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渡し方が、先に決まる──1億2,000万ADAが可決ラインを越え、助成金が「実績払い」になった5日間:エポックな日々648

2026-08-14SIPO

エポック648(2026年8月8日〜8月13日)

序章:通すかどうかより、どう渡すか

国庫から資金を出すという決定は、二つに分かれています。出すか出さないか、という決定がひとつ。そして、出すと決めたあとに、どういう順番で、何を確かめながら渡すか、という決定がもうひとつです。

前者は投票で決まります。後者は、投票する前に条件として書いてあるか、書いてないかで決まります。

エポック648は、その後者が前に出てきた5日間でした。

1億2,000万ADAを国庫から引き出す提案が、5日間で賛成を大きく伸ばし、エポックの境界で批准されました。同じ期間に、その提案の提案者自身が、受け取ったあとの解除条件を自分から後ろ倒しにすると表明しています。別の資金枠では、助成金の支払いを三段に分け、後ろの二段を「実際に使われたかどうか」に連動させる設計が、応募要件として公開されました。プールの報酬に上限を、可変手数料に下限を置く仕組みが、台帳のコードに入ったという報告も出ています。

決めるのは投票ですが、決まったあとに何が起きるかは、条件の書き方が決めます。エポック648に並んだのは、その条件の側の話ばかりでした。

前回のエポック647を、SIPOは「預け先を、選び直す」の5日間として記録しました。創業に関わった企業がDRepを降り、コア開発の担い手が移り、外のチェーンから初めて線がつながった回です。託す先が動いた、という話でした。

エポック648で起きたのは、その次の問いです。託す先を選んだあと、何をどう渡すのか。渡し方が先に決まっていれば、託した側はあとから確かめられます。決まっていなければ、渡したあとは相手の判断に委ねるしかありません。

軸は「渡し方が、先に決まる」です。

第1章:42.73%から80.1%へ──1億2,000万ADAが、境界で批准された

エポック647の記事の終章で、SIPOは7つの確認点を挙げました。その一番目が「Cardano PRIMEの決着」です。答えが出ました。

Withdraw 120,000,000 ada for AlphaGrowth’s Cardano PRIME(Action ID: gov_action122wue2k65qq8gmpz795z2axt8apka6ay6xt3pwg8jxj5yfkujmtsqvlfpu7)は、エポック648の終了境界で批准(ratified)されました。財務引出額は120,000,000 ADA。エポック642に提出され、期限はエポック649。期限のエポックに入る、その境界での決着です。

数字の動き方が、この5日間で最も大きな出来事でした。

取得時点DRep賛成投票済み反対未投票
7月29日33.23%
8月8日朝(エポック647記事)42.73%11.0%42.71%
8月12日 1時19分 JST78.65%7.62%
8月14日 6時56分 JST(本稿の取得時点)80.10%7.67%8.50%

2週間で33.23%から80.10%へ。閾値は67%です。

8月14日6時56分(JST)の取得時点で、内訳はこうなっています。批准の分母は4,592,342,999 ADA。賛成が3,678,476,395 ADAで80.10%、投票済みの反対が352,139,395 ADAで7.67%、No Confidenceが171,179,298 ADAで3.73%、そして未投票が390,547,910 ADAで8.50%です。棄権(Abstain)の701,069,711 ADAは、Cardanoのガバナンスの定義どおり批准の分母から外れています。票数では、DRepの賛成154票・反対39票・棄権12票。憲法委員会は7議席のうち6議席が賛成、反対0、未投票1でした。

ここで一点、数字の読み方を確かめておきます。100%から賛成を引いた残りを「反対」と読むことはできません。 分母には未投票が含まれているからです。この提案で明示的に反対したのは7.67%であり、残りの差分は「まだ投票していない投票力」と「No Confidenceを常設で選んでいる投票力」です。SIPOが記事で票の内訳を四つに分けて書くのは、この区別を潰さないためです。

数字を動かしたきっかけのひとつは、8月11日の夜に公表されたCardano財団の賛成票でした。財団は自身のアカウントで、次のように述べています。

We have voted YES on the “Withdraw 120M $ADA for @AlphaGrowth1’s Cardano PRIME” governance action. This proposal seeks to bridge Cardano’s DeFi liquidity gap and we believe this program, as described in the metadata and public commitments, will support resilient growth of TVL.

(「AlphaGrowthのCardano PRIMEに1億2,000万ADAを引き出す」ガバナンスアクションに賛成投票した。この提案はCardanoのDeFi流動性のギャップを埋めようとするもので、メタデータと公開されたコミットメントに記述されたこのプログラムは、TVLの持続的な成長を支えると考える。)

財団の文面で目を引くのは、賛成の根拠として「メタデータと公開されたコミットメントに記述されたこのプログラム」と、範囲を限定して書いていることです。提案者への信頼ではなく、公開された文面への賛成として票を置いている。この限定の仕方は、次の章で見る「渡し方」の話と直結します。

そして、その公開された条件のほうが、投票期間の途中で動きました。8月11日、AlphaGrowthはCardano財団との協議を踏まえて、自分の提案に4つの修正を加えると表明しています。実績に応じた資金の解除を後ろ倒しにして30日後に30%、3か月後に30%、6か月後に40%とすること、目標を上回った場合の前倒し支払いを廃止して上限を設けること、などが挙げられました。

受け取る側が、自分から受け取りの時期を遅らせ、上振れ時の追加を自分で封じたわけです。投票を通すために条件を厳しくする、という動き方は、Cardanoのガバナンスでは新しい部類に入ります。フィードバックを受けて規模を縮小して再提出したScalusの例がありましたが、あれは金額の話でした。今回は渡し方そのものの設計変更です。

SIPOはこの提案に賛成を投じています。エポック647の記事の第2章に書いたとおり、SIPOが8件の提案を分けた線は「資金の宛先がスクリプトか、単一の鍵か」でした。PRIMEに賛成した理由もそこにあります。

なお、批准(ratified)と執行(enacted)は別の段です。本稿の取得時点で enacted_epoch はまだ立っていません。批准は「可決された」という状態で、実際に国庫から資金が出るのは次の段です。ここは断定せず、エポック649の確認点として終章に置きます。

第2章:支払いを三段に分ける──助成金が「約束」から「実績」へ

同じ5日間に、金額の桁は小さいものの、渡し方の設計としてはより踏み込んだ枠が動き出しました。Project Catalyst の2026 Pilot です。

応募の受付は8月6日に開始され、締切は8月20日06:00 UTC(日本時間の同日15時)。総額2.5M ADA、1件あたり50,000〜200,000 ADA、採択は10〜15チームの見込みです。

この枠の特徴は、規模ではなく支払いの分け方にあります。着手時に40%、利用実績の目標達成で40%、公開後に使われ続けているかどうかで残り20%。提案書の説得力で総額が決まるのではなく、統合したものが実際に使われた度合いで受け取れる額が変わる設計です。

助成金の評価軸が「何を作ると言ったか」から「作ったものが使われたか」へ移った、と読めます。

応募要件のほうも、その設計と揃っています。「誰が出すのか」では、1チーム1提案であること、メンバーが他の提案に重複して現れないこと、過去のCatalyst資金で良好な状態にあること(初回応募も可)、実名で検証できるチームであること。「何を出すのか」では、対象4領域のいずれかを使っていること、既存プロダクトがTRL 5以上であること、3か月のビルド期間と4か月のPilot期間の中でメインネット到達が収まること。予算は今後の作業のみを対象とし、成果物に紐づいた内訳であることが条件で、エアドロップのような用途は認められていません。

特徴的なのは、普及計画がゲートの中に入っている点です。到達目標は提出時点で確定値として宣言する必要があり、その根拠として具体的なチャネル、既存ユーザーの流入元、想定規模を挙げることが求められます。第三者への依存がある場合は、その依存も申告の対象です。

「すでに動いている製品を持っていること」を前提に置き、そこへオラクル、ステーブルコイン、プログラマブルトークン、オンチェーンIDといった新しい部品を組み込む統合作業に資金を出す──という組み立てになっています。ゼロから作る計画ではなく、動いているものに部品を足す作業のほうが、使われたかどうかを測りやすい。設計としては一貫しています。

第1章のPRIMEと、この Pilot は、金額も対象も違います。ただ、同じ方向を向いています。出す前に、渡し方を決めておく。 PRIMEでは提案者が自分から段階解除を後ろ倒しにし、Pilot では枠そのものが最初から三段に分かれている。国庫の使い方をめぐる議論が、「いくら出すか」から「どう出すか」へ移りつつある、というのがエポック648の見え方です。

この設計には、受け取る側から見た別の面もあります。実績連動は、受け取る側にとっては不確実性が増える仕組みです。作り切っても使われなければ、残りは入らない。渡し方の条件が厳しくなることと、応募が集まることは、必ずしも両立しません。 締切は8月20日15時(日本時間)。応募がどれだけ集まるかは、この設計に対する開発側の答えになります。ここは終章の確認点に置きます。

第3章:上限と下限が、台帳コードに入った──CIP-50 と minPoolMargin

渡し方の話は、国庫だけではありません。プールの報酬と手数料についても、同じ週に設計変更が動きました。

Cardanoの週次開発レポート(8月7日付)に、2行だけ書かれています。CIP-50(プレッジのレバレッジに応じた報酬)が実装され、CIP-23の下ごしらえとして minPoolMargin というプロトコルパラメータがDijkstra期の台帳に追加された、という報告です。

片方はプールが受け取れる報酬に上限を置く仕組み、もう片方はプールが取る可変手数料に下限を置く仕組みです。どちらも、委任先を選ぶ側と運用する側の双方に効きます。

CIP-50の正式名称は「Pledge Leverage-Based Staking Rewards」で、状態はProposed(提案中)です。導入されるのは L という新しいパラメータで、CIPはこれを「報酬が頭打ちになるまでの、プレッジに対する総ステークの最大比率」と定義しています。報酬計算に使われる有効ステークは σ' = min(σ, L · p, z₀) という形になります。σ がプールの総ステーク(プレッジ+委任分)、p がプレッジ、z₀ が飽和点(流通ADA ÷ k)です。つまりプールには上限が二重にかかります。従来からある飽和点による上限と、プレッジの L 倍という上限です。プレッジが小さいプールは、飽和点に届く前にレバレッジ側の上限に当たることになります。

なぜこれが必要とされているのか。CIPが挙げているのは、実際の分散度が k = 500 という設定ほどには進んでいない、という認識です。CIPはエポック560時点の観測として、473のプールがプレッジをゼロにしたまま、2,740,223,943 ADAの委任分を集めていると記しています。単一の主体が数十のプールを運用することで、独立した運用者の数が見かけより少なくなる──という問題への対処です。

もう一方の minPoolMargin は、可変手数料に下限を置くパラメータです。エポック646と647で扱ってきた minPoolCost(固定手数料の下限を170 ADAから75 ADAへ引き下げる提案)と、方向が対になっています。固定費の下限を下げる一方で、可変手数料の下限を設けられるようにする。運営者の収入の作り方を、固定側から比率側へ寄せていく設計だと読めます。

ここで注意しておきたいのは、「台帳のコードに入った」と「効き始めた」は別だということです。CIP-50 はProposed の段階であり、minPoolMargin はDijkstra期の台帳にパラメータとして追加された段階です。実際に値が設定され、報酬計算に反映されるまでには、ハードフォークとパラメータ変更のガバナンスアクションという別の手続きが要ります。

それでも、この報告に意味があるのは、議論の対象が仕様書から実装へ移ったからです。仕様の段階では「そういう考え方もある」で終わりますが、コードに入ると、次に来るのは「いつ、どの値で有効にするか」というパラメータの話になります。プール運営者にとっては、自分の収入構造がどう変わりうるかを、具体的な式で読める段階に来たということです。

第4章:期限まで4エポック、投票権の7割が動いていない

第3章の minPoolMargin が「これから」の話だとすれば、minPoolCost は「いま投票が走っている」話です。

Intersect が週次アップデート #123 を公開し、オンチェーンで投票中のガバナンスアクション2件について、SPOとDRepの双方に参加を呼びかけました。

投票中の2件は次のとおりです。

Reduce minPoolCost to 75 ada and increase Plutus Memory Limits (Part 2)(Action ID: gov_action14dr5yg75pchr2sz42djtuflpvx5qnsek29qg7s7cft8lzrqt5vrqqtqntpk)。プール運営の固定手数料(minPoolCost)の下限を170 ADAから75 ADAへ引き下げ、Plutusの実行メモリ上限の引き上げを当初計画の25%まで完了させるパラメータ変更です。エポック646に提出され、期限はエポック653

Update Constitutional Committee 2026(Action ID: gov_action1w2w64uhelz0cg2np7m37hal905tdd7jpzm3fcyc3g7qvkwgfppgqqfsggt5)。エポック653で任期が切れる憲法委員会の4議席に、2026年の選挙で選ばれた候補者を着任させる提案です。新しい任期はエポック799までとされています。

Intersect は前者について、必要な閾値をこう書いています。

As it includes parameters within the Network group, it requires approval from both DReps and stake pool operators: 67% of active DRep voting stake, 51% of active SPO voting stake.

(Networkグループのパラメータを含むため、DRepとステークプール運営者の双方の承認が必要となる。有効なDRep投票ステークの67%と、有効なSPO投票ステークの51%である。)

DRepとSPOの両方が要るという点が、この提案の特徴です。固定費の下限は運営者の収入に直接効きますから、運営者自身の意思表示が閾値に組み込まれています。

8月14日6時56分(JST)の取得時点で、minPoolCost の数字はこうなっています。批准の分母は5,208,091,853 ADA。賛成が1,187,523,111 ADAで22.80%、投票済みの反対が38,274,802 ADAで0.73%、No Confidence が170,287,956 ADAで3.27%、未投票が3,812,005,982 ADAで73.19%。票数ではDRepの賛成65票・反対7票・棄権7票、憲法委員会は7議席のうち2議席が賛成で、5議席が未投票です。

エポック647の記事の時点(8月8日朝)では賛成15.58%・未投票81.1%でしたから、5日間で賛成は約7ポイント伸び、未投票は約8ポイント減りました。動いてはいます。ただし閾値の67%までは44ポイント以上あり、期限のエポック653まで残りは4エポックです。

明示的な反対は0.73%です。賛否が割れているのではありません。まだ大半が投票していない、という段階が続いています。SPO側の集計は、SIPOが日常使っている検証経路では取得できていません。取得できていないものを推測で埋めることはしないので、数字は次回、取得できた時点で書きます。

憲法委員会の入れ替えについても、前号と同じ状態が続いています。投票集計側が憲法委員会の票数フィールドを返さないため、SIPOの検証経路では票の内訳を取得できません。2エポック続けて取得できていないという事実のほうを、ここでは記録として残しておきます。

もうひとつ、投票中の情報提案についても数字を出しておきます。Name the Protocol Version 12 hard fork “von Bergen”(Action ID: gov_action1fzatpjn3e3r09mjzzfptznef9wxg8q4a5uraq04xvfjyhmfzhzfsqqgfc9h)は、8月14日の取得時点でDRep賛成38.28%、投票済み反対0.001%未満(56,006 ADA)、No Confidence 3.59%、未投票58.13%。期限はエポック651、閾値は情報提案の100%です。憲法委員会側では反対2・棄権1が入っています。名前を決めるだけの提案にも、明示的に反対する票が置かれている、という記録です。

あわせて、Intersect の同じ更新ではDijkstra era 第1段のハードフォーク範囲が確定したこと、憲法修正ポータルに最初の4件が入ったこと、定款の改訂版が発効したことが報告されました。期限のある投票と、期限のない準備が、同じ週に並んでいます。前者は残り時間が減っていく話で、後者はノード運用の計画が立てられるようになる話です。

第5章:1億3,259万ADAが、止まった預け先に残っている

渡し方の話が続いた5日間に、渡したあとを誰も確かめていない、という別種の数字も出ました。

8月7日、Cardanoの公式アカウントが、ブロックチェーンエクスプローラ cexplorer の集計を共有しました。1億3,259万ADA(132.59M ADA)が、すでに引退したプールに委任されたままになっている、という内容です。対象となるウォレットは55,289件と報告されています。

これは障害でも事故でもありません。委任は「一度設定すれば、あとは意識しなくてよい」ように設計されています。裏を返すと、預け先が消えても手元のウォレットの表示はほとんど変わらず、報酬だけが静かに止まります。

失われるものと失われないものを、分けておきます。委任してもADAはウォレットから動きません。 Cardano Docs は「委任の方法にかかわらず、いつでも通常どおり ada を使うことができます」と明記しています。引退したプールに委任していたとしても、元本が消えることはありません。止まるのは報酬だけです。

なぜ報酬が止まるのか。報酬はブロック生成に紐づいているからです。ブロックが作られ、そこから分配が起きる、という順序になっています。引退したプールはブロックを作りませんから、分配の元になるものがありません。

Cardanoのステーキングは、資産を預けたり凍結したりせずに参加できることを設計上の強みにしてきました。その強みは、預け先が生きているかどうかを誰も代わりに確認してくれない、という前提とセットになっています。

心当たりのある方は、ウォレットのステーキング画面を開いて、委任先が現在も稼働しているかどうかを確かめてください。確認そのものは1分もかかりません。

エポック647で、SIPOは「ウォレットを移行すると、ステークプールとDRepの委任が両方外れます」という注意喚起を出しました。今回の132.59M ADAは、その裏側にあたります。移行して外れるのではなく、置いたまま相手が消える。結果として起きることは同じです。報酬が止まり、投票力が使われず、そして本人は気づかない。

そして、確かめるためにウォレットを開き直す人にとって、同じ5日間にひとつ実務的な変化がありました。次の章です。

第6章:数分になった同期と、太くする側・外へ逃がす側

Daedalus 11.2.0 が公開されました。リリースノートに並ぶ修正は地味です。一部のLinuxディストリビューションで起動時に落ちていた問題、WindowsでNASやSMB上にデータを置いていた場合のパス解決、Mithril を使わない選択をしたときに約30秒待たされていた挙動──この3つが中心です。

ただし、この48時間で反応が集まったのは修正点ではなく、同期の速さのほうでした。

これまで、しばらく起動していなかったフルノードウォレットを開くと、チェーンに追いつくまで数時間待つことがありました。Mithril による増分同期が入ったことで、既存のウォレットは足りない範囲だけを取得して追いつけるようになり、待ち時間が数分の単位まで下がります。検証を省略しているわけではなく、フルノードとしてのセキュリティは保ったままです。ここが「軽量ウォレットに乗り換える」話と決定的に違う点です。

一点だけ、上げる前に読んでおくべき注意が付いています。依存パッケージの更新にともなってウォレットのデータベースが自動で移行され、その移行は元に戻せません。 上げたあとに前のバージョンへ戻る選択肢がなくなる、という種類の変更です。

Mithril は、エポック644でコミュニティが国庫から支えると決めた基盤のひとつでした。あのときの投票が、いま「委任先を確かめるためにウォレットを開く人の待ち時間」として返ってきている、という見方もできます。

同じ期間に、ネットワークの容量そのものについても報告が出ました。

Leios が、テストネット MusashiNet の上でエンドツーエンドに動いていることが8月7日に報告されました。ノードが同期し、エンドーサーブロックが証明され、トランザクションが実際に流れている状態です。あわせて、Earth フェーズで設計の堅さが確認できたこと、次の Water フェーズに入ることが示されました。Earth が設計の確認、Water がパラメータ設定と構成要素を複数試す段階、という位置づけです。メインネット投入の告知ではありません。

Cardano Foundation は8月6日、ある利用者からの問いに答える形で、Hydra と Leios の関係を整理しています。

Hydra and Leios are complementary, not competing. Leios scales the main chain itself. Hydra moves high-frequency activity off it. Both ship more capacity for Cardano, just from opposite directions.

(Hydra と Leios は補完的であり、競合ではない。Leios は本線そのものを拡張する。Hydra は高頻度の活動を本線の外へ動かす。どちらもCardanoに容量をもたらすが、方向が逆なのだ。)

Leios の仕様書である CIP-0164 は、動機をはっきり書いています。メインネットは周期的に混雑し、処理待ちの取引量がネットワークの取り込み能力を上回る局面がある、と。Linear Leios の設計は、従来のPraosブロックにあたるランキングブロック(RB)と、そこに入りきらない取引を運ぶエンドーサーブロック(EB)の二種類で構成されます。

本線を太くする側と、外へ逃がす側。どちらが正しいという話ではなく、取引の性質によって置き場所を選べるという設計です。

手数料についても、同じ5日間に具体的な数字が出ました。Midnight の開発者ドキュメントが、DUST の初期パラメータを次のように定めています。

night_dust_ratio = 5_000_000_000; // 5 DUST per NIGHT generation_decay_rate = 8_267; // ~1 week generation time dust_grace_period = Duration::from_hours(3)

NIGHT を1保有していると、最大5 DUST まで生成されます。満容量に達するまでの時間が、およそ1週間。公式ブログも「Every 1 NIGHT generates a maximum capacity of 5 DUST」と同じ比率を示し、その間の増え方は直線的だと説明しています。

Midnight の設計では、取引を動かすのは NIGHT ではなく DUST です。取引のたびに減るのは DUST であって NIGHT ではないため、ネットワークを使い続けても手元の NIGHT は目減りしません。 投票の重みは NIGHT の保有量に紐づいたままで、利用は DUST で行われる。ネットワークを積極的に使う参加者ほど発言権を失っていく、という逆向きの力が構造上かからない設計になっています。DUST には譲渡できないこと、使わずに置いておくと減っていくことという二つの制約が置かれており、手数料を払うための資源でありながら、それ自体は金融資産として動かせません。「ネットワークを使う権利」の側に留めるための線引きです。

そして8月12日、8月13日に Cardano と Midnight の両方で本番稼働する案件が並ぶという告知が出ました。USDM が「cardano + midnight. mainnet august 13.」と発信し、VIA Labs も「VIA is going live on Cardano and Midnight. Mainnet. August 13.」と告知しています。どちらも「Cardanoと Midnight の両方」と書いているのが特徴で、決済や資産の側を Cardano に、秘匿が要る処理を Midnight に置く、という二層の使い方が前提になっています。

告知の時点では、まだ何も動いていません。8月13日はエポック649の初日にあたります。告知どおり稼働したかどうかは、次号で確認します。

第7章:エポック648 市場指標・KPI分析

マクロ12指標(エポック648期間・8月8日〜8月12日の日次記録)

ADAは記録の初日8月8日に$0.201561、最終日8月12日に$0.186718−7.4%です。この5日間の記録のなかでの最高値も初日の$0.201561で、期間を通じて一方向に下げました。12指標は1日1回の記録なので、日中の高値・安値ではありません。

エポック境界の確定値では、エポック647終了時の$0.2014からエポック648終了時の$0.1809へ、−10.2%。時価総額は$7.52bから$6.76bへ減りました。ADA/JPYは¥28.84、そのときのUSD/JPYは159.43です。前号でADAは境界価格で+6.2%上げていましたから、上げた分をそのまま返した形になります。

$NIGHTは$0.01911 → $0.01784(−6.6%)。前号ではADAが上げるなかで$NIGHTが下げていましたが、今回は両方が同じ方向に下げました。

BTCは$64,889 → $63,654(−1.9%)、ETHは$1,914.41 → $1,881.38(−1.7%)。BTCの期間の記録では最高が8月10日の$65,187です。ADAの下げ幅(−7.4%)は、BTCやETHより大きく出ています。 暗号資産全体の地合いだけでは説明できない下げ方でした。原因は断定しません。事実として記録し、次のエポックで水準が戻るかを見ます。

株式は、S&P500が7,757.64 → 7,728.20(−0.4%)、ナスダックが26,690.62 → 26,445.45(−0.9%)、ダウが54,036.93 → 53,791.85(−0.5%)(いずれも8月7日終値から8月11日終値)。VIXは14.9 → 15.28へ上昇。前号の株式は3〜4%上げていましたから、上昇が止まって小幅に押した期間です。

為替と金利では、USD/JPYが157.745から159.288へと円安方向に約1%。ドル指数(DXY)は99.604から99.812とほぼ横ばい、米10年債利回り(TNX)は4.66%から4.684%へ小幅上昇。日本国債は10年が2.773% → 2.804%、30年が3.919% → 3.925%で、日米10年金利差は1.887から1.880とほぼ動いていません。円安が進んだ一方で金利差は開いていない、という組み合わせでした。

商品の動きが、この期間で最も大きく出ました。WTIが$77.08から$83.57へ+8.4%、ブレントが$82.27から$89.29へ+8.5%。 金は$4,401.30から$4,433.00へ+0.7%で、期間の記録では最高が8月11日の$4,451.10です。日経平均先物は66,340から67,200へ+1.3%、暗号資産関連株のCOINは153.6から148.58へ−3.3%。

記録上の地合いも、この原油の動きに沿って変わりました。8月8日から10日までは「リスクオン傾き——BTC・株式揃って上昇」、8月11日に「原油急騰(+5.1%)×株式軟調の警戒局面」、そして8月12日に「リスクオフ傾向——Gold上昇・株式軟調」。5日間の後半で、地合いの記述が反転しています。

Cardano オンチェーンKPI(Dune Analytics経由)

※自動集計の基準日は2026年8月11日 23:59:44 UTC(エポック648の期間内)です。ステーキング関連はエポック648:100%時点の値を第9章に併記します。

  • ステーキング率:57.62%(Dune算出・8月11日基準)/エポック648:100%時点の実測では57.10%
  • Nakamoto係数:164(前回164・横ばい)
  • 日次トランザクション:16,946(8月11日)/前号の基準日は21,636でしたから、約22%減
  • アクティブアドレス:9,765/前号の11,310から約14%減
  • Script Tx比率:33.09%/前号の34.97%から低下
  • ステーブルコイン総額:$62.41M(USDCx $43.89M/USDM $9.64M/USDA $4.45M/Djed $2.23M/iUSD $1.58M/USDC $0.48M ほか)/前号の$59.33Mから約5%増
  • Treasury残高:1,446,440,676 ADA(エポック648基準)/前号の1,444,502,386 ADAから約194万ADA増
  • ガバナンス:提案中 5件/批准 0件/失効 69件(8月11日 23:59:44 UTC 基準)

三つ、読みを添えます。

トランザクションとアクティブアドレスが、そろって前号の水準から下げました。 前号でSIPOは「日次21,636件・アクティブアドレス11,310・Script Tx 34.97%が、この水準で推移するか、戻るか」を確認点に挙げていました。答えは、戻った、です。取引は約22%減、アドレスは約14%減。Script Tx比率も34.97%から33.09%へ下がっています。前号の水準が一時的な高まりだったのか、今回の水準が一時的な落ち込みなのかは、1回の観測では決められません。次のエポックで三つ目の点を置いて判断します。

ステーブルコインは総額が増え、増分のほぼ全てがUSDCxでした。 $59.33Mから$62.41Mへの約$3.1M増のうち、USDCxが$40.77Mから$43.89Mへ約$3.1M増えています。同じ期間に、LiqwidがSundaeSwapのUSDCx-USDMステーブルスワッププールに預けた流動性提供者向けの案内を出しました。プール側で得られる推定3.42%に加えて、そのLPトークンをLiqwidの貸出プールに預けると推定3.52%が上乗せされ、合計で推定6.94%になる、という説明です。いずれも同社が示した推定値で、確定した利率ではありません。数字そのものより、交換する場所と預ける場所を積み重ねられる段階に入ったという構造のほうが、この増分の背景として読める部分です。ただし因果は断定しません。

ガバナンスの「批准0件」は、基準日の問題です。 Dune の集計基準は8月11日23:59 UTCで、PRIMEが批准されたのは8月12日21:44 UTC(日本時間8月13日6時44分)の境界です。基準日が境界の前にあるため、この集計には入っていません。提案中が6件から5件へ減っているのは、エポック647の境界で失効した分が反映されたものです。失効件数は68件から69件へ1件増えています。

SIPO DRep 活動

SIPO DRepの投票力は、2026年8月14日6時56分(JST)の取得時点で約₳88.82Mです(active・有効期限エポック667・委任者371名)。エポック647記事の時点では約₳88.43Mでしたから、その後₳0.39Mほど増えています。取得した時点の値であり、エポック境界で固定した値ではありません。

この5日間、SIPOは新たに決着した提案への投票記録を公開していません。エポック647で投じた票(賛成4・反対3・棄権1、および審議中の提案への投票)が、そのまま効いている期間です。第1章のPRIMEについてSIPOが投じた賛成票も、8月7日に理由とあわせて公開したものです。

第8章:エポック648 配信記事の紹介

エポック648(8月8日〜8月13日)にSIPO・SITIONの各アカウントから配信した主な記事です(暗号資産・ブロックチェーン関連を中心に抜粋)。

日付媒体種別タイトルURL
8/8@SIPO_Tokyoエポックな日々預け先を、選び直す──創業企業がDRepを降り、コア開発の担い手が移った5日間:エポック647https://sipo.tokyo/post-47304/
8/8@SIPO_TokyoWeekly BriefWeekly Brief #18|物語は買われ、予算は通らなかった — ADA +19.3%、2,222万 ada が期限切れ、minPoolCost に投票https://sipo.tokyo/weekly-brief-18/
8/8@SIPO_TokyoWeekly Brief (EN)Weekly Brief #18|The Story Was Bought, the Budget Was Nothttps://sipo.tokyo/language/en/weekly-brief-18-en/
8/8@SIPO_TokyoDaily IntelLeios がテストネットで一周しました——設計の確認が終わり、次の検証段階に入りますhttps://x.com/SIPO_Tokyo/status/2085852097162170617
8/8@SIPO_TokyoSignalLeios がテストネットで一周しました——Earth フェーズを終え Water フェーズへhttps://sipo.tokyo/signal-20260808-8b6b3ddb/
8/8@SIPO_TokyoDeep DiveHydra と Leios は競合しません——Cardano のスケーリングを二層で読むhttps://sipo.tokyo/deep-dive-20260808-ac986992/
8/8@SIPO_TokyoSignal132.59M ADA が引退したプールに預けられたままです——委任先の確認をおすすめしますhttps://sipo.tokyo/signal-20260808-2b33240b/
8/8@SIPO_TokyoSignalCIP-50 と minPoolMargin が台帳コードに入りました——プールの報酬と手数料の設計が動き出すhttps://sipo.tokyo/signal-20260808-b8d430ce/
8/8@SIPO_TokyoSignalDaedalus 11.2.0 が公開されました——Linux 起動不能の修正と、一度使うと戻せない DB 移行https://sipo.tokyo/signal-20260808-ef396c1f/
8/8@SIPO_TokyoSignalMidnight は NIGHT を燃やさない——DUST という「再生する資源」が手数料を払う設計https://x.com/SIPO_Tokyo/status/2085883438679089157
8/8@SIPO_TokyoSignalRealFi の SPO アクセラレーターに日本語ページができましたhttps://x.com/SIPO_Tokyo/status/2085880937280426376
8/8@SIPO_Tokyo速報Intersect、ガバナンスアクション2件が実施中、CAP Portal が協議開始https://sipo.tokyo/breaking-x-2086064799792640095/
8/9@SIPO_TokyoDaily IntelDaedalus 11.2.0 が公開されました——フルノードウォレットの同期が「数時間」から「数分」に変わりますhttps://sipo.tokyo/daily-intel-20260809/
8/9@SIPO_TokyoSignalminPoolCost の期限まで 5 エポック、DRep 投票権の 8 割が未投票です——Dijkstra 第 1 段のスコープは確定しましたhttps://sipo.tokyo/signal-20260809-dbdb92cf/
8/9@SIPO_TokyoSignalCatalyst Pilot の応募窓が開きました——締切は 8月20日 06:00 UTC、3か月で本番稼働が条件ですhttps://sipo.tokyo/signal-20260809-777403d0/
8/10@SIPO_TokyoDaily Intelステーブルコインの置き場所が二段になりました——入口・置き場所・開発基盤が同じ週末に整えられていますhttps://sipo.tokyo/daily-intel-20260810/
8/11@SIPO_TokyoDaily Intel助成金の出し方が「約束」から「使われた実績」に変わりました——応募期限まで残り10日ですhttps://x.com/SIPO_Tokyo/status/2086969542904029270
8/11@SIPO_TokyoSignal1 NIGHT が生む DUST は 5、満タンまで約 1 週間——Midnight の手数料資源が生まれる速さと消える速さhttps://sipo.tokyo/signal-20260811-3a2e4e19/
8/11@SIPO_Tokyo速報Cardano財団、AlphaGrowth1へ1億2,000万ADA の引き出しに投票https://sipo.tokyo/breaking-x-2087164970353979629/
8/12@SIPO_TokyoSignalCardano財団が賛成、PRIME の DRep 賛成は 78.65%——可決ラインを超えたまま期限のエポックへhttps://sipo.tokyo/signal-20260812-b84ab848/
8/12@SIPO_TokyoDaily Intel明日8月13日、Cardano と Midnight の両方で本番稼働する案件が並びましたhttps://x.com/SIPO_Tokyo/status/2087335784198361146
8/12@SIPO_Tokyo速報Cardano ガバナンス投票、SPO投票が必要な2件のアクションが進行中https://sipo.tokyo/breaking-x-2087540072656622074/
8/8@SITIONjpDeep Dive値下げ・無制限・共通規格——競争の場所が「摩擦」へ移ったhttps://x.com/SITIONjp/status/2085879789907546186
8/8@SITIONjpSignalCLARITY Act の9月は、Thune が休会前に cloture を出すかどうかで決まるhttps://x.com/SITIONjp/status/2085977307181937113
8/8@SITIONjpSignalCOLDCARD 事故、被害額を確定できる主体がいないhttps://x.com/SITIONjp/status/2086023039523946800
8/8@SITIONjpSignalTrump Media が Crypto.com との CRO トレジャリー計画を解除——畳まれたのは器の方だhttps://x.com/SITIONjp/status/2085980075397390399
8/9@SITIONjpDaily IntelCLARITY に討論終結動議が提出された——9月15日という日付が、初めてカレンダーに載ったhttps://x.com/SITIONjp/status/2086203368763211866
8/10@SITIONjpDaily Intel「CLARITY なしでも前に進む」と運用側が言い始めた——立法が止まった空白を、決済レールが先に埋めているhttps://x.com/SITIONjp/status/2086589663100404022
8/11@SITIONjpSignalBitcoin Red Team が27.5時間で390リポジトリを走査したhttps://x.com/SITIONjp/status/2086973262677094535
8/11@SITIONjpDeep DiveOrdinals を消すために、合意層に手を入れようとした。BIP-110 は2ブロックで止まったhttps://x.com/SITIONjp/status/2086987355614060571
8/12@SITIONjpSignalNVIDIA が Apollo・BlackRock ら6社と組んだ——GPU を「投資可能な資産クラス」に変える調達基盤https://x.com/SITIONjp/status/2087342049771090019
8/8@LifeMakersComSignalCOLDCARD の乱数不具合、ファームウェアを更新しても鍵は直らない——自分の端末が対象かを確かめる順序https://x.com/LifeMakersCom/status/2086054979278954998
8/9@LifeMakersComSignalAIに財布を渡す前に「枠」を決めろ——MetaMask Agent Wallet の設計思想https://x.com/LifeMakersCom/status/2086224522488021244

(このほか、@SIPO_Tokyoは毎朝のDaily Intelと随時の速報、@SITIONjpは12指標・Event Risk Radar・Daily Intel、@LifeMakersComはAIを中心としたDaily Intel・Signal・星読みをこの期間も配信しています)

第9章:エポック648 終了時点 ステーキング動向

はじめに、今回の数字の性質について一点お断りしておきます。本号は配信が2日遅れました。 そのため、ブロック数・ネットワーク集計・境界のADA価格はエポック648で確定した値ですが、ライブステーク・有効ステーク・委任者数は2026年8月14日6時56分(JST)の取得時点の値です。境界ちょうどの残高ではありません。前号との差分にも、この2日分が含まれています。数字を出す以上、どの時計で測ったものかは書いておきます。

SIPO 3プール合計は、取得時点で有効ステーク ₳105.41M / ライブステーク ₳105.48M / 委任者 2,196名。エポック648のブロックは94(前エポックから+4)、Lifetime累計は46,636に達しました。

プール有効ステークライブステーク委任者ep648ブロックLifetime
SIPO₳44.05M₳44.11M1,1444719,832
SIPO2₳33.62M₳33.63M4792414,878
SIPO3₳27.73M₳27.74M5732311,926

ブロックは90から94へ、4増えました。 プール別ではSIPOが35→47(+12)、SIPO2が30→24(−6)、SIPO3が25→23(−2)です。SIPOの12増が、SIPO2とSIPO3の減少分を上回った形になります。

直近6エポックでは103(643)→103(644)→84(645)→94(646)→90(647)→94(648)と推移しています。ブロック生成は確率的なので、1エポック単位の増減に意味を読みすぎないようにしています。プール単位では±12という振れ幅が出ても、3プールを束ねると90前後に収まる。これが複数プール運用の意味です。

ライブステークの合計は105,377,857.89 ADAから105,483,363.89 ADAへ、₳105,506増えました。内訳は、SIPOが₳76,481増、SIPO2が₳13,495増、SIPO3が₳15,529増。前号ではSIPO3の単独増で合計が動いていましたが、今回は3プールすべてが増えています。 ただし前述のとおり、この差分には境界からの2日分が含まれます。

委任者数の合計は2,196名で、前エポックから1名増です。増えたのはSIPOで、SIPO2とSIPO3は変わりません。同じ5日間にADAは境界価格で10.2%下げていますが、委任は減っていません。前号でも「価格と委任は別の時計で動く」と書きましたが、下げの局面でも同じことが出ています。

有効ステークとライブステークの照合について、今回は行っていません。 この照合は「エポックNの有効ステークが、エポックN-1終了時点のライブステークと一致するか」を確かめるものですが、成立するのは境界とほぼ同時に測った場合だけです。今回は取得が境界から2日ずれているため、有効ステークの値がどの時点のものかを厳密に切り分けられません。切り分けられないものを、通ったことにはしません。 次号で通常どおり照合します。

ネットワーク全体では、エポック648の集計で総サプライ₳37.67b、総ステーク₳21.51b、ステークを持つプール2,680、総ウォレット5,934,501、総委任1,347,217。ステーキング率は57.14%(647)から57.10%へ、わずかに低下しました。

ウォレットは5日間で約4,700増え、委任は42増えています。 一方でステークを持つプールは2,693から2,680へ13減りました。参加者は増え、プールの数は減る。第5章で見た132.59M ADAの話は、この「プールが減る」側の裏側にあります。プールが引退しても、そこに預けたままの委任は自動では移りません。

終章:渡し方を決める、ということ

エポック647の終わりに挙げた確認点を、一つずつ答え合わせします。

Cardano PRIMEの決着は、批准されました。エポック648の終了境界で ratified_epoch=649 が立ち、取得時点でDRep賛成80.10%、投票済み反対7.67%、未投票8.50%。財務引出額120,000,000 ADA。前号で「賛成42.73%が閾値67%へ届くか、未投票42.71%のまま期限を迎えるか」と書いた分の答えです。届きました。ただし執行(enacted)はまだです。

EMURGOとYoroiのDRep登録抹消は、この5日間の配信では、オンチェーンでの抹消も委任の移動も確認できていません。持ち越します。

minPoolCost提案の投票の伸び方は、進みました。DRep賛成15.58%→22.80%、未投票81.1%→73.19%。明示的な反対は0.73%のままです。閾値67%までは44ポイント以上あり、期限のエポック653までは残り4エポック。SPO側の有効投票ステーク51%については、SIPOの検証経路では数字を取得できていません。取得できていないことを、取得できたことにはしません。

InjectiveとのIBCは、テストネットから本番へ進んだという報告も、実際の資産移動の観測も、この5日間では確認できませんでした。持ち越します。

ICAN Groupへの移管後については、リリースの頻度や課題への応答速度を判断できる材料が、まだ出ていません。持ち越します。

DMQノードの移行状況も、SPO側でどこまで反映されたかを示す集計は確認できませんでした。持ち越します。

取引とアドレスの水準は、戻りました。日次21,636件→16,946件(約22%減)、アクティブアドレス11,310→9,765(約14%減)、Script Tx比率34.97%→33.09%。前号の水準は維持されていません。

7件のうち、確定したものが2件、途中のものが1件、持ち越しが4件です。持ち越しが半数を超えました。答えの出ないものが多い回もある、というのはそのまま書いておきます。「確認する」と書いた項目に「まだ分からない」と書けることのほうが、無理に答えを作るより連載の役に立ちます。

そのうえで、エポック649で確認すべきものを挙げます。

  1. PRIMEの執行:批准と執行は別の段です。次の境界で enacted_epoch が立ち、120,000,000 ADAが実際に国庫から出るか。そして、AlphaGrowthが表明した「30日後に30%、3か月後に30%、6か月後に40%」という解除条件が、執行後の実務としてどう現れるか。
  2. Catalyst Pilot の応募:締切は8月20日15時(日本時間)。TRL 5以上・3か月でメインネット到達という条件のもとで、応募が何件集まり、採択の10〜15チームがどう埋まるか。実績連動の設計に、開発側がどう反応するか。
  3. minPoolCost:期限のエポック653まで残り4エポック。DRep賛成22.80%・未投票73.19%が動くか。そしてSPO側の51%が測れる形で出てくるか。
  4. 憲法委員会の入れ替え:期限は同じくエポック653。SIPOの検証経路で票の内訳が取得できない状態が、3エポック目に入るかどうか。
  5. 8月13日の本番稼働:USDMとVIA Labsが告知した「Cardano と Midnight の両方でメインネット」が、告知どおり動いたか。そして稼働直後にウォレット側の接続手順が実際に通るか。
  6. 引退したプールへの委任:132.59M ADA・55,289ウォレットという数字が減るか。減らないなら、確認を促す以外に何ができるのか。
  7. 取引とアドレスの水準:16,946件・9,765・33.09%が、前号の水準へ戻るか、この水準に落ち着くか。三つ目の点を置いて判断します。

エポック648は、大きな決定が一つ通った5日間でした。1億2,000万ADA。

けれど、この5日間を通して見ると、目立っていたのは金額のほうではありませんでした。渡し方の条件が、渡す前に動いていたことのほうです。提案者が自分から解除を後ろ倒しにし、助成金の枠が支払いを三段に分け、プールの報酬に上限が、可変手数料に下限が置かれようとしている。どれも「出すか出さないか」の外側にある設計です。

投票は、賛成か反対かしか表せません。渡し方の良し悪しは、投票では表現できない。だから条件のほうを、投票する前に文面として固めておく必要があります。票が答えられるのは、条件が書かれた範囲までです。

そしてもう一つ、この5日間には対になる数字がありました。1億3,259万ADAが、すでに止まった預け先に置かれたままだという集計です。渡し方をどれだけ精密に設計しても、渡したあとに誰も確かめなければ、そこで止まります。委任は、預けて終わりではありません。

条件を先に決めることと、決めたあとに確かめ続けること。 どちらか片方では足りません。エポック648に並んだのは、その両方が同時に必要だと示す出来事の集まりでした。

いつもSIPO / SIPO2 / SIPO3へ委任をいただき、ありがとうございます。委任は、ブロック生成を支えるだけでなく、DRepを通じて判断の重みを託す行為でもあります。SIPOはSPO・DRep・観察者として、結論だけでなく、その結論へ至る理由と、まだ答えの出ていない問いを記録し続けます。

出典・参照