RealFi は、米ドル建てのステーブルコイン USDrf と、それを預けて受け取る sUSDrf という2つのトークンを発行しています。名前は1文字違いですが、資本構造のなかで置かれている位置は上下に分かれており、利回りを受け取るのも、損失を最初に引き受けるのも sUSDrf の側です。
この記事は、RealFi の公式資料にもとづき、2つのトークンの役割の違いと、実際の貸し手の返済がトークン保有者に届くまでの経路を解説します。SIPO が操作して確かめた記録ではなく、公開ドキュメントの内容の整理です。
■ 上に置かれるトークンと、下に置かれるトークン
USDrf は、RealFi が「日常的なデジタル取引と売買のために、資本の安定性と運用上の流動性を提供する、基礎となる米ドル建てステーブルコイン」と説明するトークンです。1ドルとの1対1のペッグを保ち、裏づけとして米国債とトークン化されたマネー・マーケット・ファンドを中核に据えた準備資産を1対1で持ちます。これに変動金利のリクイッドクレジットと、短期・シニア担保付きのプライベートクレジットが加わります。
sUSDrf のほうは「リベースしない、リターンを生むレシートトークン」と定義され、資料では「効率性のレイヤー」と呼ばれています。保有数量は増えず、1枚あたりの価値が上がっていく形です。DeFi のなかで売買することも、担保として使うこともできます。
役割の違いは、損失が出たときにはっきりします。RealFi の資料は、USDrf をシステム内でもっとも上位かつ流動性が高く、損失から保護される資産と位置づけ、sUSDrf を劣後する層、すなわち「エコシステムの基礎的な流動性のための専用バッファ」と説明しています。利回りを取る側が、リスクを先に引き受ける側でもある、という構造です。
■ 返済から保有者まで、4つの工程
利回りがどこから来るのかは、資料に順序立てて書かれています。
- 現実の借り手が返済を行う
- RealFi のトレジャリーがオフチェーンの資金の流れを照合する
- 確定した利益を反映するかたちで、新しい USDrf がオンチェーンで発行される
- 発行された USDrf が、週次の離散的なステーキング・エポックを通じて sUSDrf 保有者へ配分される
配分は週単位で区切られます。RealFi はこれを、借り手の返済スケジュールに紐づいた週次のエポックとして設計しています。日々じわじわ増えるのではなく、週の区切りで反映される、と理解しておくと画面の見え方と一致します。
配分の方法にも特徴があります。増えた分は保有枚数に足されません。1枚の sUSDrf が交換できる USDrf の量が増えていきます(これをリベースしない方式と呼びます)。資料が挙げている例では、預け入れヴォールトの比率が sUSDrf の流通量を変えないまま 1.000000 から 1.033333 へ動いています。
■ 交換レートは公開データから計算できる
sUSDrf の価値の求め方は、資料に1行で書かれています。「1 sUSDrf は、ヴォールトの確定済み USDrf 裏づけを、流通する sUSDrf の供給量で割った値と交換できる」。
この式が意味するのは、利回りの反映が行われる時間帯を除けば、保有者が公開されているブロックチェーンのデータから交換レートを自分で計算できる、ということです。発行体の提示する数字を待つ必要がありません。実際に確かめる習慣を持てるかどうかは、この種の商品を扱ううえで大きな差になります。
流動性の側にも取り決めがあります。RealFi は、7日間の想定純償還額の少なくとも120%を流動性のある準備で覆うこと、資産の最低10%を即時アクセス可能な流動性バッファに置くことを掲げています。USDrf の準備についても、予想される償還も、ストレス下の償還も、プライベートクレジットの持ち分を売却せずに応じられる規模にバッファを設計する、と説明されています。
■ 損失が出たとき、数字のどこが動くか
損失の吸収順序は明示されています。まずプロトコルの準備金が影響を受け、次に sUSDrf が残りを吸収します。USDrf 保有者に影響が及ぶのは、そのあとです。
処理の仕方が独特なので、画面の見え方を知っておくと役に立ちます。資料によれば、損失が発生した場合はステーキング・ヴォールトから USDrf が焼却され、流通する sUSDrf の供給量は変わりません。つまり、保有している sUSDrf の枚数は減らず、1枚あたりの償還レートが下がる形で損失が現れます。枚数を見ているだけでは、損失が起きたことに気づけません。
資料が挙げるリスクは4種類です。コードに未発見の脆弱性があり資金の損失につながる可能性(スマートコントラクトリスク)、償還の待ち行列や市場の流動性、サーキットブレーカーの作動によって適時に退出できない可能性(流動性リスク)、市場のストレスや裁定の不成立により USDrf が目標値から乖離する可能性(ペッグリスク)、裏づけとなるポートフォリオが不振やデフォルトを起こし sUSDrf の価値を下げる可能性(準備資産リスク)です。
そのうえで資料は、USDrf と sUSDrf がいずれも銀行預金ではなく、保険の対象でもなく、元本を含む損失の可能性があると明記しています。利回りについても「リターンは保証されません。資本はリスクにさらされます」と書かれています。
■ 地域と投資家区分で、持てる人が分かれる
地域の条件は、トークンの仕組みとは別に確認が必要な部分です。RealFi の公式資料は、制限対象の法域として米国(属領を含む)、欧州連合および欧州経済領域の加盟国、英国、香港特別行政区を挙げています。さらに、OFAC・国連安全保障理事会・EU・英国による包括的制裁下にある法域と、RealFi の利用が違法となる法域、必要な免許が取得できていない法域が加えられています。
日本はこの一覧に名前がありません。ただし、名前がないことをもって利用できると判断するのは避けたほうがよいと考えます。一覧には「必要な免許が取得できていない法域」という包括的な条項が含まれており、条件は更新されうるためです。
sUSDrf には、地域とは別の条件も付きます。社債の募集を個人投資家に制限している法域では、sUSDrf は適格投資家、機関投資家、またはその地域の法令上これに相当する区分の投資家に限って提供される、という扱いです。資料はその例としてシンガポールの証券先物法(2001年)における適格投資家・機関投資家の区分を挙げています。USDrf は持てても sUSDrf は持てない、という状態が起こりうる、ということです。
■ 再検証をおすすめする場所
この記事は公開ドキュメントを読んで整理したもので、条件は更新されます。実際に利用を検討する段階では、次の3か所を原文で読み直すことをおすすめします。ひとつは提供地域の適格性のページ(docs.realfi.co/compliance/jurisdictional-eligibility)、ひとつは利用規約、もうひとつはリスクの説明ページです。数値や条件がこの記事と食い違っていた場合は、公式原文のほうが正です。
日程の面では、RealFi の dApp が Cardano メインネットで稼働するのは10月1日の予定です。稼働後は、ドキュメントの記述と実際の画面で提示される条件が一致するかどうかを、最初に確かめる場面になります。
■ 編集メモ
SIPO は RealFi のアルファ・アンバサダー(Alpha Ambassador Programme)として、RealFi SPO アクセラレータープログラムに参加しています。経緯は「SIPO、RealFi の SPO アクセラレーターで活動開始」にまとめました。RealFi の全体像と、利用前に確かめる点については「RealFi の仕組みと、利用前に確かめる 4 点」で扱っています。
なお、RealFi が委任者向けのアンケートを用意しています。作成と管理は RealFi が行っており、回答はRealFi のアンケートフォームから、おひとり1回でお願いします。連絡先の記入は任意です。率直なご意見をそのままお書きいただければと思います。
■ ことば
- リベース — 保有枚数そのものを増減させて価値を調整する方式。sUSDrf はこれを採らず枚数を固定するため、利回りは1枚あたりの交換レートの上昇として現れます。枚数だけを見ていると増減に気づけないのはこのためです。
- 劣後(subordinated) — 損失が出たときに、上位の資産より先に負担を引き受ける立場のこと。sUSDrf がこの位置にあり、その見返りとして利回りを受け取る設計になっています。
- プライベートクレジット — 銀行や公開市場を介さず、企業などに直接貸し付ける融資。市場での売買が難しいため、RealFi は償還に応じるための流動性を米国債などで別に確保する設計をとっています。
一次ソース / 関連リンク
- RealFi 公式ドキュメント:USDrf(基礎ステーブルコイン)
https://docs.realfi.co/realfi-tokens/usdrf-base-stablecoin - RealFi 公式ドキュメント:sUSDrf(ステークされた USDrf)
https://docs.realfi.co/realfi-tokens/susdrf-staked-usdrf - RealFi 公式ドキュメント:リターンが利用者に届くまで
https://docs.realfi.co/real-world-backing/how-the-returns-reach-the-user - RealFi 公式ドキュメント:提供地域の適格性
https://docs.realfi.co/compliance/jurisdictional-eligibility - RealFi 公式ドキュメント:利用規約
https://docs.realfi.co/essential-policies/terms-of-service - RealFi 公式ドキュメント:プロトコル利用のリスク
https://docs.realfi.co/risks-and-disclaimer/what-are-the-risks-of-using-the-realfi-protocol
