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Cardano PRIME、資金を出すアプリ全件に CIP-113 を要求

2026-10-02SIPO

Cardano の DeFi に資金を出すプログラム Cardano PRIME は日本時間 9 月 30 日朝、「PRIME が資金を出すアプリは、すべて CIP-113 を組み込んで出す」と公式 X で表明しました。プログラマブルトークンの規格 CIP-113 が改善提案のリポジトリに統合されてから、約 6 時間半後のことです。

規格が文書として整ったことと、実際のアプリがそれを使うことの間には、通常は長い時間差があります。PRIME の表明は、資金の出し手がその時間差を縮めにいく動きで、Cardano の DeFi が機関の資産を受け入れられるかという論点に直接つながります。この記事では、PRIME が何を求め、なぜ全件に求めるのかを、ウォレットと DEX の対応状況とあわせて整理します。

規格の中身と、マージで何が決まったかは 9 月 30 日の Signal と 10 月 1 日の解説記事で扱っています。

PRIME が表明した「全件で CIP-113」

PRIME は一連の投稿の冒頭で、次のように書いています。

Every app PRIME funds will ship CIP-113.

— Cardano PRIME 公式 X(2026 年 9 月 30 日)

あわせて CIP-113 を「Cardano のネイティブトークンに、UTxO モデルを離れずにアカウント型の管理機能を加えるトークン規格」と 1 行で説明しています。アカウント型の管理機能とは、発行者が移転の条件を設定したり、特定の条件で送金を止めたりする仕組みのことです。規制に対応したステーブルコインやトークン化された証券が求める機能で、通常のネイティブトークンだけでは実現しにくい部分でした。

規格そのものは、9 月 30 日 1 時 58 分(日本時間)に CIPs リポジトリへ統合されました。10 月 2 日時点でも CIP-113 本文のステータスは Proposed のままで、Active(実運用の段階)への移行には、テストネットとメインネットでの発行や、広く使われるウォレットでの残高表示・送金などの条件が残っています。

全件に求めるのは、対応を一度で済ませるため

PRIME は、全件に求める理由についても説明しています。

A shared standard means wallets, custodians and venues integrate it once – and every grantee benefits from that integration, instead of each app negotiating its own bespoke version.

— Cardano PRIME 公式 X(2026 年 9 月 30 日)

共通の規格があれば、ウォレット、カストディ(資産の保管業者)、取引の場はそれを一度だけ組み込めばよく、その成果を支援先のすべてが受け取れる、という趣旨です。アプリごとに独自の仕組みを作れば、ウォレットや保管業者はアプリの数だけ個別対応を迫られ、結局どこも対応しない、ということになりかねません。PRIME はこれを「That’s what compounds(それが積み上がる)」と表現しています。

PRIME はさらに、同じ週の保管まわりのニュースとの関係にも触れています。Fireblocks のような保管の基盤が対応したいのは、発行者ごとの特例より標準的なトークンであり、CIP-113 はその対応を大きな規模で可能にする規格だ、という説明です。Fireblocks で Cardano のネイティブトークンを保管・送付できるようになる動きは、9 月 25 日の記事でお伝えしました。

ウォレットと DEX は、どこまで来ているか

規格に対応する側の動きも出ています。

Minswap は 10 月 1 日未明、公式 X で「Minswap の CIP-113 対応コントラクトは現在試験中で、まもなく稼働する」と明かしました。試験中という段階で、対応する資産の範囲や稼働日はまだ示されていません。

ウォレットでは、Gero Wallet が先行しています。GitHub 上の変更(PR #977、9 月 6 日に統合)は、CIP-113 のトークンを残高に表示する機能を加えたものです。ただし説明文によると、送金は規格の標準化を進めている最中のため、当面は無効にされています。Gero は 9 月 30 日、CIP-113 をめぐる X 上のやり取りの中で「Gero Wallet はすでに対応している」と書いていますが、対応の中身は「見える」段階で、「送れる」段階にはまだ届いていません。

残高を表示する、送金を組み立てる、DEX のプールに入れる、と段階が分かれていることは、PRIME の「全件で CIP-113」がすぐに使える状態を意味しないことを示しています。支援先が CIP-113 で作っても、利用者の手元のウォレットが送金に対応するまでは、読者が触れられる範囲は限られます。

これから申請するチームへの意味

PRIME は同じ 9 月 30 日、資金提供の募集(RFP)の締切を 2 週間延ばし、米東部時間 10 月 14 日 23 時 59 分(日本時間 15 日 12 時 59 分)としました。利回り付きのステーブルコイン、トークンのローンチパッド、オラクル、オンチェーン保険などの分野で、特に申請を求めています。延長の詳細は 10 月 1 日の記事にまとめています。

これから申請するチームにとって、CIP-113 への対応は、資金を受けるための前提条件の 1 つになったと読めます。特にステーブルコインのように発行者の管理機能が欠かせない分野では、規格に沿った設計を最初から組み込むことが、ウォレットや保管業者に扱ってもらえるかどうかを左右します。

次に確認したいのは、CIPs リポジトリの CIP-0113 本文に記された Status が Proposed から Active に変わる時点と、そこに並ぶ実装者(Implementors)の欄が埋まるかどうかです。10 月 2 日時点で、この欄は空のままです。あわせて、Minswap が試験中としているコントラクトの稼働告知と、Gero Wallet の送金対応が、規格が「書かれたもの」から「使われるもの」に移る目安になります。

ことば

  • CIP-113 — Cardano のプログラマブルトークンの規格案。2023 年 1 月に提案され、今年 9 月に CIPs リポジトリへ統合されました。移転のたびにスクリプトの検証を通す仕組みで、発行者の管理機能を実現します。
  • Cardano PRIME — Cardano の DeFi を育てるため、分野を示して開発チームを募り資金を出すプログラム。支援の条件として規格を指定したことで、資金の出し手が技術の方向づけに踏み込んだ形です。
  • カストディ — 顧客の暗号資産を預かって保管する業務や業者。機関投資家の多くは自分で鍵を持たず保管業者を通すため、保管業者が扱える規格かどうかが参入の入口になります。

一次ソース / 関連リンク