Cardano の DRep (委任代表者) が集まる調整組織 DRep Council が、トレジャリー (国庫) からの引き出し提案を LLM (大規模言語モデル) で採点する試験版のツールを公開しました。参加する DRep の Jaromir Tesar 氏が日本時間 10 月 31 日朝に X で説明し、公式サイト drepcouncil.org には、オンチェーンに出ている引き出し提案の採点結果を見られるページと、提出前の草案を採点するページの 2 つが並んでいます。
提案を審査する側が「この質問に答えているか」を先に示し、その答え合わせを機械に手伝わせる試みです。10 月 28 日の Signal で「草案の本文はまだ公開されていない」と書いた基準づくりが、引き出し提案のテンプレートという形で、採点の物差しとして動き始めました。できることと、できないと明記されていることを分けて整理します。
前回の記事: DRep Council、158 議案の投票理由から提案基準の草案
物差しは、過去の引き出し提案と DRep の投票理由
Tesar 氏の説明によると、テンプレートは「すべての引き出し提案が答えるべき質問」の一式です。いまの版は、これまでのすべてのトレジャリー引き出し提案と、DRep がそれぞれに残した投票理由 (rationale) を分析してつくられました。DRep が提案に何を求め、何が賛否を分けたのかを、記録から拾い直したということです。
採点は 3 つの面から行われます。
- テンプレートの質問に答えているか (サイトの表記では Template coverage)
- Triangle Forces という意思決定の枠組みを Cardano 向けに手直しした、別の角度からの少数の質問
- Cardano Vision 2030 (Cardano の 2030 年に向けた戦略文書) とどれだけ方向が合っているか
Triangle Forces の枠組みの作者は、DRep で Council のメンバーでもある Jürgen Proschinger 氏 (X では @triangleforces) です。
採点結果は全員が見られ、草案は提出前に試せる
drepcouncil.org の「On-chain Proposal Score」のページでは、オンチェーンに出ているトレジャリー引き出しのガバナンスアクションごとに、上の 3 つの面での採点が並びます。ページは読み取り専用で、採点は Council の理事会 (board) が生成すると書かれています。メニューのこの項目には「exp」(試験中) の印が付いています。
提案者向けには、草案を採点するページが別にあります。ウォレットを接続し、ADA を支払うと、オンチェーンに出す前の草案を、提出後の提案と同じ物差しで読ませることができる仕組みです。支払う金額は、11 月 2 日に確認した時点のページの文面からは読み取れませんでした。
DRep の側から見ると、これまでは提案ごとに確認点を一から組み立てていた作業の一部が、共通の下読みとして全員に配られることになります。提案者の側から見ると、どの質問に答え忘れているかを、投票が始まる前に知る手段が増えます。
「点数は質の保証ではない」と繰り返し明記
このツールが慎重に書かれているのは、できないことの説明です。Tesar 氏は、高い点数がよい提案を保証するわけではないとし、LLM が見ているのは質問に答えているかどうかだけで、答えの質や事実の確認は DRep の責任のまま残ると書いています。一方で、点数が低い場合は、重要な質問に答えていない可能性を示すとしています。
サイト側にも同じ趣旨の注意書きがあります。採点は読むための補助であって検証ではなく、提案の主張やリンク先の根拠が正しいかどうかは確かめていない、という内容です。そのうえで、すべての判定に提案文の該当箇所を示し、DRep が自分で確かめて判断するよう求めています。
もう 1 つの前提は強制力です。Tesar 氏は、提案者にこのテンプレートを使ってほしいとしつつ、DRep には使わせる手段がないことも明記しています。テンプレートに沿っていない提案を、手続きの上で門前払いにする仕組みではありません。テンプレートは正式公開の前にさらに手直しされる予定で、Council は質問とプロンプトへの意見を募っています。
物差しが共有されると、何が変わるか
民間の DRep の集まりが作る物差しには、オンチェーンの権限がありません。それでも、採点結果が誰でも見られる形で並ぶと、提案者はその質問を無視しにくくなり、DRep は自分の判断がどこで採点と違うのかを説明する場面が増えます。強制力のない基準が、公開されることで事実上の参照点になっていく — その途中の段階にあるのが、いまの試験版です。
SIPO も DRep として引き出し提案に投票する立場にあります。採点そのものより、判定ごとに示される提案文の該当箇所のほうが、下読みの時間を短くする道具として使いやすいはずです。点数が高いのに投票理由で反対が並ぶ提案、あるいはその逆が出てきたとき、物差しのどこが足りないのかが初めて見えてきます。
最初に確かめたいのは、次にオンチェーンへ出されるトレジャリー引き出し提案が、drepcouncil.org の On-chain Proposal Score のページにどう採点されて並ぶかです。あわせて、テンプレートの正式版が DRep Council の内部提案の一覧に議案として載り、質問の中身が公開コメントにかけられるかどうかも見ておきたい点です。
ことば
- トレジャリー引き出し (Treasury Withdrawal) — Cardano の国庫から資金を出すためのガバナンスアクション。DRep と憲法委員会の承認が要り、開発資金の多くがこの形で請求されるため、提案の書き方の基準が最初に求められました。
- Triangle Forces — Jürgen Proschinger 氏による意思決定の枠組み。少数の的を絞った質問で提案を別の角度から点検するもので、今回は Cardano 向けに手直しした版が採点の 1 軸に入りました。
- 投票理由 (rationale) — DRep が投票と一緒に残す判断の理由の文書。誰でも読めるため、今回のテンプレートは過去の引き出し提案に付いたこの記録を素材にしています。
一次ソース / 関連リンク
- Jaromir Tesar 氏の X 投稿 (DRep Council のテンプレートと採点ツールの説明・日本時間 10 月 31 日)
https://x.com/JaromirTesar/status/2116298342385029585
DRep Council 公式サイト (提出前の草案の採点)
DRep Council

