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Weekly Brief #15|床が上がる — van Rossem 発効と、その上に積まれる標準・研究

2026-07-18SIPO

今週の Cardano は、ひとつの節目を目前に迎えます。長く準備されてきた van Rossem ハードフォークが 7 月 13 日にガバナンス上で批准され、日本時間 7 月 19 日早朝(協定世界時 7 月 18 日 21:44:51)にメインネットで発効します。プロトコルの「床」——ネットワーク全体が従う土台のバージョン——が 10 から 11 へ上がります。その一方で、Cardano Foundation は AI エージェント決済の標準づくりに加わり、研究プログラムは上半期の中間報告を公開しました。Midnight は NIGHT の価格が一週間で約 1 割下げる一方、コミュニティは着実に厚みを増しています。今週動いたのは価格ではなく、プロトコルの土台です。

エグゼクティブ・サマリー

  • 床が上がる:van Rossem が発効目前(協定世界時 7/18・日本時間 7/19 早朝)。プロトコルバージョンが 10 から 11 へ上がります。批准は DReps・SPO・憲法委員会の三者で成立しました。
  • 上に積む:Cardano Foundation が AI 決済標準「x402」に参加。研究プログラム「Vision ’26」は中間報告(草案・4 つの試作)を公開しました。
  • 価格は静か、コミュニティは拡大:Midnight は NIGHT が週次で約 −10%。一方でアンバサダー組織「Nightforce」は今年 2,000 人超が参加、Discord は約 5 万人へ倍増と、足元の裾野は広がっています。
  • 留保:発効は本記事公開時点で「予定」です。スループット等の数値は目標・シミュレーション値であり、実測ではありません。

1. マーケット・パルス

資産7/11 基準7/18 基準前週比
BTC$64,076$63,926−0.2%
ETH$1,793.72$1,837.91+2.5%
ADA$0.16698$0.16558−0.8%
NIGHT$0.03091$0.02778−10.1%

ビットコインと ADA はほぼ横ばい、イーサリアムが小幅高。市場全体としては様子見の一週間でした。目立つのは NIGHT の下げ(約 −10%)です。価格が語ることの少ない週こそ、土台で何が動いたかを見ておく価値があります。今週その土台=プロトコルの床が、実際に一段上がります。

2. プロトコルの床が上がる — van Rossem 発効

何が発効するのか

van Rossem は Cardano の プロトコルバージョン 11(PV11)への更新です。ネットワークは現在 PV10 で稼働しており、本記事公開時点(日本時間 7 月 18 日朝)ではまだ発効していません。発効はエポック境界のタイミングで、協定世界時 7 月 18 日 21:44:51(Slot 192,844,800)——日本時間では 7 月 19 日早朝——に予定されています。ガバナンス上の批准は 7 月 13 日に完了しました。

the hard fork will be enacted at the epoch boundary on July 18, 2026 at 21:44:51 UTC (Slot: 192,844,800). ——Intersect MBO

中身は、派手な新機能というより土台の更新です。既存プリミティブ(スマートコントラクトが使う基本演算)のコストモデルの調整と、ハードフォークによって新しく有効になるプリミティブの設定が含まれます。開発者にとっては、これまで使えなかった土台の部品が解放され、実行コストの前提が変わる、という更新です。

なぜ SPO 視点で重要か

ハードフォークは、全ノードが同じ床に一斉に揃う作業です。バージョンが割れれば分裂しますが、そうならずに揃うのは、事前の合意形成が機能しているからにほかなりません。今回の批准は、DReps が 77.63%、SPO が 52.7% の賛成で、いずれも必要なしきい値(DReps 60% / SPO 51%)を超え、憲法委員会も賛成多数で成立しました。分散した三者の意思決定が、実際にプロトコルを前へ動かした——その手続きそのものが、Cardano のガバナンスが「飾り」ではないことの証拠です。

前号(#14)で私たちは「van Rossem — 発効の床はまだ動いていない」と書きました。その床が、今まさに動きます。

3. 床の上に積まれる層 — 標準と研究

Cardano Foundation が AI 決済標準「x402」に参加

7 月 14 日、Linux Foundation のもとで x402 Foundation が正式に発足し、Cardano Foundation が Associate Member(準会員)として名を連ねました。x402 は、HTTP ネイティブの決済標準です。ウェブの「支払いが必要」を示す HTTP 402 ステータスに由来し、AI エージェント・API・アプリケーションが HTTP のやり取りの中で直接、支払いを送受信できるようにする——という構想です。

これは「Cardano で決済ができる」という話ではなく、AI エージェント経済の決済レールという次の市場に、中立的な標準団体を通じて席を確保したという話です。特定チェーンの都合ではなく業界横断の標準側に立つ姿勢は、床(プロトコル)を固めた上で、その上のレイヤーへ布石を打つ動きとして読めます。

研究プログラム「Vision ’26」中間報告(草案)

IOG は 2026 年上半期の研究プログラムの中間報告を、草案(コミュニティフィードバックは 7 月 30 日まで)として公開しました。半年で 4 つの試作が形になっています:MEV/メンプール分割の評価、L1 向けのゼロ知識証明検証インフラ(Groth16 から BLS12-381 への変換とコスト見積り)、信頼を前提としないマルチパーティ・アトミックスワップ、そして軽量クライアント「Cavefish」です。プログラム全体は 15 のイニシアチブを 6 つの技術ワークパッケージに整理しており、ガバナンス記述言語(DSL)は計画を前倒しで進んでいます。

スケーラビリティのワークパッケージには Leios が含まれます。公開テストネット「Musashi Dojo」は 6 月 23 日に稼働しており、今週も開発が前進しました。7 月 14 日のコンセンサスチーム更新では、テストネットの安定化、プロトタイプの新リリース、そして証明(certification)のレートを約 2 倍に引き上げる変更のレビューが報告されています。ただし「1,000 TPS 級」はシミュレーション・目標値であって、メインネットの実測ではありません。Leios は今週始まったものではなく、継続的に前進しているプロジェクトです。

4. Midnight ウォッチ — 静かな配布フェーズ

価格は一週間で約 1 割下げ

NIGHT は週次で約 −10%。市場の短期的な熱は、この一週間で明確に引きました。配布・上場が一巡した後の、需給が落ち着く局面と見るのが素直です。

コミュニティは静かに厚くなっている

価格とは対照的に、人の数字は伸びています。7 月 16 日の公式ブログ「The rise of Nightforce leaders」によれば、アンバサダー組織「Nightforce」には今年に入って 2,000 人超が参加し、Discord コミュニティは年初から倍増して約 5 万人に達したとされます。ビルダー向けの施策も続いており、MLH 主催のバーチャル・ハッカソンが 7 月 17〜19 日に開催、次いで 8 月 7〜8 日にはブエノスアイレスでの対面ハッカソンが予定されています。取引所側でも、OKX が欧州経済領域(EEA)向けの「X Drops」プログラムに NIGHT を追加しました。

読み筋

Midnight で今後見るべき重要なシグナルは、価格ではなく利用です。昨年 12 月の Glacier Drop で 35 億 NIGHT 超が「請求(claimed)」され(17 万を超えるウォレットが対象)、トークンは広く配られました。人(コミュニティ)と場(ハッカソン・取引所)は整いつつあります。次の分水嶺は、配られたトークンが実際に「使われる」段階に入るかどうか——ここが、話題としての Midnight と経済圏としての Midnight を分けます。

5. リスク・ディメンション

次元今週の状態残る確認点
技術van Rossem 発効直前。生成者側の準備は広く整ったと報告発効後の安定稼働・想定外の互換性問題の有無
規制・標準x402 に Associate 参加。標準団体を通じ決済レールに関与標準の実採用がどこまで進むか
市場BTC・ADA ほぼ横ばい、NIGHT −10%発効が価格の触媒になるか、材料出尽くしか
ガバナンス批准しきい値を超えて成立。CC 選挙・Intersect 予算投票が進行中各投票の最終結果と予算配分
配布(Midnight)NIGHT 配布・償還フェーズが継続利用データの公表・実需の立ち上がり

6. 来週の注目

  1. van Rossem 発効の確認 — 発効後のメインネットが PV11 で安定して稼働するか。
  2. Leios の進捗 — 公開テストネットでのスループット検証の続報。
  3. ガバナンス — 憲法委員会選挙、Intersect の予算(トレジャリー引出)提案の投票結果。
  4. x402 の具体化 — Cardano を含む参加団体の実装・採用の動き。
  5. Midnight — 配布後の利用データ、ハッカソン(7/17〜19 のオンライン、8/7〜8 のブエノスアイレス)から生まれる実装。

まとめ

今週の Cardano は、価格ではなく土台で動きました。van Rossem が床を 10 から 11 へ上げ、その上に x402(標準)と Vision ’26(研究)という層が積まれていきます。前号で「まだ動いていない」と書いた床が、今動く——そして、その上に何を積むかが次の問いです。Midnight は静かな配布期にあります。トークンは配られました。次に見るべきは、それが「使われるか」です。

参考・出典

  • Intersect MBO — Weekly Update #120(2026-07-17・van Rossem 発効時刻と批准票):https://www.intersectmbo.org/news/intersect-weekly-update-120-july-17-2026
  • Intersect MBO — Cardano upgrade: van Rossem Hard Fork:https://intersectmbo.org/news/cardano-upgrade-van-rossem-hard-fork
  • Cardano Consensus Team Update(2026-07-14・Leios の進捗):https://updates.cardano.intersectmbo.org/2026-07-14-consensus/
  • x402(HTTP ネイティブ決済標準):https://x402.org/
  • IOG — Cardano Vision 2026 work program mid-year report(草案・フィードバック 7/30 まで):https://forum.cardano.org/t/ior-cardano-vision-work-program-2026-mid-year-report-draft/155740
  • IOG — Cardano Vision 2026(研究プログラム):https://www.iog.io/news/cardano-vision-2026-the-research-program-securing-cardano
  • Cardano Foundation — BLS12-381 サンプル実装(リポジトリ):https://github.com/cardano-foundation/bls
  • Midnight — The rise of Nightforce leaders(2026-07-16):https://midnight.network/blog/the-rise-of-nightforce-leaders
  • Midnight — Hackathon(MLH 7/17〜19・Buenos Aires 8/7〜8):https://midnight.network/hackathon
  • Midnight — NIGHT トークン launch & redemption ガイド:https://midnight.network/blog/guide-to-the-night-token-launch-and-redemption
  • オンチェーン数値:Koios(https://api.koios.rest)/ Cardano DeFi TVL:DefiLlama(https://defillama.com/chain/Cardano)
  • 価格:CoinGecko(https://www.coingecko.com/)

透明性メモ

価格は各日の定点スナップショット(協定世界時基準)で、CoinGecko と照合しています。オンチェーンの数値は Koios / DefiLlama の公開 API に基づきます。van Rossem の発効は本記事公開時点で「予定」であり、発効後にあらためて確認します。スループット(TPS)等の数値は目標・シミュレーション値であって、メインネットの実測ではありません。

※本記事は情報提供を目的とし、暗号資産の購入・売却・保有を推奨するものではありません。