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World Mobile、Base の WMTX 新規発行を「認可済み」と告知

2026-09-23SIPO

World Mobile の公式アカウントが日本時間 9 月 22 日 22 時 28 分、ブリッジ事案の復旧作業の一環として Base 上で WMTX の新規発行を始めると告知しました。「オンチェーンで新しい発行トランザクションが見え始めるかもしれません。これらは想定どおりで、認可されたものです」という一文が添えられています。

不正な発行から始まった事案の渦中で、当事者が自ら新しい発行を行う。その二つを読者が取り違えないように、発行の前に区別を宣言した形です。同じ日の昼、CEO の Micky Watkins 氏(@MrTelecoms)は事案が封じ込め済みであることと、取引所での取引を止めたまま再開の準備を進めていることを説明していました。ここでは公式アカウントと CEO の投稿をもとに、復旧がどの段階にあるのか、そして Cardano 側から見て何が残る論点なのかを順に見ていきます。

事案そのものの発端と各プロジェクトへの波及は、9 月 21 日の記事で扱いました。

■ 9 月 20 日から 22 日までの四つの告知

公表の順を追うと、作業の重心が移っていることが分かります。

最初の告知は 9 月 20 日 14 時 07 分(JST)でした。SingularityNET のブリッジが侵害され、Ethereum 上で WMTX が不正に発行されたこと、各取引所と連絡を取って影響を受けた入金を凍結していること、セキュリティパートナーと組んで発行権限をすべて失効させる作業を進めていることが挙げられています。同じ投稿は、この種の事案では偽の「サポート」アカウントや復旧サービス、移行用リンクを装う攻撃が続くとして、@wmchain だけが公式の情報源だと明記していました。

翌 9 月 21 日 22 時 10 分(JST)の更新では、中央集権型取引所での取引は停止したままで、分散型取引所の取引は止められないため「現時点で WMTX を取引したり操作したりしないでほしい」という案内が繰り返されます。あわせて、封じ込めの作業と、侵害前の残高スナップショットの突き合わせが続いていると書かれています。

そして 9 月 22 日 20 時 30 分(JST)、CEO の投稿で段階が変わります。「封じ込めは済んでいます。発行は止まり、侵害前のスナップショットは完了しました。安全に再開するための作業を終えるあいだ、取引所での取引は停止しています」。同じ投稿は、初動の一時間目から取引所、マーケットメイカー、セキュリティパートナー、法執行機関と動いてきたと説明しています。

その約 2 時間後に出たのが、Base での新規発行の告知です。「取引所での取引再開に向けた準備と、復旧プロセスの一部として、Base 上での WMTX の発行がまもなく始まります」。止める段階の作業が終わり、戻す段階に入ったことを、発行という最も誤解されやすい行為の手前で宣言した、という並びになります。

■ なぜ発行の前に言う必要があったのか

この告知の要点は、発行そのものより順番にあります。

不正発行を受けた事案では、チェーン上で新しく増えたトークンを見た人が「攻撃がまだ続いている」と読む条件がそろっています。ブロックエクスプローラは発行の意図を区別してくれません。誰が発行したかは見えても、それが認可されたものかどうかは、発行元が言わないかぎり外からは判定できません。公式アカウントが「想定どおりで、認可されたもの」と先に書いたのは、この判定材料を読者に渡すためです。

WMTX はもともと複数のチェーンに展開されており、Base はその一つです。9 月 23 日 14 時 40 分(JST)に Base 上の WMTX コントラクト(0x3e31966d4f81c72d2a55310a6365a56a4393e98d)を直接読むと、総発行量は 191,501,014.790603 WMTX、保有アドレスは 10,424 でした。この値は BaseScan のトークンページで誰でも確認できます。告知どおりに発行が進めば、この数字が動きます。

なお、Ethereum 側で不正に発行された数量については、集計する主体によって公表値に開きがあります。本稿では確定値として扱いません。

■ 電話に出た相手と、出なかった相手

CEO の投稿には、対応にあたった相手先が実名で並んでいます。ここは事案の性質上、そのまま引いておきます。

「@coinbase は見事でした。@bitvavocom、@krakenfx、@chainlink も同じです。肝心なときに、彼らは電話を取り、動きました。」

一方で、SingularityNET 側との関係については温度が違います。同氏は、SingularityNET のチームと通話を持ち、先方のインシデントレポートを @zeroshadow_io および自社の人員とともに精査していると書いたうえで、「@bengoertzel からはまだ連絡がありません。彼のチームは本人が電話すると言っていましたが」と続けています。侵害されたのは SingularityNET のブリッジであり、WMTX はその先で影響を受けた側にあたります。復旧の実務が進む一方で、原因側との調整が公開の場で言及される状態が続いている、ということです。

■ 「重要インフラは自分たちの手に」

投稿の後半で、同氏は今回の教訓を四つ挙げ、最後をこう締めています。

「インフラは自分で持て。7 月には Wanchain のブリッジで 5 億 1,500 万 NIGHT が失われました。ブリッジまたブリッジで、同じ話が繰り返されています。うちだけの問題ではありません。被害が自分たちと協力先の手で素早く抑えられたのは運が良かった。教訓は単純です。重要インフラは自分たちの手に置き、他の誰の手にも渡さない。」

ここで挙がっている 7 月の件は、Cardano 側にとって他人事ではありません。Midnight 財団は 7 月 20 日に、Wanchain の Cardano−BNB ブリッジでブリッジ済み NIGHT に影響する事案の報告を認識していると告知し、翌 21 日には「この事案は Wanchain の Cardano−BNB ブリッジに限定されており、Midnight ネットワーク自体に関わるものではない。プロトコル、バリデータネットワーク、コンセンサス、中核インフラはいずれも安全で、通常どおり稼働している」と説明しています。同財団は同じ週に、KuCoin・Kraken・Binance・Bybit・OKX・Gate・MEXC を含む取引所が、関連アドレスの凍結や NIGHT の入出金停止といった予防措置を取ったことも公表しました。

つまり、7 月も今回も、壊れたのはチェーン本体ではなく、チェーンとチェーンをつなぐ第三者の設備でした。今回の SingularityNET のブリッジ侵害も、起点は運用側の鍵の流出でした。Cardano のエコシステムは、Bitcoin も、ステーブルコインも、NIGHT も、外部のブリッジを通じて他チェーンとつながっています。つなぐ相手が増えるほど、自分たちが監査していないコードと、自分たちが管理していない鍵に依存する面積が広がります。台帳が分散していることと、鍵が分散していることは、同じではありません。

読者として確認できる場所は三つあります。第一に、World Mobile 自身が唯一の公式情報源と明記している @wmchain です。発行の進捗と取引再開は、まずここに出ます。第二に、Kraken をはじめとする各取引所のステータスページで、WMTX の入出金と取引の再開が実際に反映されるかどうか。第三に、Base 上のトークンページで、上に記した 191,501,014 WMTX という 9 月 23 日時点の総発行量が、告知どおりに動くかどうかです。取引再開のアナウンスと、チェーン上の数字が整合しているか。復旧が宣言どおりに進んだかどうかは、この三つを突き合わせれば読者自身で判定できます。

■ ことば

  • ブリッジ — 別々のブロックチェーンのあいだでトークンを移すための仕組み。片方で預かり、もう片方で同じ量を発行する形が一般的で、その発行を許可する鍵が奪われると、預かりの裏付けがないトークンが作られます。今回侵害されたのはこの部分です。
  • 侵害前スナップショット — 事案が起きる直前の残高一覧を記録したもの。誰が正当に何枚持っていたかの基準点になり、復旧時にどのアドレスへいくら戻すかの土台として使われます。World Mobile はこれを完了したと発表しています。
  • 発行権限(ミント権限) — トークンを新しく作れるアドレスに与えられる権限。通常は限られた相手だけが持ちますが、その鍵が漏れると発行が制御できなくなります。事案対応で最初に行われるのが、この権限の失効です。

一次ソース / 関連リンク