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Blockforce のトレーサビリティ基盤で Cardano が公開証明レイヤーとして動き始めました——商用データは非公開のまま、50 万件超が記録されています

2026-09-02SIPO

Cardano Foundation とブラジルの Blockforce が 8 月 31 日、Blockforce のトレーサビリティ基盤で Cardano が公開証明レイヤーとして稼働していると発表しました。すでに 50 万件を超えるサプライチェーン記録が公開チェーン上にアンカーされています。取引先の名前も契約条件も生産量も公開ネットワークには出さず、その記録が本物であることだけを外部が独立に確認できる——という二層構成です。企業がこの形を採れなかった理由は秘匿性ではなく費用でしたが、その費用が 1 件あたり 92% 下がったことが、実証実験から本番稼働への線を越えさせています。

■ 秘匿性と検証可能性を、別の層に分ける

Cardano Foundation のプレスリリースによれば、この構成は機密性と検証可能性を分離します。サプライチェーンの各工程の記録は許可型ネットワークに置かれ、関係する当事者だけが見られます。Cardano に載るのは、その記録の暗号学的な証明だけです。監査人・規制当局・顧客は、元データを見ることなく、その記録が本物であることを確認できます。

ケーススタディ側の記述はもう少し具体的です。取引先の身元、契約条件、生産量といった商用上センシティブな記録は、許可型の Hyperledger Fabric ネットワークに格納されます。公開チェーンに出るのは証明だけで、元の情報は private network を出ません。

「サプライチェーンの記録は今日書かれ、何年もあとになって問われます。公開ネットワークは、その証明を製品ライフサイクル全体にわたって保つためのものです」——Guilherme Pereira 氏(Cardano Foundation・Ecosystem Growth Specialist LATAM)

この「あとから問われる」という時間差が、なぜ private database だけでは足りないのかを説明しています。自社のデータベースの中で完結した記録は、その会社が信用されている限りにおいて有効です。第三者が独立に検証できる形にしておくことは、記録の保全を自社の信用から切り離す作業にあたります。

■ 止めていたのは費用でした——証明書を 44 枚まで束ねる

プレスリリースは、この方式を阻んでいたのが費用だったと明記しています。数十万件の記録を公開チェーンに載せることは、企業規模では成り立たなかった。共同でのエンジニアリング作業が 1 件あたりの費用を 92% 削減したことで、公開検証が実証実験の段階を出て、現実的な量での本番稼働に入ったという説明です。

その中身がケーススタディに書かれています。記録はデジタル製品パスポート(DPP)の形に構造化されて Hyperledger Fabric 上に保存され、バッチ処理によって Cardano にアンカーされます。このバッチは最大 44 枚の証明書を 1 つのトランザクションに詰め込みます。束ねてもなお、それぞれの証明書は個別に元の記録まで辿れる形が保たれます。50 万件の初期移行も、本来なら数十万回の個別トランザクションを要したところをバッチにまとめる形で行われました。

データの入り口も現場に寄せられています。ケーススタディによれば、サプライチェーンのデータは ERP 連携、文書のアップロード、あるいはデジタルシステムを持たない取引先向けに用意された WhatsApp の AI エージェントを通じて取り込まれます。多段のサプライヤーのうち下層ほど構造化された記録を出す仕組みを持っていない、という前提から設計されているということです。

■ 使っているのは Azzas 2154 のレザーチェーンです

この方式で既に稼働している企業として名前が挙がっているのが、中南米最大のファッショングループである Azzas 2154 です。同社は税務書類、取引先の記録、公的データベースを突き合わせて、製品ごとに一続きの履歴を作る形でレザーのチェーンを追跡しています。

「私たちの目標は、2030 年までにブランド全体のレザーを 100% 追跡することです。そこに到達するために、チェーンの実態に沿って動き、取引先がすでに作っているデータを使う仕組みを Blockforce と一緒に作りました。新しいシステムの導入を求めるのではなく、その情報から始めて、監査可能な単一の記録に変えています」——Suelen Joner 氏(Azzas 2154・サステナビリティ責任者)

「新しいシステムの導入を求めない」という設計思想は、この種の取り組みが過去に躓いてきた場所を踏まえたものです。トレーサビリティは最下層の取引先まで届かなければ意味を持ちませんが、その層ほど新しいツールを入れる余力がありません。既存の帳票と公的データベースを突き合わせる方向に振ることは、その制約への回答になっています。

■ 需要を作っているのは規制です

ケーススタディは、課題として EUDR や CSRD といった規制が文書化された証明を要求している点を挙げています。ブランドが直接監査したことのない多段の取引先、公開台帳では露出してしまう商用データ、記録の仕組みを持たない下層の取引先——この 3 つが同時に成り立つ場所で、証明だけを公開する構成が選ばれた形です。GS1 に準拠したデジタル製品パスポートと規制対応のモジュールが、監査に耐える記録を別途の手作業なしに残す役割を担っています。

「公開の検証には常に商業上の露出という代償がありました。だからこそコンプライアンスの証明はボトルネックとして扱われてきたのです。Cardano Foundation と一緒に作ったアーキテクチャでは、そのトレードオフがなくなりました。すべての記録が独立に検証可能で、戦略的なデータは 1 つも private network を出ません。輸出企業にとって、コンプライアンスはコストであることをやめ、欧州市場に入るための資格になります」——André Salem 氏(Blockforce・創業者兼 CEO)

コンプライアンスを「コスト」から「資格」へ読み替える、という言い方がこの事例の位置づけをよく表しています。規制対応が売上に結びつく経路がある産業では、検証コストの引き下げがそのまま導入の理由になります。

署名済みの契約は 2030 年までに 650 万件の認証を対象としており、プレスリリースはファッション・自動車・アグリビジネス・医薬品・化粧品への展開が計画されていると述べています。

■ 次に見るもの

  • 50 万件から 650 万件までの伸び方——契約上の目標は 2030 年までに 650 万件です。現在の 50 万件からどのペースで積み上がるかは、公開アンカーが本当に「量で回る」のかを測る素直な指標になります。
  • ファッション以外の産業への横展開——自動車・アグリビジネス・医薬品・化粧品が挙がっています。バッチのパラメータは用途ごとに設計されているとされており、産業が変わったときに同じ費用構造が保てるかが論点です。
  • 公開証明レイヤーとしての使われ方——ここで Cardano が担っているのは資産の発行でも決済でもなく、「後から誰でも検証できる置き場所」です。この使われ方が他の事例に広がるかどうかは、チェーンの評価軸そのものに関わります。

一次ソース / 関連リンク