EMURGO は9月26日、自社と Yoroi ウォレットの名前で運営してきた 7 つのステークプール(EMURGO 1〜6 と YOROI)の運営管理を、Shunsuke Murasaki 氏に移したと公式 X で発表しました。7 プールには第657エポック時点で合計約 1億9,248万 ADA が委任されており、委任者の側で必要な手続きはないとされています。
Cardano の創業 3 団体のひとつが、8月に表明したガバナンスからの撤退に続き、ステークプールの運営からも手を離したことになります。一方で、オンチェーンの登録情報を見ると、プールの名前とティッカーはすでに書き換えが始まっており、旧名と新名の番号は一致していません。委任者が確かめておきたい点を、公式発表とオンチェーンの記録から整理します。
EMURGO が発表したこと
EMURGO の公式投稿は、今回の措置を、これまでに告知してきた Cardano ガバナンスからの撤退の延長に位置づけています。SecondFi のセキュリティ事故を受けて一歩引くという判断と、DRep(委任代表者)の登録を解除する方針の続きとして、運営面の変更を行うという説明です。
移管先の Murasaki 氏について、投稿は Cardano コミュニティに長く関わってきた人物で、とくに日本・インドネシア・シンガポールに強いつながりを持ち、今年に入って EMURGO を離れるまでは同社の初期からの社員だったと紹介しています。そのうえで「長期にわたる Cardano への誠実さを全面的に信頼している」と述べています。
移管はすでに運用上は処理済みで、オンチェーンへの正式な反映は数日のうちに行われる、とも書かれています。
委任者にとって変わらないこと
投稿は委任者向けに 3 点を明記しています。
- 手続きは不要 — 委任とステーキング報酬はそのまま続き、既存の委任は自動で引き継がれます
- プール ID は同一 — 名称とティッカーの変更については、Murasaki 氏が別途確認の告知を出すとされています
- ノンカストディアル — Cardano のステーキングは資金を預けない仕組みで、委任者はいつでも好きなプールへ委任先を変えられます
オンチェーンの記録でも、この説明と合う形が確認できます。Koios で 7 プールの登録履歴を見ると、プール ID は変わらず、宣誓担保(pledge)は各 500 ADA、手数料率は 6 プールが 1.5%、旧 YOROI が 4%、固定費は各 170 ADA で、いずれも EMURGO 時代の登録と同じ値のままです。報酬の受け取り先アドレスも、以前の登録から変わっていません。委任者の受け取る報酬の計算条件は、今回の移管では動いていないことになります。
名前は先に変わり始めている — 番号の対応に注意
EMURGO の発表より前に、オンチェーンでは登録情報の更新が提出されていました。Koios の記録では、日本時間 9月25日未明から同日夜にかけて 7 プールすべての再登録が行われ、名称は「Mura 1」〜「Mura 7」、ティッカーは MURA1〜MURA7 になっています。メタデータの説明欄には「Mura stake pool 1, formerly EMURGO 1」のように旧名が書き添えられており、新しい登録は第660エポックから有効になると記録されています。
注意したいのは、旧名と新名の番号が一致しないことです。登録履歴から対応を拾うと次のとおりです(委任量は第657エポックのアクティブ・ステーク、Koios)。
- EMURGO 1 → MURA1:約 5,631万 ADA(pool1m0drnjxsvnlesq0rwmur2rh6lenuql57jfzd6cf6aegj2cv7ugy)
- EMURGO 5 → MURA2:約 3,927万 ADA(pool192pfftt48zc4x5aellvpufk6l6zxllpldw0rx82vrhqrqfhhqs2)
- EMURGO 4 → MURA3:約 3,597万 ADA(pool1pmm654jfx088td54ekkkd0j28x6r5gnjdhnutzggursrxjnpk2y)
- EMURGO 3 → MURA4:約 2,887万 ADA(pool13mas2wthxs28zftxskcsd8t87jk2w9ntc0u5uflt45sh7lcvs8h)
- EMURGO 2 → MURA5:約 1,935万 ADA(pool1xkwnlr34tjrnkz6u4c0p36cju3xuls4dyynsdkf6cv22ksuhz6q)
- EMURGO 6 → MURA6:約 890万 ADA(pool1kx0jm9ycs3t99tnwafw6w72jkdlzhj5ltxe2nrzkd9x2u5x343h)
- YOROI → MURA7:約 381万 ADA(pool1dghwejqptsjtf9k8paspg9rhl8humxx0nh7sk37j0ada2dr9mqh)
7 プールの合計は約 1億9,248万 ADA、委任しているアドレスは合わせて約 1万 400 件です。Cardano 全体のアクティブ・ステーク(第657エポック時点で約 213億 ADA)に対しては 1% に満たない規模ですが、単独のプールとしては MURA1(旧 EMURGO 1)が大きく、上限に対して約 68% まで委任が集まっています。
名称とティッカーについて Murasaki 氏からの告知は別途とされており、表示名は今後さらに変わる可能性もあります。ウォレットやエクスプローラーで自分の委任先を確かめるときは、名前やティッカーではなくプール ID で照合するのが確実です。
創業団体が、プールの運営からも退く
EMURGO は8月3日、Intersect の理事を直ちに辞任し、DRep の登録もいずれ解除すると告知していました。SecondFi の事故への対応に人員と資源を集中させるため、という説明です。今回のプール移管は、その流れの延長にあります。ガバナンスの議席、DRep としての投票に続き、ブロック生成という Cardano の最も基礎的な運営の役割からも、EMURGO の名前が外れることになります。
委任者から見ると、引き継ぎ先がコミュニティで顔の見える人物であることは判断材料になります。一方で、運営主体が企業から個人に移れば、ノードの冗長性や障害時の対応体制も変わりえます。委任を続けるかどうかは、これからの運営実績を見て判断できるのが、委任先を自由に変えられる Cardano の仕組みの良いところです。
確認できる次の一点ははっきりしています。第660エポック(日本時間 10月7日朝から)に新しい登録が有効になった後、Cexplorer などのエクスプローラーで各プールの表示名と、ブロック生成が途切れずに続いているかを確かめることです。あわせて、Murasaki 氏の X アカウント(@MurasakiCardano)から、名称とティッカーについての告知が出るかを見ておくとよいでしょう。
ことば
- プール ID — ステークプールを一意に識別する番号です。名前やティッカーは運営者が再登録で変えられますが、プール ID は変わりません。今回のように表示名が入れ替わる局面では、照合の基準になります。
- 再登録(プール登録の更新) — 運営者が pledge や手数料、メタデータを変えるときに提出する証明書です。提出してもすぐには効かず、後のエポックの境目から新しい内容が有効になります。今回の 7 プールは第660エポックからの有効と記録されています。
- 飽和度 — 1 つのプールが効率よく報酬を受け取れる委任量の上限に対する割合です。100% を超えると委任者 1 人あたりの報酬が目減りするため、大口プールでは委任者が確認しておきたい数字です。
一次ソース / 関連リンク
- EMURGO の公式投稿(2026年9月26日)
https://x.com/emurgo_io/status/2103665867276054752 - EMURGO & Yoroi の DRep に関する告知(2026年8月3日)
https://x.com/emurgo_io/status/2084139699623575873 - MURA1(旧 EMURGO 1)のプールページ(Cexplorer)
https://cexplorer.io/pool/pool1m0drnjxsvnlesq0rwmur2rh6lenuql57jfzd6cf6aegj2cv7ugy - MURA7(旧 YOROI)のプールページ(Cexplorer)
https://cexplorer.io/pool/pool1dghwejqptsjtf9k8paspg9rhl8humxx0nh7sk37j0ada2dr9mqh - 📋 Daily Intel 8/4|創業企業がガバナンスの席を降りる(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/daily-intel-20260804/ - EMURGO が「Pentad」を降りた日(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/post-46710/
委任量・登録情報は、日本時間 2026年9月26日に Koios のデータで確認した値です。
