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Cardano の CIP 新提案6件、ノードの外に緊急連絡網の案

2026-10-04SIPO

Cardano 公式アカウントは日本時間 10 月 4 日未明、改善提案 (CIP) の週次スナップショットを X に投稿し、今週の新提案が 6 件あったこと、そして 2023 年 1 月に起草されたプログラマブルトークンの規格 CIP-113 がリポジトリへの統合を終えたことを伝えました。6 件のうち 2 件は、ノードの外側に SPO や委任者への緊急連絡網を作る構想で、「チェーンが止まったときにどう連絡を届けるか」という、これまで規格の外に置かれてきた問題を正面から扱っています。

スナップショットをまとめた CIP エディターの Robert Phair 氏 (COSDpool) の整理を受けて、Cardano 公式は今週のテーマを「より壊れにくく、より観測しやすく、より信頼しやすい Cardano」と表現しました。ここでは 6 件の提案を GitHub のプルリクエスト本文で確かめ、ステークプール運営者や ADA 保有者にとって何が変わりうるのかを順に見ていきます。

今週の 6 件と、レビュー中・完了の 2 件

投稿に並んだ新提案は次の 6 件です。いずれも番号は仮の割り当て (候補) で、プルリクエストはまだ統合されていません。

  • CPS-0038 Trustworthy Off-chain Message Dissemination — チェーンの外で、信頼できるメッセージを配る仕組みが欠けているという問題提起
  • CIP-0201 Decentralised Pub/Sub Message Dissemination — 上の問題に対する解決案となる配信プロトコル
  • CIP-0202 Node Observability Snapshot Protocol — 各ノードの稼働状態を、実装によらない共通の形式で外から確認できるようにする提案
  • CIP-0203 Block Producer Identifier Registry — どのノード実装がブロックを作ったかを、ブロックヘッダーの番号で示す登録簿
  • CIP-0204 Holder Answers on Governance Actions — ADA 保有者が、ガバナンスアクションに賛成・反対・棄権を署名つきで表明する記録の形式
  • CIP-0205 Remove scope check in Plutus Core — スクリプト検証の手順から「スコープ検査」を外す提案

このほか、Leios (Cardano の処理能力を引き上げる次期合意方式) の上で急ぎの取引に追加手数料を払えるようにする CIP-0200 が「Active Review」として挙がり、投稿は専門家のあいだで「理想的な性能と費用効率」と「現実の経済性や事業上の要件」の緊張関係が議論されていると伝えています。完了の欄には CIP-113 が入りました。CIP-113 は日本時間 9 月 30 日 1 時 58 分に統合され、本文のステータスは Proposed (提案済み) です。規格の中身は 10 月 1 日の解説記事、資金の出し手の反応は 10 月 2 日の Signal で扱いました。

CIP-0202 と CIP-0203 は Deep Dive「CIP-202と203で読むCardanoの多様性」で、CIP-0203 の番号を実際のブロックで確かめた結果は 今朝の Signal で、CIP-0204 は 「CIP-204で読むADA保有者の回答とDRepの票」で詳しく扱っています。この記事では、まだ取り上げていない残りの 3 件を中心に見ます。

CPS-0038 と CIP-0201: チェーンの外に置く緊急連絡網

CPS-0038 は、IOHK 所属の研究者を含む 6 人の連名で提出された問題提起です。冒頭で、Cardano の参加者はチェーンの外で時間に追われるメッセージをやり取りする必要がある、と書いています。例として挙がるのは 4 つの場面です。

  • プロトコル開発チームが、ステークプール運営者に障害を知らせる
  • ステークプールが、引退や運用の変更を委任者に知らせる
  • ガバナンスの組織や DRep (委任代表者) が、提案・投票期限・投票方針を知らせる
  • dApp が、ポジションやプロトコルの変更を利用者に知らせる

こうした連絡は、いまはメーリングリストやチャット、各サービスの通知基盤を通って届いています。CPS-0038 が問題にしているのは、発信者が本物であること・内容が書き換えられていないこと・狙った相手に届かないよう妨害されにくいこと、の 3 つを Cardano の ID と結びつけて満たす共通の規格がない点です。文書は「沈黙からは、メッセージが握りつぶされたのか、そもそも送られていないのかを受け手は判断できない」とも書いています。

もう一つの論点が、チェーンが止まったときの扱いです。緊急の連絡網が必要になるのは、まさに Cardano が乱れている場面かもしれません。参加者の一覧や乱数をチェーンから読む仕組みだと、チェーンが止まればその入力も凍り、分岐すれば参加者どうしで食い違います。CPS-0038 は、解決案がこの状況で何を続けられ、何ができなくなるのかを明示するよう求めています。

その解決案として出されたのが CIP-0201 です。配信用のノードはチェーン上に登録し、返金可能な保証金を預けます。チェーンのエポックとは別の「配信エポック」ごとに、公開された乱数でどのノード同士がつながってよいかが決まり、各ノードはその候補の中から接続相手を選びます。メッセージの中身はチェーンに載せません。保証金を求めるのは、偽の ID を大量に作って特定の受け手の周りを囲み、連絡を遮断する攻撃 (エクリプス攻撃) に費用をかけさせるためです。

提案が主な評価場面に置いているのは、数千のステークプール運営者への緊急警報で、比較は 4,000 ノードと 20,000 ノードの規模で行われています。配信ノードを運営するのに、ステークプール運営者や DRep である必要はないとも明記されています。一方で、公開乱数の出どころや配備時の各種パラメータは未決で、既存の CIP-0137 との関係も「未解決」として、その著者からの意見を求めています。

CIP-0205: 検証の手間を 3% 削る提案

CIP-0205 は IOHK の Jacco Krijnen 氏が提出した、Plutus (Cardano のスマートコントラクト言語) の検証手順に関する提案です。いまの仕様では、スクリプトを実行する前に「未定義の変数を含まないか」を確かめるスコープ検査が義務づけられています。

提案は、この検査を外すよう求めています。引用されているベンチマークでは、スコープ検査はスクリプト準備時間の約 20%、取引の検証時間全体の約 3% を占めています。検査を外せば、スクリプト実行ごとの仕事が減り、将来の手数料パラメータの見直しにも余地が生まれる、という説明です。

検査を外して困らないのかという点について、提案は 3 つの理由を挙げます。正しく書かれたスクリプトの動作は変わらないこと。Haskell ノードの実装も、Rust で書かれた Amaru も、検査に頼らず未定義の変数を扱えること。そして Aiken・Plinth・Plutarch などの開発言語は、型の検査を通じて同じことをチェーンの外で確かめていることです。いまのスコープ検査には一部の不正な形を見逃す不具合があることも、別の課題として記されています。

レビューで意見を求めているのは、切り替えの方法です。Plutus の言語バージョンを上げて新しいスクリプトだけに適用するのか、プロトコルバージョンの更新で一斉に適用するのか。後者の場合は、すでにデプロイ済みのスクリプトの一部が検証を通るようになりますが、既存のスクリプトが動かなくなることはない、と提案は説明しています。

次に見るもの

CIP のプルリクエストは、CIP エディターが隔週で開く公開会議 (Discord) で進み具合が確認されます。直近の第 144 回は 9 月 29 日でした。同じ間隔なら次回は 10 月 13 日 (火) の見込みで、会議の後に更新される CIPs リポジトリのトップ README と、各プルリクエスト (#1270・#1271・#1278) のレビュー欄で、番号の確定や修正の要求が出ているかを確かめられます。

SIPO としては、CPS-0038 が最初の利用場面に挙げた「ステークプール運営者への障害の連絡」に注目しています。運営者が実際に受け取る側になる仕組みなので、配信ノードの保証金や接続数の設定が、運営者の負担としてどの水準に落ち着くかは、レビューの過程で確かめておきたい点です。

ことば

  • CPS と CIP — CPS は「解くべき問題」を書く文書、CIP は「その解き方」を書く文書です。今週の CPS-0038 と CIP-0201 のように、問題提起と解決案が同時に出されることもあります。
  • エクリプス攻撃 — 攻撃者が、狙った相手の接続先をすべて自分の管理するノードで固め、その相手に届く情報を選別する攻撃です。証拠を残さずに連絡を握りつぶせるため、緊急連絡網の設計で最初に検討されます。
  • スコープ検査 — Plutus のスクリプトが、どこにも定義されていない変数を含んでいないかを実行前に確かめる手順です。CIP-0205 によれば、もともと意図して設けたものではなく、過去の実装の都合で残った手順です。

一次ソース / 関連リンク