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Weekly Brief #25|Cardano の k ポール、賛成 10 プールを委任量で上回る反対 3 プール

2026-09-26SIPO

stakePoolTargetNum (k) を 500 から 1000 へ引き上げるかを問う SPO ポールに、今週はじめて明示的な反対票が入りました。賛成は 10 プール、反対は 3 プールです。

票数だけを見れば、賛成が 3 倍を超える多数です。ただし議案本文が宣言した判定はステークで重みを付けるもので、その物差しでは賛成 53,185,274 ada に対して反対は 95,984,098 ada、1.80 倍の差がついています。

反対 3 票目を投じたのは、このポールを提出した本人でした。日本時間 9 月 26 日 4 時 42 分 19 秒、提案の著者として名前が載っている Chris 氏のプール STR8 が反対を投じ、理由書を公開しています。

チェーン上に新しく提出された議案は、この 1 週間で 1 件もありません。係属しているのは先週と同じ 3 件で、動いたのは票のほうだけでした。そのうち OpenZeppelin の引き出し議案には、SIPO の DRep が日本時間 9 月 25 日 10 時 38 分 08 秒に反対を投じています。前号で「10 月 9 日までに判断します」と書いた件の結論が、予告より 2 週間早く出ました。

エグゼクティブ・サマリー

  • 新しいガバナンスアクションは 0 件でした:エポック 657 (日本時間 9 月 22 日 6 時 44 分 51 秒開始) に入ってから、チェーン上に提出された議案はありません。係属は 3 件のままで、供託の預かり額も 300,000 ada = 100,000 ada × 3 件に戻っています。
  • k のポールに、はじめて反対が入りました:明示的な賛成が 2 プールから 10 プールへ、明示的な反対が 0 から 3 プールへ。賛成のステークは 2,114,251 ada から 53,185,274 ada に増えました。
  • 票数と委任量で、多数が逆を向いています:賛成 10 プールのステークが 53,185,274 ada、反対 3 プールが 95,984,098 ada です。議案本文の判定はステーク加重なので、票数で読むと結論を取り違えます。
  • 提案者本人が反対を投じました:日本時間 9 月 26 日 4 時 42 分 19 秒に SPO として、23 分後に DRep としても反対。理由書には「私たちはまだ、いまの k=500 を使い切っていない」とあり、提出後に反対側の論考を読んで「その主張の多くに同意する」とも書かれています。
  • 同じ形が 2023 年のポールにもありました:議案本文が引く集計では、k=1000 を含む選択肢がプール数 69.64%・参加ステーク約 41.1% です。
  • 50% 超に必要なのは約 47 億 ada です:分母は賛成と未投票を合わせた 9,400,862,467 ada。いまの賛成率は 0.57% で、SIPO の 3 プールはまだ投票していません。
  • k=1000 の飽和点は約 3,677 万 ada です:流通量を k で割った機械的な試算です。SIPO の 1 号機 (53,862,342 ada) はこの線の 1.465 倍の位置にいます。
  • SIPO の DRep が OpenZeppelin の議案に反対を投じました:日本時間 9 月 25 日 10 時 38 分 08 秒。理由書は英日併記でチェーン上に記録してあり、骨子は重複・言語未定・換金余剰・束ね方の 4 点です。反対の委任量は賛成の 9.76 倍になりました。
  • minPoolCost は向きが戻りました:前号は「直近 5 票はすべて反対」でした。今週の 23 票は賛成 14・反対 4・棄権 4・委員会 1で、委任量でも賛成 535,228,477 ada が投票済み反対 490,675,179 ada を上回っています。
  • 憲法委員会の 2 票目は、Tingvard が 3 件同時に投じました:日本時間 9 月 22 日 2 時 26 分 29 秒。minPoolCost と OpenZeppelin に賛成、k ポールに棄権。賛成は「合憲」の判断であって、提案の是非への賛成ではありません。
  • Midnight のノードに、メインネットを含むセキュリティパッチが出ました:node-1.0.300 (日本時間 9 月 22 日 21 時 29 分 49 秒)。リリース本文に「セキュリティパッチ」と明記があり、すべてのバリデータが先にこのバイナリへ移らないと、チェーンから外れます。
  • 市場は 4 銘柄すべてがプラスでした:ADA +13.19%、NIGHT +3.48%、BTC +3.32%、ETH +2.11%。上げの中心は 9 月 22 日の 1 日です。

1. マーケット・パルス

9 月 19 日から 9 月 26 日にかけての値です。

銘柄9/199/26週間
ADA$0.225627$0.255395+13.19%
BTC$81,238$83,933+3.32%
ETH$2,630.63$2,686.10+2.11%
NIGHT$0.02392995$0.02476157+3.48%

4 銘柄すべてがプラスで、前号と同じ形が 2 週続きました。ただし中身は違います。ADA の上げはほぼ 9 月 22 日の 1 日に集中していて、この日の前日比は +8.36% でした。その後 9 月 24 日に −5.65% と戻し、9 月 25 日に +4.83% と上げ直しています。9 月 26 日朝の前日比は ADA が +3.36%、同じ時点の SOL は +4.72%、BTC は −0.12% です。

エポック境界ちょうどで取る ADA の値は、もっと大きく動いています。エポック 656 の境界 (9 月 17 日朝) が $0.19436574、エポック 657 の境界 (9 月 22 日朝) が $0.24542512 で +26.27%。円建てでは ¥30.36 から ¥38.61 で、この間の USD/JPY は 156.22 から 157.30 でした。境界の値と朝の定点観測は取得時刻が違うので、同じ表には混ぜていません。

ネットワークの数字も置いておきます。ステーキング比率は 56.45% から 56.34% へ。委任者数は 958 減の 1,336,450 で、前週の 584 減より減り幅が広がりました。一方でブロックを生成したプールは 935 から 937 へ 2 本増えています。トレジャリーは 1,363,711,219.21 ada (前号比 +3,631,451.92 ada)、エポック 656 は 21,215 ブロック・127,132 取引で、取引数は 655 の 89,353 から 4 割以上増えました。

2. 新しい議案は、1 件も出ませんでした

エポック 657 に入ってから、チェーン上に提出されたガバナンスアクションはありません。係属しているのは前号と同じ 3 件です。

議案種別提出期限 (日本時間)
Withdraw 11,787,063 ada for the OpenZeppelin Stack administered by Intersect国庫からの引き出しエポック 65410 月 12 日 6 時 44 分 51 秒
Reduce minPoolCost to 75 adaパラメータ変更エポック 65410 月 12 日 6 時 44 分 51 秒
Should stakePoolTargetNum (k) be raised from 500 to 1000? (SPO poll)Info Actionエポック 65610 月 22 日 6 時 44 分 51 秒

チェーン上の預かり額にも、それが出ています。議案の供託は 1 件 100,000 ada で、前号の時点では 400,000 ada が預かられていました。今週は 300,000 ada です。エポック 656 の境界で失効した 2 件 (Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit. と Governance Incentives Framework 2026) の供託処理がエポック 657 で終わり、係属 3 件ぶんだけが残った形になります。

憲法改正の議案も、チェーン上には出ていません。ただし提出前の段は動いています。Intersect の週次更新 #129 によれば、憲法改正ポータルには現在 7 件の提案があり、いずれもまだ「準備完了」の段階には達していないものの、うち 4 件はこの 3 週間に動きがありました。もっとも議論が活発なのは CAP-3 (純変動上限を戦略的支出計画へ発展させる) で、コメントは 16 件です。

このポータルの中に、いまチェーン上で審議されている議案と直接つながる 1 件があります。

「CAP-10『ステークプールの経済パラメータの変更に SPO の承認を要求する』は、前回の minPoolCost の議案の後の SPO の議論から生まれたもので、いま進行中の議案に直接関係する。」

k のポールの本文が参照しているのも、この CAP-10 でした。次のレビュー会は協定世界時 10 月 1 日 14 時です。

新しい入口が開かなかった一週間に、既にある 3 つの欄で何が動いたか。以下はその記録です。

3. k のポールに、はじめて反対が入りました

Should stakePoolTargetNum (k) be raised from 500 to 1000? (SPO poll) は、提出から 9 日目に入りました。前号を書いた時点では、明示的な賛成が 2 プール、明示的な反対は 0 でした。

区分前号 (9/19)本号 (9/26)
SPO 明示的な賛成2 プール (0.02%・2,114,251 ada)10 プール (0.57%・53,185,274 ada)
SPO 明示的な反対03 プール・95,984,098 ada
未投票のプール委任量9,604,088,251 ada9,251,693,095 ada
DRep 賛成4 票 (0.06%・3,061,763 ada)18 票 (2.18%・101,317,767 ada)
DRep 投票済み反対3 票・171,938,311 ada14 票・212,318,456 ada
DRep 棄権1 票・445,777,028 ada8 票・542,686,821 ada
委員会0 票棄権 1 票

期間中に入った SPO の票は 11 件で、内訳は賛成 8・反対 3 です。反対を投じた 3 プールは pool1u6kpt8h… (9 月 22 日 2 時 25 分 06 秒)、pool1853ffwh… (同日 2 時 27 分 52 秒)、そして STR8 (9 月 26 日 4 時 42 分 19 秒) です。賛成のうち 3 件は 9 月 22 日 10 時 03 分 06 秒という同じ秒に記録されています (pool149d5lzg… / pool12rs385d… / pool1wyfau3r…)。同じ運用者の手にあるかどうかは、台帳が網羅的には開示しません。書けるのは、同じ秒に記録されたところまでです。

DRep 側も動きました。賛成は 4 票から 18 票、投票済みの反対は 3 票から 14 票へ。ただし議案本文は、DRep 票をこのポールの判定に入れないと宣言しています。数字としては積み上がりますが、支持が確立したかどうかの計算には使われません。

委員会からは 1 票だけ入りました。日本時間 9 月 22 日 2 時 26 分 29 秒の棄権です。この委員は同じ取引で別の 2 件にも投票しています (第 7 章)。

4. 提案者本人が、自分のポールに反対を投じました

3 票目の反対は、このポールを提出した本人から入りました。

議案のメタデータに著者として記載されているのは Chris 氏で、プールのティッカーは STR8 です。そのプールが日本時間 9 月 26 日 4 時 42 分 19 秒に反対を投じ、23 分後の 5 時 05 分 23 秒には同じ人物が DRep としても反対を投じています。どちらにも理由書が付いていて、DRep 側の理由書は SPO 側へリンクする 1 行でした。

理由書は、自分がこのポールを出した経緯から書き始めています。

「この Info Action を提出したのは、確立された CIP-1694 の SPO 投票の意味づけを使って、SPO の意向を明確に評価したかったからだ。」

そのうえで、提出したときに手元になかったものを挙げています。

「この Info Action を作ったとき、手元にあった草稿の資料は k=1000 を支持する論考にリンクしていたが、それに反対する対応する詳細な論考は手元になかった。中立性を保つには、賛成側の論考だけを載せた擁護の節を合理的に再現することはできなかったので、その節は省き、代わりに両方の立場の実質的な論点をできるだけ中立に提示しようとした。」

「この Info Action を提出したあとで、はじめて Neil Davies による k の引き上げに反対する詳細な論考を知った。全文を読んだいま、そこに注がれた作業と分析を高く評価しており、その主張の多くに同意する。」

反対の根拠として並べられているのは、次のような点です。飽和点を下げること自体は、飽和点より下にいる小さなプールを直接は助けない。恩恵が生じるかどうかは、押し出されたステークが実際に、それを必要とする独立したプールへ委任し直されるかどうかにかかっている。

「大口のカストディアンやマルチプール運営者は、自分の管理下にあるプールを追加してステークを配り直せばよい。それはプールの数を増やすが、コンセンサスを支配する独立した主体の数を必ずしも増やさない。」

「私たちはまだ、いまの k=500 を使い切っていない。k は飽和規模のプールにとっての理想的な均衡の目標値を表すが、Cardano は 500 の飽和プールという均衡からまだ遠い。約 214 億 ADA のアクティブステークに対して、k=500 の飽和点でいま完全に飽和できるのは約 285 プールにすぎないのに、ネットワークにはすでに約 1,600 のアクティブなプールがある。」

そして、自分自身の立場も書いています。

「私は個人的に、2 つ目のプールを運営する方向へ押しやられるだろう。何年もかけて信頼を築き、自分のプールに自然に委任を集めてきた。k が倍になれば私のプールは過飽和になり、何年もの成果を失わないためには、事実上もう一つプールを立てざるを得なくなる。」

代わりに取るべき手として挙がっているのは、持続可能なプール経済 (最低マージン 5〜10%)、CIP-50 のような実効的な誓約金の仕組み、プールの連合、そして非アクティブなステークと未委任のステークへの対処です。

ここで書けるのは、投票と理由書に書かれたことまでです。提出者がなぜ提出の時点でこの立場を持たなかったのか、理由書は「反対側の詳細な論考を提出後に知った」と自分で説明しています。それ以上の推測は、記録にありません。

5. 数で数えるか、量で数えるか

ここが今週の中心です。

票数で見れば、賛成 10 プールに対して反対 3 プールで、賛成が 3 倍を超える多数になります。ところが議案本文が宣言した判定は、こうなっています。

「十分な支持が確立されるのは、明示的な SPO の賛成票が、該当する有効 SPO 投票ステークの 50% を超える場合にかぎられる。」「明示的な棄権票は有効投票ステークから除外され、投票しない登録済みステークは反対票と同じように振る舞う。」

ステークで重みを付ける、という宣言です。その物差しを当てると、順番が入れ替わります。

物差し賛成反対どちらが多数か
プールの数103賛成
委任されているステーク53,185,274 ada95,984,098 ada反対 (1.80 倍)

判定に使われるのは下の行です。票数の見出しだけを読むと、結論を取り違えます。

この形には前例があって、議案本文が自分で引いています。2023 年の SPO ポールです。暫定結果では 797 プールが投票し、k=1000 を含む選択肢がプール数で 69.64%・参加ステークで約 41.1%、k=500 を含む選択肢が 21.08% と約 44.2% でした。数で数えれば一方が多数、量で数えればもう一方が多数という結果です。今回のポールが「ステークで重み付けする」「明示的な賛成が 50% 超」と本文中で繰り返し断っているのは、この経験の後だからでした。同じ形が、投票開始から 1 週目で出たことになります。

分母も置いておきます。賛成 53,185,274 ada に、未投票と明示反対を合わせた 9,347,677,193 ada を足した 9,400,862,467 ada が、いまの有効投票ステークです。賛成率は 0.57%。50% を超えるには、明示的な賛成が 約 47 億 ada 必要になります。「常に棄権」を選んでいる 617 プール・約 119 億 ada はこの分母から外れます。締切は日本時間 10 月 22 日 6 時 44 分 51 秒で、議案本文は反対する運用者にも明示的な NO と理由書を求めています。SIPO の 3 プールは、まだ投票していません。

6. 飽和点の線と、SIPO の 1 号機

ここは SIPO 自身の利害に触れるので、数字を先に開示します。9 月 26 日朝のチェーン上の流通量 36,767,374,068 ada を k で割った機械的な試算です。

k飽和点 (流通量 ÷ k)SIPO の 3 プール (エポック 656 境界)
500 (現行)約 73,534,748 ada3 プールすべて下
1000 (提案)約 36,767,374 adaSIPO 53,862,342 ada = 超過 (1.465 倍) / SIPO2 25,046,488 ada / SIPO3 24,866,921 ada

前号の同じ表では、SIPO の委任量は 57,052,790 ada でした。今週は 53,862,342 ada で、エポック 1 つの間に 3,190,448 ada 減っています。委任者数は 1,113 のまま変わっていません。前号より線に近づきましたが、k=1000 の飽和点はなお下にあり、SIPO はこの変更で不利を負う側にいます。

飽和点が効くのは報酬計算の上限で、ブロックを作る資格ではありません。ここは前号と同じです。そのうえで、SIPO はこのポールの当事者なので、票を入れる前に立場を書いておきます。k=1000 は SIPO の 1 号機にとって不利な変更です。前章で引いた提案者の理由書にある「2 つ目のプールを運営する方向へ押しやられる」という記述は、SIPO が置かれている位置とも重なります。委任している方は、いま預けているプールがこの線のどちら側かを、結果を待たずに今日確認できます。

7. 委員会の 2 票目は、Tingvard が 3 件同時に投じました

前号は、新しい憲法委員会の最初の 1 票が 4 件同時だったことを書きました。2 票目も、同じ形で入りました。

記録時刻 (日本時間)委員 (任期)投じた票
9 月 12 日 17 時 10 分 17 秒cc_hot1qgsl88a… (799)4 件同時 — GIF 賛成 / Ikigai 賛成 / minPoolCost 賛成 / OpenZeppelin 賛成
9 月 22 日 2 時 26 分 29 秒Tingvard (726)3 件同時 — minPoolCost 賛成 / OpenZeppelin 賛成 / k ポール棄権

今回の 3 票には、それぞれ理由書が付いています。委員の名乗りは、その理由書自身に書かれているものです。

ここは読み方を分けておきます。委員会の賛成は、提案が良いという意味ではありません。

「Tingvard は、『minPoolCost を 170 ada から 75 ada へ引き下げる』パラメータ更新のガバナンスアクションを合憲と判断する。」

判断の根拠として挙がっているのは手続きです。PCP-006 が 2026 年 3 月 30 日に公表され、提案されるパラメータ変更は 6 月 30 日より前には提出しないとされていて必要な 90 日の告知期間を満たすこと。Intersect の技術運営委員会が 7 月 9 日に引き下げを批准したと述べていること。そして minPoolCost のガードレール (正の値であること、5 億 Lovelace の上限を下回ること) を満たしていることです。

OpenZeppelin への賛成も同じ性質で、予算の内訳が示されていること、支払いがマイルストーンに基づくこと、資金の保管口座がステーキングもされず自動棄権の DRep に委任されること、公開のダッシュボードで追跡できることが根拠に挙がっています。提案の中身が妥当かどうかの判断ではなく、憲法に反していないかどうかの判断です。

k のポールには棄権を投じ、その理由も書いています。

「Tingvard は、Info Action を憲法委員会の判断の対象としてふさわしいものとは考えない。その目的は情報を集め、関係者の意向を示すことであって、Cardano の台帳に変更を加えることではない。」「Tingvard はしたがって、stakePoolTargetNum を 500 から 1000 へ引き上げることへの支持も反対も表明せずに棄権する。」

期間内に票を投じた委員は、この 1 名だけです。結果として、minPoolCost と OpenZeppelin に入っている委員会票はどちらも 賛成 2・未投票 5、賛成率 28.57% になりました。前号の 14.29% からは倍になっていますが、可決に要る 2/3 (66.67%) まではなお 3 名足りません。期限は両方とも 10 月 12 日で、残るエポックは 3 つです。

8. SIPO は OpenZeppelin の議案に反対を投じました

日本時間 9 月 25 日 10 時 38 分 08 秒、SIPO の DRep が Withdraw 11,787,063 ada for the OpenZeppelin Stack administered by Intersect に反対を投じました。理由書は英日併記でチェーン上に記録してあります。

前号にはこう書きました。「10 月 5 日前後に状況を確認し、10 月 9 日までに判断します。」実際の投票は 9 月 25 日で、予告より 2 週間早く出ています。早めた理由は理由書に書かれていないので、ここでは日付の差だけを記します。

理由書は、先に認めていることから始まります。これは提案のこの版に対する反対であって、OpenZeppelin やその仕事に対する反対ではない、という一文です。監査済みで標準化されたコントラクトライブラリは、EVM の開発者がすでに OpenZeppelin に寄せている信頼を伴うもので、それは Cardano が単独ではつくり出せない、とも書いています。アカウンタビリティの設計についても、Sundae Labs の treasury-contracts フレームワーク上での Intersect による管理、独立した Oversight Committee、公開された証跡に基づいてのみ支払われるマイルストーン、契約満了時に未使用資金が国庫へ戻る仕組みを挙げ、SIPO がこれまで承認してきた構造に沿う健全なものだとしています。OpenZeppelin の Cardano への関与が本投票の結果に左右されないという同社の表明も、記録しています。

反対の根拠は 4 点です。

  1. すでに支持した取り組みとの重複。 SIPO は 2026 年 5 月、IO の Developer Experience Initiative (約 360 万 ada) に賛成を投じました。その成果物には OpenZeppelin 型の ContractsLibrary が含まれています。当時の理由書で示した期待は「並行した作り直しと開発者コミュニティの分断を避けること」でした。そのライブラリは 2026 年 9 月に更新されており、公開の場で開発が続いています。本提案は同様の目的を持つライブラリにさらに 1,180 万 ada を求めていますが、その取り組みに言及せず、ギャップ分析も示さず、開発者がどちらを標準として扱うべきかも示していません。
  2. 中核的な技術選択が先送りされている。 スマートコントラクト言語は「資金承認後の初期評価フェーズで決定」とされています。その選択の前には、コストも、既存ライブラリとの相互運用性も、開発者層が分断されるリスクも判断できません。
  3. 通貨条件が詰め切れていない。 実施予算は 1,831,000 米ドルで、1 ada = 0.16 米ドルの固定参照レートで ada 建ての要求額に換算され、契約締結時に米ドル建てステーブルコインへ換金されます。その時点で ada が参照レートを上回っていれば換金額は米ドル予算を超えますが、その余剰の扱いが定められていません。加えて実施予算の 20% は、技術マイルストーンが 1 つも承認される前の契約締結時に支払われます。
  4. 範囲が束ねられ、Cardano 側の採用基準が低い。 参照実装 3 本・コントラクトライブラリ・セキュリティ契約が 1 つの要求にまとまっており、DRep は部分的に承認できません。マイルストーン表の中で Cardano 側の利用に関する基準は、少なくとも 1 名の独立した Cardano 開発者がライブラリをレビューし書面でフィードバックすることだけです。

理由書は、賛成に転じる条件も並べています。IO の ContractsLibrary とのギャップ分析と役割分担を公開すること。対象言語を明示すること。ライブラリ・セキュリティ・標準化の作業を先行させ、参照実装は利用の実証を踏まえて続けること。米ドル予算を上回る換金余剰は国庫へ戻すと明記すること。前払いを縮小すること。そして独立した Cardano プロジェクトによって測られる採用基準を設けること。この 6 つです。

利害を開示します。SIPO は、いま重複を指摘している側の資金に、2026 年 5 月に賛成票を入れています。自分が通した資金の成果物を理由に、後から来た提案へ反対しているという位置です。だから理由書は、どちらを標準とするかを決める順序を条件として書いています。資金供与済みのプログラムが何を納品するかを評価し、そのうえで残るギャップに資金を充てる、という順序です。

9. 反対の委任量は、賛成の 9.76 倍になりました

OpenZeppelin の議案全体の票も置いておきます。

区分前号 (9/19)本号 (9/26)閾値
DRep 賛成2.14% (7 票・111,152,249 ada)2.32% (9 票・119,111,932 ada)67%
DRep 投票済み反対29 票・930,769,896 ada41 票・1,162,262,851 ada—
DRep 棄権1 票・40,205,215 ada7 票・43,200,391 ada分母外
委員会賛成 1・未投票 6賛成 2・未投票 52/3

期間内の DRep 票は 20 件で、内訳は賛成 2・反対 12・棄権 6 です。委任量では、投票済みの反対が賛成の 9.76 倍になりました。前号は 8 倍を超える差と書いていたので、差はさらに開いています。棄権も 1 票から 7 票へ増えました。

国庫の側の数字も添えます。エポック 613 以降に発効したトレジャリー引き出しは 34 件・457,395,629 ada で、2026 年の上限 500,000,000 ada に対して残りは 42,604,371 ada です。この議案が通れば合計は 469,182,692 ada = 上限の 93.84% になります。ここは前号から動いていません。

10. minPoolCost は、向きが戻りました

前号は、この議案についてこう書いていました。「直近の 5 票 (9 月 17 日 22 時 07 分〜9 月 18 日 18 時 14 分) はすべて反対でした。」今週の 23 票は、逆の形をしています。

区分前号 (9/19)本号 (9/26)閾値
DRep 賛成6.26% (22 票・294,844,280 ada)11.77% (36 票・535,228,477 ada)67%
DRep 投票済み反対20 票・469,841,434 ada24 票・490,675,179 ada—
DRep 棄権2 票・533,897,596 ada6 票・637,005,443 ada分母外
SPO0 票 (要件なし)0 票 (要件なし)0%
委員会賛成 1・未投票 6賛成 2・未投票 52/3

期間内の内訳は、賛成 14・反対 4・棄権 4、それに委員会の賛成 1 です。委任量でも、賛成 535,228,477 ada が投票済み反対 490,675,179 ada を上回りました。前号は 294,844,280 ada 対 469,841,434 ada で反対が上でしたから、1 週間で上下が入れ替わったことになります。

ただし可決の位置は遠いままです。賛成率は 11.77%、閾値は 67%。9 月 23 日の時点では、まだ投票していない DRep が 74.38% を占めていました。動いたのは向きであって、厚みではありません。

この週には公開の場もありました。9 月 23 日の Cardano Governance Hour #11 が、この議案を丸ごと扱っています。登壇したのは SPO インセンティブ作業部会のメンバーであり提案の著者でもある Ryan Wiley 氏 (Cerkoryn) で、案内は提案の趣旨を「ブロック報酬の減少が、小さなステークプールにとっての固定費の相対的な負担を増してきたと論じている」と説明していました。

SIPO の立場は前号から変わりません。9 月 15 日に建設的棄権を投じており、理由書はSIPO DRep:minPoolCost 75 ADA 単独案に棄権で全文を公開しています。3 プールはいずれも固定費 340 ada を宣言しているので機械的な影響はなく、SIPO は「340 の既存勢力」の側にいます。

11. 9 年目の台帳と、ノードの多様性

9 月 23 日、Cardano の最初のブロックから 9 年になりました。Cardano Foundation が並べた数字はこうです。

2,890 のステークプール。13,978,119 のブロック。123,982,111 のトランザクション。オンチェーンで批准された憲法。158 件のガバナンスアクションに投じられた 36,322 票。

このうち議案の件数は、いまの台帳が返す数と一致します。チェーン上の記録にある議案は 158 件です。プールの数も同じ桁で、エポック 656 の境界では 2,893 本でした。

同じ台帳は、別の断面も返します。2,890 本のうち委任を受けているのは 2,671 本、直近のエポックでブロックを作ったのは 775 本です。エポック 656 の境界時点では、委任を受けているプールが 2,674 本、ブロックを作ったプールが 937 本でした。取得時点が違う数字なので、並べても引き算はできません。それでも、登録されている本数と、実際に報酬とブロックが回っている本数の間に差があることは、どちらの断面からも読めます。

その「本数」の中身も、9 年目に入って変わりつつあります。Intersect の週次更新 #129 が節目を 1 つ記録しました。

「Blink Labs が開発した Go 製の Cardano ノード実装 Dingo が、今週 Cardano メインネットに受理されるブロックを検証した。ノードの多様性に向けた取り組みにとって重要な節目である。」

Dingo は今週 5 版を公開しています。Rust 実装の Amaru も 2 版を出し、最新版の目標マイルストーンは「最小限動作するブロック生成者」と書かれています。9 月のアンバサダー会合の公開報告によれば、Amaru は公称 2 GB から 4 GB の RAM で動きます (Haskell ノードが要求する 16〜24 GB 超に対して)。Haskell ノードとの適合性は 282 の検証シナリオで確かめられていて、ブロック生成のアルファ版は 10 月から第 4 四半期とされています。節目を祝う催しは 10 月 6 日、シンガポールとオンラインです。

9 周年の数字と、k のポールが問うている飽和点は、同じ台帳の別の欄です。片方は 9 年で積み上がった総量を数え、もう片方はその総量を何本で割るかを問うています。

12. ノードと道具

cardano-node — 今週はリリースがなく、優先されているのは 11.1.2 です

ノード本体の新しい版は、この 1 週間出ていません。直近は前号で扱った 11.1.2 (9 月 17 日) のままです。Intersect の週次更新 #129 は、これを今週の 2 つの締切のうちの 1 つに置いています。

「Cardano node 11.1.2 が出ており、SPO にはこれを優先するよう求める。このリリースはテスト中に見つかった問題に対処するもので、11.1.1 を置き換える。したがって、すでに更新した運用者はもう一度更新する必要がある。」

「セキュリティ」の語は、リリースノートにも #129 にもありません。そのうえで、11.1.1 から引き継がれている変更は大きいものです。V1 の台帳データベースと LMDB 保存先の削除 (LMDB を使っていた運用者は保存先を切り替える必要があります)、Mithril と互換のある台帳スナップショット、取引転送と Plutus 検証の高速化、そして Peras に対するネットワークとコンセンサスの初期サポート (既定では無効)。旧トレーシングの削除も 11.1.1 で完了しているので、監視の設定に手が要る場合があります。Mithril の signer を動かしている方は、ノードと同時に 2630.1-hotfix (mithril-signer-1.1.9) へ、というのが #129 の指示です。

更新の進み方も観測されています。9 月 18 日時点で「バージョンを報告しているノードの 20% が 11.1.2 へ更新を終えた」というものです。ここは限定が大事で、母数は「報告しているノード」であって、全ノードではありません。Cardano には新しいノードを全台へ一斉に配る仕組みがなく、運用者がそれぞれ上げて再起動して、はじめて新しいリリースがネットワークの一部になります。分散の度合いはプール数や委任の集中で語られることが多いのですが、何割が上げたかも同じ実体の別の断面です。

Hydra — 預け入れが動かなくなる不具合が直りました

今週の週次報告が扱っているのは、利用者からの報告に基づく 1 件です。Mesh SDK を使って 2 つの UTxO を開いているヘッドへ預け入れた利用者が、3 時間たってもどちらもレイヤー 2 に反映されず、L1 のウォレットからも消えて、預け入れ用のスクリプトのところで使えないまま固着した、という事象でした。

原因は手数料を補う処理にあります。預け入れ自体の価値が出力の最低 ADA に満たないとき、この処理は出力を増額しますが、預け入れた出力を記録している添付データのほうは元の値のまま残していました。結果として、価値と添付データを突き合わせる検査が預け入れを弾き、ノードがそれを観測しませんでした。修正版は送信前に検査を通し、不足額を名指しするエラーで早く失敗します。すでに固着している預け入れを手作業で回収する手段も加わりました。

報告の語は「不具合」で、セキュリティ勧告は出ていません。そのうえで、利用者から見れば資金が戻らない種類の不具合です。手元で Hydra を使っている方は、今週の更新対象になります。

Leios — データベースが 2 つに割れました

同じ週の合意形成チームの更新は、Leios の試作がデータベースを「巻き戻しがありうるデータ」と「確定したデータ」の 2 つのファイルに分けたと説明しています。承認済みの Endorser Block は、背景で前者から後者へ移ります。運用者は 2 つのファイルを別々のディスクに置き、忙しいほうに速いディスクを当てられます。不要データの整理も、1 つのスレッドが印を付け、もう 1 つが区切って削除する形になり、削除がノードの他の処理を止めません。

試作版は今週 3 本 (9 月 21 日・22 日・25 日) 出ています。前号で扱った Leios のデモは、ローカルクラスタでの毎秒 250 TxkB という数字でした。今週の変更は速さの数字ではなく、落ちない・詰まらない側の作り込みにあたります。

ウォレットとその周辺

Lace は 2.3 の内容を今週まとめて告知し、拡張機能は 2.4.0 (9 月 23 日) と 2.4.1 (9 月 25 日) が出ました。2.4.1 は Ledger の Cardano アプリ最新版 V8 に対応しています。Midnight まわりの変更は次章で扱います。cardano-js-sdk は 14 パッケージが一括で更新され、Mithril は今週、安定版の公開がありません。

13. Midnight ウォッチ

ノード 1.0.300 — メインネットを含むセキュリティパッチです

今週の Midnight でいちばん手を動かす対象がこれです。日本時間 9 月 22 日 21 時 29 分 49 秒、node-1.0.300 が公開されました。リリース本文の冒頭が、位置づけをそのまま書いています。

「1.0.x ラインにおけるセキュリティパッチのリリースであり、メインネットを含むすべての環境に向けたものである。」

直している中身は 2 つです。1 つは、ツールキットのイメージに同梱された npm 経由で到達しうる critical な tar の勧告 (GHSA-23hp-3jrh-7fpw)。もう 1 つがイメージの中身で、こちらは本文の書き方が具体的です。

「node・toolkit・hardfork-test-upgrader のイメージから gdb を取り除く。これは exec 権限を持つ者に、稼働中のバリデータのメモリを ptrace で覗く手段を、鍵素材も含めて渡していた。」

作業の順序にも、はっきりした指定があります。

「アップグレードはバイナリとランタイムを揃えて行う作業である。set_code が執行される前に、すべてのバリデータがこのバイナリに載っていなければならない。」「古いバイナリのままのバリデータは新しいランタイムを立ち上げられない。set_code のところでブロックの取り込みを止め、チェーンから外れる。」「この順序は助言ではない。」

spec_version は 1_000_000 から 1_000_300 へ、system_version は 1 から 3 へ動きます。メインネット・Preview・Preprod では状態の作り直しは不要で、devnet だけジェネシスが作り直されました。前号で「2.1.0 系の版数と 1.0.x 系の関係がはっきりしない」と書いた点は、この公開で解けました。保守ラインは 1.0.2 の次を 1.0.300 と名乗ります。開発ラインを追う運用者は、引き続き 2.1.0-rc.2 を見る、とリリース本文が指定しています。

メインネットの秘匿契約が「近く有効に」

日本時間 9 月 19 日 14 時 36 分、Midnight 財団の CTO である Sebastien Guillemot 氏が、メインネットでスマートコントラクトの配備が近く有効になると投稿しました。

「Midnight のメインネットで、スマートコントラクトの配備が近く有効になります。秘匿スマートコントラクトが楽しみです (秘匿カスタムトークンを発行できるようになることを含みます)。ここまで到達するのを助けてくれたすべての作り手に感謝します。」

ここは、はっきり書いておきます。有効化の日付も、それを告げる公式のリリースノートも、まだ出ていません。ノードのリリースノートにも該当する記述はなく、node-1.0.300 の「新機能」の欄は「なし」です。公式ブログにも今週は新しい記事がありません。確かめられるのは投稿の中身までです。

3 月末のメインネット公開時の告知には、アプリの配備は一度に開放するのではなく段階的に進める、と書かれていました。今回の「近く有効になる」は、最初から予定されていた段の一つが近づいたという読み方になります。

改善提案 — MIP-0018 と MPS-0043、そして索引の追いつき

9 月 22 日の朝、改善提案のリポジトリに 2 本が入りました。

MIP-0018 (オンチェーンのトークンメタデータ) は、トークンの名前や記号をコントラクト自身が公開イベントとして宣言する取り決めです。Midnight のネイティブトークンは、発行したコントラクトのアドレスとドメインセパレータから導かれる「色」で区別されますが、その色が何のトークンなのかを示す標準の方法がありません。結果として、ウォレットは 64 文字の 16 進文字列を表示し、エクスプローラはラベルを付けられず、アプリは一覧を自前で書き込んでいる、と提案書は書いています。仕組みは 1 件あたり 256 バイト固定のイベントで、設計は Ethereum の EIP-7496 にならったと明記されています。要点は、宣言を出す主体がトークンを発行したコントラクトそのものだということです。他人のトークンについて勝手に名乗ることはできません。ステータスは最初の段階の Proposed です。

同じ朝に MPS-0043 (選ばれた相手への選択的な開示) も入りました。秘匿したデータを選んだ相手にだけ開示する仕組みが足りない、という問題提起です。

前号で書いた索引の食い違いも解消しました。前号の時点では、文書は入っているのに採番の索引が MIP-0016 までのままでした。今週の索引には MIP-0017 と MIP-0018 の両方が載っています。MPS 側の最高番号は MPS-0043 です。

展開申請 — 国庫の回路を抜いて出す

9 月 23 日、Shadow Labz が出した 3 本のコントラクトのメインネット展開申請が承認されました。プライバシーを保ったまま投票・意見収集・DAO 運営を行うための一式で、いずれもネイティブトークンを受け取らず、持たず、送りません。

目を引くのは ShadowDAO v1 の出し方です。展開されるビルドからは国庫関連の 2 つの回路 (資金の受け入れと、承認済み支出の執行) が除かれています。資金を扱う回路を外したビルドを先に出し、資金を預かる部分は別の申請へ切り離す、という順序です。申請書は自分から弱点も書いていて、参加者がごく少ない投票では取引のタイミングから選択を推測できる余地がある、としています。

このリポジトリの審査の枠組みには、「この審査は監査ではありません」と明記されています。承認は展開の可否であって、コードの安全性の保証ではない、という区別です。

同じ区別は、別のところでも出ました。Cardano の貸借プロトコル FluidTokens が 9 月 23 日、Midnight 向けのスマートコントラクトを監査中だと公表しています。ただし投稿にあるのは 1 行で、監査を担当している会社の名前も、完了の時期も書かれていません。監査と展開審査は別の関門です。

秘匿を「売り出し」に当てはめた例

Midnight 公式は 9 月 23 日未明、Build Club 参加者が作ったトークン・ローンチパッド「Noctis Zone」を紹介しました。売り出し初日の 24 時間を見えない状態で、全員同じ固定価格で行い、終了後にゼロ知識証明で「どのウォレットも上限を超えなかった」ことを示します。順番が見えず値段も動かないので、先回りして得をする余地がありません。証明は Cardano の L1 へ書き込まれます。いまは本番前の試験ネットワークで動いています。

Lace Midnight Preview は 9 月 30 日で終わります

ここは期日のある作業です。Lace は 9 月 23 日、「Lace Midnight Preview」拡張を 9 月 30 日で終了すると告知しました。拡張が寄りかかっていたホスティング側のサービスが無くなるためで、その日を境に Preview 拡張は動かなくなります。

やることは 3 つで、順番も決まっています。Lace 本体をまだ入れていなければ入れること。Preview で使っていたウォレットを、リカバリーフレーズを使って Lace 側に読み込み直すこと。そのうえで Preview 拡張をアンインストールすること。手元にリカバリーフレーズが無い状態で Preview を消すと、戻れなくなります。

Midnight の開発そのものは、すでに Lace 本体へ移っています。今週告知された 2.3 では、Midnight の口座が同期に詰まったときに口座設定から同期状態を初期化できるようになり、DUST の手数料計算の不具合も直りました。拡張の 2.4.0 では、cNIGHT を保有する Cardano アカウントからの DUST 生成が入っています。

鍵を預からない設計が、戻せない範囲も決めます

日本時間 9 月 24 日 21 時 31 分、Midnight Foundation が、SecondFi (旧 Yoroi) の 6 月の事案で秘密鍵が漏れたウォレットについて、Glacier Drop の請求を財団の側から復元したり別のアドレスへ付け替えたりすることはできない、と表明しました。理由は運用上の判断ではなく設計そのものです。

「Glacier Drop の償還プロセスは、請求とそれに紐づく秘密鍵の保有者だけがその請求を償還できるよう、意図的に設計されている。Midnight Foundation が請求を動かしたり、付け替えたり、その他の方法で手を加えたりできるような、マスターキーもバックドアも管理者権限も存在しない。」

守る仕組みと戻せない仕組みが、同じ一つのものだという話です。9 月 21 日には SecondFi 自身が、影響を受けたウォレットで NIGHT の割当を受け取ろうとしないよう呼びかけていました。今週は、仕組みを持っている側が同じ結論を自分の言葉で述べたことになります。なお、逸失したステーキング報酬については現時点で請求対象外だとも公表されています。

そのほか

2.1.0 系の正式版は、今週も出ていません。イベントとしては、チャールズ・ホスキンソン氏と Midnight City のチームによる「Enter Midnight City: Tokyo」が 10 月 10 日 15 時から 19 時、東京・白金台の八芳園で開かれます。参加は無料の承認制です。NIGHT の価格は週間 +3.48% でした。

14. 鍵そのものが漏れました

9 月 20 日、World Mobile Chain が Security Notice を公開しました。SingularityNET のブリッジが突かれ、Ethereum 上で WMTx が不正に発行された、という内容です。ブロックチェーン分析を手がける PeckShield は、同じアドレスが AGIX 2 億 6,000 万枚と WMTx 5,383 万 8,000 枚を不正に発行したと指摘しています。同じ日に Fetch.ai と NuNet も、同一の攻撃者に抜かれました。

3 件に共通していたのは、コントラクトの論理的な欠陥ではなく、発行を承認する鍵そのものの流出でした。

前号と前々号で扱った 2 件とは、壊れた場所が違います。Hydra は署名の検証を飛ばす最適化、Splash は取引可能な準備高の符号を確かめない検証器で、どちらも正しさの前提が 1 つ省かれていたという形でした。今回は前提の省略ではありません。仕組みが想定どおりに動いたうえで、それを動かす権限のほうが外に出ています。同じ週に Midnight Foundation が「マスターキーもバックドアも存在しない」と述べ、Midnight のノードが「イメージの中のデバッガが鍵素材まで覗ける状態だった」ことを直しているのも、同じ層の話です。

Cardano のエコシステムを追っている方から見ると、この事件は分かりにくい形をしています。自分のウォレットの中では何も起きていないのに、別のチェーン側で供給が増えたことで保有トークンの価格が動くからです。World Mobile Chain の告知も、不正な発行が「WMTx が上場しているすべての取引所で最近の価格変動を引き起こした」と認めています。なお、Cardano と Midnight のチェーン上では、今週あらたに発生した攻撃の一次報告はありません。

15. 外からの入口が、いくつか開きました

今週は、Cardano の外側とつながる発表が並びました。

  • HTTP 上の決済規格 x402 の公式 SDK に Cardano が入りました。 パッケージ @x402/cardano の初版は日本時間 9 月 19 日 8 時 19 分に公開され、Cardano Foundation が 9 月 21 日に発表しています。インストールするだけで、API の利用料を ADA やネイティブトークンで受け取れます。
  • Cardano のネイティブトークンが Fireblocks で扱えるようになります。 Cardano Foundation の 9 月 24 日の発表です。同財団の CEO である Frederik Gregaard 氏は「Cardano のネイティブトークンをついに ADA と足並みをそろえ、Cardano の作り手に前例のない流通を届けられることに興奮している」と述べています。ADA 自体は 2021 年から対応済みで、変わるのはその上に乗るトークンのほうです。対象規格 (CIP-26 と CIP-68) と時期 (2027 年 3 月まで) は、報道が伝えているものです。
  • Catalyst Pilot 2026 の採択 12 件が発表されました。 応募 117 件からの選定です。支払いの設計が変わっていて、資金の 40% は着手時、残り 60% はオンチェーンでの利用実績に連動します。
  • Cardano PRIME の生態系監査が出ました。 Cardano DeFi の総合評価は 100 点満点で 51.3 点、同じ枠組みで測った Ethereum は 96.3 点、Sui は 72.3 点です。PRIME はこの監査を出発点に、第 3 段階のインセンティブを 2〜3 か所に集中させる方針を 9 月 24 日に説明しました。公募は 9 月 30 日締切です。
  • トレジャリーの配分改革をめぐる公開の円卓が開かれました (9 月 21 日配信)。登壇した 5 名は、資金を分野ごとの枠に分けても誰でも提案できる仕組みそのものは残すという点で一致しています。
  • FC バルセロナが「Barça Fan Lab」を Cardano 上で立ち上げ (9 月 25 日)、Intersect の理事選は 9 月 25 日 21 時に投票を締め切りました (2 議席に 11 名・結果の公表は 9 月 28 日)。

SIPO 自身の動きも 1 件開示します。SIPO は 9 月 24 日から、RealFi の SPO アクセラレーターで活動を始めました。

16. リスク・ディメンション

  • 運用 (Midnight のノード)。 node-1.0.300 はリリース本文に「セキュリティパッチ」と明記があり、メインネットを含みます。set_code の執行前に全バリデータが移っていなければ、遅れたバリデータはチェーンから外れます。順序の指定は助言ではない、と本文が書いています。
  • ガバナンス (数え方)。 k のポールは、票数と委任量で多数が逆を向いています。判定に使われるのは委任量のほうです。票数の見出しだけで「賛成が多い」と読むと、判定の位置を取り違えます。
  • ガバナンス (投票しないこと)。 同じポールでは、未投票の 92 億 ada が反対と同じ働きをします。意思表示をするかしないかの判断が、そのまま結果に載ります。締切は 10 月 22 日 6 時 44 分 51 秒です。
  • ガバナンス (委員会の賛成の意味)。 minPoolCost と OpenZeppelin に入った委員会の賛成は、理由書によれば憲法に反していないという判断です。提案の中身が妥当だという判断ではありません。残り 5 名のうち 3 名が動かなければ、2/3 には届きません。
  • プールの経済 (SIPO 自身)。 k=1000 の飽和点は約 3,677 万 ada で、SIPO の 1 号機 (5,386 万 ada) はその上にいます。委任量はこの 1 エポックで 319 万 ada 減りましたが、線の上にいることは変わりません。SIPO はこの変更で不利になる側にいます。
  • 国庫 (上限)。 OpenZeppelin の議案が通れば、2026 年の引き出しは上限の 93.84% に達します。残りが 4,260 万 ada しかない状態で、年内に別の引き出しが出たときの余地は限られます。
  • 運用 (Midnight の期日)。 Lace Midnight Preview は 9 月 30 日で動きません。移行にはリカバリーフレーズが要ります。本稿の公開から 4 日です。
  • 運用 (Cardano のノードと Hydra)。 11.1.2 は 11.1.1 を置き換えるので、11.1.1 へ更新済みの運用者ももう一度更新が要ります。Mithril の signer は同時に 1.1.9 へ。Hydra の預け入れが動かなくなる不具合の修正も今週公表されました。セキュリティ修正ではありませんが、資金が戻らない種類の不具合です。

17. 来週の注目

  1. エポック 658 の境界 — 日本時間 9 月 27 日 6 時 44 分 51 秒。minPoolCost の賛成が委任量で反対を上回った流れが続くかは、この境界をまたいだ票の並びで見られます。確認先は gov.tools の当該議案のページです。
  2. Intersect 理事選の結果 — 公表は 9 月 28 日です。2 議席に 11 名。確認先は Intersect のニュース面です。あわせて週次更新 #130 も、本稿執筆時点では未公開です。
  3. Lace Midnight Preview の終了 — 9 月 30 日。移行が済んでいない方はこの日までです。確認先は Lace の公式アカウントと input-output-hk/lace のリリース面です。
  4. Cardano PRIME の公募締切 — 9 月 30 日。9 月 23 日時点の応募は 55 件でした。確認先は Cardano PRIME の告知面です。
  5. Midnight のランタイム 1.0.300 の執行 — set_code が各ネットワークで 1 度ずつ執行されます。確認先は midnightntwrk/midnight-node のリリース面と、提案ハッシュを照合するためのリリース添付物です。
  6. 憲法改正ポータルのレビュー会 — 協定世界時 10 月 1 日 14 時。CAP-10 と CAP-3 の進み方が見られます。確認先は憲法改正ポータルです。
  7. k のポールの SPO 票と理由書 — 明示的な賛成が 0.57% からどこまで動くか、提案者本人の反対に続く運用者が出るか。締切は 10 月 22 日 6 時 44 分 51 秒、確認先は gov.tools の当該 Info Action のページです。
  8. minPoolCost と OpenZeppelin の委員会票 — 残り 5 名のうち 3 名が動くか。期限は 10 月 12 日 6 時 44 分 51 秒です。
  9. ノードの多様性を祝う催し — 10 月 6 日、シンガポールとオンライン。Amaru のブロック生成アルファ版の時期と、SPO 向けの参加報奨がここで示される予定です。
  10. Enter Midnight City: Tokyo — 10 月 10 日 15 時、東京・白金台の八芳園。登録は承認制です。

まとめ

今週、チェーン上に新しい議案は 1 件も出ませんでした。既にある 3 つの欄に、票だけが積まれた一週間です。

その中で、いちばん読み替えが要るのは k のポールでした。賛成は 10 プール、反対は 3 プール。票数では賛成が 3 倍を超える多数です。ところが議案本文が自分で宣言した判定はステークで重みを付けるもので、その物差しでは反対 95,984,098 ada が賛成 53,185,274 ada を 1.80 倍上回っています。どちらの数字も同じ台帳から出ていて、どちらも正しく、結論だけが逆を向きます。

この形には前例があって、議案本文自身がそれを引いています。2023 年のポールでは、k=1000 を含む選択肢がプール数で 69.64%、参加ステークで約 41.1% でした。今回のポールが「ステークで重み付けする」と繰り返し断っているのは、その経験の後だからです。そして同じ形が、1 週目で出ました。

反対の 3 票目を投じたのは、このポールを出した本人でした。理由書には「まだ、いまの k=500 を使い切っていない」とあり、提出のあとで反対側の詳細な論考を知り「その主張の多くに同意する」とも書かれています。問いを立てた人が、その問いに自分で反対票を入れた。ポールという道具が、提出の時点の意見を固定しないことを、いちばん近いところで示した形になります。

残りの 2 件も動きました。minPoolCost は、前号の「直近 5 票はすべて反対」から、賛成 14・反対 4 へ向きが戻り、委任量でも賛成が上に出ています。OpenZeppelin は逆で、投票済みの反対が賛成の 9.76 倍まで開きました。委員会は 9 月 22 日に 2 票目が入り、どちらも賛成 2・未投票 5。ただしその賛成は、理由書によれば憲法に反していないという判断であって、提案の中身への賛成ではありません。

SIPO は、その OpenZeppelin に反対を投じました。9 月 25 日 10 時 38 分 08 秒、予告より 2 週間早い判断です。反対の理由は重複・言語未定・換金余剰・束ね方の 4 点で、賛成に転じる条件も 6 つ書いてあります。そして SIPO は、いま重複を指摘している相手側の資金に、2026 年 5 月に賛成を入れた当事者でもあります。k のポールについても立場は同じで、k=1000 は SIPO の 1 号機にとって不利な変更です。

先週は、4 つの欄のうち 1 つが埋まらなければ議案は止まる、と書きました。今週見えたのは、その手前の層です。同じ票を、何で数えるか。プールの本数で数えるか、委任されたステークで数えるか。9 周年の数字が 2,890 本のプールを数えるのと、飽和点がその総量を何本で割るかを問うのも、同じ場所にある選択でした。

参考・出典

本文で SIPO 自身の記事に触れた箇所は、その場でリンクしています。以下は一次ソースです。

透明性メモ

  • k ポールの「1.80 倍」:明示的な反対 95,984,098 ada を明示的な賛成 53,185,274 ada で割った値です。未投票の委任量 9,251,693,095 ada は含めていません。議案本文は未投票を反対と同じ働きだと宣言していますが、それを足した比率は本文では使っていません。
  • 賛成率 0.57% の分母:賛成 53,185,274 ada に、明示的な反対と未投票を合わせた 9,347,677,193 ada を足した 9,400,862,467 ada です。明示的な棄権と「常に棄権」を選んでいる 617 プール (約 119 億 ada) は、議案本文の宣言どおり分母から外しています。
  • 「反対が X%」を書いていない理由:公開 API が返す反対率には未投票と「常に不信任」の分が含まれます。そのため本文では、投票済みの反対を票数と ada 額だけで書いています。賛成率は集計値をそのまま使っています。
  • 提案者と STR8 の同定:議案メタデータの著者名と、反対票を投じたプールのティッカー、そして理由書本文の「この Info Action を提出したのは」という記述が一致することによります。理由書の著者欄そのものは空でした。提出時の意図は、理由書に書かれている範囲までしか書いていません。
  • 同じ秒に記録された 3 票:k のポールで 9 月 22 日 10 時 03 分 06 秒に賛成が 3 件入っていることは書きましたが、同じ運用者かどうかは書いていません。台帳はプールを記録しますが、どのプールが同じ主体の手にあるかを網羅的には開示しません。
  • 委員の名乗り:チェーン上の記録から取れるのは鍵のハッシュ値と任期エポックだけです。Tingvard という名は、投票に添えられた理由書が自分で名乗っているもので、本文ではその範囲で書いています。9 月 12 日に 4 件同時に投じた委員については、理由書を確認できていないため鍵の先頭で書いています。
  • 委員会の「賛成」の意味:理由書は合憲性の判断であることを明記しています。本文でも提案の是非への賛成とは書いていません。
  • SIPO が予告より早く投票した理由:理由書に書かれていません。本文では日付の差だけを記し、動機は補っていません。
  • SIPO の利害:k のポールについては SIPO の 1 号機が k=1000 の飽和点を超える側にいること、minPoolCost については 3 プールとも固定費 340 ada で機械的な影響がないことと SIPO が 340 の既存勢力側にいること、OpenZeppelin については SIPO の DRep が反対を投じた当事者であり、2026 年 5 月に類似の成果物を含む議案へ賛成していることを本文で開示しています。RealFi については、SIPO が 9 月 24 日から参加している立場を明記しました。
  • 飽和点の試算:k=500 で約 73,534,748 ada、k=1000 で約 36,767,374 ada は、9 月 26 日朝のチェーン上の流通量 36,767,374,068 ada を k で割った機械的な試算です。議案本文が基準時点として挙げている約 7,500 万 ada / 約 3,750 万 ada とは、流通量の取得時点が違うため一致しません。SIPO の 3 プールの委任量は、エポック 656 の境界時点の値です。
  • 市場の値の取得時刻:9 月 19 日の値は当方の朝の定点観測です。9 月 26 日の値は、定点観測の取得が本稿執筆時点で行われていなかったため、9 月 26 日 7 時 19 分 50 秒 (日本時間) に取得し直しました。両日で取得時刻が数十分ずれています。エポック境界の ADA (+26.27%) は境界の時刻ちょうどで取った値で、朝の値とは取得時刻が違うため週間 +13.19% とは一致しません。
  • 9 周年の数字と台帳の数字:Cardano Foundation が並べた 2,890 プールと、エポック 656 境界の 2,893 プール、9 月 24 日に台帳から取った「委任を受けているのは 2,671・直近エポックでブロックを作ったのは 775」は、いずれも取得時点が違います。本文では引き算をしていません。議案の 158 件だけは、いまの台帳が返す件数と一致しています。
  • セキュリティの語:今週は cardano-node のリリースがなく、11.1.2 のリリースノートにも Intersect の週次更新にも「セキュリティ」の語はないため、セキュリティ修正とは書いていません。Hydra の修正も週次報告の語が「不具合」なので同じ扱いです。一方、Midnight の node-1.0.300 はリリース本文に「セキュリティパッチ」と明記があるため、そのまま書いています。
  • Fireblocks の規格と時期:Cardano Foundation CEO の逐語は同財団の発信から取りました。対象規格 (CIP-26 / CIP-68) と 2027 年 3 月という時期は報道が伝えているもので、本文でもそう書き分けています。
  • Midnight のメインネット契約:「有効になった」とは書いていません。書いたのは、財団の CTO が「近く有効になる」と投稿したことと、日付も公式のリリースノートも出ていないことです。Midnight の公式ブログには今週の新しい記事がありません。
  • 価格と議案・事件の関係:結びつけていません。9 月 22 日の ADA の +8.36% についても、同じ週の議案や事件とは関連づけていません。

投資助言ではありません。情報提供・リサーチ目的のみ。