アルゼンチンで資産トークン化の基盤を提供する Blockenfy が、10月8日(日本時間)、自社のトレジャリー(手元資金)の運用先として RealFi のステーブルコインと利回りプログラムに 1 万ドルを置いたと発表しました。事業会社が自社の資金を、10月1日に Cardano で始動したばかりの RealFi に入れたことを自ら公表したもので、同社は年末までに 3 万〜5 万ドルまで広げる計画です。
金額は大きくありません。それでも、普段は EVM 系のチェーンでトークン化の仕組みを作っている会社が、自分のお金の置き場所に Cardano を選んだという点で、RealFi が掲げる「現実の金融と Cardano をつなぐ」構想の小さな実例になっています。発表の中身、RealFi の仕組みのどこに資金が入ったのか、そして次に何を見ればよいかを整理します。
Blockenfy の発表、1 万ドルは「試験と検証」の第 1 段
Blockenfy の公式 X の発表によると、今回の 1 万ドルは、より大きな資産・トレジャリー管理プログラムの第 1 段で、目的はプラットフォームの試験と検証です。年末までの目標は 3 万〜5 万ドルの展開としています。
取引は Cardano のウォレット Lace から実行し、他のネットワークにあったステーブルコインを Cardano へ移したと書いています。Cardano の側から見れば、外のチェーンから新しい預け入れと取引が入ってきた形です。この発表は Cardano の開発会社 IOG(Input Output)の公式アカウントもリポストしました。
This initial USD 10,000 allocation marks the first phase of a broader asset and treasury management program, designed to test and validate the platform.
(Blockenfy 公式 X より)
同社は自らを、ホワイトラベル(相手先ブランドで提供する方式)のトークン化基盤を SaaS で提供する黒字企業と紹介しており、年換算の売上は 6 桁ドルの上位水準だとしています。売上の数字は同社の発表によるもので、第三者の開示で確かめられるものではありません。
RealFi のどこにお金が入るのか
発表が挙げた「ステーブルコインと利回りプログラム」は、RealFi の 2 つのトークンにあたります。RealFi の公式ドキュメントによると、ドル建てのステーブルコイン USDrf は準備資産で 1 対 1 に裏付けられ、その中心は米国の短期国債とトークン化された政府系マネーマーケットファンドの「緩衝部分」で、残りを流動性のある変動金利の債権と、短期・担保付きのプライベートクレジットで構成しています。
利回りを受け取るには、USDrf をステークして sUSDrf を受け取ります。sUSDrf の説明では、借り手の返済日程に合わせた週ごとの区切りで価値が上がる仕組みで、運用で損失が出た場合は、まずプロトコル自身の損失準備金が吸収し、残りを sUSDrf が負担して USDrf の保有者を守る順序になっています。利回りの代わりに損失を先に引き受ける層、という位置づけです。仕組みの詳しい解説はUSDrf と sUSDrf、利回りと損失の行き先にまとめています。
発表は、USDrf と sUSDrf にどう配分したかまでは書いていません。一方で、RealFi は「誰のためのものか」のページで、想定する利用者として企業のトレジャリー運用をはっきり挙げています。今回の Blockenfy は、その想定どおりの使い方を、企業の側が自ら公表した例です。
利用できる地域には制限があります。RealFi の利用資格のページは、米国・EU と EEA 加盟国・英国・香港を対象外とし、個人向けの販売を規制する地域では sUSDrf を適格投資家や機関投資家に限るとしています。日本が一覧に無いことは、そのまま利用できることを意味しません。各自の居住地の規制を確かめる必要があります。
EVM で作る会社が、資金は Cardano に置いた
今回の発表で目を引くのは、Blockenfy の本業との関係です。同社の公式サイトは、トークンの発行に EVM 系の規格 ERC-3643 を使うと説明し、連携先のチェーンとして BNB Chain と Polygon を挙げています。10月9日時点で、Cardano は連携先に入っていません。つまり今回 Cardano に来たのは、同社の製品ではなく、同社の手元資金です。
ただ、Blockenfy と Cardano のつながりは今回が初めてではありません。IOG アルゼンチンの Mauro Andreoli 氏によると、同社のチームが初めてブエノスアイレスの IOG のオフィスを訪れたのは 2025 年 8 月 26 日で、Midnight のハッカソンに参加するためでした。9 月 4 日には同氏が、Cardano のトークン規格 CIP-0113 と ERC-3643 を技術・事業・規制の面から比べた分析文書を公開し、その下書きは Blockenfy と協力して作ったと明かしました。文書には Blockenfy の CTO も技術面の提言で加わっています。
その CIP-0113 は、10月7日に Cardano のメインネットで稼働しました。トークン化の会社が EVM を選ぶ理由を、規格の使いやすさや規制との相性に求め、それを Cardano 側の規格でどう埋めるかを一緒に考えてきた相手が、先に自社の資金を Cardano に置いた、という順番になります。
次に確認できること
確かめられる次の一点は、Blockenfy の公式サイトの連携チェーン一覧です。ここに Cardano(CIP-0113)が加われば、資金だけでなく、同社が顧客に提供するトークン化の仕組みそのものが Cardano に来ることになります。もう一つは、年末に向けた 3 万〜5 万ドルへの積み増しの続報で、こちらは Blockenfy の公式 X の発表で追えます。
Cardano の DeFi では、10月5日にも Intersect と Se7en Labs が予算をステーブルコイン USDM で保有する動きがありました。RealFi のメインネット稼働から 1 週間で、組織が自分の資金を Cardano のドル建て資産で持つ例が少しずつ出てきています。
ことば
- ERC-3643 — Ethereum 系のチェーンで、KYC を済ませた人だけが持てるといった条件付きのトークンを発行するための規格です。証券や不動産のトークン化で使われることが多く、Blockenfy もこの規格で基盤を作っています。
- CIP-0113 — Cardano でトークンに送金の条件などを組み込めるようにする「プログラマブルトークン」の規格です。10月7日にメインネットで使えるようになり、ERC-3643 で作られてきた規制対応のトークン化を Cardano でも行う土台になります。
- sUSDrf — RealFi の USDrf をステークして受け取るトークンで、現実の債権運用の収益を受け取る代わりに、損失が出た時は USDrf より先に負担する層です。
一次ソース / 関連リンク
- Blockenfy 公式 X の発表 (RealFi への投資)
https://x.com/blockenfy/status/2107977583119770111

Blockenfy
RealFi ドキュメント: What backs USDrf?
docs.realfi.co
RealFi ドキュメント: sUSDrf (staked USDrf)
docs.realfi.co
RealFi ドキュメント: Who is RealFi for?
docs.realfi.co
RealFi ドキュメント: Jurisdictional eligibility
docs.realfi.co
- Mauro Andreoli 氏 (IOG アルゼンチン) の X: CIP-0113 と ERC-3643 の比較文書の公開
https://x.com/MauroAndreoliA/status/2095802199704027573 - Mauro Andreoli 氏の X: Blockenfy の歩み (2025年8月の Midnight ハッカソンから)
https://x.com/MauroAndreoliA/status/2099482114185904622
