Intersectが毎週公開しているコミュニティ向けの週次アップデート、その第117号(2026年6月26日付)が公開されました。今週は、Cardanoの次期アップグレードである「van Rossem」ハードフォークが批准に向けて大きく前進し、憲法委員会(Constitutional Committee)選挙の投票が6月28日に始まること、そしてLeiosの公開テストネット「Musashi Dojo」がローンチされたことが主なトピックです。あわせて、新設されたDRep月次コール、Cardano Foundationの新しい取り組み、SecondFiウォレットのセキュリティインシデントへの言及など、複数の動きが報告されています。この記事では、SIPOの視点を交えながら、今週のポイントを整理して解説します。
出典:Intersect公式「Intersect Weekly Update #117」(2026年6月26日)
一次ソース:https://intersectmbo.org/news/intersect-weekly-update-117-june-26-2026
van Rossemハードフォーク:DRepの賛成は閾値突破、残るはSPOの投票
今週の最大の焦点は、プロトコルバージョン11へのアップグレードである「van Rossem」ハードフォークの批准プロセスです。Cardanoのハードフォークは、DRep・SPO・憲法委員会(CC)の3者すべての投票が揃って初めて批准(ratification)されます。
Intersectが報告した執筆時点の投票進捗は以下の通りです。
| 投票主体 | 現在の賛成 | 必要閾値 | 状態 |
|---|---|---|---|
| DRep | 62.55% | 60% | 閾値を突破 |
| SPO | 30.95% | 51% | まだ未到達 |
| 憲法委員会(CC) | 1名が投票済み・6名が未投票 | 5名 | 進行中 |
DRepはすでに必要な60%を上回る62.55%の賛成に達しています。一方で、SPOの賛成は30.95%にとどまり、批准に必要な51%にはまだ届いていません。CCは1名が賛成投票を済ませ、残り6名が未投票という状況です。このハードフォーク提案(Hard Fork to Protocol Version 11)のガバナンスアクション自体は、2026年7月18日(Epoch 644)が期限とされています。
ネットワーク側の準備は順調に進んでいます。Intersectによれば、Epoch 639時点でブロック生成の86%がノードバージョン11上で行われており、SPOのアップグレード適用は強い水準にあります。取引所側の準備状況は、流動性ベースで約77.37%と報告されています。
ハードフォークの準備状況は、投票者が判断材料にできるよう複数のソースで公開されています。SPOの準備状況はPoolTool・Cexplorer・ADAtool、取引所の準備状況はCardanoScan・Cexplorerなどで確認できます。Intersectは、技術的な詳細を知りたい場合はその週のUpgrade Bulletinを、より一般向けの概要はIntersectブログを参照するよう案内しています。
SIPOの見方としては、DRepが閾値を超えた一方でSPOがまだ過半に届いていない、という非対称な進捗が今週のポイントです。残るのはSPOコミュニティの投票参加であり、ブロック生成の86%がすでにv11で行われている事実は、技術的な適用と、ガバナンス上の賛成投票が別の行為であることを示しています。ノードを上げることと、ハードフォークに賛成投票することは、それぞれ独立した意思表示だからです。
Leios「Musashi Dojo」:スケーリング研究が公開テストネットの段階へ
6月23日、Input Output(IOG)はLeiosの公開テストネット「Musashi Dojo(武蔵道場)」のローンチを発表しました。発表は、LeiosのProduct ManagerであるCarlos Lopez de Lara氏を起用したプロモーション素材、Cardanoニュースの新番組「BLOCK//45」のローンチ、そしてmusashi.networkというウェブサイトとともに行われました。
Intersectは、コミュニティに対してドキュメントを確認し、ノードやステークプールを実際に動かしてテストネットに参加すること、そしてIOGのTechnical Community Discord内の「musashi-testnet」チャンネルなど公式チャンネルを通じてフィードバックを報告することを呼びかけています。
Leiosは、CardanoのL1スループットを将来的に引き上げるための大きな設計領域です。SIPOとしては、テストネットの段階で重要なのは派手なTPSの数字そのものではなく、SPO・開発者・レビュアーがどの手順で参加でき、どんな負荷条件でどう振る舞い、失敗ログがどのように次の改善へ戻っていくか、という「検証として機能するか」だと考えています。発表されるだけでなく、実際に触れて再現できる状態になって初めて、テストネットはCardanoの検証資産になります。
憲法委員会(CC)選挙2026:投票は6月28日に開始
Intersectが運営する2026年の憲法委員会選挙は、6月21日 21:45 UTCに登録(応募)が締め切られました。締め切り間際の駆け込み応募もあり、最終的な候補者は10名となりました。
投票フェーズのスケジュールは今週見直され、後ろ倒しされました。これは、直近で登録した候補者のcold credential(コールド資格情報)を検証する時間を確保するためです。この検証プロセスは、投票フェーズに入る前に、すべての候補者の正当性と技術的な能力を担保することを目的としています。
新しいスケジュールでは、投票は2026年6月28日 21:45 UTCに開始されます。それまでの間、DRepやその他のADA保有者は、Hydra Voting(Hydra投票)プラットフォームにログインして候補者に質問することが推奨されています。
SIPOの視点では、投票開始を遅らせてでも候補者のcold credential検証を優先した点が重要です。憲法委員会はCardanoのガバナンスにおいて、提案が憲法に適合しているかを判断する役割を担います。その委員を選ぶ選挙で、手続きの正当性と候補者の技術的裏付けを先に固める判断は、ガバナンスの土台を守る動きだと評価できます。
進行中の主要ガバナンスアクション:閉じた2件と、注目の継続審議
今週、可決・批准されて閉じた主なガバナンスアクションは以下の2件です。
| ガバナンスアクション | 結果 | DRep賛成 / 閾値 | CC(賛-反-棄-未) |
|---|---|---|---|
| Cardano Critical Integrations V2 | Enacted(執行済み) | 69.16% / 67% | 5-0-2-0 |
| 5am.earth Trust Layer Targeting Vision 2030 KPIs | Ratified(批准) | 70.63% / 67% | 7-0-0-0 |
一方、継続審議中(live)のガバナンスアクションも多数あります。Intersectが示したデータ(2026年6月19日 10:00 UTC時点)から、SIPOが注目する主なものを抜粋します。
| 提案 | 期限(Epoch) | DRep賛成 / 閾値 |
|---|---|---|
| Tweag Core Cardano Infrastructure: Treasury Withdrawal 2026–2027 | 7月3日(Epoch 641) | 69.5% / 67% |
| Reduce the committeeMinSize parameter from 7 to 5(パラメータ変更) | 7月8日(Epoch 642) | 44.29% / 75% |
| IO: Hydra | 7月8日(Epoch 642) | 41.91% / 67% |
| Reforming Treasury Governance(Info Action) | 7月13日(Epoch 643) | DRep 2.64% / SPO 0.6% |
| Eternl: Path to Sustainability – v2 | 7月18日(Epoch 644) | 25.74% / 67% |
| Hard Fork to Protocol Version 11(van Rossem) | 7月18日(Epoch 644) | 62.55% / 60%(SPO 30.95% / 51%) |
このうち「Reforming Treasury Governance」はInfo Action(情報提示型のアクション)で、トレジャリーガバナンスのあり方そのものを問う議論です。「committeeMinSize(憲法委員会の最小人数)を7から5へ引き下げる」パラメータ変更案や、IOGによる「IO: Hydra」提案も継続審議中です。これらは、Cardanoが自らの統治構造とインフラ予算をどう設計するかに直結する案件であり、SIPOとしても投票判断の前提として継続的に注視しています。
あわせて、7月23日(Epoch 645)を期限とする多数のトレジャリー引き出し提案も継続審議中です。これには、Wirexによる実世界決済(3,961,538 ADA)、Mithril Protocol(3,810,423 ADA)、TxPipeによる複数のコアツール保守(Dolos / Oura / Pallas / Tx3 / UTxO RPC)、MLabsのコアツール保守、ハードウェアウォレット保守、そしてIntersect自身のガバナンス調整・技術運営(25,400,000 ADA)などが含まれます。
2026予算プロセスとIOG Catalyst:2.06m ADAがトレジャリーに返還
Intersectが運営する2026年のCardano予算プロセスでは、Hydra投票フェーズで必要な「参加ステークの67%」という閾値を満たした11件の提案について、Intersectがトレジャリー引き出し提案を提出しました。投票フェーズの完全な監査済み結果は、Intersect Knowledge Baseで公開されています。オンチェーンのトレジャリー引き出しは2026年6月23日に提出され、ガバナンスアクションの期限は2026年7月23日 21:45 UTC(Epoch 645)とされています。
もう一つの注目点は、スマートコントラクトのキャンセルとトレジャリーへの資金返還です。IOGのプロジェクト「Catalyst 2025 Proposal by Input Output: Advancing Decentralised Community Innovation Funding & Infrastructure」の残りのマイルストーンがキャンセルされ、資金がトレジャリーに返還されました。
この決定は、Catalystの運営がIOGからCardano Foundationへ移管されたことを受けて、IOGとの合意のもとで行われたものです。キャンセルされたマイルストーンにより、2.06m ADAがトレジャリーに戻りました。このキャンセルのトランザクションはCexplorerで確認できます。
SIPOの視点では、完了しなかったマイルストーン分の資金がトレジャリーへ返還される、という挙動そのものが重要です。これは、予算が一括で渡し切りになるのではなく、運営移管などの状況変化に応じて未消化分が公共のプールへ戻る設計が、実際に機能していることを示す具体例だからです。
新設「DRep月次コール」:DReps が一緒に考える場
今週の見どころの一つが、新しいDRepコールの始動です。これは、定例で開催されているSPOコールの成功をモデルに、「DRepにも月に一度集まれる自分たちの場が欲しい」という声を受けて生まれたものです。Tweag.ioとIntersectが共同でホストする初回のコールには、約100m ADAの委任投票力を持つ16名の代表が集まりました。
議論は、現在進行中のガバナンスアクションから、DRepであることの現実的な課題へと広がりました。参加者は、作業負荷、オンチェーンのガバナンスアクションの数、案件によっては専門知識が必要になることといった、自分たちの課題を共有しました。話題はDRepの持続可能性、インセンティブ、投票力の分散にも及んでいます。
繰り返し出てきたテーマは「協働(collaboration)」でした。議論は多くのチャンネルで行われている一方で、DRep同士が経験やリソースを共有したり、報復を恐れずに見解を率直に出し合える機会は少ない、という課題です。このコールは、まさにそうした場を提供することを目指しています。次回以降、毎月最終水曜日の15:00 UTCに開催される予定で、当面はZoomで行われます。
SIPOはCardanoのDRepとしてエコシステムに参加している立場です。規模の大小を問わずDRepが集まり、課題を持ち寄って協働できる定例の場ができたことは、ガバナンス参加者の裾野を広げ、意思決定の質を底上げするうえで前向きな動きだと受け止めています。
Cardano Foundationの新展開:法務プロトコル、ブラジル教育連携、Catalyst新ファンド
Cardano Foundation(CF)は今週、エコシステムの成長とグローバルな関与の領域で複数の取り組みを発表しました。
Legal Context Protocol
6月24日、CFが「Legal Context Protocol」のローンチに、American Arbitration Association、Google、IBM、Circle、Wayfairなどと並んで参画したことが発表されました。これは、AIエージェントが人や組織を代理して取引を行う際に、法的な条件・同意・紛争解決を「発見可能(discoverable)かつ検証可能(verifiable)」にするためのオープン標準です。
SENAI São Pauloとのパートナーシップ
6月25日には、ブラジル最大級の産業教育・技術ネットワークの一つであるSENAI São Pauloとのパートナーシップが発表されました。ブラジル産業全体に向けて、ブロックチェーン教育とエンタープライズ活用を推進する取り組みです。今月行われた最初のワークショップでは、教育者がブロックチェーンの基礎、メタデータ標準、スマートコントラクト、産業ユースケースを学びました。これは、SENAI São Pauloのネットワーク全体でブロックチェーンを教えるために必要なものを構築する、その第一歩とされています。
Project Catalyst の新パイロットファンド
今日付のCardano Forumの投稿では、2026年8月に総額200万ADAのグラントプールを持つ新しいCatalystパイロットファンドが立ち上がることが明らかになりました。このパイロットの主要な目標の一つは、エコシステムのイノベーションを、USDCx、Pyth、Duneといった最近のCardano統合と結びつけることだとされています。
SIPOの視点では、これらはいずれも「Cardanoを単独のチェーンとしてではなく、AIエージェント決済・エンタープライズ・グローバル教育・直近の主要統合と接続するレイヤー」として位置づけ直す動きとして読めます。とくにLegal Context ProtocolにCFがGoogle・IBM・Circleらと並んで名を連ねた点は、AIエージェント経済という文脈でCardanoが標準づくりの側に立とうとしていることを示しています。
SecondFiインシデント:アプリ層とプロトコル層を区別する
今週は、SecondFiウォレットアプリケーションに影響したセキュリティインシデントについても言及がありました。Intersectは、影響を受けた方々への思いを示すとともに、こうしたインシデントが利用者やコミュニティ全体に引き起こす混乱と不安を認識している、と述べています。
そのうえでIntersectは、アプリケーション層のインシデントと、Cardanoプロトコルそのものを区別することが重要だと指摘しています。現時点で得られている情報に基づけば、Cardanoネットワークは正常に稼働を続けており、コンセンサス、台帳の整合性、ブロックチェーンプロトコルに影響する問題は確認されていない、としています。
調査と復旧の取り組みが継続中であることから、最新情報やガイダンスを求めるコミュニティメンバーにとって、信頼できる情報源は、当該アプリケーションとその復旧に責任を負うSecondFi(X: @SecondFiapp)とEMURGO(X: @emurgo_io)であるとされています。あわせて、あらゆるセキュリティインシデントと同様に、フィッシング、偽の復旧サービス、なりすましアカウントに対して引き続き警戒するよう注意喚起がなされています。
SIPOとしても、この区別は重要だと考えます。アプリケーション層の事故とプロトコル層の健全性は別の問題であり、混同すると不必要な不安を招きます。最新情報は必ず公式(SecondFi / EMURGO)の一次発信で確認し、復旧をうたう非公式な連絡には応じないことを推奨します。
来週の予定
- Intersect Insights(Q2ハイライト&フルレポート)— YouTubeおよびIntersectMBOのXアカウントでライブ配信。2026年7月2日(木)13:00 UTC
- Intersect Connect(メンバーとチームの交流イベント・Ask the Boardセッション含む)— Intersect Virtual Hub内。2026年7月2日(木)14:00 UTC
- Monthly SPO call(月次SPOコール)— IOGのTechnical Community Discordチャンネル。2026年7月2日(木)15:00 UTC
- van Rossemハードフォーク — Hard Fork Working Groupは毎週火曜・木曜に開催。批准は目前とされています。
SIPO視点:今週は「批准の最終局面」と「ガバナンス基盤の補強」が同時に進んだ週
今週のIntersect Update #117を一言でまとめると、Cardanoが「次の大きなアップグレードの最終局面」と「ガバナンスの土台づくり」を同時に進めた週でした。
van Rossemハードフォークは、DRepが閾値を超え、ネットワークの86%がすでにv11で稼働するなど、技術・ガバナンスの両面で批准に近づいています。残るのはSPOの投票参加であり、ここが揃えば批准の条件が整います。一方で、憲法委員会選挙が候補者検証を優先して投票開始を後ろ倒しにしたこと、DRep月次コールが新設されたこと、未消化のCatalyst資金がトレジャリーに返還されたことは、いずれも「派手ではないが、ガバナンスの正当性と持続可能性を支える」動きです。
そしてLeiosの公開テストネット「Musashi Dojo」は、Cardanoのスケーリング議論が、スローガンから実験と測定の段階へと一歩降りてきたことを示しています。重要なのは「速くなるはず」という期待ではなく、「どの条件で、どこまで、どのように」検証できるかです。
SIPOは、SPO・DRep・ADA保有者としてCardanoエコシステムに継続参加しています。これらの動きは、いずれもSIPOの運用とガバナンス参加に直接関わるテーマであり、今後も一次ソースを確認しながら、必要な投票と発信を続けていきます。
参考・出典
- Intersect公式「Intersect Weekly Update #117」(2026年6月26日)
https://intersectmbo.org/news/intersect-weekly-update-117-june-26-2026 - Leios公開テストネット「Musashi Dojo」
https://musashi.network - ガバナンス進捗の確認に使えるエクスプローラ:GovTool / Tempo / Cexplorer / AdaStat / CardanoScan / CGov / Civitas
- SPO・取引所の準備状況:PoolTool / Cexplorer / ADAtool / CardanoScan
透明性メモ
本記事は、Intersect公式の「Intersect Weekly Update #117」(2026年6月26日)をもとに、SIPO編集部の視点で要約・解説したものです。投票進捗などの数値は、Intersectが提示した執筆時点・各データ取得時点(継続審議中のガバナンスアクション一覧は2026年6月19日 10:00 UTC時点)の記載に基づいており、現在の数値は各エクスプローラで変動している可能性があります。投票判断は、必ず最新の一次情報をご確認ください。
SIPOはCardanoのSPO(ステークプールオペレーター)およびDRepとして、van Rossemハードフォークを含む各ガバナンスアクションの投票に関与し得る立場にあります。本記事は投資助言ではなく、特定の投票・参加を指示するものでもありません。














