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ホスキンソン氏、国連本部の講演で規制のオープンソース化を提案

2026-10-03SIPO #Midnight

Cardano と Midnight の創設者チャールズ・ホスキンソン氏が、10月2日(米国時間)にニューヨークの国連本部で行った講演の動画を、10月3日早朝(日本時間)に X で公開しました。約35分の講演の中心にあったのは、規制当局が「何を守りたいか」という意図を示し、業界がそれをオープンソースのコードとして実装し、当局が認証するという、規制のつくり方そのものの提案です。

ホスキンソン氏はこの仕組みの部品として、Midnight が担うプライバシーと本人確認を位置づけています。登壇の経緯は10月3日の Signal で整理しましたので、本稿では講演の中身を、論の順に追っていきます。

出発点は、規制が追いつかない「指数関数的な技術」

講演の舞台は、米国の業界団体 Government Blockchain Association(GBA)が開く会議シリーズ「Future of Money, Governance, and the Law 2026」の最終日、国連本部での FinTech サミットです。司会者の紹介を受けて登壇したホスキンソン氏は、まず核兵器、インターネット、AI、合成生物学を並べ、少し増えるだけで世界が変わる「指数関数的な技術」として括りました。

20世紀の核兵器は政府が管理し、厳しい規制の枠組みの中に置かれていました。一方で、同じかそれ以上の力を持つ今日の技術は、民間企業やオープンソースの手にあり、誰でも使えます。AI のモデルは毎月のように更新されるのに、法律や政策は同じ速さで改善されない。この速度差が、講演全体の問題設定です。

そのうえでホスキンソン氏は、こう述べています。

“I would posit that the only way to regulate these types of technologies is to use the blockchain space, the blockchain industry.”
(この種の技術を規制できる唯一の方法は、ブロックチェーン産業を使うことだと考えています)

理由として挙げたのは、ブロックチェーンがほかの技術と同じ速さで進化してきたことです。EU の MiCA、アブダビの ADGM、日本の金融庁など、各国が規制の枠組みを整えつつある現状にも触れたうえで、既存の金融商品と同じ方法で分散型のネットワークを規制しようとすることの限界を指摘しました。米 SEC のゲンスラー元委員長の時代の執行中心の姿勢についても、強い言葉で批判しています。

当局が意図を示し、業界がコードを書く

講演の中核は、規制の役割分担を組み替える提案です。規制当局は「何を懸念しているか」という意図を、X Prize のような課題として示します。業界はオープンソース開発と同じ方法で、税の仕組みや本人確認の仕組みをコードとして書き、当局に共有します。当局が内容を確認して認証すれば、そのコードを採用した事業者は、その時点で法律に準拠していることになります。

“…compatible with the intention of regulators as opposed to the action of regulators.”
(規制当局の個々の行動ではなく、その意図と互換にする)

ホスキンソン氏はこの状態を “settlement is compliance”、つまり決済がそのまま遵守になる世界と表現しました。具体例として挙げたのは、国ごとに用意された規則のライブラリです。メキシコのユーザーにはメキシコのライブラリを、ドイツのユーザーにはドイツのライブラリを呼び出せば、10か国のユーザーが関わる取引でも、10か国の法律に同時に従えるという考え方です。

この形には、効果が二つあるとしています。一つは、当局と業界の関係が敵対から協調に変わることです。業界の側にはそのコードで自分たちが規制されるという動機があり、各国の優れた規制の工夫も、出どころを問わず、機能で採り入れられます。もう一つはコストです。ホスキンソン氏は、監査や本人確認、罰金などに世界で年に約5,000億ドルが使われていると述べ、コンプライアンス・オフィサーの代わりに「コンプライアンス・エンジニア」を社会に増やすことで、この費用を10年ごとに一桁ずつ下げていく仕組みを目指すべきだと語りました。

Midnight が受け持つ、プライバシーと本人確認

ホスキンソン氏は、自身が手がける Midnight を、この仕組みに欠けていた部品として説明しています。規制当局の意図を満たしながら、利用者の情報を必要以上に明かさないためには、プライバシーと本人確認の技術が要るからです。

講演の後半では、お金と本人確認を一体で握る仕組みがどう使われうるかに話が移りました。欧州のデジタルユーロについては、残高があっても購入の種類や量を制限される可能性があるとして、そうしないと言うのなら法律に書くべきだと迫っています。ここでの言葉が、Google の旧標語を踏まえた次の一節です。

“…we have enshrined in our technology, not don’t be evil, can’t be evil.”
(私たちは技術に「悪をなすな」ではなく「悪をなせない」を刻み込んでいます)

ホスキンソン氏は、ブロックチェーンは利用者を縛るだけでなく、政府の振る舞いも同じように縛るべきだと続けました。デジタル ID や現金の縮小が進み、生活の多くがクラウドの上に移っていく時代に、プライバシーや自由といった権利を技術の側から守り直す、という位置づけです。

結論は「信頼の構造」

講演の締めくくりに、ホスキンソン氏はワイオミングの牧場を例に、隣人から土地を買う話をしました。互いを信頼していれば、食事を2回して握手で済む取引が、信頼がなければ弁護士を立てた交渉と2年の訴訟になり、それでも手に入るのは同じ土地です。二つの違いは信頼だけだ、と述べています。

“What we sell in the blockchain industry are structures of trust. That’s what we sell. That’s our core product.”
(ブロックチェーン産業が売っているのは、信頼の構造です。それが私たちの中核の商品です)

会場の規制当局や政策担当者に向けては、自分たちが「人々のために働いている」ことを思い出してほしいと呼びかけ、講演を終えました。

この講演で目を引くのは、Midnight を、規制当局と業界が同じコードを共有するための基盤として語った点です。10月2日にはメインネットで許可不要のコントラクト配備が始まったばかりで、講演で描かれた国ごとの規則のライブラリは、構想として語られた段階です。この構想が具体的な実装の話に移るかどうかは、次の登壇で確かめられます。

次に確かめること

10月10日(土)に東京・白金台の八芳園で開かれる「Midnight City: Tokyo」で、ホスキンソン氏はビジョンとロードマップを話すと告知されています。国連本部で語った「規制当局の意図をコードにする」構想について、Midnight 上での具体的な実装や、規制当局と組む計画にまで触れるかどうかが、最初の確認点です。

ことば

  • FoMGL(Future of Money, Governance, and the Law) — 米国の業界団体 GBA が毎年開く会議シリーズです。2026年はワシントン D.C. で議会関係者との会合と本会議を開き、10月2日に国連本部の FinTech サミットで締めくくりました。
  • settlement is compliance — 取引の決済が、そのまま法令遵守の証明になる状態を指す、ホスキンソン氏の言い回しです。当局が認証したコードを使って取引すれば、別途の確認手続きが要らなくなる、という考え方を一言にしています。
  • Midnight — 必要な情報だけを選んで開示できるよう設計された、データ保護型のブロックチェーンです。ゼロ知識証明を使い、規制上の要件を満たしていることを、中身を明かさずに示せるのが特徴です。

一次ソース / 関連リンク

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