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cardano-node 11.1.1 が出ました——次のエラの下地と、旧トレーシングの完全撤去が同じ箱に入っています

2026-09-09SIPO

協定世界時の 9 月 8 日 19 時 13 分、cardano-node 11.1.1 が公開されました。リリースノートの一行目に「メインネットでの利用はまだ推奨されない(not yet recommended for use on mainnet)」と書かれた、プレリリースです。中身を開けると、性質のまったく違う 2 種類のものが同じ箱に入っています。ひとつは次のエラに向けた下地で、こちらは先の話です。もうひとつは旧来の仕組みの完全撤去で、こちらは設定ファイルを書き換えないとノードが起動しない、という今の話になります。SIPO は 9 月 4 日に ハードフォーク対応版は 11.3 からだという整理を扱いましたが、11.1.1 はその手前、「入れるまでに何を片づけておくか」の側にあるリリースです。順に見ていきます。

まず、これはメインネットに入れる版ではありません

最初に確認しておきます。GitHub のリリースページで、11.1.1 は pre-release として公開されています。リリースノートの冒頭も「11.1.1 は cardano-node のプレリリース版であり、メインネットでの利用はまだ推奨されない」という文で始まります。ベンチマークの節は「進行中(In Progress)」のままで、システムテストの結果はプレリリース段階のあとに掲載する、と書かれています。承認欄も、技術運営委員会・プロダクト委員会・SRE・リリースエンジニアには印が入っている一方、テストエンジニアとパフォーマンスエンジニアの欄は「該当なし」です。

つまり、いま本番のノードを 11.1.1 に上げる理由はありません。ここから先で見ていくのは「次に上げるとき、何が自分の設定を壊すのか」の一覧です。

消えたもの——旧トレーシング、LMDB、そして NixOS の 3 オプション

このリリースでいちばん影響が広いのは、削除のほうです。

まず旧トレーシング機構(iohk-monitoring-framework)が、設定キーごと完全に取り除かれました。リリースノートは、新しいトレーシング機構が唯一のものになったこと、旧来のキーを使い続けている設定は移行が必要であることを明記しています。消えたキーの網羅的な一覧は、リンクされているプルリクエスト 6580 側にあります。ここは読み替えではなく、設定ファイルの実際の書き換えが要る箇所です。9 月 4 日の Upgrade Bulletin の整理でも、11.1 系の特徴として「旧来のトレーシング機構が取り除かれている」ことが挙げられていました。今回のリリースは、それを完了させた版という位置づけになります。

関連して、cardano-tracer からは打ち切りになった RTView の構成要素が完全に取り除かれました。任意で有効にできる時系列のメトリクス API は、Prometheus の書式に近づけられています。POST は URL エンコード形式、GET は URL のクエリ文字列、応答の JSON も Prometheus の慣習に合わせる、という書き方です。接続中のノード、ノード情報、起動情報、同期の進捗を問い合わせる端点も追加されました。ただしメトリクスの保存と HTTP API は既定では無効のままで、設定ファイルで明示的に有効にする必要がある、と注記されています。

もうひとつの削除は保管層です。V1 LedgerDB と LMDB のバックエンドが取り除かれ、V2 だけになりました。リリースノートは「LMDB を使っている利用者はバックエンドを切り替えなければならない」と書いています。

NixOS でノードを運用している場合は、さらに具体的です。サービスのオプションから useNewTopologylmdbDatabasePathwithUtxoHdLmdb の 3 つが削除されました。P2P が唯一のネットワークモードになったので前者はもう効果を持たず、後ろの 2 つは LMDB の廃止に伴うものです。そしてリリースノートには、これらのいずれかを設定したままの構成は評価に失敗する、と書かれています。黙って無視されるのではなく、起動前に落ちるということです。

入れ替わりに、2 つのオプションが追加されています。Leios 向けの BLS 鍵を任意で扱うための blsKeys と、GHC ランタイムのプロファイル出力を書き込み可能な場所へ置くための profilingOutputDir です。ランタイムの統計は既定で有効のままですが、重いプロファイルとイベントログの出力は、ノード側・トレーサー側ともに明示的に有効化する形へ変わりました。

変わったもの——スナップショットが予測可能になりました

SPO の運用に直接効く変更としては、台帳スナップショットの扱いが挙がります。

これまでスナップショットが書かれるタイミングはノードごとにばらついていました。11.1.1 では、同じ設定のノードは同じスロットでスナップショットを取るようになります。リリースノートの言葉では「予測可能(predictable)」であり、その結果としてノード間でスナップショットが比較でき、共有できるようになる、とされています。既定の方針は Mithril のものが採用され、40 × k スロットにつき 1 回、メインネットではおおむね 1 日 1 回、そのうち 5 回に 1 回が Shelley のエポック境界に落ちる、という頻度です。全ノードが同じ瞬間に書き込まないよう、書き込み前に小さなランダムな遅延が入ります。加えて、起動時にスナップショット設定を検証し、負の遅延や逆転した遅延、オンディスクのスナップショット数がゼロ、Mithril との互換性を壊す間隔といった怪しい設定に警告を出すようになりました。

性能面では 3 つ挙がっています。ピア間のトランザクション転送がより効率的になったこと(ネットワーク側の決定ロジックが v2 になりました)、メンプールのスナップショット作成がメンプールの大きさに対して二次ではなく定数時間になったこと、そして Plutus スクリプトの検証が速くなったことです。2 つめについてリリースノートは「混雑したノードでは実際のコストになっており、ブロックの生成と問い合わせの両方に影響していた」と書いています。3 つめは台帳側の変更で、トランザクションを状態注釈つきで規則に通して導出済みの情報を再利用する、ブロック内で一度読み込んだ Plutus スクリプトを後続のトランザクションでも使い回す、メンプールで検証済みのトランザクションは再検証時に結果を保持する、という 3 点です。

手元のコマンド周りでは、cardano-cli ping が作り直されました。複数の宛先、DNS の名前解決、SRV レコード(CIP-0155)、Unix ソケットに対応し、モードを ping / tip / query から選べます。ただし互換性は壊れていて、--host--port は位置引数の ADDRS に置き換わり、--magic--network-magic へ改名されました。

プール登録の証明書にも変更があります。--single-host-pool-relay を使うときは --pool-relay-port が必須になりました(これも互換性を壊す変更です)。あわせて、任意で有効にできる --validate-relays という到達性チェックが追加されています。リレーの記載が正しいかどうかを、証明書を出す前に確かめられるということです。

先に置かれたもの——Dijkstra の下地と、既定でオフの Peras

ここからは、今すぐ動くわけではない部分です。

台帳側の変更履歴には「Dijkstra エラの作業を継続、ただしエラ全体としてはまだ機能していない」という前置きつきで、いくつかの項目が並んでいます。トランザクションの中に入れ子でサブトランザクションを持たせるための検証規則、CIP-112 に基づくガード、トランザクション本体でのアカウント残高の表明、報酬アカウントへの直接の預け入れ、そして報酬の引き出しに際して報酬アカウントが DRep へ委任されていることを求めなくなった点。あわせて、CIP-0176 に沿った新しいブロック本体の構造と、Plutus の V1 から V3 の文脈変換が、それらの言語版では表現できない Dijkstra の機能に出会ったときに誤った文脈を作らず明示的に失敗するようになった点も挙がっています。

Peras については、ネットワークと合意の両側で初期対応が入りました。ただしリリースノートは「既定ではオフ」であり、実験的なプロトコルバージョン NodeToNodeV_16 の後ろにある、と明記しています。中身としては、Peras の証明書と投票をノード間で流すための ObjectDiffusion という新しいミニプロトコルが、TxSubmission と同じようにノードへ配線されたこと、証明書と投票の保管が永続化され回収されるようになったこと、BLS を用いた投票・証明書の形式と、重みづけされた Fait-Accompli の投票委員会が入ったことです。

この節を読むときに注意したいのは、これらが「入った」ことと「使える」ことは別だという点です。エラ全体としてはまだ機能しておらず、Peras は既定でオフ。ハードフォークの話でもありません。9 月 4 日に整理したとおり、ハードフォーク対応と明示される最初のリリースは 11.3 です。

次に見るもの

2 つあります。ひとつは既知の問題として挙がっているメモリです。リリースノートは、同期時のメモリ使用量が 11.0.1 と比べてわずかに増えているが、11.1.0 にあった悪化よりは大幅に小さい、と書いています。SIPO は 9 月 4 日に 11.1.0 で CPU が下がりメモリが増えた件を扱い、その修正が 11.1.1 のパッチリリースに入る予定だという週次レポートの記述を紹介しました。今回、その予定は「解消」ではなく「大幅に縮小」という形で着地しています。詳細な計測結果はリリースノートからリンクされている同期レポートにあります。

もうひとつは、この版がプレリリースを抜けるかどうかです。ベンチマークは進行中で、システムテストの結果はプレリリース段階のあとに掲載されると書かれています。いま見るべきは版番号そのものではなく、どの版が「メインネット推奨」と「ハードフォーク対応」の表示を得るかのほうです。


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