Cardano 財団は 10 月 8 日、財団の中で育ててきたデジタル ID 基盤 Veridian(ヴェリディアン)を、独立したデジタル ID の会社として切り出したと発表しました。財団が 3 年をかけた事業が、CEO トーマス・A・メイフィールド氏のもとで、政府や企業に技術を届ける会社として歩き始めます。
同じ日、財団 CEO のフレデリック・グレガード氏はシンガポールの TOKEN2049 で対談に登壇し、デジタルな信頼とデータの安全をテーマに話すなかで、このスピンアウトについても語りました。Cardano 公式 X は、Veridian が前日にメインネットで稼働したトークン規格 CIP-113 で、最初にトークン化された資産になったとも伝えています。この記事では、財団と Veridian の公式発信から、何が独立し、Cardano のどこにつながるのかを整理します。初期報は Cardano財団CEOがTOKEN2049でデジタルアイデンティティの未来を語る です。
財団で 3 年、育ててから外へ
財団の公式 X は 10 月 8 日、「Veridian は独立したデジタル ID の会社になった」と告げたうえで、財団がここまでに 3 年を投じてきたこと、CEO のメイフィールド氏が率いること、Veridian がその技術を必要とする政府と企業へ届けていくことを短く伝えました。詳細は財団のブログに発表全文が置かれています。
財団は 2025 年 4 月、Veridian をオープンソースのデジタル ID 基盤として公開していました。個人や企業が自分の ID を自分で管理できるようにする設計で、分散型の識別子 KERI と検証可能な資格情報 ACDC を使い、Cardano を必要に応じて使える信頼の層として組み合わせるものです。ウォレットのソースコードは Apache-2.0 で公開されており、GitHub のリポジトリは現在、財団の組織から Veridian の組織(veridian-id)へ移っています。
財団の中で開発した技術を、事業として売る段階では独立した会社に任せる。今回の発表は、その切り替えにあたります。
Veridian が政府と企業に届けるもの
Veridian 自身のサイトは、自社を「デジタルな信頼の基盤」を提供する会社と位置づけ、政府と組織がパスワードや従来の証明書の先へ進むための仕組みを提供するとしています。いま前面に出しているのは、次の三つの入口です。
- 米ユタ州の州公認デジタル ID(SEDI): ユタ州の SB 275 が施行され、州の機関と対象の医療機関には SB 260/275 のもとで SEDI に対応するまで 24 か月の期限があるとして、対応の評価から基盤の導入、継続的な運用までを請け負うとしています
- 年齢確認の API: 生年月日を保存せず、書類のアップロードもなしに、暗号で年齢を証明する仕組みを、ウェブとモバイルに組み込める形で提供するとしています
- 企業の ID(vLEI)の発行: 法人識別子 LEI を検証可能な資格情報にした vLEI の発行基盤 VQS を、運用を丸ごと任せる形から自社で動かす形まで 3 段階で提供し、発行資格(QVI)の認定に向けた手続きを進めているとしています
どの入口も、同じウォレットの上で動きます。iOS・Android・GrapheneOS 向けのネイティブアプリで、KERI と ACDC のために作られたものだと Veridian は説明しています。
CIP-113 の「最初の資産」に
Cardano 公式 X の TOKEN2049 2 日目のまとめは、Veridian の独立に続けて、Veridian が CIP-113 を使ってトークン化された最初の資産になったと伝えました。CIP-113 は、本人確認や制裁リストの照合、移転の制限といったルールをトークンそのものに組み込み、台帳に守らせる規格で、10 月 7 日にメインネットで稼働したばかりです(既報: Cardano のプログラマブルトークン CIP-0113、メインネットで稼働)。
公式 X の投稿は、何をどの形でトークン化したのかまでは書いていません。それでも、ルール付きのトークンの規格が稼働した翌日に、財団から生まれた会社がその最初の利用者として名前を出したことになります。規格が使えるようになった段階から、実際に使われ始めた段階へ移ったことを示す一件です。
「データは 2 種類しかない」
財団の公式 X は、グレガード氏が TOKEN2049 でデイビッド・ワックスマン氏と対談した場面を、次の一文を引いて紹介しました。
There are only two types of data today: data that has been hacked and data that is about to be hacked.(今日のデータには 2 種類しかない。すでにハッキングされたデータと、これからハッキングされるデータだ)
対談のテーマは、デジタルな信頼、データの安全、ブロックチェーンの普及です。財団はこの投稿で、Veridian の独立をこの考え方を実行に移すものと位置づけ、人、組織、そして AI エージェントが、自分のデジタル ID をより自分で管理できるようにすると書いています。Cardano 公式 X も、Veridian を、中央のデータベースに頼らずに ID と権限を確かめるための基盤だと説明しています。
預けたデータは、いつか漏れる前提で考える。そうであれば、ID を一か所に集めるのではなく、本人が持ち、必要な場面で必要な分だけ示して相手が検証する形のほうが、漏えいの被害は小さくなります。AI エージェントが支払いや契約の場面に出てくるほど、相手が誰の、どの権限で動いているのかを確かめる必要は増えていきます。Veridian が人と組織に並べて AI エージェントを挙げているのは、その需要を見込んでのことでしょう。
次に見るもの
確かめる先は二つあります。一つは GLEIF(グローバル法人識別子財団)が公開している vLEI の発行資格(QVI)の一覧で、Veridian が手続き中の段階から認定済みの発行者に加わるかどうかです。もう一つは Veridian のサイトとブログで、独立後の最初の導入先として、ユタ州の SEDI 対応や vLEI の発行で具体的な組織名が出てくるかどうかです。CIP-113 でのトークン化の中身についても、財団の発表全文と今後の Veridian の発信で確かめられます。
ことば
- スピンアウト — 組織の中で育った事業や技術を、独立した会社として切り出すこと。Veridian の場合は、財団が 3 年かけて開発した ID 基盤を、政府や企業に届ける会社として外に出しました。
- KERI / ACDC — KERI は特定の台帳や管理者に依存せずに鍵と識別子を管理する仕組み、ACDC はその上で発行・検証する資格情報の形式です。Veridian のウォレットと発行基盤はこの二つを土台にしています。
- vLEI — 法人を世界共通で識別する番号 LEI を、暗号で検証できる資格情報にしたもの。発行できるのは GLEIF の認定を受けた発行者(QVI)だけで、Veridian はその認定に向けた手続きを進めています。
一次ソース / 関連リンク
- Cardano 財団公式 X の告知(Veridian の独立・2026-10-08)
https://x.com/Cardano_CF/status/2108044721410953268
Cardano 財団ブログ: Veridian の独立に関する発表全文(cardanofoundation.org)
- Cardano 財団公式 X(TOKEN2049 での対談・2026-10-08)
https://x.com/Cardano_CF/status/2108167025759490399 - Cardano 公式 X(TOKEN2049 2 日目のまとめ・2026-10-08)
https://x.com/Cardano/status/2108273235854823660
Veridian 公式サイト(veridian.id)
Veridian ブログ: What You Can Buy from Veridian(veridian.id)
Cardano フォーラム: Veridian: A Next-Generation Digital Identity Platform(2025-04-03)(forum.cardano.org)
Veridian Wallet(GitHub)(GitHub)

SIPO
