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決める人が入れ替わりました——委任投票力の65.6%は、いまも既定の選択肢の上にあります

2026-09-07SIPO

日本時間 9 月 7 日 6 時 44 分 51 秒、エポック 654 の境界で Cardano の憲法委員会が入れ替わりました。台帳の記録は ratified 653 / enacted 654 です。ただ、この更新を通した投票を分解すると、明示的に反対したのは DRep で 8 票、SPO で 1 票しかありません。閾値までの距離を作っていたのは反対ではなく、分母に残り続けた未投票の側でした。SIPO はガバナンスの数値を「誰が反対したか」ではなく「分母に何が残っているか」で読んでいます。その分母の正体を、施行後の名簿と、いま投票を受け付けている議案の両方から追います。

台帳に「654」と書き込まれました

ガバナンスアクション「Update Constitutional Committee 2026」は、エポック 653 で批准され、エポック 654 で施行されました。オンチェーンの提案一覧では ratified_epoch が 653、enacted_epoch が 654 として記録されています。境界の時刻は日本時間 9 月 7 日 6 時 44 分 51 秒(協定世界時では 9 月 6 日 21 時 44 分 51 秒)でした。

施行が確認できるのは、提案一覧だけではありません。オンチェーンの委員会情報を引くと、返ってくる proposal_id がこの提案のものに切り替わっています。つまり「いまの委員会は何か」という問い合わせに対して、台帳がこの提案の内容を答えるようになりました。定足数は 3 分の 2 のまま変わっていません。議席数も 7 のままです。

この提案は 9 月 2 日の時点で承認が確定していましたが、施行はエポック 653 が終わるまで待たされました。提案書はその理由を仕様として説明しています。委員の任期満了はエポック 799 という固定値で書き込まれており、任期の長さは「799 − 施行エポック」で決まります。protocol parameter の committeeMaxTermLength が 146 エポックですから、早く施行するほど任期が 146 を超えて台帳に弾かれる。提案書は「たとえ閾値に早く到達しても、このアクションは生存期間の最終エポックより前には施行できない」と明記していました。承認から 5 日遅れて今朝になったのは、そのためです。

4 枠のうち 2 枠は、同じ名前が座り直しました

提案書が記載する新任 4 名は、Marek Mahut、Phil_uplc(Philip DiSarro)、Leandros BSP、Cardano Curia です。任期はいずれも 146 エポック、満了はエポック 799 です。

このうち Phil_uplc と Cardano Curia は、退任側の名簿にも載っています。今朝の境界で任期が切れ、同じ境界で新しい 146 エポックの任期が始まった、という形です。提案書はこれを「既存の任期に積み増した延長ではなく、切れ目のない更新」と説明し、committeeMaxTermLength が制限するのは 1 期ごとの長さであって通算の在任期間ではない、と補足しています。実質的に入れ替わったのは 2 枠、残る 2 枠は再選でした。

退任側には Cardano Japan Council、KtorZ、そして任期が同じ境界で切れる予定だったところをこのアクションで外された Cardano Atlantic Council が入っています。日本のコミュニティから見ると、Cardano Japan Council が委員会から抜けたことが今回いちばん大きな変化です。任期がエポック 726 まで続く 3 名——Eastern Cardano Council、Tingvard、Ace Alliance——は今回の対象外で、そのまま残りました。

新任のうち 1 枠は、まだ投票できる状態になっていません

施行後の委員会情報を見ると、7 議席のうち 1 つの status が not_authorized になっています(日本時間 9 月 7 日 14 時 20 分時点)。コールドキーは台帳に載っているものの、実際に投票へ署名するホットキーがまだ登録されていない状態です。該当するコールド資格は、提案書の一覧で Marek Mahut として記載されているものと一致します。

これ自体は異常ではありません。施行からまだ 8 時間ほどで、鍵の登録は施行後に各委員が自分で行う手続きです。ただ、委員会の議決は登録済みの委員だけで数えられますから、名簿に載ったことと票を投じられることのあいだには時間差があります。再選された 2 名と Leandros BSP は、この時点ですでに登録済みでした。

実際、いま投票を受け付けている国庫引き出し「Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit.」に記録されている委員会の賛成 2 票は、どちらも任期がエポック 726 まで続く継続組の議席から投じられたものです。入れ替わったばかりの席の意思表示は、まだ記録に現れていません。

選んだのは、数十の DRep でした

提案書には、この 4 名を決めた選挙の結果が票数付きで載っています。上位はこうなっていました。

  • 1 位 Philip DiSarro — 19 億 7,904 万 ADA / 24 DRep
  • 2 位 Leandros BSP — 19 億 6,485 万 ADA / 23 DRep
  • 3 位 Marek Mahut — 13 億 7,011 万 ADA / 28 DRep
  • 4 位 Cardano Curia — 12 億 8,863 万 ADA / 27 DRep
  • 5 位 Asia Africa Cardano Coalition — 11 億 4,256 万 ADA / 16 DRep

当選と落選を分けたのは、4 位と 5 位のあいだの約 1 億 4,600 万 ADA です。そして票を投じた DRep の数は、いずれの候補についても 20 台から 30 手前にとどまっています。2 年間の任期を持つ 4 議席が、数十の DRep の判断で決まった、というのが記録の示す規模感です。

分母の正体は、既定の選択肢です

その規模感は、Cardano 全体の委任投票力と並べるとはっきりします。エポック 654 時点で、DRep に委任されている投票力の合計は約 152 億 1,306 万 ADA です。内訳を引くと、次のようになっていました。

  • 「常に棄権(Always Abstain)」に置かれている分 — 約 98 億 4,143 万 ADA
  • 「常に不信任(Always No Confidence)」に置かれている分 — 約 1 億 4,258 万 ADA
  • 差し引きで、実在する代表 DRep 全体の合計 — 約 52 億 2,904 万 ADA

2 つの既定の選択肢の合計は約 99 億 8,402 万 ADA、全体の 65.6% にあたります。委任投票力の 3 分の 2 近くが、個別の議案を読んで判断する主体ではなく、あらかじめ用意された既定値の上に置かれている計算です。DRep を追っている観測アカウント DRepTalk も 9 月 6 日、同じ構図を「エポック 508 では 22%、エポック 653 では 66%」と時系列で示していました。上に挙げたオンチェーンの集計は、この観測と整合します。

ここが分母問題の中身です。可決基準の分母は、明示的な棄権を除いた委任分の全体で計算されます。「常に棄権」は分母から外れますが、単に投票していないだけのステークは分母に残り続けます。だから賛成が閾値を越えるには、反対を上回るだけでは足りません。分母に残った委任分の相当部分を、賛成だけで埋める必要があります。

今回の委員会更新を、その形で読み直します。DRep 側は賛成 71.95%(165 票・閾値 67%)、投票済みの反対 0.28%(8 票)、Always No Confidence 2.85%、未投票 24.92%。SPO 側は賛成 56.54%(302 票・閾値 51%)、投票済みの反対 0.02%(1 票)、Always No Confidence 0.44%、未投票 43.0% でした(いずれも日本時間 9 月 7 日 14 時 19 分の取得値)。明示的に反対したのは合計 9 票です。この議案が 8 月末まで閾値に届かなかった理由は、反対の厚みではなく、分母に残っていた沈黙の厚みのほうにありました。

いま投票中の議案にも、同じ形が出ています

この構造は過去の話ではありません。期限がエポック 656 の国庫引き出し「Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit.」(103,000 ADA の供託金返還)は、日本時間 9 月 7 日 14 時 21 分の取得値で、DRep 賛成 51.61%(109 票)、投票済みの反対 1.26%(6 票)、Always No Confidence 3.26%、未投票 43.87% です。閾値は 67% ですから、現時点では 15 ポイントほど足りていません。

足りない分の内訳を見ると、反対はわずか 6 票です。閾値との差を埋められるかどうかは、未投票の 43.87% がどれだけ動くかにかかっています。委員会側はこの議案に賛成 2・反対 0・未投票 4 を記録しており、こちらも判断が出そろってはいません。

次に見るもの

まず、新任 4 名のホットキー登録がいつ出そろうか。全員が登録を終えて初めて、7 議席の委員会として通常の議決が回り始めます。ここが遅れると、期限のある議案で委員会の判断が間に合わない場面が出てきます。

次に、エポック 656 が期限の 2 件で未投票がどこまで減るか。今回の委員会更新では、閾値を越えるまでに締切直前の連絡と動員が必要でした。同じ手当てなしで閾値に届くのかどうかは、次の議案で観察できます。

そして、既定の選択肢に置かれた 65.6% がこの先どちらへ動くか。この比率は、個々の議案の賛否よりも長い時間軸でガバナンスの性質を決めます。委任する側から見れば、「常に棄権」は分母から外れる選択、「投票しない」は分母に残る選択です。同じ「決めない」でも、可決基準への効き方は正反対になります。SPO・DRep として投票の側に立つ場合、この違いは議案ごとの賛否より先に押さえておく必要があります。


一次ソース / 関連リンク