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📡Signal|SecondFi、1,610万ADA流出の原因を「暗号署名の実装欠陥」と説明——2系統の攻撃、Yoroi Wallet終了へ

2026-07-22SIPO

SecondFiは2026年7月22日、6月のセキュリティインシデントについて、独立調査にもとづく新しい更新を公表した。

今回初めて、流出の根本原因がトランザクション署名生成の暗号実装欠陥だったこと、攻撃が相互に別とみられる2系統だったこと、関連コードのコピーが無断で公開GitHubリポジトリに掲載されていたことが、一つの説明として示された。

SecondFiによる最新集計は、2026年6月21日から23日にかけて、374ウォレットから約1,610万ADA、当時の換算で約260万ドルが盗まれたというものだ。EMURGOが起用したフォレンジック調査・ブロックチェーンインテリジェンス企業Groom Lakeは、主な攻撃を高度で資金力のある外部主体によるものと評価し、一部の指標についてDPRK関連のLazarus Group活動との重複可能性を調べている。

ただし、これはLazarus Groupへの確定帰属ではない。公開されているのはSecondFiによる調査要約であり、Groom Lakeの完全な報告書、具体的なIoC、アドレスのクラスタリング手法、政府・捜査機関による正式な帰属判断は示されていない。

今回の更新は、原因究明が前進したことを示す一方、SecondFiとYoroi Walletの終了、8月へ延びた安全な移行、監査前のZK回収ポータルという厳しい現在地も明らかにした。


今回の更新で明らかになったこと

SecondFiの公式発表から確認できる要点は、次の通りである。

  • 6月21日から23日に、約1,610万ADA、約260万ドルが盗まれた
  • 最新発表は影響範囲を「374 wallets」と表現している
  • Groom Lakeは、主な攻撃と別の第二主体を識別した
  • 現時点で、両者が影響を与えたウォレット集合に重複は確認されていない
  • 根本原因は、トランザクションごとの署名を作る暗号実装の欠陥だった
  • 欠陥を含む関連コードのコピーが、無断で公開GitHubリポジトリに掲載されていた
  • 欠陥は修正済みだが、SecondFiとYoroi Walletは終了する
  • ZK証明を使う回収ポータルはテスト中で、専門の第三者監査を経て8月の公開を見込む
  • 安全なウォレット・エクスポート機能は8月上旬の提供を見込む

「374ウォレット」は、固有の利用者374名を意味しない。過去の公式発表や独立分析では「374 wallet addresses」と表現された例もあり、一人が複数のアドレスを持つ可能性もある。記事やSNSで被害者数へ読み替えるべきではない。

また、以前の集計は約1,600万ADA、約240万ドルだった。今回の約1,610万ADA、約260万ドルという数字は、集計精度や換算価格の更新を含む可能性があり、新たに100万ドル規模の追加流出が確認されたという意味ではない。


今回の更新までに何が起きていたのか

今回の発表を理解するには、6月以降の経緯を押さえる必要がある。

1. YoroiからSecondFiへの移行

Yoroi Walletは2026年、SecondFiへ移行した。既存のYoroiウォレットは、アプリの更新を通じてSecondFiの利用体験へ引き継がれる設計だった。利用者にとっては、長年使ってきたCardanoウォレットの延長上にあるサービスだった。

2. 6月8日以降に問題の署名が現れたとする独立分析

BlockSecや公開APKを調べた独立技術分析は、6月8日に配布されたAndroid版以降で、問題の署名実装が使われたと報告している。影響バージョンについて具体的な範囲も示されているが、今回の公式更新はプラットフォームとバージョンの完全な一覧を公表していない。

したがって、6月8日や特定バージョンは有力な技術分析として扱うべきであり、SecondFiによる最終的な公式対象表と同一視してはならない。

3. 6月21日から23日に資金流出

SecondFiの最新説明では、この期間に374ウォレットから約1,610万ADAが盗まれた。6月22日の発見後、SecondFiは緊急対応を開始し、サービスをメンテナンス状態へ移行した。

初期発表では、問題がSecondFiのネイティブCardanoウォレット生成ソフトウェアに限定されていること、影響額が約1,600万ADAと見積もられること、独立した技術レビューを進めていることが説明された。

4. 6月末、資産保全とZK回収構想が浮上

EMURGOとSecondFiは、影響アドレスの把握、資産回収基金、緊急時に保全された資産の管理、正当な所有者へ返すための回収経路を検討した。

この段階で、漏洩した署名鍵ではなく、その上位にある復元フレーズの知識をゼロ知識で証明する構想が注目された。ただし、監査前の技術構想であり、直ちに利用できる公式回収ツールではなかった。

5. 7月2日から4日、公式チェッカーと移行ガイド

SecondFiは checker.secondfi.io を公開し、アドレスやステークキーが暫定的なインシデント関連データに含まれるか確認できるようにした。

ただし、このチェッカーは予備的・非最終であり、損失、補償資格、責任、回収の可否を確定しない。公式チェッカーはトランザクション署名や復元フレーズを求めない。署名を要求するチェッカーは詐欺の指標になる。

6. 7月8日から16日、Quarantine modeへ

SecondFiは同じアプリをQuarantine modeへ移し、送信・スワップ・資産移動を無効化した。利用者は残高とウォレットアドレスを確認し、該当する場合は公式サポートへつなぐ構成になった。

当初、secure wallet exportは「翌週」の提供が意図されていたが、7月22日の更新では「8月上旬」の見込みへ変わっている。安全性の確認や実装に時間を要しているとみられるが、遅延理由は詳しく公表されていない。

7. 7月14日から16日、ZK回収PoCが公開

Eryxとチャールズ・ホスキンソン氏は、それぞれSecondFi後の所有者確認を題材にしたオープンソースのZK回収PoCを公開した。復元フレーズを明かさずに上位の秘密を知っていることを証明し、新しい回収先へ資産を払い出すという方向を、検証可能なコードへ進めたものだ。

ただし、これらのPoCと、SecondFiが今回説明した公式回収ポータルとの実装上の関係は公表されていない。

8. 7月20日、偽回収メールへの警告

SecondFiは、「Quarantine Modeへの移行」や「Service Agreementへの署名」を要求し、従わなければ資産を失うと脅す偽メールを確認したと発表した。現在の公式回収手順に、そのような契約署名は存在しない。

そして7月22日、Groom Lakeの調査を踏まえた今回の原因・攻撃主体・コード公開・終了・回収予定の更新が公表された。


あわせて押さえておきたいSIPO関連記事

SIPO.TOKYOでは、このインシデントを初動、利用者保護、ZK回収、チェッカー、移行の各段階で追ってきた。今回の記事と合わせて読むと、発表内容がどのように変化してきたかを確認できる。

1. SecondFi流出事件、ウォレット認証、そしてCardanoが向き合うべき利用者保護

初期段階の影響整理と、Cardano本体ではなくウォレット層の信頼問題として読むための記事。

2. 「Update」解説・全翻訳:SecondFi救済の最悪ケース設計、Groth16、そしてウォレット信頼回復への分岐点

復元フレーズを明かさない所有証明が、最悪ケースの回収案として浮上した経緯を扱う。

3. SecondFi、公式ウォレットチェッカーを公開

公式チェッカーが何を確認でき、何を保証しないか、署名詐欺をどう見分けるかを整理した短報。

4. SecondFi、公式チェッカー第1段階とハードウェアウォレット移行ガイドを公開

暫定的な影響確認と、安全な移行準備を分けて読むための記事。

5. SecondFi、Quarantine modeとsecure wallet exportへ

「確認」「移行」「条件付き回復」が別の工程であることと、隔離モードの役割を解説。

6. SecondFi資金回収に向けたゼロ知識証明のPoCをEryxが公開

独立したオープンソースPoCの価値と、実用化前に残る回路・監査・秘密情報管理の課題を検証。

7. チャールズ・ホスキンソン氏が「proof-zk-recovery」を公開

Cardano Previewでの証明・払い出し実証と、本番運用前に必要な信頼設定、ガバナンス、監査を詳しく扱う。


署名の何が壊れていたのか

今回の欠陥は、Ed25519という暗号方式そのものではなく、SecondFi側がトランザクション署名を作る実装にあった。

通常、署名ごとの値 r は、秘密の値と署名対象のトランザクションを組み合わせて計算する。

<code class="language-text">正常:r = Hash(秘密の値 || トランザクション)
</code>

独立技術分析によると、問題の実装では、秘密の入力が欠け、公開されるトランザクションだけから r を計算できた。

<code class="language-text">問題:r = Hash(トランザクション)
</code>

署名を大幅に簡略化すると、次の関係を持つ。

<code class="language-text">s = r + h × 秘密鍵
</code>

本来、外部から分からない r が公開情報だけで再計算できると、署名に含まれる他の公開値を使って、アドレス単位の秘密鍵成分を逆算できる。古典的な「同じnonceを2回使った」事故と違い、1回の署名だけで成立し得るのが深刻な点だ。

公開APKとオンチェーン署名を調べた分析では、問題の署名に固有のパターンをチェーン上で確認し、配布アプリのコードでも同じ計算経路を確認したとしている。BlockSecも、秘密のnonce prefixが欠けた結果、公開トランザクションデータから署名鍵を導けたと説明している。

Cardanoネットワークは、復元された鍵で作られた数学的に有効な署名を、通常のトランザクションとして処理する。台帳ルールやコンセンサスが破られたのではない。利用者とCardanoをつなぐウォレット署名層で、秘密であるべき値が秘密でなくなっていた。


2系統の攻撃は何を意味するのか

Groom Lakeは、主な攻撃と、別の第二主体による活動を識別したとしている。現時点で両者が影響を与えたウォレットに重複は確認されていない。

ここでいう「2 attackers」は、必ずしも二人の個人を意味しない。複数人からなるグループ、別の自動化基盤、異なる資金移動クラスターである可能性もある。記事では「2つの攻撃主体」または「2系統」と表現するのが適切だ。

主な攻撃についてGroom Lakeは、大量取引を行う関連アドレス、高度な手口、資金力を示す指標から、専門的で国家と連携する脅威主体と整合すると評価した。一部の指標は、DPRKに関連するLazarus Groupの既知活動との重複可能性を調べているという。

しかし、「重複可能性を評価中」と「Lazarus Groupに帰属」は違う。完全なフォレンジック報告書や根拠となる指標が公開されていない以上、現時点で「北朝鮮がSecondFiを攻撃した」と書くことはできない。


無断公開コードが提起する、もう一つの問題

SecondFiは、今回の暗号欠陥が、無断で公開GitHubリポジトリに掲載された関連コードのコピーからも確認できたと説明した。公開の経緯を引き続き調べ、関係当局と協力しているという。

これは重大な開発統制の問題を提起する。

  • 誰が、いつ、どの権限でコードを公開したのか
  • 公開コードと実際に配布されたアプリのコードは、どこまで一致していたのか
  • コードレビュー、来歴管理、依存関係の承認、リリース署名はどう行われていたのか
  • 監査済みコードと本番コードが一致していたことを、誰が確認していたのか

一方で、現時点の発表は、攻撃者がそのGitHubリポジトリを発見・利用したとは述べていない。無断公開があったことと、無断公開が攻撃を可能にしたことは別の主張である。

以前の第三者分析では、特定のSDKやパッケージ、署名アダプターが問題の経路として論じられた。しかしSecondFiは、今回の更新でもリポジトリ名、パッケージ名、公開者、配布コードとの関係を明らかにしていない。ここは最終報告で確認すべき重要点として残る。


パッチ済みでも、過去の署名は消えない

SecondFiは欠陥を修正し、修正版で新しく作られたウォレットは、この問題による影響が知られていないと説明している。

この文は慎重に読む必要がある。

問題の実装で作られた署名は、すでに公開ブロックチェーンへ記録されている。そこからアドレス単位の鍵が導かれた場合、アプリを更新しても、過去の署名や漏洩済みの鍵は取り消せない。同じ復元フレーズを別のアプリへ読み込むことも、すでに露出したアドレスを未露出の状態へ戻すものではない。

「修正版で新しく作られたウォレットは影響が知られていない」は、「既存のSecondFi/Yoroiウォレットはすべて安全になった」という意味ではない。だからこそ、SecondFiは修正版で通常運用を再開するのではなく、安全なエクスポートと新しいウォレットへの移行を準備している。


SecondFiとYoroi Walletは終了へ

SecondFiの公式サイトは、通常運用を再開せず、今後の関与を影響利用者へ資産を返すための専任回収チームに限定すると明記している。

今回の発表は、SecondFiだけでなく「Yoroi wallet」も終了すると表現した。これはCardanoエコシステムで長く使われてきたウォレット製品としてのYoroiを指す。過去のFAQではYoroiブランドのDRep活動が別に説明されていたが、今回の更新はウォレット以外のYoroiブランド活動を詳しく扱っていない。

したがって、記事では「Yoroiという名称のすべての活動が終了する」と広げず、「SecondFiとYoroi Walletの終了」と表現するのが安全だ。


8月のZK回収とウォレット移行

SecondFiが示した次の工程は二つある。

ZK証明を使う回収ポータル

影響利用者が必要以上の情報を開示せず、自分で回収プロセスを開始できるようにするポータルである。現在はテスト中で、専門の第三者監査人によるレビューを経たうえで、2026年8月の公開を見込む。

ただし、回路、公開入力、本人確認、対象者リスト、二重請求防止、払い出し先、資産保全主体、規約、監査人の名称と報告書は公開されていない。「8月に必ず資産が返る」と断定できる段階ではない。

安全なウォレット・エクスポート

利用者が選んだ新しいウォレットへ資産を移すための機能で、現在は8月上旬の提供を見込む。回収ポータルとは別に、まだ盗まれていない資産を安全な新しい鍵へ移すための工程と考えるべきだ。

技術的に不慣れな利用者へは、独自操作を急がず、公式のエクスポート機能を待つ案内が続いている。


公式ZKツールと公開PoCは同じものなのか

現時点では分からない。

Eryxの key-recovery-POC と、チャールズ・ホスキンソン氏の proof-zk-recovery は、SecondFi後の資産回収を題材に、復元フレーズを公開せずに正当な所有者であることを証明する方向をコードとして示した。

特に proof-zk-recovery はCardano Preview上で証明検証とテスト資産の払い出しまで示したが、単独運営の信頼設定、対象者リスト、二重請求防止、資産保全、外部監査など、本番前の課題も明記している。

今回のSecondFi発表は、公式ポータルがどのコードベースを使うかを説明していない。公開PoCは技術的な背景として重要だが、公式ツールの採用実装、監査済み完成品、利用者向け操作手順として扱ってはならない。


利用者が現時点で守るべき安全線

今回の更新後も、利用者向けの基本線は変わらない。

  1. secondfi.iokb.secondfi.iochecker.secondfi.iosupport.secondfi.io と、公式Xの @secondfiapp@secondfi_jp だけを使う。
  2. SecondFiアプリと復元フレーズを失わない。ただし、復元フレーズ、秘密鍵、ウォレット認証情報は誰にも渡さない。
  3. 公式チェッカーは署名を求めない。署名、サービス契約、資産送付、別アプリのインストールを要求する回収導線を信用しない。
  4. チェッカーの結果は予備的・非最終であり、損失、補償資格、責任、回収を確定しない。
  5. 影響表示がある場合は、公式サポートの案内に従ってチケットを提出する。
  6. 独自の移行操作に不安がある場合は、監査・テストを経た公式エクスポート機能と段階的な案内を待つ。

検索結果や広告に表示される「SecondFi回収ツール」「Yoroi診断アプリ」が公式とは限らない。URLはリンクの表示名ではなく、実際のドメインを確認する必要がある。


次に確認すべき8つの更新

今回の発表は大きな前進だが、最終報告ではない。次に見るべきなのは以下である。

  1. Groom Lakeの報告書または、帰属評価の根拠を示す公開可能な要約
  2. 正式な対象プラットフォーム、バージョン、署名経路、期間
  3. 無断公開されたGitHubコードの公開者、時期、配布アプリとの関係
  4. 2つの攻撃主体が公開コードを利用したかどうか
  5. ウォレット、アドレス、利用者、ADA、ネイティブトークン、NFTの最終的な被害内訳
  6. 以前に保全されたと説明された資産の現在の保管・検証状況
  7. ZK回収ポータルの適格性、プライバシー、二重請求防止、払い出し、監査条件
  8. 8月上旬のエクスポート機能が、露出したアドレスから新しい鍵へ安全に移行する具体的な仕組み

まとめ:原因は見えたが、説明責任はまだ続く

今回の更新によって、SecondFi流出事件の中心はかなり明確になった。

Cardanoの暗号やコンセンサスが破られたのではない。SecondFiの署名実装で、秘密であるべき値が公開トランザクションだけから計算できる状態になり、一度の署名からアドレス単位の鍵を導ける可能性が生まれた。少なくとも2系統の攻撃主体が、重複しないウォレット集合へ影響を与えたとみられている。

同時に、Lazarus Groupとの関係、無断公開コードの経緯と攻撃への利用、対象バージョン、保全資産、回収資格、ZKポータルの設計と監査は、まだ公開情報だけでは確定できない。

SecondFiとYoroi Walletが終了へ向かう以上、今後の評価軸は「サービスを再開できるか」ではなくなる。被害者へ資産を返せるか。未流出資産を安全に移せるか。調査結果とコード来歴をどこまで公開できるか。そして、同じ種類の暗号実装とリリース統制の失敗を、Cardanoの他のウォレットがどう防ぐか。

原因の説明は、信頼回復の終点ではない。検証可能な報告、監査、回収、再発防止へつなげられるかが、次の段階になる。


参考・出典

透明性メモ

  • 本稿は2026年7月22日JST時点の公開資料にもとづく。
  • 被害規模、Groom Lakeの起用、2系統の攻撃、DPRK関連指標の評価、暗号実装欠陥、無断公開コード、サービス終了、回収・移行予定はSecondFiの公式発表に帰属する。
  • 具体的なnonce計算、1署名からの鍵導出、影響バージョンはBlockSecおよび公開APK・オンチェーン署名を調べた独立分析に帰属する。攻撃を再現するコード、被害者アドレス、復元された鍵は掲載していない。
  • Groom Lakeの完全な報告書やIoCは確認できていないため、Lazarus Groupへの確定帰属は行っていない。
  • 公式ZK回収ポータルとEryx/Charles Hoskinson氏の公開PoCとの実装関係は確認できていない。
  • 本稿は技術・報道解説であり、金融、法務、個別ウォレットの安全性、補償、回収可否に関する助言または保証ではない。