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Midnight 上の NightPass、電池の数値を伏せて証明

2026-09-26SIPO #Midnight

Midnight の公式アカウントが9月25日、ODATANO が開発する「NightPass」をエコシステムの注目事例として紹介しました。EU で 2027年2月から義務になる電池のデジタルパスポートについて、再生コバルトの含有率が法定の下限を満たしていることを、数値そのものを明かさずに Midnight 上で証明できる仕組みです。

電池のパスポートには、取引先や製造工程に関わる、競合に見せたくない数字が含まれます。それでも規制当局やリサイクル事業者には、基準を満たしていることを示さなければなりません。「見せずに示す」という Midnight の設計が、規制対応という具体的な現場にどう当てはまるのかを、公開されているコードと資料から見ていきます。

2027年2月18日から、EU の電池にパスポートが要る

NightPass が対象にしているのは、EU の電池規則(規則 2023/1542)が定めるデジタル・バッテリー・パスポートです。GitHub の README は、この義務が 2027年2月18日から始まると明記しています。ODATANO の資料によると、対象は EU 市場に出るすべての電気自動車(EV)用電池と、電動自転車やスクーターなどの軽量移動手段(LMT)用電池、そして 2 kWh を超える産業用電池で、初年度から年に 700万〜900万件のパスポートが必要になると見積もられています。

パスポートは QR コードから読める形で用意し、見る人によって開示の範囲を変える必要があります。README は規則の附属書 XIII に沿って、消費者、リサイクル事業者などの正当な利害を持つ者、そして当局という 3 つの段階を挙げています。

ここに難しさがあります。データの出どころは企業の基幹システムで、仕入先の情報や炭素排出の数字のように、競争上伏せておきたいものが含まれます。一方で、監査する側にとっては、改ざんされていないことを確かめられなければ意味がありません。秘密にすることと検証できることを、同時に満たす必要があるわけです。

チェーンに置くのは、ハッシュだけ

NightPass の設計は、この 2 つの要求を分けて処理します。README によると、Midnight 上に記録されるのはパスポートのデータのハッシュと公開用のメタデータだけで、中身は暗号化されたまま企業の側に残ります。どの段階の相手に何を見せるかは、サーバー側の API で制御し、特定の取引先の閲覧段階を引き上げる権限はオンチェーンで付与します。

そのうえで、伏せた数字について「基準を満たしている」ことだけを、ゼロ知識証明で示します。Midnight の紹介投稿が挙げたのは再生コバルトの含有率で、README の実例では「炭素排出量が上限以下である」ことを、値を明かさずに証明しています。証明はチェーンに記録されたそのパスポートの項目に結びつけられており、別の電池の数字で代用することはできません。1 回の取引で最大 8 項目までまとめて証明できるとされています。

企業にとっての使い勝手にも手が入っています。手数料は共同のスポンサー用プールが払うため、製造者はトークンを持つ必要がありません。SAP の S/4HANA で入荷を記帳すると、パスポートが自動で発行される連携も用意されています。README は、EU のデジタル製品パスポート登録簿への登録、公式の相互運用シナリオ 11 件すべての通過、BatteryPass の公式検証ガイド 5 種での検証エラーゼロを実績として挙げています。いずれも開発元自身による記載です。

まだ試験用ネットワークの上の段階

NightPass は、まだメインネットでは動いていません。Midnight の投稿は Build Club の初期のプロジェクトで Preview ネットワーク上で動いていると紹介しており、README の公開デモと検索用のエクスプローラーは preprod という試験用ネットワークで稼働しています。デモでは、誰でも電池のパスポートを作り、最大 4 つの数値を伏せたまま 1 回の取引で証明するところまでを、5 分ほどで試せるとされています。

義務化まで、あと 5 か月足らずです。事業者が実際に採用するには、Midnight のメインネットでの運用と、企業の既存システムとの本番接続が必要になります。いまは「規制が求める形に、技術的には当てはまる」ことを、動くデモで示した段階と見るのが正確です。

選択的開示が、規制対応の道具になる

Midnight は、データを全部隠すのでも全部見せるのでもなく、必要な事実だけを必要な相手に示す「選択的開示」を設計の中心に置いてきました。NightPass はその考え方を、EU の電池規則という、期限の決まった具体的な義務に当てはめた例です。規制当局が求めているのは数字そのものより「基準を満たしているか」であり、その問いにだけ答えられる仕組みは、企業の側にとっても当局の側にとっても合理的です。

EU 市場に電池を出すのは欧州の企業だけではありません。日本の電池メーカーや自動車メーカーにとっても、2027年2月の期限は同じように適用されます。日本では 9月24日に Midnight のゼロ知識証明を使うアプリのワークショップが初めて開かれ、10月10日には東京・八芳園で Midnight City のイベントも予定されています。こうした場で、規制対応という使い道がどこまで具体的に語られるかは、日本の読者にとっても関心の置きどころになります。

確認できる次の一点は、ODATANO の公開エクスプローラー(zkpassport.eu)です。証明済みのパスポートが増えていくか、そしてデモが preprod からメインネットへ移る告知が GitHub の NIGHTPASS リポジトリに出るかを、10月10日の Midnight City 東京の前後に見ておくとよいでしょう。

ことば

  • デジタル・バッテリー・パスポート — 電池 1 個ごとに、素材や製造・炭素排出・リサイクルの情報を記録し、QR コードから読めるようにする EU の仕組みです。2027年2月18日から EV 用電池などで義務になります。
  • ゼロ知識証明 — ある主張が正しいことを、根拠となるデータを見せずに相手に納得させる暗号の技術です。NightPass では「含有率が下限以上」「排出量が上限以下」といった条件だけを示すのに使われています。
  • 選択的開示 — 相手ごとに示す事実を選べるようにする考え方で、Midnight が設計の中心に置いてきたものです。NightPass では、閲覧の段階分けとゼロ知識証明を組み合わせ、規制が問う「基準を満たすか」への答え方として使われています。

一次ソース / 関連リンク

タグ: #Midnight