Cardano のトレジャリー (国庫) から引き出せる額の上限 5 億 ADA のうち、成立済みの引き出し 30 件ですでに 457,395,629 ADA が使われ、残りは 42,604,371 ADA になりました。上限の期間は 2027 年 7 月上旬まで 8 か月以上残っており、いま投票中の銅準備金案 (2,200 万 ADA) が通れば、残りは約 2,060 万 ADA まで縮みます。
この数字は CryptoSlate が 10 月 16 日に報じたもので、SIPO でもオンチェーンの記録から成立済みの引き出しを集計し、件数と合計が一致することを確かめました。これから出てくる引き出し案は、DRep (委任代表者) にとって「良い案かどうか」に加えて「残りの枠をどれだけ使うか」で比べられる段階に入っています。この記事では、上限の決まり方、30 件の内訳、残り枠と銅準備金案の関係を順に整理します。
上限 5 億 ADA は、7 月の Info action で 3.5 億 ADA から引き上げ
上限の正式な名前は Net Change Limit (NCL) です。Cardano 憲法は、NCL を DRep が「活性投票ステーク (活動中の DRep に委任された ADA の総量) の 50% 超」の賛成で合意することと、トレジャリーからの引き出しがこの上限を超えてはならないことを定めています (付録 I の TREASURY-01a / 02a)。
現在の上限の期間は、エポック 613 の開始 (2026 年 2 月 13 日) からエポック 713 の終わり (2027 年 7 月 3 日ごろ) までです。この期間にはもともと 3.5 億 ADA の上限が合意されていましたが、7 月初めに提出された Info action (拘束力のない意思表示の投票) が、同じ期間の上限を 5 億 ADA とし、前の上限に置き換えるとしました。提案書は理由を、期間がまだ長く残るのに使える余地が狭くなってきたためだと説明し、「支出の指示ではない」とも明記しています。
数え方には一つ癖があります。名前に「Net (差し引き)」と付いていますが、上限が数えるのは引き出した額の総計だけです。トレジャリーへの入金、たとえば準備金からの配分、手数料、寄付、使われなかった資金の返還は差し引かれず、上限を増やしもしません。
引き上げの影響はすでに台帳に出ています。エポック 650 に成立した AlphaGrowth の Cardano PRIME への 1 億 2,000 万 ADA の時点で、それまでの累計は 3 億 3,740 万 ADA でした。旧上限の 3.5 億 ADA のままなら、この 1 件は枠を超えていた計算です。
30 件の引き出し、半分超はエポック 634 と 650 の 2 か所
期間に入ってからの成立は、エポック 621 の Amaru (1,014 万 ADA) から、エポック 650 の PRIME までの 30 件です。額の大きいものを並べると、偏りがよく見えます。
- エポック 650: AlphaGrowth の Cardano PRIME — 1 億 2,000 万 ADA
- エポック 634: IO 関連の 6 件 (保守、コンセンサス、Plutus の改善など) — 合計 1 億 3,151 万 ADA
- エポック 624: Draper Dragon との Orion Fund — 5,000 万 ADA
- エポック 637: IO の Cardano Vision 2026 — 3,292 万 ADA
- エポック 646: Intersect のガバナンス調整と技術支援 — 2,540 万 ADA
- エポック 639: Cardano Critical Integrations V2 — 2,300 万 ADA
エポック 634 と 650 の 2 か所だけで約 2 億 5,151 万 ADA、成立額全体の約 55% になります。残りの 19 件は、1,000 万 ADA 台の Tweag・Amaru・5am.earth から、TxPipe のツール群や Daedalus、ハードウェアウォレットの保守のような数十万〜数百万 ADA の維持費まで幅があります。
残り 4,260 万 ADA と、投票中の銅準備金案
いまオンチェーンで投票中のトレジャリー引き出しは、Toto Finance が提出した Cardano Strategic Copper Reserve の 1 件だけです。要求額は 2,200 万 ADA で、エポック 661 に提出され、オンチェーンの記録では投票期限はエポック 668 です。提案の中身は 10 月 16 日の Signal で整理しました。
この案が成立すると、残りの枠は 20,604,371 ADA になります。銅案は 18〜24 か月の保有のあと売却代金をトレジャリーへ戻す設計ですが、上の数え方のとおり、戻ってきた資金で枠が復活することはありません。一度使った枠は、期間が終わるまで使ったままです。
ほかの動きも並べておきます。OpenZeppelin Stack 向けの 11,787,063 ADA の引き出し案は、批准されないままエポック 661 で失効しました (締切前の Signal)。Mesh SDK の 60 万 ADA は、まだ提出前の草案の段階です (10 月 15 日の Signal)。
トレジャリーの残高そのものは減っていません。エポック 650 の約 13.37 億 ADA から、エポック 662 には約 13.82 億 ADA に増えています。残高は増えても、引き出せる枠は増えない。この食い違いが、いまの上限の仕組みをいちばんよく表しています。
残り 8 か月の枠を決める 2 つの確認先
一つ目は、GovTool の銅準備金案のページです。エポック 668 の期限までに成立するかどうかで、期間の残り 8 か月あまりで使える枠が 4,260 万 ADA か 2,060 万 ADA かが決まります。
二つ目は、GovTool の Info action の一覧に、NCL を変える新しい提案が出るかどうかです。7 月の Info action は、同じ期間に新しい上限を合意し直すことを憲法は妨げていないという立場で書かれていました。枠が細るなかで同じ手順がもう一度使われるのか、それとも次の期間 (エポック 714 以降) を待つのかは、来年の予算の進め方にもつながる分かれ目です。
ことば
- Net Change Limit (NCL) — 一定期間にトレジャリーから引き出してよい額の上限。DRep が Info action で合意し、個々の引き出し案はこの枠に収まる場合だけ成立できます。名前と違い、入金は差し引かれません。
- Info action — 台帳には直接の効果を持たない、意思表示のためのガバナンスアクション。NCL のように「合意したこと」を記録に残すのに使われ、今回の 5 億 ADA もこの形で決まりました。
- トレジャリー引き出し (TreasuryWithdrawals) — トレジャリーから特定の受取人へ ADA を送るガバナンスアクション。DRep と憲法委員会の承認で成立し、成立した額が NCL の累計に加わります。
一次ソース / 関連リンク
Net Change Limit: Cardano Treasury (Epochs 613-713)(GovTool の提案ページ)(gov.tools)
同 Info action の提案書原文(IPFS)(ipfs.blockfrost.dev)
Cardano Strategic Copper Reserve | ₳22M RWA Tokenization(GovTool の提案ページ)(gov.tools)
Withdraw 120,000,000 ada for AlphaGrowth’s Cardano PRIME(GovTool の提案ページ)(gov.tools)
CryptoSlate: Cardano has 42.6 million ADA left under its current treasury spending limit(2026-10-16)(CryptoSlate)
集計の基準: 成立済み引き出しの件数・合計とトレジャリー残高は、2026 年 10 月 19 日 (エポック 662) 時点のオンチェーン記録による。

