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Weekly Brief #21|票は集まった、それでも閾値は越えていない — 期限は日本時間 9 月 2 日 6 時 44 分、委員会更新は DRep があと 2.76 ポイント、NIGHT が国内初取扱い

2026-08-29SIPO

前号(#20)は、こう閉じました。「期限は 9 月 1 日です。残りは 10 日ほどです」。

その 10 日のうち 7 日が過ぎました。今週、票は確かに集まりました。憲法委員会の更新に賛成したプールは 32 から 179 へ、SPO の賛成は 8.07% から 35.47% へ。DRep も 37.58% から 64.24% です。minPoolCost のほうも、プールが 60 から 103、SPO 賛成が 15.78% から 26.11% になりました。前号で「足りないのは説得ではなく参加のほう」と書いた、その参加が起きています。

それでも、どちらもまだ閾値を越えていません。 憲法委員会の更新は DRep があと 2.76 ポイント、SPO があと 15.53 ポイントです。そして期限は動きません。日本時間で 9 月 2 日の午前 6 時 44 分 51 秒、残りは 4 日を切りました。今週いちばん考える価値があるのは、あと何ポイントかではなく、そのポイントがどこに眠っているかだと思います。数字を分解すると、答えは「未投票」という一つの箱に集まっています。

エグゼクティブ・サマリー

  • 票は集まりました:憲法委員会の更新は SPO 8.07% → 35.47%(32 → 179 プール)、DRep 37.58% → 64.24%(89 → 129 票)。minPoolCost は SPO 15.78% → 26.11%(60 → 103 プール)、DRep 43.65% → 61.73%(97 → 125 票)。
  • それでも越えていません:必要なのは DRep 67% と SPO 51%。憲法委員会の更新は DRep があと 2.76 ポイント、SPO があと 15.53 ポイントです。
  • 期限は日本時間 9 月 2 日 6 時 44 分 51 秒です:Intersect の一次記載(UTC 9 月 1 日 21:44:51)と、Koios が返すエポック 652 の終了時刻が秒まで一致します。9 月 6 日とする記述も流通していますが、一次はこの時刻です。
  • 足りない分は「未投票」に眠っています:憲法委員会の更新で SPO が閾値に届くのに必要なのは約 17 億 3,766 万 ada。未投票の委任量 71 億 ada の 24.45% にあたります。DRep 側は約 1 億 4,120 万 ada、未投票の 8.46% です。
  • 反対が現れた提案と、ほとんど現れない提案があります:minPoolCost に反対したプールは 4 から 28 へ増えました。一方、憲法委員会の更新に反対しているプールはいまも 1 つだけです。同じ期限でも、詰まっている理由が違います。
  • 通らなかったときの帰結が、具体的に示されました:Intersect は、可決されなければ憲法委員会が 7 名から 3 名になり、最小構成の 5 名を下回るため、Info アクションと委員会更新アクション以外が扱えなくなると記しています。
  • von Bergen は成立しませんでした:プロトコルバージョン 12 の命名議案は、エポック 651 で期限を迎え、失効しています。
  • Leios が Earth フェーズの数字を出しました:チェーンに届いたものの 54% を Leios が運び、実メインネット比で取引数 18 倍・バイト数 3.3 倍。レッドチームの試行で「プロトコルの失敗は 1 件もなかった」としています。
  • NIGHT が国内で初めて取り扱われました:8 月 24 日、ソニーグループ傘下の S.BLOX が NIGHT と ADA の取扱いを開始しました。NIGHT は国内初です。
  • 市場は先週と逆でした:ADA は週間 −10.52%、NIGHT は −11.38%。BTC は −0.97%、ETH は −2.90% です。

1. マーケット・パルス

8 月 22 日から 8 月 29 日にかけての、朝の定点観測値です。

銘柄8/228/29週間
ADA$0.226213$0.202420−10.52%
BTC$78,459$77,696−0.97%
ETH$2,511.72$2,438.85−2.90%
NIGHT$0.02188096$0.0193916−11.38%

8 月 29 日の 4 銘柄は、日本時間 8 時 20 分に同じ取得でそろえた値です。

前号で私たちは「ADA の +26.70% は、市場全体の動きの中にあります」と書きました。今週は、その関係が崩れています。BTC と ETH はほぼ横ばいで、ADA と NIGHT だけが 2 桁のマイナスです。 先週は 4 銘柄がそろって上を向いていましたが、今週は 2 つに割れました。

ここで注意しておきたいのは、割れたからといって理由が分かるわけではない、という点です。今週のカルダノには、ガバナンスの期限、Leios の好結果、国内での NIGHT 初取扱いと、方向の違う材料が同時に出ています。そのどれが価格に効いたのかは、価格そのものからは読み取れません。前号で「ガバナンスの進み方を価格の説明に使うことも、その逆もできません」と書いたのと、姿勢は同じです。

NIGHT が ADA とほぼ同じ幅で動いている点だけは、前号から続いています。国内での初取扱いという固有の材料が出た週でも、NIGHT の週間は ADA から大きく離れていません。

2. 期限は、日本時間 9 月 2 日 6 時 44 分 51 秒です

まず、いちばん実務的な話から始めます。

期限を「9 月 1 日」と書いた記事と、「9 月 6 日」と書いた記事の両方が流通しています。日本から見る場合、ここに時差も乗ります。投票する側にとっては、どちらを信じるかで丸 5 日ずれる話なので、確認できるところまで確認しました。

Intersect の週次更新 #126(8 月 28 日)は、2 件とも「September 1, 2026 at 21:44:51 UTC(Epoch 653)に失効する」と明記しています。

この時刻には、独立に確かめられる裏付けがあります。Koios が返すエポック 652 の終了時刻は 1788299091(UNIX 時刻)で、これを変換すると 2026 年 9 月 1 日 21 時 44 分 51 秒 UTC です。Intersect の記載と秒まで一致します。つまり期限は「エポック 653 が始まる瞬間」であり、日本時間では 9 月 2 日 6 時 44 分 51 秒になります。

もう一つ、実際の投票記録からも確かめられました。先週まで追っていた von Bergen の議案は、期限の記録が「エポック 651」でした。この議案に入った 190 票の記録時刻をすべて並べると、最後の 1 票は 2026 年 8 月 22 日 21 時 20 分 09 秒 UTC です。エポック 651 が始まる 21 時 44 分 51 秒の、24 分前でした。そこから先、票は 1 つも入っていません。「エポック N が期限」と書かれた議案は、エポック N が始まる瞬間に締め切られる、という読み方でつじつまが合います。

したがって、いま投票を検討している方にとっての実際の締切は、日本時間 9 月 2 日(水)の朝 6 時 44 分です。日曜の夜ではありません。ただし投票は取引としてブロックに入る必要があるので、境界ぎりぎりを狙う設計にはしないほうが安全です。

なお Intersect は今週、SPO 向けの投票手順を Cardano Developer Portal で更新し、1 つのトランザクションで複数の議案に投票する方法を収録したと記しています。実際のページには、投票ファイルは議案ごとに 1 つ作るが、トランザクションには好きなだけ入れてよいこと、そしてそれらは同じコールドキーの署名で一括して証明されるため、5 件に投票してもキーの扱いは 1 件と同じであることが書かれています。いま期限が同じ議案が 2 件ある状況では、そのまま効く話です。

3. 票は集まりました — 1 週間で何が動いたか

前号でいちばん強く書いたのは、SPO 票が閾値から遠いという点でした。今週の数字です(2026 年 8 月 29 日 08:17 JST 取得・エポック 652)。

提案SPO 賛成プール(賛成・反対・棄権)前号
憲法委員会の更新 202635.47%179・1・48.07%(32・1・1)
minPoolCost を 75 ada へ + Plutus メモリ上限(Part 2)26.11%103・28・3715.78%(60・4・28)

DRep 側も同じ向きに動いています。

提案DRep 賛成(閾値 67%)票数前号
憲法委員会の更新 202664.24%12937.58%(89 票)
minPoolCost ほか61.73%12543.65%(97 票)

とくに憲法委員会の更新は、1 週間で賛成プールが 147 増え、割合は 4.40 倍になりました。DRep も 37.58% から 64.24% へ、26 ポイント以上の上昇です。前号で「自然増ではないところにある」と書いた経路が、2 週続けて現れたことになります。

数字の増え方には、今週も注記が要ります。憲法委員会の更新はプールの数が 5.59 倍になったのに、割合は 4.40 倍です。minPoolCostプール 1.72 倍に対して割合 1.65 倍でした。前号と同じ理由で、可決要件は票数ではなく委任量の割合だからです。ただし前号の minPoolCost(プール 2.5 倍に対して割合 6.00 倍)は、ずれの向きが逆でした。今週動いたプールは、先週動いたプールより 1 つあたりの委任量が小さかったということです。「何プールが動いたか」は、そのまま「どれだけ近づいたか」にはなりません。

同じ週に、周知の側でも動きがありました。Intersect は 8 月 28 日の DRep 月次コールで、技術運営委員会とパラメータ委員会のメンバーを交えてこの 2 件を扱っています。8 月 25 日の X Space でも、理事会・憲法委員会の選挙とあわせてガバナンスアクションが議題に入りました。因果は主張しませんが、周知が重なった週に票が動いた、という並びは前号と同じ形です。

4. それでも越えていません — 残りは 2.76 ポイントと 15.53 ポイント

ここが今週の本題です。上がった、では終わりません。

提案区分現在閾値不足
憲法委員会の更新 2026DRep64.24%67%2.76 pt
憲法委員会の更新 2026SPO35.47%51%15.53 pt
minPoolCost ほかDRep61.73%67%5.27 pt
minPoolCost ほかSPO26.11%51%24.89 pt

可決には、DRep と SPO の両方が閾値を越える必要があります。片方だけでは通りません。

不足分を委任量に直すと、話がもう少し具体的になります。

提案区分不足(委任量)未投票の委任量未投票のうち動けばよい割合
憲法委員会の更新DRep約 1 億 4,120 万 ada約 16 億 6,837 万 ada8.46%
憲法委員会の更新SPO約 17 億 3,766 万 ada約 71 億 784 万 ada24.45%
minPoolCost ほかDRep約 2 億 6,412 万 ada約 15 億 3,972 万 ada17.15%
minPoolCost ほかSPO約 27 億 6,754 万 ada約 77 億 595 万 ada35.91%

こう並べると、足りない分がどこに眠っているかがはっきりします。 憲法委員会の更新について、DRep 側は未投票の 8.46% が賛成に回れば閾値に届きます。10 分の 1 弱です。SPO 側でも、未投票のうち 4 分の 1 が動けば届く計算になります。

つまり、いま止まっているのは反対されているからではありません。 未投票のまま置かれている委任量が、そのまま分母に居座っているからです。可決の計算では、明示的な棄権だけが分母から外れます。何もしないことは、分母に残ったまま「賛成ではない」として数えられます。

前号で私たちは「足りないのは説得ではなく、席に着く委任量のほう」と書きました。今週、その席に 147 プールが着きました。それでも 35.47% です。残りの席のほうが、まだ大きいということになります。

5. 反対が現れた提案と、反対がほとんどない提案

2 件は期限も要件も同じですが、詰まっている理由は同じではありません。

minPoolCost の提案に投票済みで反対しているプールは、前号の 4 から 28 へ増えました。委任量では 4.12%(約 4 億 5,805 万 ada)です。DRep 側にも 26 票(4.58%)の反対が入っています。票が集まった週に、賛成だけでなく反対も集まりました。

一方、憲法委員会の更新に投票済みで反対しているプールは、いまも 1 つだけです(0.54%)。DRep 側も 4 票(0.24%)にとどまります。

この違いは、2 件の性格の違いをそのまま映しています。minPoolCost を 170 ada から 75 ada へ下げる案は、プールごとに損得の向きが変わります。しかも前号で触れたとおり、この提案には Plutus のメモリ上限の引き上げが束ねられており、Intersect も投票時には両方を考慮すべきだと記していました。賛否が割れる余地が、構造として存在します。

対して憲法委員会の更新は、次の節で見るとおり、通らなければガバナンスの手続き自体が縮みます。反対が 1 プールしかないという事実は、この件で意見が割れているわけではないことを示しています。にもかかわらず 35.47% で止まっているのは、割れているからではなく、参加していないからです。

同じ「期限まであと 4 日」でも、minPoolCost合意の問題を含み、憲法委員会の更新はほぼ参加だけの問題です。読むときに、この 2 つを混ぜないほうが正確だと思います。

6. 通らなかったとき、委員会は 7 名から 3 名になります

前号の時点で分かっていたのは、「可決しない場合にガバナンスの継続が中断されうる」という Intersect の記述まででした。今週、それが具体的な数字で示されました。

Intersect の週次更新 #126 は、現メンバーの任期が切れる前に可決されなければ、憲法委員会は 7 名から 3 名になると記しています。 そして 3 名は、必要な最小構成である 5 名を下回ります。その状態では、Info アクションと委員会更新アクション以外の議案が扱えなくなると説明されています。

言い換えると、通らなかった場合に起きるのは「この提案が否決される」ことではありません。次の提案を出す仕組みのほうが、先に細くなります。 国庫の引き出しも、パラメータの変更も、ハードフォークの開始も、憲法委員会の承認を必要とする種別は動かせなくなります。残るのは、拘束力のない Info アクションと、委員会を作り直すためのアクションだけです。

Dijkstra の時間割にも、この件が直接効いています。前号で私たちは「Dijkstra の時間割に、初めて『リスク』と書かれました」と書き、その理由がノードのリリース候補にあることを紹介しました。今週、リスクの理由が入れ替わっています。 #126 は「現在、憲法委員会を更新するオンチェーン投票により、時間割に遅延のリスクがある」と記しています。1 週間で、リスクの主語がノードの側からガバナンスの側へ移りました。

なお、期限までの日数で見たときに効いてくるのは、2 件のうち憲法委員会の更新のほうが、失敗したときの復旧が難しいという点です。minPoolCost は否決されても現状(170 ada)が続くだけですが、委員会のほうは現状維持という選択肢がありません。任期は待ってくれないからです。

7. von Bergen は、成立しませんでした

前号で「今日が期限です」と書いた議案の帰結が出ました。

プロトコルバージョン 12 のハードフォークを「von Bergen」と名付ける情報提供議案は、エポック 651 で期限を迎え、失効しています。 台帳の記録では、エポック 651 で失効し、エポック 652 で議案一覧から外れました。

前号時点の数字は DRep 賛成 59.5%(117 票)で、情報提供議案の可決要件は 100% でした。未投票が 36.14% ある状態から 100% に届く経路はなく、前号でもそう書いています。予想どおりの結末で、意外性はありません。

意味があるのは、この件で「反対が理由で落ちたわけではない」という点です。投票済みの反対は 2 票(0.04%)でした。要件が 100% である以上、未投票が 1 つでもあれば成立しません。名前を決めるだけの議案が、参加率のために不成立になったことになります。

ハードフォークの名称が今後どう扱われるのかは、この議案の記録からは分かりません。改めて提出されるのか、別の方法で決まるのかは、次の材料を待つことになります。

8. Leios が Earth フェーズの数字を公表しました

8 月 27 日、IOG が Leios のテストネット MusashiNet について、Earth フェーズの結果をまとめて公表しました。前号では週次開発レポート経由の数字を紹介しましたが、今回は結果報告としてまとまった形です。

実測された主な値です。

項目
期間6 月 23 日の立ち上げから 41 日
ブロック127,000 超
endorser block の告知30,000
台帳に載った証明書約 8,000
参加プール3 → 63 登録(ピークは 1 エポックに 40 プールがブロック生成)
スループット26.8 TxkB/s(Praos 単体のメインネット上限 4.51 TxkB/s に対して)
リリース8 週で 12 回

新しく出てきた数字が 3 つあります。

1 つ目は、安定期の最終数日に、チェーンに届いたものの 54% を Leios が運んだという値です。前号までは「合計でどれだけ出たか」でしたが、今回は「そのうち何割が Leios 由来か」が示されました。半分を超えています。

2 つ目は、実メインネットとの比較です。 同じ期間の実トラフィックに対して、取引数で 18 倍、バイト数で 3.3 倍を動かしたとしています。取引数のほうが倍率が大きいのは、テストの取引が実メインネットより軽かったことを示しています。数を捌く能力と、重い取引を捌く能力は別の話なので、この 2 つの倍率は分けて読む必要があります。

3 つ目は、レッドチームの結果です。 ネットワークの弱点を探す試行に対して「プロトコルの失敗は 1 件もなかった」とし、性能の劣化はチェーンが壊れる形ではなくステークに比例する形で現れたと記しています。壊れずに遅くなる、という壊れ方をしたということです。

そして、Water フェーズが新しいチェーンで始まっています。 Earth が設計の妥当性を見る段階だったのに対し、Water はパラメータを振って挙動を測る段階です。IOG は目標を「年内にメインネット対応の Leios」としています。

前号で「台帳が BLS 鍵を持ち始めました」と書いた続きにあたる材料は、今週の週次開発レポートには見あたりませんでした。SPO 向けの鍵登録手順が文書として出てくるかどうかは、引き続き来週の確認事項です。

9. 中核の開発が BlockPQR へ移りました

8 月 26 日、IOG が、カルダノの中核プロトコル開発の一部を BlockPQR という新しい会社が担うと公表しました。

移ったのは 4 つのワークストリームです。

  • Ledger — 取引の検証ルールとノードの実装
  • Blockchain Indexer — ウォレットや dApp が使うオフチェーンのデータ照会
  • Formal Methods — 機械検証可能な仕様
  • High Availability — ブロック生成の基盤と監視

BlockPQR を設立し率いているのは Leonard Hegarty 氏です。IOG では技術デリバリーのディレクターとしてカルダノを担当し、van Rossem のアップグレードでは基盤の準備に責任を持っていた人物だと説明されています。担い手は変わりますが、担っている人は変わらない、というのが今回の発表の骨子です。

体制としては、IO Labs が引き続きデリバリーを支え、施策とマイルストーンの一次責任を持ちます。作業は公開リポジトリで行われ、Intersect が各マイルストーンをゲートし、長期の継続性を見ます。 IOG は「プロトコルはすでに本番稼働しており、いまと変わらず動き続ける」としています。

SPO の立場から見ると、意味があるのは責任の所在が増えたことです。ノードのコードを書く主体が複数になり、その間をマイルストーンの承認でつなぐ形になります。これは Amaru に代表されるノード実装の多様化と同じ方向の話で、IOG は同様の移管を ICAN Group についても公表しています。実装が分散すれば、1 社が止まったときの影響は小さくなります。一方で、誰が何を保証しているのかは分かりにくくなります。 ゲートを持つのが Intersect である以上、いまガバナンスが詰まっていることは、この構造の側にも効いてきます。

そのノード多様化については、今週こんな予定も示されました。Amaru は第 3 四半期の目標だったリレーノードのバイナリを達成し、2026 年第 4 四半期のメインネットでのブロック生成を目標としています。ブロック生成の事前リリースは 9 月下旬の予定です。あわせて、ノード多様性のワークショップがシンガポール(10 月 6 日・Token2049 会期中)とロンドン(11 月 12〜13 日)で開かれ、参加者に SPO が含まれることも示されています。

10. 憲法修正ポータル — 検証用の投稿が消えました

前号で私たちは、憲法修正ポータル(cap.intersectmbo.org)の画面上の「協議中 6 件」が、実質的には 4 件だと書きました。残りはポータル自体の動作検証を目的とした投稿だったからです。

今週、その状態は解消されています。 協議中は 5 件で、検証用とみられる投稿は一覧から消えました。前号で「画面の 6 をそのまま提案数として読むと、実態を取り違えます」と書いた指摘は、今週は不要になりました。

8 月 29 日時点の内訳です。

#種別分類状態表題提出議論
9CAP手続協議中(author-ready)ガバナンスメタデータの不変ストレージ要件を外す8/234
4CIS手続協議中(author-ready)憲法修正における束ねのギャップ8/075
3CAP実体協議中Net Change Limit を戦略的な支出計画へ発展させる8/0611
2CAP手続協議中Article II 第 7.4 節の削除8/062
1CAP実体協議中国庫の支出をマイルストーン方式にし、未配分は返還する8/062

新しく出てきたのが CAP #9 です。 8 月 23 日に提出され、5 日で author-ready まで進んでいます。内容は、ガバナンスアクションのメタデータを不変ストレージで置くことを義務づける条文を外すというものです。

理由づけが実務的で、読む価値があります。提案はこう整理しています。オンチェーンのハッシュは、すでに最終版の文書に対する暗号的なコミットメントになっている。URL の先の文書が後から書き換えられれば、ハッシュが一致しなくなるので検出できる。したがって、保管方式そのものが不変であることを求めても、追加の保護にはならない。 むしろ IPFS のような content-addressed な保管でも、誰も保持しなくなれば可用性は保証されません。 一方、書き換え可能な普通のウェブ基盤でも、安定して見られることはあります。だから憲法は「保管方式の性質」ではなく「最終文書の暗号的な完全性」を定めるべきだ、という主張です。

これは、ガバナンスアクションを出す側にとってはそのまま手続きの話です。同時に、憲法の条文が実装の細部にどこまで踏み込むべきかという、より一般的な問いでもあります。前号から追っている CIS #4(束ねのギャップ)が「1 つの提案に複数の変更を入れてよいか」を問うているのと、方向は同じです。author-ready の議案が 2 件並んだことになります。

Intersect は今週、CAP のフェーズ 2 成果物が 8 月 20 日に Civics 委員会で承認されたことも記しています。ポータルはアルファ運用に入り、ワーキンググループの定例は休止して隔週の公開コールに切り替わります。

11. Midnight ウォッチ

今週の Midnight は、日本の読者にとって直接効く材料が出ました。

NIGHT が国内で初めて取り扱われました

8 月 24 日、S.BLOX 株式会社が NIGHT と ADA の取扱いを開始しました。 プレスリリースには「ナイト(NIGHT)は、国内で初めての取扱い」と明記されています。国内初という表現がかかるのは NIGHT のほうで、ADA は同時に取扱い開始となったものの、国内では他社での取扱いが先行しています。

S.BLOX は旧 Amber Japan で、ソニーグループ傘下の暗号資産交換業者(関東財務局長 第00016号)です。取扱い開始を記念して、NIGHT で最大 14,000 円相当、ADA で最大 10,000 円相当のキャンペーンが 9 月 30 日まで実施されています。

意味づけを 1 つだけ書いておきます。国内で暗号資産を扱う場合、登録業者が取り扱っているかどうかは、技術の話とは別の水路になります。カルダノのパートナーチェーンのトークンについて、その水路の入口が日本で 1 つ開いた、ということになります。

なお、リリースは Midnight を「プライバシー特化型ブロックチェーン」と紹介しています。仕組みとしてより正確に言うと、Midnight はゼロ知識証明を使って開示する範囲をアプリケーション側で設計できるようにしたチェーンで、NIGHT はその上で DUST を生み出すための保有資産です。公式の説明では 1 NIGHT が最大 5 DUST を生み、DUST は譲渡できないリソースとして契約の実行に使われます。取引そのものを隠すためのコインが NIGHT である、という理解とは少しずれます。

ネットワークの状態(8 月 26 日公表)

Midnight は 8 月 26 日に月次の状態報告を出しています。数字が付いているものを拾います。

  • VIA Labs の汎用クロスチェーン メッセージングが Midnight 上で稼働しました。130 を超える公開/非公開ネットワークと接続し、ラップ資産を介さずにコントラクト同士が直接やり取りする形です。
  • Midnight Node 2.1.0-beta.1 が Preprod と Mainnet へリリースされました。spec_version は 1_000_003 から 2_001_000 へ、transaction_version は 3 から 4 へ上がります。公式は、これを発効させることが ledger 8 → 9 のハードフォークであり、オンチェーンで複数ブロックにまたがる移行を伴うと記しています。
  • DUST の設計として、生成・定常・減衰・空の 4 フェーズが示されました。保有者はいつでも登録を更新・取消できます。
  • スポンサーシップの狙いとして、「ほとんどの dApp はオンボーディングで最大 80% の利用者を失う」という前提が示され、NIGHT と DUST を分けたことで開発者が利用者の手数料を肩代わりできる、と説明されています。
  • AKINDO 上の Midnight Buildathon が、3 か月 3 波で合計 $12,500 の助成を出します。

ノードのバージョンが上がったこと自体より、それが台帳のハードフォークとして設計されていることのほうが、運用者にとっては重い情報です。移行がオンチェーンで複数ブロックにまたがるという点も含め、発効の時期については続報を待つことになります。

訂正 — MIP のプロセスは、動いていました

前号と前々号で、私たちはこう書きました。「MIP(Midnight Improvement Proposal)のプロセスに沿った第一号の提案を確認できていません」。

これは、私たちの確認が届いていなかっただけでした。訂正します。

公開リポジトリを直接見たところ(8 月 29 日実測)、mips/ には MIP-0001 から MIP-0015 までの 15 本が入っています。加えて mps/38 のファイルがあります。仕組みとしては 2 つのトラックに分かれていて、MPS(Midnight Problem Statements)が「何が問題か」を解決方法に依存しない形で書き、MIP が「どう変えるか」を提案する構成です。段階は Proposed → Review → Accepted → Implemented と定められています。

今週も動いています。8 月 25 日に MIP-0015(ウォレット由来の決定的シークレット)MPS-0036(Compact コントラクトのリリースにおけるセキュリティレビューの証跡)MPS-0037(自己複製するオフチェーン資産の相続可能な権利)がマージされました。8 月 28 日には「Midnight CLI ツール」の MIP が新しく起票されています。

リポジトリの規約に、記録しておく価値のある 2 行があります。1 つは署名済みコミットの必須化で、署名が検証できないコミットはマージできません。もう 1 つは AI の扱いです。起草や推敲に AI を使うことは歓迎するが、コミットの作者は責任を持つ人間でなければならない、と明記されています。提案の名義人が内容に責任を負う、という原則を、ツールの使用可否ではなくアカウンタビリティの所在として書いている点が特徴的です。

前号までの記述を訂正できたのは、探す場所を変えたからです。公式ブログと告知だけを見ていると「見あたらない」で止まりますが、開発の記録はリポジトリのほうに残っていました。一次にあたる場所を間違えると、動いているものが見えません。今週の自戒として、あわせて記しておきます。

12. リスク・ディメンション

今週の材料から、注意しておきたい点を 5 つ挙げます。

1. 「大きく動いた」と「間に合う」は別の話です。 憲法委員会の更新は、DRep が 1 週間で 26.66 ポイント上がりました。しかし残り 4 日弱で必要なのは、DRep 2.76 ポイント・SPO 15.53 ポイントです。今週と同じ増え方が続けば届く計算になりますが、票の増え方は一定ではありません。週の後半に伸びた分が、そのまま次の 4 日にも起きる保証はありません。

2. 2 件は同時に通す必要があります。 どちらも DRep と SPO の両方で閾値を越えなければ可決しません。片方の議案だけを見て「あと少し」と読むと、盤面を取り違えます。とくに minPoolCost は SPO があと 24.89 ポイントで、こちらのほうが遠い位置にあります。

3. 期限の表記が割れています。 一次(Intersect #126)は 9 月 1 日 21:44:51 UTC ですが、9 月 6 日とする記述も流通しています。投票する側にとっては 5 日の差です。日付の出どころを確認してから動くことをおすすめします。

4. 今週の価格は、カルダノ固有の材料では説明できません。 ADA −10.52% に対し BTC −0.97%、ETH −2.90% です。先週とは逆に、ADA と NIGHT だけが大きく下げました。ただし、下げ幅の違いから理由を逆算することはできません。国内初取扱いという材料が出た週でもある以上、単純な結びつけは外れます。

5. Midnight のノード更新は、台帳のハードフォークを伴います。 バージョンが上がったという以上に、発効時に ledger 8 → 9 の移行が入るという点が重要です。オンチェーンで複数ブロックにまたがる移行と説明されており、発効の時期と手順は、続報を確認する必要があります。

13. 来週の注目

  1. 2 件の帰結 — 期限は日本時間 9 月 2 日 6 時 44 分 51 秒です。可決したか、失効したか。次号はその結果から始まります。
  2. 憲法委員会が 3 名になった場合の運用 — 失効した場合、Info アクションと委員会更新アクション以外が扱えなくなります。再提出がどれだけ早く出るかが、実質的な空白期間の長さを決めます。
  3. Dijkstra の時間割 — リスクの理由が今週ガバナンスへ移りました。2 件の帰結を受けて、次の週次更新でどう書かれるか。
  4. Amaru の事前リリース — ブロック生成の事前リリースは 9 月下旬の予定です。実際に出てくるか。
  5. Leios の Water フェーズ — 新しいチェーンで何を振り、どこまで測るか。年内メインネット対応という目標との距離。
  6. CAP #9 — author-ready から先へ進むか。同じく author-ready の CIS #4 と合わせ、2 件がどこで詰まるか詰まらないか。
  7. Midnight の ledger 8 → 9 — 発効の時期と、SPO・ノード運用者に求められる作業の告知。
  8. 理事会選挙 2026 — 応募は 8 月 31 日 12:00 UTC 開始です。member-elected 2 議席に何名が出るか。

まとめ

前号は、こう終わりました。「期限は 9 月 1 日です。残りは 10 日ほどです」。

その 10 日のうち 7 日で、票は集まりました。憲法委員会の更新に賛成したプールは 32 から 179 へ、DRep は 37.58% から 64.24% へ。前号の 1 週間(30.12% から 37.58% で 7.46 ポイント)と比べても、大きな動きです。

けれども、64.24% です。

必要なのは 67% です。差は 2.76 ポイント、委任量にすると約 1 億 4,120 万 ada、未投票の 8.46% にあたります。SPO 側は 35.47% で、51% まで 15.53 ポイント。未投票の 4 分の 1 が動けば届きます。

今週いちばんはっきりしたのは、この 2 件が「割れている」のではないということだと思います。憲法委員会の更新に投票済みで反対しているプールは、いまも 1 つだけです。DRep も 4 票です。反対がほとんどないまま、閾値に届いていません。届いていない理由は、意見の対立ではなく、未投票のまま分母に残っている委任量の大きさです。

そして、通らなかったときに起きることが、今週具体的に示されました。委員会は 7 名から 3 名になり、最小構成の 5 名を下回ります。そのとき残るのは、Info アクションと委員会更新アクションだけです。否決されるのは提案ではなく、次の提案を出す仕組みのほうが先に細くなります。

同じ週に、Leios はチェーンに届いたものの 54% を運び、レッドチームの試行でプロトコルの失敗を 1 件も出しませんでした。中核の開発は BlockPQR へ移り、Intersect がマイルストーンをゲートする形になりました。日本では、カルダノのパートナーチェーンのトークンが登録業者の取扱い銘柄に初めて並びました。作っている側と、届けている側は、確実に前へ進んでいます。

その上で、進み方を承認する側の仕組みが、あと 2.76 ポイントで止まっています。

期限は、日本時間 9 月 2 日の朝 6 時 44 分 51 秒です。

参考・出典

透明性メモ

今週、材料には出たものの本文に入れなかったもの、および判断の分かれ目を記しておきます。

  • 期限の確定手順:一次(Intersect #126)の「September 1, 2026 at 21:44:51 UTC」を採り、Koios が返すエポック 652 の終了時刻と秒まで一致することを確認しました。あわせて、期限が「エポック 651」だった von Bergen の投票記録を全件見て、最終投票がエポック 651 の開始 24 分前で止まっていることを確かめています。エポックの記録だけから期限の日付を推測することはしていません。
  • Intersect の表記との差:#126 の憲法委員会の更新は SPO 35.3%(8 月 28 日 15:30 UTC 時点)で、本稿は 35.47%(8 月 29 日 08:17 JST 時点)です。取得時刻が違うためで、矛盾ではありません。
  • Ikigai の議案の投票率:エポック 656 が期限の 2 件のうち、Reimburse Ikigai Info Governance Action Deposit については、当方の取得経路で出典間の乖離が許容差を超えたため、自前の数値を確定できませんでした(2 回試行)。Intersect の週次更新には DRep 44.47% と記載がありますが、本稿では独自の数値を書きません。
  • Governance Incentives Framework 2026:DRep 賛成 1.42%(10 票)に対し、投票済みの反対が 37.73%(58 票)まで増えています(前号は反対 25 票)。期限はエポック 656 でまだ先のため、本文では扱いませんでした。
  • 票が 1 週間で大きく動いた理由:投票の記録から分かるのは、票が増えたという事実までです。同じ週に呼びかけがあったことは並べて書きましたが、因果は主張していません。
  • minPoolCost に反対が 28 プール入った理由:投票そのものからは読み取れないため、事実のみを記しています。
  • CAP ポータルの検証用投稿がどうなったか:一覧から消えたことは実測しましたが、削除されたのか、非表示になったのかは判断していません。 ポータル側の説明は確認できていません。
  • Midnight の ledger 8 → 9 の発効時期:公式の状態報告に記載がなく、本稿でも書いていません。
  • Cardano Foundation の CTO 退任:8 月 31 日付ですが、報道の初出は 8 月 10 日で今週の材料ではないため、扱っていません。
  • Hydra・Plutus・Lace の今週の改善:週次開発レポートに記載がありますが、本号の主題から遠いため省いています。

投資助言ではありません。情報提供・リサーチ目的のみ。