレット Daedalus は、9 月 18 日(UTC)の 11.4.0 でノードを 11.1.2 に上げたところでした。9 月 30 日時点で、Daedalus のリリース欄の最新は 11.4.0 のままです。
3 週間で 3 つの版
11.1 系の版は、この 3 週間で細かく刻まれてきました。9 月 8 日の 11.1.1 は、性能の改善とともに次の Dijkstra 時代へのハードフォークに向けた下準備を入れた版で、9 月 17 日の 11.1.2 はタイムロックスクリプトのメモリの使い方を改善しました。今回の 11.1.3 は、その 11.1.2 で生じた読み取り順の違いを正す位置づけです。
11.1.3 への版上げのコミットは 9 月 24 日(UTC)に入り、リリース欄への掲載とリリースノートの公開は 9 月 29 日でした。Cardano には新しいノードを全台へ一斉に配る仕組みがないため、正式版が出てからが、運用者それぞれの入れ替えの始まりになります。
SIPO の 3 プールと、次に確かめる場所
SITION が運用する SIPO / SIPO2 / SIPO3 は、9 月 24 日までにリレーを含むすべてのノードを 11.1.2 に揃えており、Intersect が求める最低ラインは満たしています。9 月 27 日の記事では、当時タグだけが先に作られていた 11.1.3 について、正式に公開された段階で中身を確かめ、必要な対応をあらためてお知らせするとお伝えしていました。その正式公開が今回です。
次に確かめる場所は、cardano-node の GitHub リリース欄です。11.1.3 に続く版が出たとき、既知の課題に残る 2 項目(同期中と最新ブロック追従中のメモリ増)が外れているかどうかが、11.1 系の落ち着きどころを測る目安になります。ノードを内蔵する Daedalus を使っている方は、Daedalus のリリース欄に 11.1.3 を取り込んだ版が並ぶかどうかもあわせて確かめられます。
ことば
- IPv4 アドレス — インターネット上の宛先を 4 バイトで表す番号。Cardano ではステークプールが登録するリレーの宛先に使われ、ほかのノードがつなぎに行く先を台帳に残す役目を持ちます。
- ネットワークの順序 — 複数バイトの数を上位のバイトから並べる決まり(ビッグエンディアン)。通信の世界の標準で、読む側と書く側がこの順序で揃っていないと同じデータが別の値に見えます。
- 台帳の再生(リプレイ) — ノードがチェーンの記録を最初から読み直し、台帳の状態を作り直す作業。時間がかかるため、更新時に不要とされるかどうかは運用者にとって大きな違いです。
一次ソース / 関連リンク
- cardano-node 11.1.3 リリースノート(2026 年 9 月 29 日)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-node/releases/tag/11.1.3 - Intersect の告知(Technical update: Cardano Node 11.1.3)
https://x.com/IntersectMBO/status/2104966494786318497 - 11.1.2 から 11.1.3 までの変更(GitHub の比較)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-node/compare/11.1.2…11.1.3 - cardano-node 11.1.2 リリースノート(2026 年 9 月 17 日)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-node/releases/tag/11.1.2 - Daedalus リリース一覧
https://github.com/input-output-hk/daedalus/releases - SIPO、全ノードを cardano-node 11.1.2 に更新(SIPO.TOKYO・2026 年 9 月 27 日)
https://sipo.tokyo/sipo-node-11-1-2-20260927/
