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CIP-204で読むADA保有者の回答とDRepの票

ADA保有者がDRepへの委任を保ったまま、個別の議案に賛成・反対・棄権を記録する提案がCIP-204です。9月29日(UTC、日本時間では30日)に番号が付いた一方、10月1日の確認時点では提案中・未マージであり、正式なガバナンス投票とは別の意思表明をどう読めるかが焦点になります。[1][2]

番号が付いたことと、採用されたことは違います

CIP-204「Holder Answers on Governance Actions」の草案には、作成日として2026年9月24日、Statusとして「Proposed」が記載されています。公開のプルリクエスト(PR #1277)は9月25日に始まり、9月29日UTCの編集者のコメントと変更履歴で204という番号の割り当てが確認できます。9月30日には、提案者がディレクトリ名と関連する記載を更新したと説明しました。[1][2]

10月1日に確認したPRはOpenで、マージされていません。「State: Confirmed」というラベルも付いていますが、その説明は番号を持つ候補、またはレビュー中の更新を指します。CIPのStatusがActiveになったことや、Cardanoの正式な投票制度が変更されたことを意味しません。[2]

提案者は、参考実装「The Voice of ADA Holders」をメインネットで動かしていると説明し、コードも公開しています。[2][4] 参考実装があることと、提案が標準として取り込まれたことは、別々に確認する必要があります。本稿では、確認時点のコミットにある草案を対象にします。

この順序を押さえる理由は、読者の行動が変わるからです。「新しい投票権が実装された」と読むなら、回答することで正式な集計が変わると期待するかもしれません。しかし、今回の草案が定めるのは、保有者の回答を記録し、外部の道具で読み直す方法です。議案を批准する台帳上の票を増やす提案として読むと、目的を取り違えます。

委任を動かさず、議案への回答を残す設計です

CIP-1694のガバナンスには、DRep、ステークプール運営者(SPO)、憲法委員会という役割があります。議案の種類に応じて必要な投票主体と閾値が決まり、DRepとSPOの投票にはステークに基づく重み付けがあります。保有者のDRepへの委任は、その代表による正式な投票へつながります。[3]

CIP-204は、その委任関係を変える操作とは別に、保有者自身の回答を記録する仕組みを提案します。対象は、既にチェーンへ提出されたガバナンスアクションです。その識別子に対してYes、No、Abstainを付け、取引メタデータのラベル1695に収める設計です。[1]

同じ議案をDRepが賛成と判断し、委任者が反対と考える場合でも、委任を直ちに変更しなければ回答できない、という構造にはしません。これは草案の仕組みを説明するための例であり、特定のDRepと保有者の実際の対立を指していません。

議案ごとに誰かがアンケートを作り、その質問へ答える方式とも違います。回答は議案の識別子を直接参照します。草案は、別にアンケートの所有者を置かず、チェーン上の議案を回答対象にできる点を動機に挙げています。[1]

ただし、ここから「ADA保有者はこれまで意見を伝えられなかった」と広げることはできません。公開の議論、DRepとの対話、委任先の変更などとは役割が違います。追加されようとしているのは、特定の議案へ結びつく回答を、共通の形でチェーンに残す方法です。

有効な回答には、署名と期限の条件があります

メタデータに賛否が書かれているだけで、CIP-204の有効な回答として数えられるわけではありません。草案は、回答者のステークキーのハッシュを取引のrequired_signersにも含めることを求めます。この条件を満たす取引には対応する鍵の有効な署名が必要で、集計側も、指定された形式と条件を確認します。フェーズ2検証に失敗した取引の記録は無視する設計です。[1]

時期にも条件があります。対象の議案が回答取引より前に提出されていること、正式な投票を受け付ける期間内に回答がチェーンへ入ること、ステーク資格情報が議案提出前から登録され、必要な時点まで途切れず登録されていることが求められます。[1]

期間が開いている途中の集計なら、その集計時点までの継続登録を確認します。最終結果を読むときには、回答の締め切りまでの条件を確認します。回答数のグラフに見える値が途中経過なのか、締め切り後の値なのかによって、確かめる対象が変わります。

同じ議案と同じ資格情報の組み合わせでは、最後の有効な回答だけを数えます。考えが変わった保有者は、期間内に新しい回答を送ることで、集計に使われる賛否を変更できます。[1]

ここで変わるのは集計上採用される回答です。前の取引をチェーンから消す手続きではありません。後で回答を変えれば過去の意思表明も消える、と考えると、公開記録の性質を見誤ります。

草案のバージョン1はキーに基づく資格情報を対象とし、スクリプト資格情報による回答や、自由な文章の理由付けは定義していません。[1] 賛否を見た人が、そこから理由まで読み取れるわけではなく、説明や対話のためには別の場が残ります。

資格情報の数は、そのまま人の数にはなりません

提案の動機には、保有者がどう考えているかを見たいという問題意識があります。一方、技術的な記録単位はステーク資格情報です。[1] 人を一人ずつ確認する身分証明の仕組みではありません。

同じ人が複数の鍵を管理することも、一つの管理体制で多くの人の資産を預かることもあり得ます。議案提出前からの登録条件は、後から回答用の資格情報を増やす行為に一定の条件を付けますが、以前から複数の資格情報を持つ人を一人へまとめる仕組みにはなりません。

したがって、「回答した資格情報が100件」という集計を、そのまま「保有者100人の意見」と書くことはできません。回答した人の全体像や、ADA保有者全体を代表する度合いも、件数だけでは分かりません。

さらに、CIP-204は回答をどう重み付けし、どう表示するかを定めていません。資格情報の件数で数えるか、ステークで重みを付けるか、両方を示すかは集計する側の選択として残ります。[1]

これは数字を比較する際の大切な境目です。賛成70%という同じ表示でも、回答資格情報の割合なのか、回答した資格情報に結びつくステークの割合なのかで意味が変わります。どの時点のステークを使ったか、無回答を分母へ入れたかも、表示と一緒に必要になります。これらの確認点は本稿の分析であり、草案が一つの統一方式として定めたものではありません。

保有者の回答をDRepの正式な票と並べる場合も、二つの数字の分母が同じとは限りません。回答を送った資格情報の集合と、正式な委任投票力を、そのまま同じ支持率として比べることはできません。

DRepの判断を置き換える票にはなりません

両者の関係は、次のように分けると読みやすくなります。

確認する点 CIP-204の保有者回答 DRepの正式な投票
記録するもの 個別議案へのYes・No・Abstain 台帳のガバナンス投票
本稿で確認した位置づけ 提案中のメタデータ形式 CIP-1694に基づく投票の役割
集計の意味 草案の条件を満たす回答。表示・重み付けは集計側が決める 議案種別に応じた台帳の投票規則に使われる
委任との関係 回答を送ることで委任先が変わる仕様ではない 委任された投票力に基づく判断
決定への効果 回答だけで批准や施行を起こす仕様ではない 必要な投票主体と閾値などの条件に関わる

DRepが保有者の回答を判断材料にすることは考えられます。ただし、回答の多数派に必ず従うという規則や、異なる票を投じたDRepへ自動的な制裁を課す仕組みは、この草案にはありません。[1][3]

ここからは、代表と委任者の関係についての分析です。回答とDRepの票が違う場合、理由を説明する材料が増える可能性があります。議案の内容を読んだうえで別の判断をしたのか、回答の集計条件が違ったのか、回答者の範囲が委任者全体とずれていたのか。差を見つけるだけでなく、その差が何を表しているかを調べる必要があります。

逆に、数字が一致していても、十分に説明された判断とは限りません。少数の回答だけを全体の意思として扱っていないか、締め切り前の値を確定結果として示していないかが残ります。保有者の回答を見える形にする価値と、その数字をどう説明するかという責任は、一緒に考えたい点です。

Info Actionも、同じ「賛否」だけでまとめられません

SIPOの既存の分析では、憲法委員会更新で分母に残る未投票の委任量や、kの値を問うInfo ActionでSPO票とDRep票の扱いが異なることを追ってきました。[5][6] 今回加わるのは、その正式な投票の外側で、保有者が議案へ回答する記録です。

Info Actionは、CIP-1694にあるガバナンスアクションの一種で、投票を記録できても、それ自体から台帳の変更を施行する効果は生じません。[3] それでも、そこへ送られるDRepやSPOなどの票は、台帳の正式なガバナンス投票です。

CIP-204の回答は、その議案を参照する別のメタデータです。対象がInfo Actionである場合にも、正式な票と保有者の回答は同じ欄へ足し合わせられません。「どちらも意思を示すから」という理由で合算すると、どの主体が、どの規則で数えられたかが失われます。

この区別は、将来の読者向け画面にも関わります。議案名の下に賛成・反対の数を置くなら、正式な票なのか、CIP-204形式の回答なのか、集計側が選んだ重みなのかを一緒に表示する必要があります。これは新しい義務を述べたものではなく、誤読を減らすための設計上の提案です。

次に見るのは、標準化と、読み直せる実装です

現段階で確認できたのは、草案、公開PR、番号の割り当て、提案者による参考実装の説明と公開コードです。本稿では、ウォレットに接続して署名する検証や、参考実装の独立したセキュリティ監査、回答全件の再集計は行っていません。対応ウォレットの範囲や、表示の正確さを独立に保証できる段階にはありません。[2][4]

ラベル1695の登録もPRに含まれる変更です。確認時点の本体リポジトリのCIP-10レジストリには、その登録は見当たりませんでした。[7] 提案枝にある記載を、本体に採用済みの記載として扱わないことが必要です。

次の更新では、PR #1277がマージされたか、CIPのStatusが変わったか、レジストリへ反映されたかを確認したい。その後も、複数の作成・集計ツールが同じ記録を同じ条件で読めるかという確認が残ります。実際に回答する判断の前には、使う実装の版と取引内容、手数料、公開される情報を確かめる必要があります。

回答は公開記録として資格情報に結びつきます。賛否だけでなく、同じ資格情報からの過去の回答を関連づけて読むことも可能になります。「秘密の投票」を期待する仕組みではありません。どこまで自分の意見を公開したいかという判断は、参加の便利さとは別に残ります。

CIP-204が提案するのは、代表へ委任したまま、議案への自分の回答を記録する道です。その道が標準化されても、DRepの票、回答の集計、保有者全体の意思は、それぞれ別に確かめる必要があります。記録が増えるほど、誰の、どの期間の、何を分母にした数字なのかを説明することが、ガバナンスを読む側にも求められます。

ことば

ステーク資格情報 — ステークの登録などに使う資格情報。CIP-204のバージョン1ではステークキーのハッシュが回答者を示す。記録の単位を確認できるが、それだけで一人の人間を識別するものではない。

required_signers — 取引に必要な署名者の鍵ハッシュを指定する欄。CIP-204は回答者の鍵をここにも載せる設計を採る。メタデータの形式確認と、取引の署名検証を組み合わせて回答を読むために使う。

Info Action — 意向などを記録するためのガバナンスアクション。正式な投票を受け付けるが、それ自体による台帳変更の施行効果はない。保有者が別のメタデータで回答する仕組みとは記録の位置が違う。

一次ソース

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