Cardano のレンディング(貸し借り)プロトコル FluidTokens は日本時間 10 月 6 日未明、TVL(預かり資産)がこの 5 日で 20% 増えたと公式 X で投稿しました。増加の大半は報酬を目当てにした利用だと説明し、貸し出しに使われていない ADA に年 6% を付ける報酬が 12 月 31 日まで続くことをあらためて告知しています。
9 月 30 日のオラクル攻撃による一時停止から、10 月 2 日未明の再開をはさんだ 5 日間です。DefiLlama の数字で確かめると、ドル建てでは増加が見えますが、その一部は ADA の値上がりによるもので、ADA 建てで見ると伸びはもっと小さくなります。報酬が人を呼ぶ力と、報酬が終わったあとに何が残るかを、前回の報酬期間の数字とあわせて読みます。
前回の記事: FluidTokens、ADA の報酬を年6%まで上乗せ(2026年9月29日)
ドル建てと ADA 建てで、伸び方が違う
DefiLlama が毎日 0 時(UTC)に記録する FluidTokens の TVL(既定の表示・ADA で集計)は次のとおりです。
- 9 月 30 日: 約 296 万ドル(約 1,212 万 ADA)
- 10 月 1 日: 約 320 万ドル(約 1,292 万 ADA)
- 10 月 3 日: 約 325 万ドル(約 1,317 万 ADA)
- 10 月 5 日: 約 337 万ドル(約 1,302 万 ADA)
- 10 月 6 日: 約 379 万ドル(約 1,397 万 ADA)
投稿の直前にあたる 10 月 5 日までの 5 日間で比べると、ドル建ては約 14% 増、ADA 建ては約 7% 増です。投稿のあとに記録された 10 月 6 日の値まで含めると、ドル建ては約 28% 増、ADA 建ては約 15% 増になります。FluidTokens の言う「20%」がどの集計によるものかは投稿に書かれていませんが、どの切り方でも預け入れが増えていること自体は DefiLlama の数字でも確かめられます。
ドル建ての伸びが ADA 建ての 2 倍近くあるのは、同じ期間に ADA の価格が上がったためです。報酬の効果を見るなら、預けられた ADA の枚数を追うほうが値動きに左右されません。
年 6% の報酬と、5 日間に起きたこと
報酬の仕組みは 9 月 29 日の記事で整理したとおりです。指定の市場で、借り手に貸し出されずに置かれている ADA のステーキング報酬を、合計で年 6% になるまで FluidTokens が補います。期間は 12 月 31 日までです。
この 5 日間には、報酬の開始直後の事故が含まれています。9 月 30 日、FluidTokens はオラクル(外部の価格データを届ける仕組み)の不具合を突いた攻撃を受けてレンディングを一時停止しました。同じ日のうちに、影響を受けた貸し手への返金を終え、担保やトークンの持ち分には手が付けられていないと報告し、10 月 2 日未明(日本時間)に「貸し借りが再びできるようになった」と告知しています。
攻撃と停止のあとでも ADA 建ての TVL が 1,200 万 ADA 台から 1,300 万 ADA 台へ上がったことは、少なくとも今回の利用者が、報酬の条件を停止の影響より重く見たことを示しています。同じ日の Cardano では Indigo や WingRiders も報酬の条件を示しており、報酬で資金を呼ぶ動きが重なっていることは 10 月 6 日の Daily Intel で扱いました。
前回の報酬期間のあと、何が残ったか
FluidTokens が年 6% の報酬を出すのは、今回が初めてではありません。4 月 20 日の投稿によると、2 月 1 日から報酬を始め、TVL が 250% 増えたことを受けて、期間を 5 月末まで延ばしました。DefiLlama の ADA 建ての記録で、その前後を並べると次のようになります。
- 1 月 31 日(報酬の開始前): 約 396 万 ADA
- 3 月 18 日(期間中の最大の水準): 約 2,280 万 ADA
- 5 月 31 日(報酬の終了時): 約 1,412 万 ADA
- 6 月 13 日(終了後の最大の水準): 約 1,878 万 ADA
- 7 月 31 日(終了から 2 か月): 約 1,286 万 ADA
- 9 月 28 日(今回の報酬の再開時): 約 1,169 万 ADA
報酬の期間中に最大の水準をつけたあと、終了までに 4 割近く減りました。終了直後の 6 月にはいったん増え、その後は少しずつ減っています。それでも、報酬が止まっていた 4 か月のあいだ、ADA 建ての TVL がいちばん低かった 8 月 7 日でも約 1,138 万 ADA で、開始前の 2.9 倍ほどを保っています。報酬で呼び込んだ資金の一部は、報酬がなくなっても FluidTokens に残ったことになります。
今回は、その残った水準を出発点に、2 度目の報酬で上積みを狙う形です。前回は期間中の最大の水準が開始から 1 か月半ほどで来ました。今回の報酬の期間は 3 か月ほどあり、最初の 1 か月半の伸び方が一つの目安になります。
12 月 31 日までの分かれ道
- Base: ADA 建ての TVL がゆるやかに増え、報酬の終了後も前回と同じように一部が残る。年末に 1,169 万 ADA(再開時)をどれだけ上回っているかが、2 度目の報酬の成果になります
- Risk: より条件のよい報酬が他のプロトコルに出て、報酬を目当てにした資金がそちらへ移る。ADA 建ての TVL が再開時の水準へ戻れば、今回の増加はその場限りだったことになります
確認先は DefiLlama の FluidTokens のページです。ドル建てではなく ADA 建ての TVL を週ごとに見ると、報酬の効果を値動きから切り分けられます。9 月 30 日に FluidTokens が「近く出す」とした攻撃の詳しい分析も、預け先として考えるうえでの材料になります。
ことば
- TVL — プロトコルに預けられている資産の総額。ドルで示されることが多いため、預けた資産そのものの値動きでも増減します。報酬の効果を見るときは、ADA など元の単位でも確かめると読み違えにくくなります。
- インセンティブ(報酬の上乗せ) — 利用者を呼び込むためにプロトコルが期間を決めて出す追加の報酬。期間が終わると資金が他へ移りやすいため、終了後にどれだけ残るかが実力の目安とされます。
一次ソース / 関連リンク
- FluidTokens 公式 X(TVL が 5 日で 20% 増・2026年10月5日 UTC)
https://x.com/FluidTokens/status/2107124652938293629
DefiLlama: FluidTokens(defillama.com)
- FluidTokens 公式 X(レンディングの再開・2026年10月1日 UTC)
https://x.com/FluidTokens/status/2105713242651975996 - FluidTokens 公式 X(返金の完了と攻撃への対処・2026年9月30日)
https://x.com/FluidTokens/status/2105295280761344278 - FluidTokens 公式 X(報酬の期間を 5 月末まで延長・2026年4月20日)
https://x.com/FluidTokens/status/2046309677147762892
TVL は日本時間 2026年10月6日 14時台に DefiLlama の公開データから取得した値です(日付は UTC の 0 時時点)。



