Blockfrost は 10 月 9 日(日本時間 23 時 11 分)、SPO やノード運用者が Cardano の API リクエストを処理して収益の分配を受ける「IceBreakers」プログラムを終了すると発表しました。参加中の運用者はノードを止めてよく、最終の支払いと日程は Discord とメールで個別に案内されます。
100 を超える運用者が実際のトラフィックをさばき、コミュニティ運用の API 網が動くことは示されました。それでも、Leios 後に必要になる次の仕組みの資金が得られず、Blockfrost は中途半端に続けるより閉じることを選んでいます。SPO にとっては relay の副収入が一つ終わる話であり、Cardano のデータ基盤をだれがどう支えるのかという問いが、もう一度開かれる出来事です。
relay の隣で API を返していた 100 超の運用者
Blockfrost は 2020 年に始まり、5 年のあいだに数千の Cardano プロジェクトが依存するデータ API になりました。発表は、その結果として分散型ネットワークの中に一社の単一障害点ができてしまったと振り返り、「長期的な答えではなかった」と書いています。2024 年 1 月に Input Output が出資したのは、コミュニティ運用型への移行を資金づけるためで、その形が IceBreakers でした。
仕組みは、SPO やノード運用者が既存の relay と並べて Blockfrost Platform を動かすというものです。開発者が Blockfrost に問い合わせると、ゲートウェイがノードの健全性・地理的な近さ・負荷・レイテンシを見て振り分け先を選び、ノードは手元のチェーンデータから応答します。ノードが保守で落ちてもゲートウェイが別のノードへ切り替えるため、利用者の体験も運用者の評価も下がらない設計でした。運用者は処理したリクエストごとに収益の分配を受けていました。
参加のハードルは版を重ねるごとに下がっています。最初の版では新しい種類のサーバーを用意し、外からの接続を受けるポートを開ける必要がありました。2026 年 5 月の Blockfrost Platform 1.0.0 で WebSocket による接続が加わり、NAT やファイアウォールの内側から外向きにつなぐだけで、受信ポートもグローバル IP も要らなくなりました。TxPipe のデータノード Dolos が同梱され、インデクサーはインストーラーに含まれる形になっています。
発表によれば、これまでに 100 を超える運用者がノードを動かし、ウォレット、DEX、マーケットプレイス、ガバナンスツールなどからの API リクエストを処理してきました。
スライス・インデキシングの資金が通らなかった
終了の理由として Blockfrost が挙げたのは、いまではなく次の段階の問題です。現在の処理量なら、すべての運用者がチェーン全体をインデックスする方式で回ります。ところが Leios が導入されて処理量が増えると、チェーン全体をインデックスするコストも一緒に膨らみます。発表は、これは IceBreakers だけでなく、その量のデータを提供する誰にとっても同じ問題だと述べています。
Blockfrost が用意していた答えがスライス・インデキシングでした。チェーンを区切り、運用者は自分の容量に合わせて必要な部分だけを持ち、ネットワーク全体で答えを組み立てる方式です。DeFi のコミュニティに向けた運用者はコントラクトの状態を、ウォレット向けの運用者はアドレスの履歴をインデックスする、といった役割分担も可能になり、小さな運用者も大きな運用者と並んで参加できる設計でした。
そのうえで発表は、この開発を資金づけるモデルをコミュニティに提案したが承認されなかったこと、その結果を尊重すること、そして「やるならきちんと、できないならやらない」という考えから、プログラムをきちんと閉じることにしたと説明しています。
We proposed a model to the community that would fund that work that wasn’t approved. We respect that outcome, and because we would rather do this well or not at all, we are closing the program properly instead.
発表は提案の名前を挙げていません。スライス・インデキシング(Project Cayley)を柱の一つに含んでいたのは、2026 年 4 月 22 日(エポック 626)に提出された国庫引き出し提案「Blockfrost: Maintenance and Next Generation Indexing」です。この提案は批准されないまま、エポック 633 で失効しています。SIPO は DRep としてこの提案に賛成票を投じ、その理由を投票時の記事にまとめていました。7 月には、Blockfrost をコミュニティ統治の非営利組織へ移す別の提案も失効しています(7 月の解説記事)。
運用者と API 利用者に起きること
IceBreakers に参加している運用者がすることは、ノードを止めることです。Blockfrost Platform は relay と並べて動かすソフトウェアで、ブロック生成には干渉しない設計と説明されてきました。終了後の最終支払いの金額と日程は公開の発表には書かれておらず、Discord と参加者へのメールで個別に知らされます。
開発者やウォレットなど API の利用者にとって、今回の発表は Blockfrost の API サービスそのものの停止には触れていません。終わるのは、その API の応答をコミュニティの運用者に分散して担わせる層です。
Cardano のデータ API 全体で見ると、提供者を増やす動きは別の場所でも続いています。10 月 2 日には Maestro が有料 API の裏側だったインデクサ 3 本を公開し、Iagon がデータ API「Insight」のベータ版を公開しました。IceBreakers は「一社に頼らない API」を一つの事業者の中で分散させる試みでしたが、その問いはこれから複数の事業者のあいだで続くことになります。
次に確かめること
運用者にとって最初の確認先は、Blockfrost の Discord にある IceBreakers 向けの案内です。最終支払いの日程と条件はそこに出ています。
読者全体にとっては、Leios の導入に向けた議論が進む中で、Blockfrost が API 本体の運用方針やインデックスのコストについて何を示すかが次の焦点です。公式 X(@blockfrost_io)と Blockfrost ブログの続報、そして Blockfrost からの新しい国庫引き出し提案が GovTool の提案一覧に出るかどうかを、Leios の導入時期が具体的に示されるまでに見ておくと、データ層の担い手がどこへ向かうかが分かります。
ことば
- IceBreakers — Blockfrost の API リクエストを SPO やノード運用者のノードに振り分け、処理量に応じて収益を分配したプログラム。単一事業者への依存を減らす狙いで始まり、100 超の運用者が参加しました。
- スライス・インデキシング — チェーンを区切って運用者ごとに必要な部分だけをインデックスし、ネットワークで答えを組み立てる方式。Leios 後のインデックスコスト増に備える案でしたが、資金が承認されませんでした。
- Leios — Cardano の処理能力を大きく引き上げるために開発中の合意プロトコルの拡張。処理量が増えるほど、チェーン全体を保存・インデックスするデータ提供側の負担も増えます。
一次ソース / 関連リンク
- Blockfrost 公式 X の告知「IceBreakers is closing」(2026 年 10 月 9 日)
https://x.com/blockfrost_io/status/2108560910025375996

Blockfrost ブログ「IceBreakers」(プログラムの仕組みと参加条件)
Blockfrost
Blockfrost: Maintenance and Next Generation Indexing(提案ページ・投票状況)(gov.tools)
チャールズ・ホスキンソン氏動画「Blockfrost」紹介・解説・全翻訳:非営利化提案は失効(2026 年 7 月)(SIPO)

