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Weekly Brief #23|再提出の minPoolCost、SPO 投票が不要に

2026-09-12SIPO

前号(#22)は、こう閉じました。「再提出があるとすれば、SPO 側の 51% をどう組み立てるかが論点になります」。

その答えが、本稿を書いている当日の朝 5 時 27 分に出ました。minPoolCost を 75 ada へ下げる議案は、再提出されています。ただし、前回とは中身が違います。

Plutus のメモリ上限が、議案から外れました。 そして外れた結果、この議案には SPO の投票が可決要件として存在しません。

先週この議案を落としたのは SPO 側だけでした。今週、その側の欄が無くなっています。今回は、そこから見ていきます。

エグゼクティブ・サマリー

  • minPoolCost の議案が再提出されました:日本時間 9 月 12 日 5 時 27 分 12 秒。エポック 655 の境界(同 6 時 44 分 51 秒)の 1 時間 17 分 39 秒前です。期限はエポック 661、日本時間 10 月 12 日 6 時 44 分 51 秒
  • タイトルから「Plutus Memory Limits」が消えました:旧議案は minPoolCost に加えて maxTxExecutionUnitsmaxBlockExecutionUnits を同時に動かす束でした。新議案の protocol_param_updatemin_pool_cost の 1 項目だけです。
  • その結果、SPO 投票は可決要件から外れます:CIP-1694 の security-relevant パラメータ群に maxBlockExecutionUnits は入っていますが、minPoolCost は入っていません。当方の canonical な取得経路も、この議案の SPO 閾値を 0% と返します。
  • いまの票は 3 票です:DRep 賛成 0.54%(3 票・閾値 67%)。委員会は 7 名とも未投票。提出から半日で、まだ始まったばかりの段階です。
  • 委員会は 9 月 7 日の朝に入れ替わりました:enacted_epoch654。日本時間 9 月 7 日 6 時 44 分 51 秒です。構成は 7 名で、任期エポック 799 が 4 名、726 が 3 名。退任は KtorZCardano Japan Council です。
  • 投じ終えた票が 1 票、数えられなくなりました:Governance Incentives Framework 2026 の委員会「反対」は、明細では 3 票あります。集計では 2 票です。差の 1 票を投じた委員は、現在の 7 名に含まれていません。
  • 新しい委員会は、5 日間で 1 票も投じていません:係属中の 4 議案すべてで、エポック 654 開始以降の委員会票は 0 です。同期間の SPO 票も 0 でした。
  • 5 日後に期限が来る議案が 2 件あります:Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit. は DRep 58.37%(閾値 67%)、委員会は 7 名中 2 名の賛成。Governance Incentives Framework 2026 は DRep 1.62%。期限は日本時間 9 月 17 日 6 時 44 分 51 秒です。
  • 憲法改正は、目標の期限までに提出されませんでした:cardano.org は 7 月 10 日の記事で「エポック 655 より前」を目標と書いていました。そのエポック 655 は今朝始まりました。エポック 654 と 655 に提出された議案は 2 件だけで、どちらも憲法改正ではありません。
  • Hydra の critical は、検証を省く高速経路が原因でした:スナップショット要求の処理で、署名検証と Plutus スクリプト評価を飛ばす経路があり、未検証のトランザクションがそこへ到達しえました。2.4.1 は「常に完全に検証する」形に戻しています。
  • cardano-node 11.1.1 は、本番向けではありません:リリースノートに「まだメインネットでの使用は推奨されない pre-release」と明記されています。Intersect は、Dijkstra 機能をフルに含む 11.2 を 1 か月以内に見込むとしています。
  • 市場は先週と方向が分かれました:ADA は週間 −2.46%、NIGHT は −1.16%。BTC は −3.11% で、ETH だけが +2.85% です。

1. マーケット・パルス

9 月 5 日から 9 月 12 日にかけての、朝の定点観測値です。

銘柄9/59/12週間
ADA$0.210854$0.205667−2.46%
BTC$79,675$77,199−3.11%
ETH$2,452.01$2,521.90+2.85%
NIGHT$0.02111984$0.02087497−1.16%

前号は「4 銘柄すべてがプラス」でした。今週はそれが崩れて、上がったのは ETH だけです。ADA と NIGHT は小幅の下げで、BTC のほうが下げ幅が大きくなっています。

エポック境界ちょうどで取る ADA の値は、もう少し大きく動いています。エポック 653 の境界(9 月 7 日朝)が $0.22181616、エポック 654 の境界(今朝)が $0.20642490 で、−6.94% です。円建てでは ¥34.63 から ¥31.70。この期間に USD/JPY も 156.12 から 153.58 へ動いているので、円建ての下げ幅にはその分が含まれています。

ネットワークの数字も置いておきます。ステーキング比率は 56.54% から 56.49% へ。ブロックを生成したプールは 921 から 953 へ増え、委任者数は 1,338,967 から 1,337,992 へ 975 減りました。トレジャリーは 1,356,415,272.91 ada です。

2. 議案は、今朝 5 時 27 分に戻ってきました

Koios の proposal_list に、エポック 654 で提出された ParameterChange が 1 件入っています。

タイトルは Reduce minPoolCost to 75 ada です。

記録時刻(block_time)は 1789158432。変換すると 2026 年 9 月 11 日 20 時 27 分 12 秒 UTC、日本時間では 9 月 12 日 5 時 27 分 12 秒です。エポック 655 の開始は 1789163091 なので、その差は 4,659 秒 = 1 時間 17 分 39 秒

前号では「最後の 1 票が締切の 69 秒前に入った」という話を書きました。今週は、次の議案がエポックが変わる 1 時間 18 分前に置かれたことになります。どちらも、境界の直前に動きが集中するという同じ形です。

期限はエポック 661。開始時刻は 日本時間 10 月 12 日 6 時 44 分 51 秒です。1 か月あります。

3. 外れたのは、メモリ上限のほうでした

前回の議案のタイトルは、こうでした。

Reduce minPoolCost to 75 ada and increase Plutus Memory Limits (Part 2)

今回は、こうです。

Reduce minPoolCost to 75 ada

後半が消えています。そして、これはタイトルだけの話ではありません。

チェーン上のパラメータ更新の中身を並べます。

旧議案(失効)新議案
min_pool_cost75,000,00075,000,000
max_tx_ex_mem17,500,000
max_tx_ex_steps10,000,000,000
max_block_ex_mem77,500,000
max_block_ex_steps20,000,000,000

新議案の protocol_param_updatemin_pool_cost の 1 項目だけです。議案本文の abstract にも、こう書かれています。

「この議案は minPoolCost を 170,000,000 Lovelace(170 ada)から 75,000,000 Lovelace(75 ada)へ、およそ 55.9% 引き下げることを提案する。この議案によって他のプロトコルパラメータは一切変更されない。

引き下げ幅も、根拠も、前回と同じです。議案は PCP-006(Cerkoryn 執筆・2026 年 3 月 30 日に Cardano Forum へ公開)を根拠に挙げ、Intersect の TSC が 2026 年 7 月 9 日にこの引き下げを承認したと記載しています。

変わったのは、同じ束に入っていたメモリ上限が外れたことだけです。

4. minPoolCost は、SPO の投票欄を持たないパラメータです

ここが、今週いちばん重要な点です。

CIP-1694 は、プロトコルパラメータのうち一部を security-relevant(セキュリティに関わる)として区別しています。該当するパラメータを動かす議案には、DRep と委員会に加えて SPO の投票が追加で必要になります。

その一覧は、こうです。

maxBlockBodySize, maxTxSize, maxBlockHeaderSize, maxValueSize, maxBlockExecutionUnits, txFeePerByte, txFeeFixed, utxoCostPerByte, govActionDeposit, minFeeRefScriptCostPerByte

そして CIP-1694 は、こう書いています。

「このようなパラメータの変更を試みる議案は、SPO による追加の投票を必要とする

ここで 2 つのことを確認してください。

  • maxBlockExecutionUnits は、この一覧に入っています。 旧議案の max_block_ex_mem / max_block_ex_steps がこれにあたります。
  • minPoolCost は、この一覧に入っていません。

つまり、旧議案に SPO 投票が必要だったのは、minPoolCost のためではなく、同じ束に入っていたメモリ上限のためでした。そのメモリ上限が外れた新議案では、SPO 投票は可決要件から外れます。

実測でも同じです。当方の canonical な取得経路(AdaStat を主、Koios を照合に使うもの)は、旧議案について SPO の閾値を 51% と返していました。新議案については 0% を返します。

ここで、書ける範囲を明確にしておきます。提出した側が「SPO 投票を避けるために外した」とは書きません。 外した理由は、一次の資料からは分かりません。書けるのは、外れた結果としてそうなっているところまでです。

ただ、結果のほうは、はっきりしています。前号の言い方をそのまま使えば、こうなります。

先週この議案が落ちたのは、DRep が 68.57% で閾値を越えていたのに、SPO が 34.5% で 51% に届かなかったからでした。そして今週、その SPO の欄が無くなりました。

同じ 75 ada が、今度は通る側の門だけを通ります。

5. いまの票は、3 票です

Koios の proposal_voting_summary で、新議案の現況を見ます(2026 年 9 月 12 日 08:20 JST 取得)。

区分現況閾値
DRep 賛成0.54%(3 票)67%
DRep 投票済み反対0.0%(0 票)
DRep「常に不信任」2.68%
DRep 未投票96.78%
SPO 賛成0.0%(0 票)0%(要件なし)
委員会賛成 0・反対 0・未投票 72/3

提出から半日です。DRep の 3 票は、いずれも境界前後(9 月 11 日 21:13〜22:30 UTC)に入った賛成票でした。

この段階の数字から結論は出ません。 前号で見たとおり、この種の議案では票の半分が最後の 1 エポックに入ります。期限まで 1 か月あるので、いま読めるのは「反対票がまだ 1 票も入っていない」ことくらいです。

見るべきは、SPO 側が投票しないのか、それとも要件外でも投票するのかです。可決要件から外れても、SPO が票を投じること自体はできます。落とされた側が意思表示をするかどうかは、次の 1 か月で分かります。

6. 委員会は、9 月 7 日の朝に入れ替わりました

前号で「発効は 9 月 7 日の朝 6 時 44 分 51 秒です」と書いた件です。

Update Constitutional Committee 2026enacted_epoch654 になりました。エポック 654 の開始は 1788731091 = 2026 年 9 月 6 日 21 時 44 分 51 秒 UTC、日本時間 9 月 7 日 6 時 44 分 51 秒です。予告どおりに発効しています。

Intersect の週次更新 #128(9 月 11 日)にも “The new Constitutional Committee was enacted at Epoch 654” と書かれています。

現在の構成を Koios の committee_info で確認しました。

項目
委員数7 名(全員 authorized
クォーラム2/3
任期エポック 7994 名
任期エポック 7263 名

前号で「今週は鍵のハッシュ値までしか確認できませんでした」と書いた氏名のうち、退任した側は #128 で分かりました。

“A sincere thanks to KtorZ and Cardano Japan Council for their service”

Cardano Japan Council の任期が、この入れ替えで終わっています。日本語圏から委員会に入っていた枠が、いったん外れた形です。新任・再任の 4 名については、Koios が返すのは鍵のハッシュ値のみで、氏名と結びつく一次をまだ確認できていません。

7. 投じ終えた 1 票が、数えられなくなりました

委員会が入れ替わると、それまでに投じられた委員会票はどうなるのか。今週、その実例が観測できます。

Governance Incentives Framework 2026 の委員会「反対」票を、2 つの見方で数えました。

数え方委員会「反対」
Koios proposal_votes(明細・全 123 票)3 票
Koios proposal_voting_summary(集計)2 票
AdaStat(集計)2 票

明細のほうには、3 票が記録時刻つきで残っています。8 月 21 日 16:33:22 UTC、8 月 28 日 16:07:21 UTC、8 月 30 日 10:31:25 UTC の 3 票です。チェーン上の記録としては、消えていません。

差の 1 票を投じたのは cc_hot1qde96n2y… から始まる委員です。この鍵は、現在の committee_info が返す 7 名に含まれていません。 9 月 7 日の入れ替えで委員でなくなっています。

同じ委員は Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit. にも 8 月 30 日に Abstain(棄権)を投じていて、そちらも明細 3 票・集計 2 票になっています。

つまり、委員会が入れ替わると、前の委員が投じ終えた票は可決判定の側では数えられなくなります。 記録としては残り、判定としては残らない。ここは分けて読む必要があります。

技術的な注記を 1 つ。当方の canonical な取得経路は、この議案についてだけ停止しました(「委員会の反対票が AdaStat で 2 票、Koios の明細で 3 票」という食い違いを検出したため)。これは数値の取り違えを防ぐための設計どおりの停止です。本稿では、その食い違い自体を事実として扱っています。

8. 新しい委員会は、5 日間で 1 票も投じていません

入れ替わった委員会が、最初の 5 日間に何をしたか。

係属中の 4 議案について、Koios の投票明細を全件取り出し、エポック 654 の開始(1788731091)以降に記録された票だけを数えました。

議案期間内の票DRepSPO委員会
Governance Incentives Framework 20261111(すべて反対)00
Reimburse Ikigai …1111(賛成 10・反対 1)00
Reduce minPoolCost to 75 ada33(すべて賛成)00
Withdraw 11,787,063 ada …(OpenZeppelin)1010(反対 8・賛成 2)00

4 議案とも、委員会の票は 0 です。 同じ期間の SPO 票も 0 でした。

動いているのは DRep だけで、5 日間に 35 票が入っています。

理由は記録からは読み取れません。就任直後の手続き(ホットキーの承認は済んでいます)や、期限までの余裕の見方など、いくつも考えられますが、どれも当方が確認できた一次には書かれていません。事実として置けるのは、5 日間で 0 票だったというところまでです。

ただし、この 0 には期限が付いています。次の項です。

9. 期限が近い 2 件と、期限が遠い 2 件

係属中の 4 議案を、期限順に並べます(2026 年 9 月 12 日 08:2x JST 取得)。

期限:エポック 656 = 日本時間 9 月 17 日 6 時 44 分 51 秒

Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit.(トレジャリー引き出し・要求 103,000 ada)

区分現況閾値
DRep 賛成58.37%(118 票)67%
DRep 投票済み反対2.51%(7 票)
委員会賛成 2 / 72/3

DRep は 8.63 ポイント足りません。委員会は 7 名中 2 名の賛成で、2/3 には 5 名近くが要ります。その 2 票は、どちらも 8 月に旧委員会の側から入ったものです。 残る 5 名は新しい構成のもとで未投票のままです。

Governance Incentives Framework 2026(トレジャリー引き出し・要求 4,207,967 ada)

区分現況閾値
DRep 賛成1.62%(11 票)67%
DRep 投票済み反対91 票
委員会反対 2 / 72/3

こちらは方向がはっきり出ています。賛成 11 票に対して、投票済みの反対が 91 票です。

この 2 件の数字は、Intersect の週次更新 #128 に載っている値とも一致します(9 月 11 日 18:30 UTC 時点で GIF 1.62%、Ikigai 58.26%、委員会は両方 2-0-0-5)。Ikigai の 58.26 / 58.30 / 58.37 という差は、取得時刻の違いです。

期限:エポック 661 = 日本時間 10 月 12 日 6 時 44 分 51 秒

Reduce minPoolCost to 75 ada — §5 のとおりです。

Withdraw 11,787,063 ada for the OpenZeppelin Stack administered by Intersect(トレジャリー引き出し)

区分現況閾値
DRep 賛成0.02%(2 票)67%
DRep 投票済み反対2.06%(8 票
委員会未投票 72/3

提出は 9 月 9 日 1 時 27 分 4 秒(日本時間)です。監査済みのスマートコントラクト・ライブラリを Cardano 向けに整備するための資金要求で、金額は 1,178 万 7,063 ada。いまのところ、票数では賛成 2 に対して反対 8 です。

10. 憲法改正は、エポック 655 までに出ませんでした

cardano.org は 2026 年 7 月 10 日の記事「Preparing the Constitution for Dijkstra」で、憲法改正の議案について “submission targeted before epoch 655”(提出はエポック 655 より前を目標)と書いていました。

そのエポック 655 は、今朝 6 時 44 分 51 秒(日本時間)に始まりました。

Koios の proposal_list 全 157 件を種別で走査しました。NewConstitution の最新は、エポック 601 に提出された CARDANO BLOCKCHAIN ECOSYSTEM CONSTITUTION v2.4(エポック 609 で発効)です。エポック 654 と 655 に提出された議案は 2 件だけで、どちらも憲法改正ではありません(新 minPoolCost と OpenZeppelin)。

目標としていた時点までに、提出はされていません。

遅れた理由については、当方が確認できた一次に説明がありません。ここでは、期限と現況だけを並べておきます。今週発効した新しい委員会は、憲法改正が出たときにその合憲性を確認する側に立ちます。

11. Hydra の critical は、何を省いていたのか

前号で扱った GHSA-cg83-6w6r-6hx3 について、今週は中身のほうを書きます。リリース自体は 9 月 2 日で、今週の新しい出来事ではありませんが、勧告の内容が週をまたいで流通しました。

原因は、検証を省く高速経路でした。

hydra-node には、スナップショット要求を処理するときに「このトランザクションは前の段階で検証済みのはずだ」という前提で、署名の検証と Plutus スクリプトの評価を飛ばす経路がありました。ところが、未検証のトランザクションがその経路へ到達しうる状態でした。

結果として、head の悪意ある参加者は、無効な署名を持つ、あるいは失敗するはずのスクリプトを含む L2 トランザクションを、確定したスナップショットへ入れられます。 そこから資金の持ち出しに至ります。

2.4.1 の修正は、この前提を外すことです。

「スナップショット要求を処理するとき、トランザクションは署名とスクリプトの検査を含めて、常に完全に検証されるようになった」

適用の手順は前号のとおりです。2.4.0 からは差し替えるだけ(スクリプトや DB の変更は不要)。2.3.0 以前からは、先に head を close する必要があります。

この形の脆弱性には、覚えておく価値のある性質があります。速くするための最適化が、正しさの前提を 1 つ削っていたという構造です。前提が常に成り立つなら問題はありませんが、成り立たない入り口が 1 つでもあれば、そこが穴になります。

12. ノードと道具

cardano-node 11.1.1 は、本番向けではありません

9 月 8 日 19 時 13 分 4 秒 UTC に公開されました。前号で触れた「v11.1.0 で常駐メモリが増えた件のパッチ」にあたります。

ただし、リリースノートの 1 行目に、こう書かれています。

「ノードバージョン 11.1.1 は、まだメインネットでの使用は推奨されない cardano-node の pre-release 版である」

GitHub 上でも prerelease として扱われています。メモリの件が直ったから上げる、という読み方はしないでください。

中身としては、次のものが入っています。

  • 旧トレーシング(iohk-monitoring-framework)の完全撤去。 旧キーを使っている設定は移行が必要です。
  • V1 LedgerDB と LMDB ストレージバックエンドの削除。 LMDB を使っている場合は切り替えが要ります。
  • レジャースナップショットを予測可能かつ Mithril 互換に。
  • Peras の初期対応(既定 off・実験的な NodeToNodeV_16 の背後)。
  • Dijkstra エラに向けた下地の継続。

既知の問題として、11.0.1 と比べた同期時のメモリ増が残っています(ただし 11.1.0 の退行よりは大幅に小さい、と記載されています)。

そして Intersect の #128 には、11.2 を 1 か月以内に見込むとあります。Leios を除く Dijkstra 機能をフルに含む版です。運用の判断としては、11.1.1 を待機として見て、11.2 を本番の対象として見るのが素直な読み方になります。

Lace 2.3.0 — DRep の並び順が変わりました

9 月 10 日 15 時 19 分 47 秒 UTC。ここに、ガバナンスの話と直結する変更が入っています。

「DRep ブラウザの検索を改善し、既定の並び順を、生の投票力ではなく、各 DRep のプロフィールの質と充足度に基づくものにした」

委任先を選ぶ画面で、大きい順に並べるのをやめたということです。委任が既に集まっている DRep が上に出続ける構造は、委任の集中をそのまま再生産します。並び順を変えることは、それ自体では何も決めませんが、既定の選択肢がどこを向いているかは変わります。

そのほか、スクリプトベース(マルチシグ)の DRep への委任が正しく動くようになった点、Trezor Safe 7 への対応、Midnight アカウント設定に「同期状態のリセット」が入った点があります。

Leios — テストネットは作り直しになりました

ouroboros-leios の Prototype 2026w36 が、9 月 7 日 11 時 29 分 24 秒 UTC に公開されました。

中身で大きいのは、Leios の委員会をエポック境界で選ぶ実装が入ったことです。投票鍵は KES と同じように期限切れと更新(rotation)を伴うようになりました。登録後の有効期間は ceil(maxKESEvolutions × slotsPerKESPeriod / epochLength) + 2 エポックです。

委員会サイズ・クォーラム閾値・endorser block の上限・certification gap は、ガバナンスパラメータで変えられるようになりました。ノードを出し直さずに調整できる、ということです。

そして、運用している方に直接効くのがこれです。

  • BLS の proof-of-possession に使う domain separation tag が、IETF ドラフト準拠へ修正されました。 新しい cardano-cli での再登録が必要です。
  • リリースノートの逐語:「respin が必要:ローカルの状態を削除し、genesis から再同期するか、IOG のリレーからサイドロードすること。musashi のネットワーク設定を使う。(中略)respin は 1〜2 日のうちに行われる見込み」

テストネットの参加者にとっては、データベースを作り直し、ノードと設定を更新し、プールを登録し直すという一連の作業になります。

13. Intersect — 2 議席に 11 名

理事選挙の応募が締め切られました。会員が選ぶ 2 議席に対して、11 名が立候補しています。

項目日程(UTC)
投票開始9 月 14 日 12:00
投票締切9 月 25 日 12:00
結果発表9 月 28 日

有権者の条件は 3 つです。投票開始の時点で 180 日以上の会員歴があること、会員資格が有効であること、Intersect の本人確認を終えていること。いまから入会しても今回には間に合いません。

候補者は Adam Rusch / Alexa K. / Anuj Chaudhary / Christian Taylor / Eric Helms / Ian McCullough / Jose Miguel De Gamboa / Kavinda Kariyapperuma / Ken Erik Ølmheim / Nana Safo / Ridwan Itopa Musa の 11 名です。

同じ更新には、もう 2 つ運用寄りの話が入っています。

  • GovTool の保守が Sireto へ移りました。 リードは Sandip Pandey 氏で、GovTool の原開発者の 1 人です。「現時点で利用者にとっての実質的な変更はない」と明記されています。
  • 2026 年の予算執行は、25 契約のうち 16 契約が実行済み・残り 9。Treasury Reserve Smart Contract を経由して、74m ada と 22m USDCx がベンダーへ渡っています。

CAP レビューのセッションは 9 月 17 日から始まります(UTC 07:00 と 14:00 を交互)。

14. Midnight ウォッチ

シールド資産とフィッシング

公式ブログに今週入ったのは 1 本です。9 月 10 日「How shielded assets thwart phishing attacks」(Sebastien Guillemot 氏)。

主張はこうです。公開チェーンは、攻撃者に「誰を狙うか」を選ぶためのデータを渡してしまう。シールドされた資産は、その選別を難しくする。フィッシングの起点が、送る側ではなく選ぶ側にあるという見方です。

MIP-0017 は、文書が先に入りました

シールドされた支出の認可に検証可能なランダム関数を使う提案が、MIP-0017 shielded-spend-auth として入りました。PR #289 が 9 月 11 日 1 時 16 分 59 秒 UTC にマージされています。直前には、mip-xxxx.mdmip-0017-shielded-spend-auth-vrf.md へ改名するコミットがあります。

ただし、採番の正本である NUMBERS_INDEX.md は、今日の取得時点で MIP-0016 までしか載せていません。 文書は入っているのに、索引には反映されていない状態です。MPS のほうは 0039lightweight-contract-interaction)まで載っています。

前号の時点で MIP は 16 本、MPS は 38 本でした。索引で数えるなら今週は MPS が 1 本増え、文書で数えるなら MIP も 1 本増えています。

DevRel チームの解散

Midnight Foundation が、専任の DevRel(デベロッパーリレーション)チームを解散したことを X で公表しました(9 月 11 日)。公式ブログには記載がありません。

置き換え先が何になるのか——ドキュメント、助成、ハッカソン、アンバサダーのどれが窓口を引き受けるのか——は、当方が確認できた一次には書かれていません。ここは書かずに置きます。

日本語圏では、同じ週にアンバサダーによるツアーが告知されています。9 月 11 日 福岡 / 12 日 名古屋 / 13 日 東京です。

15. リスク・ディメンション

  • ガバナンス(構造)。 今週の再提出が示したのは、同じ実質的な変更でも、束ね方によって必要な投票者の集合が変わるということです。これは仕様どおりの挙動であり、抜け道ではありません。ただし、SPO が可決要件から外れる形での再提出が成立しうるという事実は、今後の議案の読み方を変えます。議案を見るときは、タイトルではなく protocol_param_update の中身を見る必要があります。
  • ガバナンス(時間)。 5 日後に期限が来る議案が 2 件あり、委員会は 5 日間で 1 票も投じていません。Reimburse Ikigai は DRep が 58.37% で、委員会は 7 名中 2 名。期限までに動きがなければ、DRep の賛成が足りていても失効します。
  • 委員会(継続性)。 委員が入れ替わると、投じ終えた票が判定側で数えられなくなります。今回は 1 票でしたが、期限が近い議案でこれが起きると、残り日数と必要票数の両方が同時に変わります。
  • Hydra(運用)。 2.3.0 または 2.4.0 を動かしているなら、2.4.1 への更新は前号から続く未完了事項です。2.3.0 以前からは head の close が先に要ります。
  • ノード(運用)。 11.1.1 は pre-release で、メインネット向けではありません。 旧トレーシングと LMDB の撤去があるため、11.2 が出たときの移行は設定の書き換えを伴います。いま準備しておける種類の作業です。
  • Leios(参加)。 BLS 鍵の再登録を含む respin が必要です。テストネットの参加者にとっては、今週中に手を動かす必要のある作業になります。
  • 情報(Midnight)。 DevRel の再編が X でのみ公表され、ブログに無い状態です。窓口の担い手が変わる途中は、情報の出どころも一時的に散らばります。

16. 来週の注目

  1. エポック 656 の 2 件 — 期限は日本時間 9 月 17 日 6 時 44 分 51 秒。Reimburse Ikigai に委員会票が入るか、Governance Incentives Framework 2026 がそのまま失効するか。
  2. 新しい委員会の最初の 1 票 — 5 日間 0 票の状態が、期限のある議案の前で動くかどうか。
  3. Reduce minPoolCost to 75 ada の DRep 票 — 反対がいつ、どれだけ入るか。前回は 61.73% から 68.57% まで積み上がりました。
  4. SPO が、要件外でも投票するかどうか — 可決要件から外れた側が意思表示をするのか。今週は 0 票でした。
  5. 憲法改正の提出 — 目標としていたエポック 655 は過ぎました。新しい委員会が合憲性を確認する側に立ちます。
  6. cardano-node 11.2 — Intersect は 1 か月以内と見込んでいます。Dijkstra 機能をフルに含む版です。
  7. Intersect 理事選の投票率 — 9 月 14 日 12:00 UTC 開始。180 日の会員歴と本人確認という条件のもとで、2 議席に 11 名です。
  8. Leios の respin 後の追随率 — 参加プールが BLS 鍵の再登録まで済ませられるか。
  9. MIP-0017 の索引反映 — 文書だけ入っている状態が解消されるか。
  10. Midnight の DevRel の後継 — 窓口を何が引き受けるのか。9 月 11〜13 日の日本ツアーが最初の手がかりになります。

まとめ

前号は、こう閉じました。「再提出があるとすれば、SPO 側の 51% をどう組み立てるかが論点になります」。

答えは、組み立てないという形で出ました。

今朝 5 時 27 分に再提出された議案は、minPoolCost を 75 ada へ下げるという中身を前回から一切変えていません。変えたのは束ね方だけです。同じ束に入っていた Plutus のメモリ上限を外した。 そして maxBlockExecutionUnits は CIP-1694 の security-relevant パラメータで、minPoolCost はそうではない。だから SPO 投票は可決要件から外れます。

これは仕様どおりの挙動です。抜け道ではありません。けれども、先週 34.5% で止めた側が、今週は止める立場にいないという事実は残ります。

ここから読めるのは、議案の読み方のほうです。タイトルではなく、protocol_param_update の中身を見る。 何が束ねられているかによって、誰が決めるかが変わります。今週それが実例になりました。

委員会のほうでも、似た形のことが起きています。9 月 7 日に 4 議席が入れ替わり、前の委員が投じ終えた票が 1 票、判定の側で数えられなくなりました。 記録には残っています。判定には残りません。そして新しい委員会は、5 日間で 1 票も投じていません。5 日後に期限が来る議案が 2 件あります。

決める人が入れ替わること、決める要件が変わること。今週はその 2 つが同じ週に並びました。どちらも、票を数える前の段階の話です。

そして 170 ada は、まだ 170 ada のままです。

参考・出典

透明性メモ

今週、判断が分かれた点と、書かなかったことを記しておきます。

  • 「SPO 投票が不要になった」の根拠:CIP-1694 の security-relevant パラメータ一覧に minPoolCost が無く、maxBlockExecutionUnits が有ることを一次で確認し、新旧議案の protocol_param_update の中身を Koios の実測で突き合わせました。さらに、当方の canonical な取得経路が返す SPO 閾値が旧議案 51% / 新議案 0% であることを確認しています。3 つが同じ向きを指しているため、断定して書いています。
  • 提出者の意図:「SPO 投票を避けるために束を外した」とは書いていません。外した理由は一次に記載がありません。 書いたのは、外した結果として要件がどうなるかまでです。
  • 委員会の 1 票が「消えた」件:Koios の明細(3 票)と Koios の集計・AdaStat(ともに 2 票)の食い違いを実測で確認し、差の 1 票を投じた鍵が現行の committee_info に含まれないことを確認しました。当方の取得経路は、この議案について設計どおり fail-closed で停止しています。 停止を回避して数値を採らず、食い違いのほうを記述しています。
  • 新任・再任 4 名の氏名:Koios が返すのは鍵のハッシュ値のみで、氏名と結びつく一次を今週も確認できていません。確認できたのは退任側の 2 者(KtorZ / Cardano Japan Council)だけで、これは Intersect の週次更新の記載によります。
  • 委員会が 5 日間投票しなかった理由:投票記録からは読み取れません。事実だけを置いています。
  • MusashiNet の Earth フェーズの実績値:日数・ブロック数・参加プール数・Praos 比の倍率といった数字が二次的な要約として流通していますが、当方が取得できた一次(当週の開発レポートおよび Leios のリリースノート)に該当する記述がありません。 そのため数値を書いていません。書いたのは、リリースノートに逐語で載っている respin と BLS 鍵の手順までです。
  • Midnight の DevRel 解散:一次は Midnight Foundation の X 投稿です。公式ブログには記載がありません。 置き換え先についても一次が無いため書いていません。
  • MIP の本数:文書としては MIP-0017 が入っていますが、採番の正本である NUMBERS_INDEX.md は MIP-0016 までです。どちらか一方だけを書くと数が食い違うため、両方を書いています。
  • 憲法改正が出なかった理由:一次に説明がありません。「エポック 655 までに提出されていない」という事実だけを書いています。「中止された」とは書いていません。
  • 価格の出典をそろえた件:本号のマーケット表は、9 月 5 日と 9 月 12 日の両端を同じ canonical(SITION の market_indicators の朝の定点取得)でそろえています。 そのため 9 月 5 日の値が前号の表(当日 07:07 JST の単発取得)と小数点以下で一致しません(ADA $0.210854 と $0.211514 など)。方向と大きさは同じです。
  • エポック境界の ADA 建値:本文の −6.94% は、エポック境界の時刻ちょうどで取った CoinGecko の値によるものです。朝の定点観測とは取得時刻が違うため、週間 −2.46% とは一致しません。 別の指標として並べています。
  • cardano-node 11.1.1 の扱い:リリースノートに pre-release と明記があるため、「メモリ問題が直った」という要約はしていません。
  • 価格と議案の関係:結びつけていません。

投資助言ではありません。情報提供・リサーチ目的のみ。