訂正(2026-08-14): 本記事は公開当初、8 月 13 日の告知にもとづき「移行ツールの提供が開始されました」とお伝えしていましたが、正しくは「本日公開予定」という告知でした。SecondFi は 8 月 14 日 19 時 45 分(JST)に「ツールはまだ利用できず、公開は来週の見込み」と更新しています。タイトルと本文を修正しました。
SecondFi のウォレット移行ツールは、8 月 13 日に「本日公開予定」と告知されたあと、8 月 14 日の公式更新で「アプリストアの審査待ちで、まだ利用できない。公開は来週の見込み」と改められました。6 月のインシデント以降、公式の案内は一貫して「公式の手順が出るまで、それ以外のことはしないでください」でした。その手順の最初の一本が、約 7 週間を経て、利用者の手に渡る直前まで来ています。同時に、盗まれた資産を請求するためのゼロ知識証明ポータルには「9 月 10 日までに」という日付が付きました。ステーキングをされている方には、移行した瞬間に委任が外れるという実務上の影響があります。今回は、何がどこまで進んだのか、そして返還用の資金が現在どうなっているのかを、オンチェーンで確認した数字とあわせて整理します。
公開は「本日」から「来週」へ——残っているのはアプリストアの審査です
8 月 14 日 19 時 45 分(JST)の公式更新は、状況を次のように説明しています。
The tool is not yet available and is now expected to launch next week, subject to completion of the app-store review process.
ツールは Apple App Store と Google Play の審査待ちで、これが公開前に残る最後の工程とされています。時期を改めたことで、利用者が移行を始める際に対面のガイダンスセッションを合わせて提供できるようになる、という説明も添えられました。
待つ間にできる準備も示されています。自分で選んだプロバイダーで新しい Cardano ウォレットを作成し、送り先のアドレスを控えておくこと。可能であればハードウェアウォレットの利用が推奨されています。
そして、この状況はそのまま重要な安全情報でもあります。公式は「利用可能になり次第、公式チャネルで告知する。それまでは移行ツールへのアクセスをうたうリンクやアプリを使わないでください」としています。つまり現時点では、「移行ツール」を名乗るリンクやアプリは、どこから届いたものであれすべて偽物です。
移行ツールは、被害の有無にかかわらず全員が使うものです
移行ツールが対応するのは Cardano の資産だけです。SecondFi ウォレットに残っている ADA・ネイティブトークン・NFT を、利用者が自分で選んだプロバイダーで新しく作成した Cardano ウォレットへ移せます。Cardano 以外の資産は、それぞれのネットワークとウォレットの手順で別途移す必要があります。
公式の説明は次のとおりです。
The migration tool supports transferable Cardano assets that remain in your SecondFi wallet. It allows users to initiate the transfer of eligible ADA, native tokens, and NFTs to a newly created Cardano wallet with a provider of their choice.
重要なのは、これが被害を受けた方だけの話ではないという点です。7 月 27 日の案内では、対象は次のように書かれていました。
Every user, whether affected by the incident or not, will need to transfer their assets using this tool.
SecondFi は事業を終了します。そのため、被害の有無にかかわらず、残っている資産は移す必要があります。移行は 1 つのウォレットずつ行い、元のウォレットと SecondFi アプリ本体は削除しないよう案内されています。請求の手続きには、アプリかリカバリーフレーズのどちらかが必要になるためです。
移行ツールについては、Bitdefender による独立したセキュリティ評価を受けたと公表されています。公式は、進める前に公開された手順とセキュリティ情報を確認するよう求めています。
移行すると、ステークプールと DRep の委任が両方外れます
ステーキングをしている方にとって、今回いちばん実務に効くのはこの点です。ツールは技術的な手順を自動的に処理し、ADA がステーク中であれば、全額を移送に含めるためにステークを解除します。
The tool handles the technical steps automatically. If your ADA is currently staked, the tool will unstake it so the full amount can be included in the transfer.
8 月 3 日に EMURGO と Yoroi が公表した告知には、「ウォレットを移行すると、ステークプールと DRep の両方から自動的に委任が外れます」と明記されていました。影響は二重で、DRep だけでなくステークプールの委任も外れるため、新しいウォレットで委任し直すまでのエポックは、ステーキング報酬の対象外になります。
この構造は 8 月 4 日の記事で先に整理しています(ウォレット移行で、ステークプールと DRep の委任が両方外れます)。当時は「移行ツールの提供開始にあわせて案内される予定」という段階でした。それが公開直前まで来た、というのが今の位置です。
移行そのものを急ぐ必要はありませんが、移した後に「委任が外れたままになっていた」という状態が続くと、その間の報酬は戻りません。移行を終えたら、新しいウォレットでステークプールと DRep の委任をあらためて設定する、というところまでを一続きの作業として考えておくのが安全です。
返還にあてられる 1,610 万 ADA は、公開アドレスで動いていません
7 月 29 日、SecondFi は EMURGO が設立した回収基金のアドレスを公表しました。透明性のために追跡できるようにしたもので、公式は同時に次のように注意しています。
This address is strictly for tracking transparent recovery progress. Do not send funds to this address. SecondFi will never ask you to transfer funds to any wallet address.
このアドレスを SIPO が Koios で確認したところ、2026 年 8 月 14 日時点の残高は 16,102,672.94 ADA でした。公式が公表している被害額は「374 のウォレットから約 1,610 万 ADA」ですので、返還の対象とされる規模と、公開アドレスに実際に置かれている額は、ほぼ一致しています。
内訳を追うと、大口の入金は 1 件です。2026 年 7 月 1 日 19 時 33 分(JST)に 16,099,988.66 ADA が入り、残りは 10 ADA から 1,857 ADA 程度の小口が 17 件でした。そして、このアドレスに記録されている 18 件の取引はすべて入金で、送出は 1 件もありません。
つまり、資金は公開された場所に用意されていて、そこから外へは一度も出ていません。返還の原資が見える形で置かれていることは前進ですが、それは「返還が始まった」ということではありません。誰が対象になるのか、どの条件で、いつ支払われるのかは、これから公開されるリカバリーポータルの手順で決まります。残高が被害額と一致していることを、そのまま「全額が戻る」と読むことはできません。
もう一つ、別枠の資金があります。6 月のインシデントの際に緊急退避されたとされる約 1 億 2,943 万 ADA です。SIPO が追跡しているアドレスでは、この資金は 6 月 25 日に集約が完了して以降、外部への移動が観測されていません。こちらのアドレスは公式からは公表されておらず、保管先も明らかにされていないままです。公開された回収基金と、公表されていない退避分。同じ「守られている資金」でも、外から検証できる度合いには差があります。
9 月 10 日は「までに」であって、確定した日付ではありません
盗まれた資産の請求は、移行ツールとは別のプロセスです。ゼロ知識証明を使うリカバリーポータルで、利用者が自分の SecondFi ウォレットの所有権を証明し、影響を受けた資産を請求する仕組みとされています。リカバリーフレーズや秘密鍵を明かさずに所有を証明できる点が、この設計の中心です。
開始時期は「9 月 10 日までに開始予定」と示されました。ただし公式は、同じ告知のなかで日程が動きうることを明記しています。
Launch dates may change if additional security or operational work is required.
この但し書きは、実際の経緯とあわせて読むのが正確です。7 月 22 日の時点では、リカバリーツールは「2026 年 8 月中のリリースを見込む」とされていました。その後 7 月 27 日に「9 月上旬」となり、8 月 13 日の告知で「9 月 10 日までに」と幅が絞られています。監査の進み方によって時期が動いてきた、という経過です。移行ツールの「本日公開予定」が翌日に「来週」へ改められたことも含めて、この種の日付は確定として扱わないのが安全です。
いま利用者ができるのは、support.secondfi.io でのチケット提出と、アプリとリカバリーフレーズを保持しておくことです。この 2 つは、リカバリーポータルが開いたときの入り口になります。
移行ツールの公開前から、それを名乗る詐欺が動いています
ツールの公開が近づくタイミングは、詐欺にとっても好機です。公式の告知に対する返信欄には、すでに「復旧ツールが使えるようになったので、手順を教える。フォローして DM を送ってほしい」という趣旨の誘導が現れています。ツール本体がまだ公開されていない以上、こうした誘導はすべて偽物と判断できます。
判断の基準はシンプルです。公式のチャネルは @secondfiapp、@secondfi_jp、support.secondfi.io の 3 つだけで、それ以外から届いたリンクは、公式サイトを通じて真正性を確認できるまで使わない。SecondFi が先に DM を送ることはなく、リカバリーフレーズを尋ねることもありません。そして、回収基金のアドレスを含め、どのアドレスに対しても「送金してください」と求められることはありません。
移行ツールを使う場合も、入り口は必ず公式チャネルで案内されたリンクから辿ってください。名前もロゴも本物そっくりの偽サイトや偽拡張機能は、この事案を通じて繰り返し確認されています。
ここから見ておきたいこと
次に状況が動いたと判断できる材料は、いくつかはっきりしています。
まず、移行ツールが実際に公開されるかです。公式チャネル(@secondfiapp / @secondfi_jp / support.secondfi.io)での開始告知が確認イベントで、それまでに出回る「ツール」はすべて偽物という判定がそのまま使えます。
ひとつは、公開されている回収基金のアドレスから最初の送出が記録されるかです。18 件すべてが入金の現在、最初の 1 件の送出は、返還が実際に動き出したことを外から検証できる最初の signal になります。
もうひとつは、9 月 10 日までにリカバリーポータルが公開されるか、そして緊急退避分の保管先とアドレスが公表されるかどうかです。前者は請求手続きの入り口、後者は残る検証の空白にあたります。
そして移行ツールの手順書が、ネイティブトークンと NFT をどう扱うかも確認したい点です。ADA だけを移して他の資産が元のウォレットに残る、という取り違えは、この種の移行でもっとも起こりやすいためです。
一次ソース・参照
- SecondFi 公式(@secondfiapp)2026-08-14 19:45 JST の更新「Wallet Migration Tool Launch Update」 — https://x.com/secondfiapp/status/2088215305587990676
- SecondFi 公式(@secondfiapp)2026-08-13 の告知 — https://x.com/secondfiapp/status/2087814834540949854
- SecondFi Knowledge Base「Security Incident Update」(2026-08-13 16:15 SG 更新) — https://kb.secondfi.io/en/article/security-incident-update-dxv72a/
- SecondFi サポートポータル — https://support.secondfi.io
- 回収基金アドレス(2026-07-29 に SecondFi が公表・残高は SIPO が Koios で 2026-08-14 に確認) — cardanoscan で見る
- SIPO「ウォレット移行で、ステークプールと DRep の委任が両方外れます」(2026-08-04) — https://sipo.tokyo/signal-20260804-884417bf/
