IntersectMBO は 10 月 23 日(日本時間 15 時過ぎ)、次のハードフォーク Dijkstra に向けた公開テストネットが使えるようになったと発表し、ステークプール運営者(SPO)の参加受付を始めました。いまのテストネットは Conway 期のプロトコルバージョン 11 で動いており、node 11.2 のプレリリースを経てバージョン 12(Dijkstra)へハードフォークする段取りです。
Dijkstra は、10 月 21 日に伝えた Leios の段階導入や、最低プールマージン(CIP-23)が入る予定のハードフォークです。メインネットより先に、SPO が自分のノードでその移行を通しで試せる場所ができたことになります。参加に何が要るのか、公開された設定ファイルから何が読み取れるのかを整理します。
初期報: Cardanoの公開Dijkstraテストネット、SPOのオンボーディング開始
Intersect が示した 5 つの段取り
Intersect の告知は、このテストネットで進める順番を次のように並べています。
- node 11.1.3 で、プロトコルバージョン 11(Conway)のまま動かす
- node 11.2 のプレリリース
- ハードフォーク開始のガバナンスアクション(Hard Fork Initiation)
- node 11.2 で、プロトコルバージョン 12(Dijkstra)へハードフォーク
- Leios を除いた Dijkstra の機能一式で、統合とテスト
いまは最初の段にあたります。運用手順書(Cardano Operations Book)の Dijkstra ページも、Conway のバージョン 11 にいるのは「短い期間」で、node 11.2.0 がプレリリースされた時点でネットワークの設定を更新して出し直し、そのすぐ後にバージョン 12 へのハードフォークが続く、と書いています。10 月 23 日時点で、GitHub の cardano-node のリリース一覧に 11.2 はまだ出ておらず、最新は 9 月 29 日の 11.1.3 です。
最後の段に「Leios を除く」とある点は読み落とせません。Leios は Dijkstra とともに Cardano に入ると IOG が説明している処理能力の拡張ですが、この公開テストネットで確かめるのは、それ以外の Dijkstra の変更です。Leios 自体は、10 月 17 日の記事で扱ったように、別のテストネットで SPO による負荷試験が進んでいます。
参加に要るのは node 11.1.3 と専用の設定ファイル
告知に続く投稿で、Intersect は参加に使う資料を 4 つ挙げました。cardano-node 11.1.3、Dijkstra 用の設定ファイル、テスト用 ADA の配布所(faucet)、エクスプローラの Kleioscan です。
node 11.1.3 は 9 月 29 日に出た版で、台帳が IPv4 アドレスを読み取る順序を 11.1.2 より前の扱いに戻す修正が中心でした。プレリリースではない正式版なので、テストネットのために特別なビルドを用意する必要はありません。
設定ファイルは Operations Book の Dijkstra ページにまとまっています。ノードの設定、トポロジー、各期の genesis ファイルに加え、Dijkstra 期の genesis ファイルとガードレールのスクリプトも並んでいます。同じページには、運用上の注意が 3 つ書かれています。
- 旧来のトレース(ログ出力)の仕組みはもう使えない
- PeerSharing を有効にしたノードを、InitiatorOnlyMode のブロック生成ノードにつながない(ブロック生成ノードの IP アドレスが漏れるため)
- 合意の方式は Ouroboros Genesis モードが既定で、必要なら設定の ConsensusMode を PraosMode にして従来の方式へ戻せる
faucet はテスト用 ADA を配るだけでなく、新しく立てたプールへのステーク委任も受け付けています。委任が集まらないとブロックを作る機会が来ないので、新規プールで試す SPO にとってはここが入口になります。
エポックの長さは 1 日です。Shelley の genesis ファイルを見ると、1 エポックが 86,400 スロット、1 スロットが 1 秒で、ネットワークの識別番号(network magic)は 6、起点の日時は 10 月 18 日 0 時(UTC)に設定されています。メインネットの 5 日より短いので、エポックをまたぐ動き、たとえば報酬の計算や委任の反映を、1 日単位で見られます。
Dijkstra の genesis ファイルに入っていた最低マージン 1.5%
SPO にとっていちばん具体的な手がかりは、Dijkstra 期の genesis ファイル(dijkstra-genesis.json)の中身です。このファイルには minPoolMargin という項目があり、値は 0.015、つまり 1.5% と書かれています。
minPoolMargin は、CIP-23 が定めるプール手数料の比率の下限です。10 月 21 日の記事のとおり、CIP-23 はバージョン 13 に回る見通しから Dijkstra(バージョン 12)へ前倒しされ、台帳の GitHub では、報酬計算にこの下限を効かせるコードが下書きとして出ていました。テストネットでは、そのパラメータに 0 ではない値がすでに入っています。
ただし、これはテストネットの Dijkstra 期の初期値です。メインネットでいくつになるかは、この設定ファイルからは読み取れません。テストネットで 1.5% を置いたことの意味は、下限が実際に効く状態で報酬がどう計算されるかを、ハードフォーク後のエポックで確かめられる点にあります。
同じファイルには、Plutus V4 のコストモデル(plutusV4CostModel)も含まれています。Plutus V4 の台帳の型は 10 月 19 日の CIP-0195 の記事で扱いました。そのコストモデルが Dijkstra 期の genesis に入っているので、スマートコントラクトの開発者にとっても、このテストネットは動作を確かめる場所になります。
次に確かめる場所
次の節目は node 11.2 のプレリリースです。GitHub の cardano-node のリリース一覧に 11.2 が出たら、Operations Book の Dijkstra ページで設定ファイルが出し直されているかを確認してください。そこからハードフォーク開始のアクション、バージョン 12 への切り替えと続きます。切り替え後に Kleioscan でエポックごとの報酬を見れば、最低マージン 1.5% が報酬計算にどう表れるかを、メインネットより先に追えるはずです。
ことば
- Dijkstra — Cardano の次のハードフォーク(プロトコルバージョン 12)の名前です。Leios による処理能力の拡張や、CIP-23 の最低マージンがこの段で入る見通しで、今回のテストネットはその移行手順を先に試す場になります。
- Ouroboros Genesis モード — 新しく同期するノードが、信頼できる起点に頼らずに正しいチェーンを選べるようにする合意の方式です。このテストネットでは既定になっており、従来の Praos モードへ戻す設定も残されています。
- minPoolMargin — CIP-23 が定めるプール手数料の比率の下限です。これまで手数料の床は固定費(minPoolCost)だけでしたが、ここに比率の床が加わります。テストネットの初期値は 1.5% です。
一次ソース / 関連リンク
- IntersectMBO 公式 X の告知(公開 Dijkstra テストネット)
https://x.com/IntersectMBO/status/2113511556411478174 - IntersectMBO 公式 X の参加資料の案内
https://x.com/IntersectMBO/status/2113511557778870558
Cardano Operations Book: Dijkstra Testnet(設定ファイル・注意事項・faucet)(book.play.dev.cardano.org)
Dijkstra テストネットの dijkstra-genesis.json(minPoolMargin ほか)(book.play.dev.cardano.org)
Dijkstra テストネットの shelley-genesis.json(エポック長・network magic)(book.play.dev.cardano.org)
Dijkstra テストネットの faucet(faucet.dijkstra.play.dev.cardano.org)
Kleioscan(Dijkstra テストネット)(kleioscan.com)
- 既報: Leios の Musashi Dojo、SPO の負荷試験日に毎秒157.9件
https://sipo.tokyo/signal-20261017-09bf8138/ - 既報: Plutus V4 の台帳の型、CIP-0195 でリスト表現に
https://sipo.tokyo/signal-20261019-7a58a17d/


