シンガポールの TOKEN2049 で開かれた 36 時間のハッカソン「Origins」の受賞作が 10 月 8 日(UTC)に発表され、全体の優勝は Cardano のトラックから出た CoinGraph でした。AI エージェントがお金を動かす前に 1 回呼び出すと判定が返ってくる仕組みで、エージェントは呼び出しごとに Cardano 上の x402 で支払います。
Cardano のトラックの上位 3 作と特別賞を並べると、どれも「エージェントが払う前に、相手の仕事を確かめる」仕組みを組み込んでいます。Cardano 財団(CF)の発表と各チームの公開ページから、何が作られ、どこまで動いているのかを整理します。
全体優勝の CoinGraph、「動く前の確認」を 1 回いくらで売る
CF の公式 X は、CoinGraph を「AI エージェントがお金を動かす前の確認」と紹介しました。1 回の呼び出しで判定が返り、判定に使った数字にはすべて出典と指紋(改ざんを確かめるための識別子)が付く、という説明です。
CoinGraph の公開ページによると、確認はトークンを値動き・流動性・レバレッジ・オンチェーンの活動・供給・コントラクト・周辺の文脈の 7 つの面から点数化するもので、MCP サーバー、REST API、既製の 10 のエージェントから使えます。CoinGraph 自身は取引を実行せず、資金も預からず、助言もしないとし、決めるのは呼び出した側だと明記しています。
支払いの流れはこうです。API が HTTP の 402(支払いが必要)で価格を返し、エージェントが支払ってからもう一度呼び出します。料金は無料の基本確認から、詳細データの 1 回 0.01 ドル相当、注文の規模に合わせた確認の 0.05 ドル相当、デューデリジェンスなどの 0.25 ドル相当までの段階に分かれています。ただし、いま支払いが動いているのは Cardano のテストネット(preprod)で、決済はテスト用の tADA です。メインネットの価格はドル換算で表示されているだけで、メインネットでの支払いはまだ始まっていません。
Cardano トラックの上位 3 作と特別賞
CF のスレッドが挙げた Cardano トラックの受賞作は次のとおりです。
- 1 位 Cardano Card — Cardano 上のどのエージェントでも Amazon で買い物ができる仕組み。資金を Masumi のエスクロー(第三者預かり)にロックし、カードで決済し、注文が確定したときだけエスクローが支払います。公開ページは、購入に失敗すれば返金されるとしています
- 2 位 zx402 — エージェント向けの非公開の資金の通り道。ゼロ知識証明を使った共同のステーブルコインのプールで、誰が資金を出しているかを明かさずにエージェントが支払えるようにします
- 3 位 Nitrane Systems の Uplift — EC(ネット通販)向けに 13 のエージェントが集客を担うチーム。仕事の依頼は Masumi を通じて Cardano 上のエスクローに入り、Chainlink がすべての納品物を確かめてから支払われます
- 特別賞 Hirakumi — API のリンクを貼るだけで、数分のうちにエージェントが Cardano で支払えるようにする仕組み。悪い回答には料金がかかりません
Hirakumi の公開ページは、その仕組みをもう少し詳しく書いています。売り手は API ごとに「良い回答の条件」を JSON Schema の形で約束として公開し、回答がその条件を満たしたときだけ、前払いした 100 回分のパックからクレジットが減ります。大きなパックや稼働実績の浅い売り手の場合は、支払いを Aiken で書かれたスマートコントラクトのエスクローに預け、良い回答の分だけ売り手に、残りは買い手に戻ります。こちらもすべてテストネットで、テスト用の USDM を使っています。
4 作に共通する「払う前の確認」
4 つの作品を並べると、同じ設計が繰り返し出てきます。エージェントが払う前に、相手の仕事を何かが確かめる手順です。Cardano Card は注文の確定、Uplift は Chainlink による納品物の照合、Hirakumi は公開した約束との照合を、支払いの条件にしています。CoinGraph はその確認そのものを商品にしました。
人が介在しない取引では、「払ったのに届かない」を後から言い争う相手がいません。だから条件を満たしたときだけ資金が動く形を、最初から決済の側に組み込む必要があります。Cardano の EUTXO(取引ごとに使う資金の単位を明示する方式)は、取引の結果と手数料を送る前に見積もりやすく、エスクローのような条件付きの支払いを書きやすい土台です。36 時間のハッカソンで、上位の作品がそろってこの形を選んだことは、Cardano がエージェントの決済で売りにできる部分を示しています。
同じ週、NMKR の公式 X は、創業者が TOKEN2049 の壇上で Masumi を紹介したと伝え、Cardano 上の x402 のエージェント経済が「今日から稼働」と書きました。Indigo も AI エージェントからローンの照会や操作ができる MCP の接続を公開しています(既報: Indigo、MCP で AI エージェントからローンの照会と操作)。ハッカソンの作品は試作の段階ですが、その周りでは本番の部品が出そろい始めています。
次に確かめるのは、メインネットへの移行
CF はスレッドの最後を「メインネットで会いましょう」と締めました。今回の受賞作のうち、公開ページで確認できた CoinGraph と Hirakumi は、どちらもテストネットで動いている段階です。確かめる先は、CoinGraph の料金ページ(token2049.coingraph.ai)と Hirakumi の公開ページで、決済の欄が「Cardano preprod・tADA/テスト用 USDM」からメインネットの ADA や USDM に切り替わるかどうかです。年内にこの表記が変われば、ハッカソンの作品が本番の決済に残ったと言えます。
ことば
- x402 — ウェブの「402 Payment Required(支払いが必要)」の応答を使い、AI エージェントがその場で少額を払ってデータや API を使うための決済の型。今回の受賞作のうち CoinGraph と Hirakumi が、この型で Cardano 上の支払いを組んでいます。
- Masumi — Cardano 上で AI エージェント同士の依頼と支払いを仲立ちする仕組み。資金を預かるエスクローと、取引相手を確かめる信頼の層を提供し、今回は Cardano Card と Uplift が支払いの土台に使いました。
- エスクロー — 取引の当事者以外が資金をいったん預かり、条件が満たされたときに支払う仕組み。人がいないエージェントの取引では、「届いたら払う」をコードで守らせる役割を担います。
一次ソース / 関連リンク
- Cardano 財団公式 X: TOKEN2049 Origins Hackathon の受賞発表(2026-10-08)
https://x.com/Cardano_CF/status/2108218814160662878 - Cardano 財団公式 X: 全体優勝 CoinGraph
https://x.com/Cardano_CF/status/2108218817537024467 - Cardano 財団公式 X: Cardano トラック 1 位 Cardano Card
https://x.com/Cardano_CF/status/2108218820246520288 - Cardano 財団公式 X: Cardano トラック 2 位 zx402
https://x.com/Cardano_CF/status/2108218823157354723 - Cardano 財団公式 X: Cardano トラック 3 位 Nitrane Systems
https://x.com/Cardano_CF/status/2108218825657233620 - Cardano 財団公式 X: 特別賞 Hirakumi
https://x.com/Cardano_CF/status/2108218828060533149
CoinGraph(TOKEN2049 向けページ・料金と決済の説明)(CoinGraph)
Cardano Card(公開ページ)(cardano-card-launch.netlify.app)
Uplift(Nitrane Systems・公開ページ)(uplift-landing.up.railway.app)
Hirakumi(公開ページ)(hirakumi.vercel.app)
- NMKR 公式 X の投稿(Masumi の紹介・2026-10-08)
https://x.com/nmkr_io/status/2108188848920432649

