カルダノのステーキングは、ADA を自分のウォレットに置いたまま「どのステークプールにブロック生成を任せるか」を指定するだけで、約 5 日ごとに報酬が届く仕組みです。2020 年 7 月 29 日の Shelley アップグレードで始まって以来、資産を預けない・ロックしない・没収されないという設計を一度も変えていません。
この記事では、ステーキングで何が得られるのか、報酬はどこから来ていつ届くのか、プール選びがなぜカルダノの分散そのものにつながるのかを、オンチェーンの数値を交えて順に解説します。読み終えたら、すぐに始められるよう、Lace と Daedalus の操作手順は「委任マニュアル 2026 年版」にまとめました。
ステーキングで得られる 3 つのもの
1. 約 5 日ごとに届く報酬
カルダノは約 5 日を「エポック」という単位で区切って動いています。ADA をステークプールに委任しておくと、そのプールが作ったブロックの成果に応じて、エポックごとに報酬が自動で配られます。受け取った報酬は次の計算から自動的に委任額に含まれるため、何もしなくても複利で増えていきます。
報酬率はネットワーク全体の委任状況やプールの成績で変わるため、特定の利回りを約束できるものではありません。ただ、ウォレットに置いたままの ADA に「働く先」を与えるだけで報酬が積み上がっていくのは、ほかの資産にはあまりない性質です。
2. ネットワークの安全を支える一票
カルダノのブロックを作る権利は、委任された ADA の量に応じて各プールへ配られます。つまり、あなたがどのプールに委任するかは、そのままブロックを作る力の配分になります。ステーキングは報酬の受け取りであると同時に、カルダノのコンセンサス(Ouroboros)に参加する行為です。
3. カルダノの意思決定への入口
2025 年 1 月 29 日の Plomin アップグレード以降、カルダノでは ADA の保有者が DRep(委任代表者)を通じて、国庫の使い道やプロトコルの変更に意見を反映できるようになりました。ステーキングに使うのと同じ ADA で、ガバナンスにも参加できます。こちらは「DRep への委任とは」で詳しく解説しています。
「預ける」ではなく「指定する」
ステーキングと聞くと、資産をどこかに預けて一定期間引き出せなくなるイメージを持つ方も多いと思います。カルダノのステーキングは、その点がはっきり違います。
- ADA はウォレットから動きません:委任は「この ADA のステーク権をこのプールに割り当てる」という証明書をブロックチェーンに記録するだけです。プール運営者があなたの ADA に触れることはできません
- ロックも解除待ちもありません:委任中も送金・売却は自由です。別のプールへの切り替えも、委任の解除も、いつでもできます
- 没収(スラッシング)がありません:プールがブロック生成に失敗した場合は、そのエポックの報酬が減るだけで、委任者の元本が減ることはありません
カルダノの公式サイトも、委任した ADA はウォレットに残り、いつでも使え、ロックはないと明記しています。PoS(プルーフ・オブ・ステーク)のチェーンの中には、資産を一定期間ロックしたり、運営者の不正や障害のときに預けた資産の一部を没収したりする仕組みを持つものもあります。カルダノは「資産の安全」と「ネットワークへの参加」を切り離して設計した数少ないチェーンのひとつです。
必要なのは、初めて委任するときのデポジット 2 ADA(委任を解除すると戻ります)と、少額のトランザクション手数料だけです。
報酬はどこから来ているのか
報酬の原資は 2 つあります。ひとつはまだ流通していない ADA の「リザーブ(準備金)」で、毎エポックその残高の 0.3% が報酬に回ります。もうひとつは、そのエポックに支払われたトランザクション手数料です。この合計から 20% がカルダノの国庫(トレジャリー)に入り、残りがステークプールと委任者に分配されます。
各プールに配られた報酬からは、まずプール運営の固定費とマージン(運営手数料の率)が差し引かれ、残りが委任額に応じて委任者へ配られます。マージンや固定費は報酬の計算の中で差し引かれるもので、委任者のウォレットから別に引き落とされることはありません。
| 項目 | 現在の値(2026 年 10 月 11 日・エポック 660) |
|---|---|
| リザーブから報酬に回る率(1 エポックあたり) | 0.3% |
| 報酬のうち国庫へ入る率 | 20% |
| 委任登録のデポジット | 2 ADA(解除時に返還) |
| プール固定費の最低額 | 170 ADA / エポック |
リザーブは毎エポック少しずつ減っていくため、長期的には手数料の比重が大きくなっていく設計です。カルダノの上で使われる取引が増えるほど、ステーキングの報酬を支える土台も厚くなります。
委任してから報酬が届くまで
委任した直後に報酬が出るわけではありません。カルダノは、エポックの区切りで委任額を記録(スナップショット)し、その記録をもとに次のエポックでブロック生成の権利を配り、さらにその次で報酬を計算する、という順番で動いています。

- エポック N:ウォレットで委任する
- エポック N+1 の始まり:委任額がスナップショットに記録される
- エポック N+2:委任が有効になり、プールがその委任額でブロックを作る
- エポック N+3:報酬が計算される
- エポック N+4 の始まり:初回の報酬が届く(委任から約 15〜20 日後)
2 回目以降は、エポックが切り替わるたびに約 5 日ごとに届きます。この待ち時間はどのプールでも同じで、プールを切り替えたときも、新しいプールの分は同じ順番で始まります(切り替え前のプールの報酬は、切り替えるまでの分が予定どおり届きます)。
プール選びは、カルダノの分散そのもの
2026 年 10 月時点で、ブロックを作る委任を受けているプールは約 2,700 あります。どれを選んでも、ADA がウォレットから動かない点は同じです。それでもプール選びが大事なのは、委任の偏りがそのままネットワークの偏りになるからです。
飽和(サチュレーション)
カルダノには、1 つのプールに委任が集まりすぎないための上限があります。目標のプール数を表すパラメータ k が現在 500 で、総供給量からリザーブを除いた ADA をこの k で割った約 7,780 万 ADA が「飽和点」になります。委任額がこの点を超えたプールは、超えた分の報酬が増えないため、委任者の利回りが下がります。委任が少数のプールに集中しないよう、仕組みそのものが分散を促しています。
プールを選ぶときに見るところ
- 飽和度:100% に近いプールは避けるのが基本です。余裕のあるプールほど、新しい委任の影響を受けにくくなります
- マージンと固定費:運営の手数料です。極端に低い設定は、運営の持続性とあわせて見ます
- プレッジ:運営者自身がプールに出している ADA です。プレッジの多さは報酬の計算にも少し影響します
- 運営の実績と発信:ブロックを安定して作ってきたか、運営者が何者で、何をどう伝えているか
数値は Lace や Daedalus のプール画面のほか、AdaStat や Cexplorer のような第三者のサイトで誰でも確認できます。
リスクと注意点
ステーキングそのものは元本を危険にさらしませんが、知っておきたいことがいくつかあります。
- ADA の価格は変動します:報酬は ADA で届くため、円やドルに換算した価値は相場で上下します
- 報酬はエポックごとに変わります:プールがそのエポックに作れるブロックの数は確率で決まるため、運営に問題がなくても報酬が多い回・少ない回があります
- 詐欺に注意してください:委任のためにリカバリーフレーズ(秘密の単語)を入力させるサイトや、DM で「サポート」を名乗る相手はすべて詐欺です。ウォレットは公式サイトからのみ入手してください
- 税金:日本では、ステーキング報酬は受け取った時点の時価で課税対象(雑所得等)として扱われるのが一般的とされています。個別の状況は税理士・税務署にご確認ください
SIPO に委任するということ
SIPO は、SITION が運営しているステークプールです。最初のプール(ティッカー SIPO)をブロックチェーンに登録したのは 2020 年 7 月 30 日、ステーキングが始まった Shelley アップグレードの翌日でした。同じ年の 11 月に SIPO2、12 月に SIPO3 を加え、3 つのプールで累計 47,920 ブロックを作ってきました。
現在は SIPO・SIPO2・SIPO3 の 3 つのプールを運営しており、報酬の条件は 3 つとも同じです。
| プール | 委任量 | 委任者 | 飽和度 | 累計ブロック |
|---|---|---|---|---|
| SIPO | 5,264 万 ADA | 1,108 人 | 67.7% | 20,437 |
| SIPO2 | 3,485 万 ADA | 473 人 | 44.8% | 15,229 |
| SIPO3 | 2,457 万 ADA | 545 人 | 31.6% | 12,254 |
(2026 年 10 月 11 日時点・AdaStat の値。委任量はライブステーク)
3 プール共通の条件は、マージン 3.9%・固定費 340 ADA・プレッジ 50,000 ADA です。これから委任する方には、飽和度に余裕のある SIPO2 か SIPO3 をおすすめしています。
SIPO が委任先として大事にしているのは、ブロックを作ることの先にある 3 つの仕事です。
- 日本語で、毎日伝えること:カルダノと Midnight の動きを、毎朝の「Daily Intel」、ニュース解説の「Signal」、エポックごとの定点観測「エポックな日々」で、一次ソースを確かめたうえで日本語にしています
- ガバナンスで判断を示すこと:SIPO は DRep としても登録しており、提案ごとの賛成・反対・棄権を理由とあわせて公開しています。SPO(プール運営者)として参加するポールでも、たとえば k を 1000 に上げる案には 3 プールで反対し、その理由を記事にしました
- 透明に運営すること:2026 年のマージン改定は 6 月 4 日に告知し、7 月 9 日の発効まで 1 か月あまりを置きました。ノードの更新や累計ブロック数の節目も、記事と @SIPO_Tokyo でお知らせしています
委任先をどこにするかは、委任者の皆さまが決めることです。SIPO はその判断を尊重します。そのうえで、日本語でカルダノを追いかけ、ガバナンスの判断まで見える委任先を探している方に、SIPO を選択肢のひとつに入れていただけたらうれしいです。
はじめ方
すでにウォレットをお持ちなら、委任は数分で終わります。
- ウォレットを用意する(これからの方には、ブラウザ拡張機能とスマートフォンで使える Lace をおすすめします)
- 取引所から ADA をウォレットへ送る(最初は少額で試すと安心です)
- ステーキングの画面で「SIPO」を検索し、SIPO2 か SIPO3 を選んで委任する
- あわせて DRep への委任も済ませる(報酬の引き出しに必要です)
画面ごとの手順は「委任マニュアル 2026 年版(Lace / Daedalus)」で、スクリーンショット付きで解説しています。プールの最新の数値は「ステーキングをはじめる」のページでいつでも確認できます。
委任のあとは、AdaStat の SIPO のページで、エポック N+2 に委任が有効になっているかを確かめてみてください。初回の報酬は、委任した日から数えて 4 回目のエポックの切り替わり、おおむね 15〜20 日後にウォレットに表示されます。
ことば
- エポック — カルダノの時間の単位で、約 5 日(432,000 スロット)です。委任の記録・報酬の計算・配布はすべてエポックの区切りで行われるため、委任から初回の報酬まで 4 回の区切りを待つことになります。
- 飽和点 — 1 つのプールが報酬を最大に受けられる委任額の上限で、いまは約 7,780 万 ADA です。パラメータ k を上げると上限は下がるため、k の変更はプールの数や分散の議論と直結します。
- プレッジ — プール運営者が自分のプールに出している ADA です。運営者の「本気度」を示す数字で、報酬の計算でも多いほうがわずかに有利になる仕組みです。
一次ソース / 関連リンク
- Cardano 公式:ステークプールへの委任
https://cardano.org/stake-pool-delegation/ - Cardano 公式:用語集「Delegation」
https://cardano.org/glossary/delegation/ - Cardano 公式:ハードフォークの履歴(Shelley・Chang・Plomin)
https://cardano.org/hardforks/ - Cardano Developer Portal:ステーキングの仕組み
https://developers.cardano.org/docs/developers/curriculum/staking-governance/staking/ - Cardano Docs:プレッジと報酬
https://docs.cardano.org/about-cardano/learn/pledging-rewards - AdaStat:SIPO プール
https://adastat.net/pools/76bfa1b2e6593740c3388ed881cbe851dbab8d8741652c9bad16cc94 - SIPO:ステーキングをはじめる
https://sipo.tokyo/staking/