Cardano PRIME は 9 月 23 日、cardano-node がチェーンのデータを型のついた形で自前で返せるようになった、と投稿しました。UTxO の照会、トランザクションの評価と送信、ブロックの追従までを挙げ、基本的な経路なら第三者のブリッジは要らない、という説明です。
リリースノートを版ごとにたどると、この 3 つは同時に入ったのではなく、半年かけて別々の版で積み上がっていました。Maestro の開発者 API が 9 月 18 日にサンセットを始めたばかりで、移行先を探している開発者にとっては「今日動いているノードでどこまでできるのか」が実務の問いになります。どの機能がどの版から使えるのかを、一次のリリースノートで確かめていきます。
■ 10.7.0 に入ったのは、UTxO 照会と送信まで
投稿は「10.7.0 から入っていた」としています。cardano-node 10.7.0 が公開されたのは 2026 年 3 月 25 日で、リリースノートは主要な変更のひとつに、gRPC と UTxO RPC のインターフェースである cardano-rpc の最初の実験的リリースを挙げています。
ただし、この版の RPC の節には注意書きが添えられています。
This is a very first release of cardano-rpc. One should treat it as EXPERIMENTAL. The configuration and non-UTXO RPC endpoints are not stable.
そして 10.7.0 の RPC 変更点として並んでいるのは、readUtxos という UTxO RPC のクエリ、submitTx メソッド、プロトコルパラメータのクエリ、getProtocolParamsJson という gRPC エンドポイント、proto 定義の utxorpc v1 beta への更新などです。照会と送信は確かにこの時点で入っています。一方、投稿が挙げた評価とブロック追従は、この一覧にありません。
■ 評価は 11.0.0.0、ブロック追従は 11.1.0.0
cardano-rpc の変更履歴をたどると、残りの 2 つが入った版がはっきり分かります。
トランザクションの評価は 11.0.0.0(2026 年 5 月 26 日)です。evalTx という gRPC メソッドが UTxO RPC の submit サービスに追加され、CBOR にシリアライズされたトランザクションを現在の台帳状態に対して評価します。返ってくるのはリディーマー(スクリプトに渡す引数)ごとの実行ユニット、計算された最低手数料、スクリプトの評価エラー、そして残高チェックの結果で、送信はしません。手数料と実行ユニットを事前に確かめる用途が、ノード側だけで完結するようになった版です。
ブロックの追従は 11.1.0.0(2026 年 8 月 17 日)です。FollowTip という SyncService のメソッドが実装され、チェーンが伸びるのに合わせて、完全にパースされたブロックを流します。開始点はチェーン上で最初に見つかった交点で、交点のリストが空なら現在の先端から追います。ロールバックは undo アクションとして届き、ChainDB から再構成できる場合は巻き戻されたブロックを伴います。同じ版で ReadTip と ReadGenesis も入り、FetchBlock は Byron を含むすべてのエラでトランザクションを完全に返すようになりました。
■ 今日のノードに届いているのは 11.2.0.0 まで
では、いまノードを動かしている人の手元にあるのはどの版でしょうか。最新の cardano-node 11.1.2(2026 年 9 月 17 日)のコンポーネント表を見ると、同梱されている cardano-rpc は 11.2.0.0 です。リリースノートは「cardano-rpc contains a number of breaking changes from 11.0」とも書き添えています。
一方、cardano-api 側の変更履歴には、その先の版がすでに並んでいます。11.3.0.0(2026 年 9 月 4 日)では、gRPC サーバーが Unix ドメインソケットだけでなく、指定した IP アドレスとポートで HTTP/2 または TLS 越しの HTTP/2 を待ち受けられるようになりました。–grpc-listen-port や –grpc-tls-certificate といったノードのオプションで設定します。
同じ版では上限も入りました。UTxO の読み出しは 1 リクエストあたり 20000 キーまで、ブロックの取得は 500 参照まで。スクリプト評価は、トランザクションがプロトコル上限のサイズを超えるか、100 を超えるリディーマーを持つ場合に拒否されます。続く 11.4.0.0(2026 年 9 月 16 日)では、gRPC のサーバーリフレクションと ReadEraSummary が入りました。
ここが実務上の分かれ目です。11.3.0.0 の変更点が「Unix ドメインソケットだけでなく」と書いている以上、同梱版である 11.2.0.0 の待ち受けはソケットに限られます。ノードと同じホストからつなぐ構成なら今日から試せますが、アプリケーションのバックエンドからネットワーク越しに叩く構成は、この変更を同梱したノードのリリースを待つことになります。
■ 次のノードリリースで見る一行
投稿が伝えている方向そのものは、リリースノートの積み上がり方と合っています。照会と送信が 10.7.0、評価が 11.0.0.0、追従が 11.1.0.0 と、半年で一通りがノード側に揃いました。Maestro の開発者 API がサンセットに入ったタイミングと重ねると、移行先の選択肢が増えたこと自体は確かです。
確かめる場所は 1 か所です。次の cardano-node のリリースノートにあるコンポーネント表の cardano-rpc の行で、ここが 11.3.0.0 以降になった時点で、ネットワーク越しの待ち受けが正式に手元へ届きます。実験的という但し書きがいつ外れるかも、同じ表と RPC の節を見ていれば分かります。
■ ことば
- gRPC — アプリケーションどうしが決められた形式で呼び出し合うための通信の仕組み。今回はノードがこの形でチェーンのデータを返す側になっている、という話です。
- UTxO RPC — UTxO を扱うチェーン向けに共通化された問い合わせの仕様。ノードがこれを実装していると、同じ仕様に合わせた道具をそのまま向けられます。
- evalTx — トランザクションを送らずに、現在の台帳状態に対して評価するメソッド。実行ユニットと最低手数料を先に知りたい場面のために、11.0.0.0 で追加されました。
一次ソース / 関連リンク
- Cardano PRIME の投稿(2026 年 9 月 23 日)
https://x.com/Cardano_Prime/status/2102590274895856023 - cardano-node 10.7.0 リリースノート(cardano-rpc の最初の実験的リリース)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-node/releases/tag/10.7.0 - cardano-node 11.1.2 リリースノート(同梱コンポーネント表)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-node/releases/tag/11.1.2 - cardano-rpc 変更履歴(evalTx・FollowTip・待ち受け設定・上限)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-api/blob/main/cardano-rpc/CHANGELOG.md - Maestro の開発者 API がサンセット開始、Cardano dApp は移行へ(SIPO・2026 年 9 月 18 日)
https://sipo.tokyo/signal-20260918-e3b63ff1/
