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Cardano DeFiを「実行フェーズ」へ:AlphaGrowthが12カ月の成長プログラム「PRIME」案を公開

AlphaGrowthがCardano向けDeFi成長プログラム「PRIME」を提案

DeFi成長支援を手がけるAlphaGrowthは、CardanoのDeFi流動性、利用、統合、オンチェーン活動を拡大するための12カ月プログラム「PRIME」を公開しました。

PRIMEは「Protocol Readiness, Incentives, and Market Expansion」の略で、Cardano DeFiの現状監査、ギャップ分析、流動性インセンティブ、LP・マーケットメーカー・統合先との調整、公開レポートを組み合わせた成長プログラムとして設計されています。

AlphaGrowthはXスレッドで「Cardano DeFi is ready for prime time」と表現し、CardanoにはeUTxOという差別化された技術、強いコミュニティ、そして大きな市場機会がある一方で、次の段階では「流動性、利用、統合、持続的なオンチェーン成長」が必要だと説明しています。

この投稿はチャールズ・ホスキンソン氏にもリポストされ、Cardanoコミュニティ内で注目を集めています。ただし、提案主体はあくまでAlphaGrowthであり、現時点では公開フィードバック段階のドラフトです。最終的なオンチェーン投票に進む前に、戦略、予算、指標、マイルストーンをコミュニティが検証する段階にあります。

SIPO視点で見ると、PRIMEは単なるDeFiマーケティング案ではありません。これは、CardanoのVoltaire期におけるTreasury配分、DeFi成長戦略、成果連動型報酬、独立監督、公開説明責任が交差する、かなり重要なガバナンス案件です。


PRIMEの基本条件:総額₳120M、12カ月、TVL成長目標$200M+

公式ドラフトによれば、PRIMEの総要請額は₳120,000,000です。AlphaGrowthは、計画上の換算前提を1 ADA = $0.16とし、ドル換算で$19,200,000のプログラムとして提示しています。

主な条件は以下の通りです。

項目内容
提案者AlphaGrowth
プログラム期間12カ月
総要請額₳120,000,000
計画上のドル換算$19,200,000($0.16/ADA前提)
目標12カ月で$200M+の純適格TVL成長
想定ベースラインCardano DeFi TVL約$90Mから約$290Mへ
主な指標TVL、ステーブルコイン供給、MAU、取引量、手数料、6カ月ローリングのTVL定着率
監督構造5名のOperating Group、非投票のDeFi & Community Advisory Council
Phase 3解放条件4カ月目終了時にOperating Groupが3-of-5で承認

予算内訳は、エコシステム助成、LPインセンティブ、マーケティング・BD、AlphaGrowth固定アドバイザリーフィー、成果報酬準備金、法務・コンプライアンス、独立監査に分かれています。

特に大きいのは、Ecosystem Grantsが₳35M、LP Incentivesが₳27M、Performance Fee Reserveが₳29Mである点です。Performance Fee Reserveは、成果が確認されなければ未獲得分がTreasuryへ返還される設計とされています。

AlphaGrowth自身の報酬は、固定フィー$1.76Mと、TVL成長に応じた成果報酬の上限$4.64Mを合わせ、最大$6.4Mとされています。つまり、プログラム予算のすべてがAlphaGrowthへの支払いになるわけではなく、助成、LPインセンティブ、マーケティング、監査、法務費用などに分けられています。

ただし、この規模はCardano Treasuryにとっても大きな判断です。₳120Mという額は、単なる実験予算ではありません。コミュニティは、期待されるDeFi成長と、Treasury資金を外部運営者に委ねるリスクを、冷静に比較する必要があります。


3段階の実行計画:監査、ギャップ分析、資本展開

PRIMEは、12カ月を3つのフェーズに分けています。

Phase 1:Current-State Audit(1〜2カ月目)

最初の2カ月は、Cardano DeFiの現状を客観的に監査する期間です。

対象は、ブリッジ、クロスチェーンメッセージング、オラクル、カストディ、分析基盤、DEX、AMM、レンディング、ステーブルコイン、リキッドステーキング、利回り商品、パーペチュアル、予測市場、機関投資家向けオンランプ、配布パートナーなど、約20〜25カテゴリとされています。

成果物は「Cardano DeFi Current State Analysis」です。これはプログラム内部の資料ではなく、公共財として公開される予定です。

この部分は重要です。なぜなら、PRIMEが成功するかどうかは、最初にCardano DeFiのボトルネックを正しく診断できるかにかかっているからです。単に「もっと流動性が必要」と言うだけなら簡単です。しかし、流動性が断片化しているのか、LPにとって収益性が低いのか、ステーブルコイン導線が弱いのか、統合・分析・リスク管理が不足しているのかによって、打つべき施策はまったく変わります。

Phase 2:Gap Analysis and Implementation Recommendations(2〜4カ月目)

次のフェーズでは、監査結果をもとに、Cardano DeFiの高優先度ギャップを整理します。

公式ドラフトでは、それぞれのギャップに対して、build、buy、grant、partner、Pentad coordination、protocol-led、separate treasury actionといった実装経路を割り当てるとされています。

ここで注目すべきは、PRIMEがすべてを自分たちで実行する設計ではないことです。Cardano Pentad、つまりIOG、Cardano Foundation、EMURGO、Intersect、Midnight Foundationの調整領域と重なる部分では、インフラ面はPentadに委ね、PRIMEはインセンティブ設計やLP向けプログラムに重点を置くとされています。

これは、PRIMEを「DeFi成長の全権委任」と見るのではなく、「ギャップを可視化し、必要な資本配分と市場調整を行う実行レイヤー」と読むべき理由です。

Phase 3:Incentive and Capital Deployment(5〜12カ月目)

5カ月目以降は、実際のインセンティブ、LPディールメイキング、流動性キャンペーン、シード資本、ストラクチャード利回り商品などを展開する段階です。

ただし、このPhase 3は自動的には解放されません。4カ月目終了時に、Operating GroupがPhase 1の監査、Phase 2の推薦、AlphaGrowthの展開計画をレビューし、3-of-5で承認した場合にのみ、約₳90M相当のPhase 3資本が予定通り解放されます。

もしOperating Groupが承認しなければ、Phase 3資金はPRIMEに流れず、Operating Groupのガバナンス下に留まる設計です。

これはPRIME案の中で最も重要な安全装置の一つです。₳120Mを一括で自由に使えるわけではなく、最初の4カ月で診断と計画の質を見たうえで、大部分の資本解放を判断する構造になっています。


なぜ今Cardano DeFiなのか:技術はあるが、資本の深さが足りない

AlphaGrowthの前提は明確です。Cardanoの問題は、もはや「インフラがまったく足りない」ことではなく、インフラをDeFi利用と資本流入へ変換する市場構造が弱いことです。

公式ドラフトでは、2026年6月時点のCardano DeFiについて、TVL約$90M、ステーブルコイン供給約$45Mという数字が示されています。これに対して、Sui、Aptos、Seiのような比較対象エコシステムは、より短い期間で数億ドルから10億ドル規模のTVLに到達したと説明されています。

PRIMEは、Cardanoにはすでにいくつかの重要な材料が揃っていると見ています。

  • eUTxOアーキテクチャ
  • ネイティブで非カストディアルなステーキング
  • USDCx
  • LayerZero v2
  • Pyth
  • Duneサポート
  • Cardano Pentadによるインフラ調整

一方で、AlphaGrowthは、Cardano DeFiの残されたギャップとして、実行・solver市場、高度な流動性商品、リスク・保険ツール、外部LPや機関投資家への認知・配布を挙げています。

ここで重要なのは、CardanoのeUTxOを単なる技術的個性としてではなく、LP向けの商品設計やリスク管理、資本効率にどう接続するかです。PRIMEは、eUTxOとネイティブステーキングを、他チェーンが簡単には複製できないDeFiプリミティブに変換することを重視しています。

言い換えると、PRIMEの問いはこうです。

Cardanoは、優れた技術と分散型ガバナンスを持っているだけでなく、資本が実際に入り、滞留し、取引し、手数料を生む場所になれるのか。

この問いに対する実行案がPRIMEです。


成果報酬とTVL指標:最も慎重に見るべきポイント

PRIMEは、12カ月で$200M+の純適格TVL成長を目標にしています。公式ドラフトでは、Cardano DeFiを約$90Mから約$290Mへ引き上げるイメージが示されています。

ただし、TVLは非常に扱いが難しい指標です。インセンティブを出せば短期的に資金を呼び込むことはできます。しかし、その資金がインセンティブ終了後に離れてしまえば、Treasury資金を使って一時的な数字を買っただけになります。

AlphaGrowthもこの問題を認識しており、PRIMEではTVLだけでなく、取引量、手数料、月間アクティブユーザー、6カ月ローリングのTVL定着率をあわせて報告するとしています。また、成果報酬の対象となる「適格TVL」は、ADA価格上昇による見かけの増加、Pentad由来のTVL、外部資金で立ち上がったプロトコル由来のTVL、二重計上を除外する方法論をOperating Groupが承認する必要があります。

成果報酬は、 verified qualifying TVL growth に対して段階的に支払われます。最初の$50Mまでは3%、次の$100Mは2%、その次の$114Mは1%で、上限は$4.64Mです。$264Mを超える成長には追加成果報酬は発生しません。

この設計は、成果連動性を持たせる一方で、重要な論点も残します。

  • TVL成長が本当にPRIME由来かを、どこまで客観的に判定できるのか
  • インセンティブ資本と自然成長をどう切り分けるのか
  • ADA価格や市場全体の上昇局面をどう除外するのか
  • 6カ月定着率が十分でも、12カ月後以降の持続性をどう評価するのか
  • 成果報酬のインセンティブが、短期TVL偏重につながらないか

PRIMEは、これらの問いに対して、方法論、公開レポート、Operating Group承認、第三者データ、四半期報告を組み合わせる設計を提示しています。しかし、最終的にはコミュニティがその設計を十分と見るかどうかが問われます。

SIPOとしては、PRIMEを評価する際に「TVLが増えるか」だけでなく、「TVLの質をどう測るか」を中心に見るべきだと考えます。


ガバナンス設計:AlphaGrowthは資金を直接管理しない

PRIME案のもう一つの重要点は、資金管理と実行判断の分離です。

公式ドラフトでは、AlphaGrowthはプログラム設計、監査、推薦、インセンティブ戦略、資本展開ワークフローを担当します。一方で、AlphaGrowthはプログラム資金を保有せず、自分自身への支払いを承認する権限も持たないとされています。

監督には、5名のOperating Groupが置かれます。Operating GroupにはAlphaGrowthの現役従業員やプリンシパルは入らず、重要な推薦やPhase 3資本解放に対して拒否権を持ちます。Materiality Thresholdは₳400,000で、この基準を超える意思決定には公開Recommendationとレビュー期間が必要になります。

さらに、DeFi & Community Advisory Councilが非投票の助言機関として設けられます。DEX、レンディング、ステーブルコイン、パーペチュアル、リキッドステーキング、利回り商品など、CardanoネイティブDeFi参加者の声を取り込むための仕組みです。

ただし、Advisory Councilは投票権を持ちません。これは、助成やインセンティブの受益者になり得るプロトコルが、直接資金配分を決める立場に入ることを避けるためです。

この構造は、Cardano Treasury案件として重要です。外部の成長運営者に実務を委ねつつ、資金保有、支払い実行、拒否権、公開レポート、利益相反回避を分けることで、単一主体が全体を支配しないように設計されています。

一方で、ドラフトには未確定項目もあります。契約カウンターパーティ、Constitutional Administrator、カストディアン、プログラム用Cardanoアドレスなどは、オンチェーン投票前に確定される予定とされています。現時点では、Intersect MBOとBitGo Trustが検討対象として示されていますが、最終確定ではありません。

したがって、PRIMEを判断するには、提案本文だけでなく、今後公開される契約構造、カストディ、管理者、OG構成、利益相反チェックの詳細を確認する必要があります。


SIPO視点:PRIMEは「CardanoのDeFi実行力」を測るテストである

PRIMEが興味深いのは、Cardanoの弱点としてしばしば語られてきた「DeFi流動性の薄さ」に、正面から向き合っている点です。

Cardanoは、研究、形式手法、eUTxO、分散化、ガバナンス、長期志向に強みを持つ一方で、DeFiの総量、資本効率、ステーブルコイン流動性、外部LP導線では、Ethereum L2や新興L1に見劣りすると言われてきました。

PRIMEは、その差を「技術の問題」ではなく、「市場構造と実行の問題」として扱います。これは正しい問いの立て方です。Cardanoが本当にグローバルDeFiエコシステムになるには、優れたプロトコルであるだけでは足りません。資本が入り、使われ、回転し、残る理由が必要です。

同時に、PRIMEはCardanoガバナンスにとっても大きなテストです。

Voltaire期のTreasuryは、単に公共財を守るためだけではなく、エコシステムの成長に資本を配分できるかを問われています。PRIMEのような提案は、その問いを非常に具体的にします。

つまり、コミュニティは次のような判断を迫られます。

  • TreasuryはDeFi成長にどの程度の資本を配分すべきか
  • 外部専門チームに成長実行を委ねることをどう評価するか
  • 成果報酬は合理的か、それともインセンティブの歪みを生むか
  • TVL成長をどのように検証し、どのように不正確な帰属を防ぐか
  • Cardanoネイティブチームと外部プロトコルのバランスをどう取るか
  • インセンティブ終了後にも残るDeFi基盤をどう作るか

PRIMEの価値は、採択されるかどうかだけではありません。この提案が出たことで、CardanoコミュニティはDeFi成長に必要な予算規模、実行責任、測定指標、監督構造について、より具体的な議論を始めることができます。


結論:Cardanoは「技術がある」から「資本が集まる」へ進めるか

AlphaGrowthのPRIME案は、Cardano DeFiを次の段階へ進めるための、かなり野心的な実行提案です。

その中心には、Cardanoにはすでに差別化された技術とコミュニティがある、しかしそれを流動性、利用、統合、手数料、持続的なオンチェーン活動へ変換する必要がある、という認識があります。

PRIMEは、12カ月、₳120M、3フェーズ、Phase 3ゲート、成果報酬、独立監督、公開レポートという形で、その変換を制度化しようとしています。

評価すべき点は、現状監査から始めること、大部分の資金をPhase 3ゲートで止めていること、AlphaGrowthが資金を直接保有しないこと、成果報酬の未獲得分をTreasuryへ返す設計があることです。

一方で、慎重に見るべき点も明確です。₳120Mという規模、TVL帰属の難しさ、インセンティブ終了後の定着性、未確定の契約・カストディ構造、OG構成、利益相反管理、Cardanoネイティブプロトコルへの実質的な公平性。これらは、公開フィードバック期間に十分に検証されるべきです。

Cardanoは、Voltaireによって「自分自身を統治するチェーン」になりました。次に問われるのは、その統治が、実際の成長投資をどれだけ賢く設計し、実行し、検証できるかです。

PRIMEは、その問いに対する一つの大きな提案です。

賛成か反対かを急ぐ前に、まずはドラフトを読み、数字を見て、ゲート条件を確認し、TVLの質とTreasuryのリスクを議論すること。それが、Cardanoのオンチェーンガバナンスが成熟していくための次のステップになるはずです。


参考・出典

透明性メモ

本記事は、AlphaGrowthのXスレッドおよび公式ドラフト「CARDANO PRIME — Protocol Readiness, Incentives, and Market Expansion」をもとに、SIPO編集部の視点で要約・解説したものです。現時点のPRIMEは公開フィードバック段階のドラフトであり、契約カウンターパーティ、Constitutional Administrator、カストディアン、プログラム用アドレスなど一部項目は最終確定前です。数値や条件は、公式ドラフト公開時点の記載に基づいています。

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