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Plutus のメモリ上限を上げることが、なぜ SPO の話になるのか——25% 引き上げの残り半分と、DRep 賛成 32.94%

2026-08-16SIPO

Cardano の公式アカウントが 8 月 16 日、「Plutus の実行制限に対するパラメータ更新ガバナンスアクションは、SPO にどんな利益をもたらすのか」という問いを立てました。この提案はこれまで、束ねられたもう半分である minPoolCost の引き下げとして語られてきました。実行上限のほうが SPO の収入とどうつながるのか、公式が説明の側に回った形です。SIPO はこの提案を 8 月 9 日と 14 日にも扱っています。同じものを追い続けているのは、未投票が可決計算の分母に入る設計では、票を投じないことが中立にならないからです。提案書の一次情報と、取得時点の投票状況を合わせて確認します。

初期報: Plutus実行制限の更新がSPOにもたらす利益

■ 公式が引いたのは、手数料の話でした

投稿は、以前の Roundtable Talk での Pi Lanningham 氏の説明として、次の一文を引いています。

more network usage and bigger transactions mean higher fees, and that’s what keeps SPOs sustainable long term.(ネットワークの利用が増え、トランザクションが大きくなれば手数料は上がる。それが SPO を長期的に持続させるものだ)

短い一文ですが、SPO の収入構造をそのまま言い換えたものです。プールの取り分は、準備金から出るブロック報酬と、そのブロックに入ったトランザクションの手数料に分かれます。今回の提案書は、ブロック 1 つあたりの報酬が Shelley 開始時の約 1,800 ada から約 300 ada まで下がってきたと書いています。準備金は減り続けるので、時間とともに手数料側の比重が上がります。

実行上限を上げることは、1 ブロックに詰め込めるスクリプトの仕事量を増やすことです。使われれば手数料が増える、というのが引用された説明の筋になります。ここで注意しておきたいのは、上限を上げること自体が手数料を生むわけではない点です。増えるのは容量であって、利用ではありません。

■ 上限は 17,500,000 へ——2 回に分けたのは、1 回で上げられる幅が決まっているからです

変更の中身は、提案書に数値で書かれています。トランザクション 1 件あたりのメモリ上限(maxTxExecutionUnits[memory])と、ブロック 1 つあたりのメモリ上限(maxBlockExecutionUnits[memory])の 2 つです。

  • 出発点: トランザクション 14,000,000 / ブロック 62,000,000
  • Part 1(可決済み): トランザクション 16,500,000(+2,500,000・+17.9%)/ ブロック 72,000,000(+10,000,000・+16.1%)
  • Part 2(今回): トランザクション 17,500,000(+1,000,000・+6.1%)/ ブロック 77,500,000(+5,500,000・+7.6%)
  • 累計: トランザクション +3,500,000(+25.0%)/ ブロック +15,500,000(+25.0%)

2 段に分かれているのは、慎重に進めたからではありません。1 件のガバナンスアクションで引き上げられる幅がガードレールで決まっており、トランザクション側は 2,500,000 単位、ブロック側は 10,000,000 単位が 1 エポックあたりの上限だからです。Part 1 はその枠いっぱいまで動かし、それでも目標の 25% には届きませんでした。今回はその残りを埋める提案です。

変わるのはメモリだけです。実行ステップ側の上限は、Koios で確認したエポック 649 時点の値でトランザクション 10,000,000,000、ブロック 20,000,000,000 のまま据え置かれます。提案書は、最大サイズのトランザクションが 1 ブロックに 4 件入る、という容量も維持されるとしています。目標値そのものは 2026 年 7 月に Preview テストネットで動かされており、性能面では Praos のタイミング保証が引き上げ後も維持されると評価されています。

■ 束ねられたもう半分は、固定費の下限です

同じアクションには、プール運営の固定手数料の下限である minPoolCost を 170,000,000 lovelace(170 ada)から 75,000,000 lovelace(75 ada)へ、約 55.9% 下げる変更が含まれます。現行値が 170 ada であることは、Koios のエポック 649 時点のプロトコルパラメータで確認できます。

提案書が示している数字のうち、SPO に直接効くのは報酬に占める割合です。PCP-001 の付録データ(エポック 415・1 ブロックあたり総報酬 約 300 ada 前提)では、1 エポックに 1 ブロックしか作れないプールにとって、170 ada は総報酬の約 57% にあたります。75 ada なら約 25% です。委任する側から見た目減りは、2023 年の引き下げ直後に約 28.3% まで下がったあと約 52.8% まで戻っており、このままではエポック 758(2028 年 2 月)ごろに 100% に達する、というのが提案書の見立てです。

背景として、IO Research の更新版インセンティブレポートが以前の評価を反転させたことも挙げられています。高い固定費の下限は Sybil 的なステーク分割を抑えるのではなく、むしろ大規模な運営者に有利に働く、という評価です。構造的な解は固定額ではなく比例的な minPoolMargin(CIP-0023)に置かれていて、今回の 75 ada はその手前の暫定的な一歩と位置づけられています。

■ 束ねたことへの異論も、記録に残っています

2 つの独立した変更を 1 つのアクションにまとめたことについては、憲法委員会の合憲性判断の記録に議論が残っています。Ace Alliance は、片方に賛成して片方に反対したい DRep や SPO が票を分けられない、という反論には力があると認めたうえで、憲法は提案の構成方法を規定していないとして退けています。

Cardano Japan Council も賛成していますが、内部の票は合憲 3・違憲 1 に割れました。違憲とした委員は、minPoolCost はプール運営の経済的コストに沿って設定されるべきとする MPC-03 に照らして、75 ada という水準がセキュリティと競争力の観点からは説明されている一方、運営コストに基づく設定であることの確認がない、と述べています。賛成の記録の中に反対の理由が残っている形です。

■ 2 日で 10 ポイント動きました——取得時点の投票状況

投票状況を AdaStat から取得し、Koios の集計と一致することを確認しました。2026 年 8 月 16 日 20 時 19 分(日本時間)時点です。

  • DRep 賛成(可決基準・閾値 67%): 32.94%(72 票)
  • 投票済みの反対: 0.89%(8 票)
  • AlwaysNoConfidence: 3.93%
  • 未投票: 62.24%
  • 棄権: 9 票(可決計算の分母から除外)
  • 憲法委員会: 賛成 2・反対 0・未投票 5(委員 7・定足数 3 分の 2)

ここでの賛成率は、棄権を除き未投票を含む分母に対する割合です。gov.tools の画面で「No」として表示されるのは、投票済みの反対と AlwaysNoConfidence を合わせた 4.82% にあたります。未投票の 62.24% は反対ではありません。ただし閾値の計算では賛成側に立たないため、結果としては不成立の方向に働きます。

2 日前、8 月 14 日 9 時 21 分時点で記録した数字と並べると、変化は次のようになります。

  • 賛成: 22.8%(65 票)→ 32.94%(72 票)。10.14 ポイント、7 票の増加
  • 未投票: 73.19% → 62.24%。10.95 ポイントの縮小

票数の増加は 7 票ですが、比率は 10 ポイント動いています。投票権の大きい DRep が入ると、票数の見た目より比率が大きく動く仕組みです。逆に言えば、残る 62.24% も同じ理由で短期間に動きうる部分です。

SPO 側は、取得時点で実際に票を投じているプールが賛成 25・反対 2・棄権 0 でした(AdaStat と Koios で票数が一致)。「常に棄権」が既定として割り当てられている分は出典間で集計方法が揃わなかったため、ここでは投じられた票数だけを示します。2 日前は 17 票でしたので、10 票増えたことになります。閾値はアクティブな SPO 投票権の 51% です。取得時点のエポックは 649、期限はエポック 653 です。

■ ここから見ておきたいこと

  • DRep 賛成率の傾き — 2 日で 10.14 ポイント動きました。閾値は 67%、残りは 34 ポイント強、期限はエポック 653 です
  • SPO 側の票の増え方 — 投じられた票は 27 です。要件はアクティブな SPO 投票権の 51% で、票を投じないプールはこの計算に入りません
  • 束ねの扱い — Plutus の上限には賛成でも minPoolCost には反対、あるいはその逆という投票者が、どちらに寄せるか
  • 可決したあとの利用 — 手数料が SPO の収入として効いてくるのは、上限が上がった時点ではなく、その容量が実際に使われはじめた時点です

SIPO 自身がこの提案をどう判断したかは、『minPoolCost を 75 ADA へ引き下げ/Plutus メモリ上限 (Part 2)』に賛成(Yes)で公開しています。投票の数値は取得時点のものです。大口の 1 票で比率は数ポイント動きます。判断の前には、提案ページで最新の状態を確認してください。


一次ソース / 関連リンク